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「イマレコ!」マクロスゼロ[特集サイト「プレイバックエモーション」]

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多くのCGメカアクションの礎を築いた『マクロスゼロ』

「マクロス」シリーズ20周年作品として企画された『マクロスゼロ』は、シリーズとして初めてメカアクションに本格CGを導入し、大きな転機となった作品である。かつて「マクロス」シリーズといえば、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』『マクロスプラス』に代表されるように、手描きによる緻密なメカニックアクションの代名詞的作品だった。
それが一転してメカアクションをCGに置き換えたわけだから、当時のファンの間には様々な意見が交わされた。だが、監督である河森正治氏、特技監督である板野一郎氏は、それぞれ90年代初頭のアメリカへの取材を通じて、やがてアニメはCGに置き換わることを感じていた。当時、日本では数秒で1億円と言われたCGが、アメリカでは「安価だから」という理由で手描きからCGに置き換わっていたのだ。望むと望まざるにも関わらず、それは避けて通れない道だった。

とはいえ『マクロスゼロ』の制作がスタートした2000年代初頭は、CGアニメーションの黎明期。まだ、CGアニメーターという仕事すらも確立していなかった時代である。集められたスタッフたちは、アニメーションの考え方の根本から異なっていた。板野氏は彼らに日本の手描きアニメーション(ジャパニメーション)の基本的な考え方から見せ方を根気よくレクチャーし、氏が生み出した超絶アクションである「板野サーカス」も伝授した。
「たとえ絵が描けなくても、CGなら戦える」。それが板野氏の持論だった。絵が描けずにアニメーターを挫折した人も、CGという「絵筆」があればアニメーターとして戦うことができる。海外と比較して、予算も人員も乏しい日本の制作スタジオが勝つためには、ジャパニメーションの魅力を、CGで再現し、伝承していくことが急務であったと感じていたのだ。

重要なのは、それを受け取るCGスタッフ側の覚悟である。今でこそアニメにCGは欠かせないが、当時はまだCGアニメーションの未来すらわからない時代である。だが彼らは板野氏の教えに感銘を受け、乾いたスポンジが水を吸うようにジャパニメーションのノウハウを自分のものにしていった。当初は板野氏や、アニメーターが描いたラフ原やキーフレームを元にCGスタッフは作業を行っていたが、その成長は目覚ましく、終盤の章はCGスタッフが完全に独自にシーンを構築するまでに至ったのである。
驚くべきは、そうした状況下であるにもかかわらず、『マクロスゼロ』のメカアクションは、現在の視点でもまったくクオリティに遜色がないことだ。第一章の大雲海での遭遇戦、第二章の渓谷でのフォッカーとイワノフの戦闘、第三章の空母アスカへの襲撃、最終章の鳥の人との激戦……。「マクロス」シリーズのなかでも、屈指のメカアクションを実現しており、戦闘の比重が非常に高いことをうかがわせる。

「マクロス」シリーズには、三種の神器と呼ばれる構成要素がある。それは歌、三角関係、可変戦闘機(戦闘)だが、その比重は作品によって異なっている。『マクロスゼロ」は、当初は戦記物として企画された背景や、マニアック層が中心のOVAという媒体も踏まえ、「戦闘」に特化した「マクロス」として誕生した。およそ考えられるバルキリーのアクションを盛り込んだ各エピソードは、「可変戦闘機の戦いとはこういうものだ」ということを印象付ける。
また、当初はCGにトゥーンレンダリングを採用することが予定されていたが、一転して天神英貴氏によるイラスト的なテクスチャを採用したことも英断だった。まだCGは技術的な過渡期にあった時代である。CGの技術的な表現に依存すると、時代性を反映した映像になってしまう可能性があった。だが『マクロスゼロ』は天神氏のイラストタッチを採用したことで、時代性に左右されない不変的な映像となった。その美しさは、AIリマスターが施された「マクロスゼロ Blu-ray Box プレミアムリマスターEdition」でさらに際立つものとなっている。

『マクロスゼロ』で培われたノウハウは、その後、河森監督作品である『創聖のアクエリオン』や『マクロスF』を通じて、アニメ業界にCGメカアクションの方向性を示すこととなった。一方、『マクロスゼロ』で育ち、板野氏に「免許皆伝」と認められたスタッフ……unknownCASE(加島裕幸氏、崎山敦嗣氏)や、のちにサテライトCG部を牽引した橋本トミサブロウ氏、八木下浩史氏、原田丈氏といったメンバーは、様々な制作現場で活躍するだけではなく、今度は教える立場として後進の育成にも尽力。板野氏が育んできた「マクロスの遺伝子」は、現在もCG業界へと波及し続けている。『マクロスゼロ」は文字通り「ゼロ」からCGによるジャパニメーション表現を確立し、現在に続く「マクロス」シリーズや、多くのCGメカアクションの礎を築いた作品となったのである。

文:河合宏之

 

<発売情報>

マクロスゼロ Blu-ray Box
プレミアムリマスターEdition(特装限定版)

2024年2月28日発売
価格:¥19,800(税込)
品番:BCXA-1895

 

▼マクロスシリーズ ポータルサイト
https://macross.jp/

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