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「名作ヒストリー」テレビアニメ『交響詩篇エウレカセブン』[特集サイト「プレイバックエモーション」]

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 『交響詩篇エウレカセブン(以下、『エウレカ』)』は、きわめてユニークなアニメ作品だ。『エウレカ』のどこが、そんなに「ユニーク」なのか。まずは、原作のないオリジナル作品であること。ジャンルはロボットが活躍するSFアニメで、放送されていたのは日曜朝7時(ちょうど真裏で放映されていたのが、子供向けの『まじめにふまじめ かいけつゾロリ』だった)。当時も「こんな時間帯にロボットアニメ?」と思わされたのだが、加えて放映期間は1年間(全50話)。今ではほとんど制作されることがなくなった1年物だが、オリジナルでのSFアニメとなると、そこからかなり数が絞られる。

交響詩篇エウレカセブン_場面1

 アニメーションスタジオ・ボンズのプロデューサーとして本作の制作に関わった南雅彦は、毎日放送のプロデューサー・竹田靑滋から1年枠でのオンエアを打診されたときのことを、こんなふうに回想している。
「そもそも80年代のロボットアニメってもっと自由だったと思います。『重戦機エルガイム』や『戦闘メカ ザブングル』といったシリーズは1年ごとに全然違う面白さ、魅力を持っていました。制作費はいまよりずっと少なかったし、当時はビデオパッケージがなく、おもちゃのプロモーション的な意味合いが強かった。(中略)にもかかわらず、いまよりも自由にアニメを作っていたように思います。あの頃の自由さを取り戻せないかと思いましたね」(※)
「80年代のロボットアニメが持っていた自由さ」。それは言い換えれば、メカニックとしてのカッコよさや快感はもちろん、ロマンティックな人間ドラマもあれば、コミカルな展開やギャグもあり、センス・オブ・ワンダーに満ちたSF的要素もあれば、シリアスな問題提起もある。あらゆる要素を貪欲に飲み込んでしまう、そんな枠(ジャンル)としての「ロボットアニメ」とでも言えるだろうか。

交響詩篇エウレカセブン_場面2

 監督を務めたのは、出渕裕監督の『ラーゼフォン』に監督補佐として参加していた京田知己。テレビアニメをもとに再編集、追加シーンを加えた『ラーゼフォン 多元変奏曲』ですでに監督デビューを果たしていたものの、TVシリーズを手がけるのは本作が初。またシリーズ構成を『カウボーイビバップ』や『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』などに各話脚本として参加していた佐藤大、キャラクターデザインを、スタジオジブリ出身で『OVERMANキングゲイナー』などに参加した吉田健一が担当した。当時まだ30代半ばで、若手とは言えないものの、決してベテランではない彼らの、若い感性が生み出す新たなSFアニメ。南プロデューサーは、このスタッフィングについて「『(機動戦士)ガンダムを見てきた世代が作る、俺たちの『ガンダム』を意識した」と語っている。

交響詩篇エウレカセブン_場面3

 その「若い感性」は例えば、キャラクターやメカの名称にも表れている。主人公の少年・レントンの名前は、ダニー・ボイル監督の映画『トレインスポッティング』から採られ、リフボードを使って空を滑空する人型機動マシン・LFOは、イギリス出身の同名テクノ・バンドから(ちなみに、主人公機であるニルヴァーシュをデザインしたのは河森正治)。ほかにも、レントンが合流することになる反政府組織・ゲッコーステイトが自分たちの雑誌「ray=out」を発行しているという(一見、突飛にも思える)設定は、アメリカのヒップホップグループ、ビースティ・ボーイズが自主制作した雑誌「グランドロイヤル」を連想せずにはいられないし、各話サブタイトルにはテクノやニュー・ウェーブ、ロックの曲名が引用されている。そのほか、例を挙げていけばキリがないのだが、10~20代の頃に影響を受けたカルチャーを反映しながら、自分たちなりのアニメを作る。それは例えば(河森がメインスタッフとして参加した)『超時空要塞マクロス』がアイドルやラブコメなど、当時の若者文化を参照しつつ作品世界を練り上げたのと、同じ試みにも思える。

交響詩篇エウレカセブン_場面4

 しかも、そうしたディテールを随所に散りばめながら『エウレカ』が語ろうとするのは、世界の変容をめぐる壮大かつファンタスティックなビジョンであり、驚くほど真っ直ぐなボーイ・ミーツ・ガールの物語である……というところに、本作の最大の魅力がある。偶然、出会った少女・エウレカに導かれて、故郷を飛び出したレントン。憧れの対象だったゲッコーステイトの面々と、世界のあちこちを飛び回るうちに、彼は理想と現実を隔てる壁にぶち当たり、思い悩む。しかもその旅が先に進むにつれて、普通に暮らしていたときには知るはずもなかった世界の真実が次第に明らかとなり、しかもその真実によってレントンは、愛する人・エウレカとの絆を試されることになる。傷つき、苦悩しながらも、少しずつ少年から大人へと成長していくレントン。そして、そんな彼を次第に受け入れ、大きな決断を下すエウレカ。長くつらい旅の最後に2人を待ち受ける光景には、きっと胸を締めつけられるはずだ。

(※)「CONTINUE」Vol.27、太田出版、2006年

文:宮 昌太朗

「交響詩篇エウレカセブン20周年記念展」チケット10月31日より発売中!

TV アニメ「交響詩篇エウレカセブン」の放送 20 周年を記念し、「交響詩篇エウレカセブン 20 周年記念展」を有楽町マルイにて開催いたします。キャラクターやメカニックの設定資料をはじめ、名台詞・名場面・フォトスポットとともにストーリーを振り返るコーナーやニルヴァーシュの立像、歴代の遊技機も展示します。本展示会オリジナルの描き下ろしイラストを使用したグッズの発売も予定しています。

【イベント概要】

■会期:2025 年 12 月 12 日(金)〜2026 年 1 月 4 日(日)
※2025 年 12 月 31 日(水)〜2026 年 1 月 3 日(土)は本展覧会は休場となります。
■場所:有楽町マルイ 8 階イベントスペース
■開催時間:11:00〜19:00(最終入場 18:30)
■展覧会公式HP:https://cb-event.net/e7_exhibition
■展覧会公式 X:@e7_exhibition
■主催:「交響詩篇エウレカセブン 20 周年記念展」実行委員会
■協力:「交響詩篇エウレカセブン」製作委員会、株式会社バンダイナムコセブンズ、サミー株式会社

<発売情報>
TVシリーズ 交響詩篇エウレカセブン Blu-ray BOX1 特装限定版
交響詩篇エウレカセブン_Blu-ray BOX1展開図

TVシリーズ 交響詩篇エウレカセブン Blu-ray BOX2 特装限定版<最終巻>

響詩篇エウレカセブン_Blu-ray BOX2展開図
好評発売中
価格:各¥19,800(税込)

 


「エウレカセブン」シリーズ 公式サイト
https://eurekaseven.jp/

「エウレカセブン」シリーズ 公式X
@EUREKASEVEN_PJT

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