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「イマレコ!」『天空のエスカフローネ』[特集サイト「プレイバックエモーション」]

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濃密で温かみの豊かな異世界ファンタジー

 現在主流の「アニメ作品自体の内容と質で勝負する時代」は、90年代中盤にクオリティ&クリエイティブ重視の作品群によって招来された。テレビアニメ『天空のエスカフローネ』(96)は、そんな時代に生まれた濃厚なテレビアニメである。「ロボットアニメ×ファンタジー×少女マンガ」と、ジャンルを三位一体でクロスオーバーさせつつ、「異世界もの」の中に独自の世界観をつくりあげた点で芳醇な要素がギッシリ詰まっていて、「手づくりの温かみ」にあふれた点でも、ぜひとも再確認すべき作品と言える。

 物語は占いを得意とする陸上部女子高生・神崎ひとみの視点で進む。彼女は空に地球が浮かぶ異世界ガイアを「ビジョン」(予知幻覚)として見てしまう。そこでは人型の巨大機械鎧(ガイメレフ)が剣を交えて重々しく戦っていた。憧れの先輩・天野に告白を決意したひとみは、100m走で13秒を切ったらファーストキスするという条件で全力疾走することになった。ところが剣を構えた少年バァンと巨大な竜が、どこからともなく出現した。ひとみの助言でバァンは竜を倒すことに成功するが、光の柱に飲み込まれたふたりは、ガイアへ転移してしまう。

 「異世界もの」ではあるものの、近年流行の「転生」ではなく、現実との接点と対比を保った「転移」である。ガイアがどのように現実と違うかも、物語の進行とともに明らかになっていく。人間・獣人・竜が共存する点で中世ファンタジー風ではあるものの、実にユニークな世界観なのだ。
 竜神人の血を引くバァンは竜退治の儀を終えたことでファーネリア王国の王位を継承し、伝説のガイメレフ「エスカフローネ」と契約を結ぶ。ところがザイバッハ帝国のガイメレフがステルスマントを身にまとい、不可視となって奇襲をかけてきた。巨大な甲冑風の人型兵器ガイメルフの中に人が乗り込み、剣を交えて戦うことで、ロボットアニメと剣士の戦闘の要素が融合していく。
 ファーネリア王国は滅ぼされてしまったが、ひとみの力が発動し、辺境へ飛ばされてしまう。バァンとはぐれてしまったひとみは、天野先輩に酷似した剣士・アレンに助けられた。ガイアにおける運命の渦に巻き込まれていくひとみだったが、同時にバァンとアレンとの間は三角関係的になっていく……。

 ここまでが最初の3話で描かれていることだ。すでに「少女の恋・占い・ビジョン・異世界転移・王位継承・国家間の殲滅戦・ロボット剣士の激闘・運命 vs 自由意志」と、多様な要素が重層的に編み上げられていることが分かる。ひとみは等身大の少女で、占い以外にチート的な戦闘能力等は備わっていない。それだけに、彼女の悩みは身近な感覚でダイレクトに伝わってくる。
 不安や悩みばかりではあるものの、それでも人と世界に関わっていこうと前向きに努力するひとみの姿が、本作の大きな魅力だ。それは「人の〝想い〟が現実の運命を変える力を持つ」という驚くべき仕掛けが、背後に存在するからなのだが……。

 このユニークなクリエイションには、原作・シリーズ構成・スーパーバイザーを担当した河森正治ならではの才能が感じられる。マクロスシリーズと並行して企画が進んだ本作では、メカとサイエンスの対極にあるものが志向され、同時に複合的な要素をひとつにまとめていく彼の統率力が発揮されている。
 プロデューサーは当時サンライズ所属だった南雅彦である。本作と『カウボーイビバップ』(98)の手ごたえを得た彼は、1998年に独立して制作会社ボンズを設立する。ボンズはProduction I.Gともども、21世紀に大きく発展したアニメビジネスの中でも注目を集めた制作会社だ。その特質は、作画を中心とする手作り感の重視だった。その原点にあたることは、本作の凝りに凝った作風から一目瞭然である。

 結城信輝のキャラクターデザインを、アニメーションディレクターである逢坂浩司(後のボンズ取締役)が複数の作画監督とともに美麗にまとめ、女性ファンを魅了した。山根公利の重厚なメカデザイン、特にガイメレフのゴツゴツとした甲冑感覚は、メカニカルディレクター・メカ作画監督の佐野浩敏によって存在感と迫力が増している。さらにはマントを髪の毛のようになびかせるといった美麗さが加わり、キャラクターとメカの一体感が手描きの作画から伝わってくる。

 テレビ向けの2DCGを多用している点も、本作の特徴だ。地竜の表皮にテクスチャを貼りつけ、ステルスマントの透明化に波紋効果を適用するなど、デスクトップ機材で実現可能な表現を要所要所に採り入れ、濃密なセルアニメ表現にもうひと味加えて、クオリティを高めている。

 特筆すべきは、菅野よう子と溝口肇による劇伴音楽の威力である。ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団による、男声合唱を採り入れた荘厳な音楽は、幻想的な作品に重みと生々しさを加え、アニメ音楽全体の方向性にも大きな影響をあたえている。
 流血をともなう戦争の残酷さ、他者の運命に介入してしまう横暴が描かれるとともに、カウンターとして少女の一途な想いと精神的な成長が全体情況を変えうるという希望も示される。その点で2020年代現在の世界情勢を念頭において視聴することにより、何か閉塞感の突破口も見出せるかもしれない。

 本作の成功により、劇場版『エスカフローネ』(2000年6月24日公開)も制作された。完全新ストーリー、新作画で物語のエッセンスを再構築したアニメ映画である。ガイメレフの生物的表現が増した等、濃密なビジュアルを満喫できる作品だ。別の観点によるテレビシリーズの再話として、こちらもぜひ楽しんでいただきたい。

文:氷川竜介(ZEN大学教授/アニメ研究家)

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▼作品公式HP
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▼サンライズワールド 公式X
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