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2014.12.08 10:35UP

「天体のメソッド」BD第1巻封入特典・久弥直樹書き下ろしショートノベル 冒頭公開!

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1月28日発売 特装限定版Blu-ray第1巻封入特典「SIDE STORY BOOK」に収録される久弥直樹さん書き下ろしショートノベルの冒頭を特別公開! ******* 『遠くのそらのした』 ○○○○ 空に浮かぶ雲のように散らばった意識のかけらが、ゆっくりと風に運ばれて集まってくる。 ぼんやりとして、あやふやだったものが、ひとつの風景へと移り変わっていく。 私は、その中心でただ身を任せているだけ。 ゆらゆらと、私自身が揺れている。規則正しく、息づかいを繰り返すみたいに。 心地よくて、それなのに胸が締めつけられるように苦しい。 いつの間にか、雲は私の周りに集まって、ひとつの風景を形作る。 「──?」 私は、首をかしげる。かしげた、と思う。 ここは、部屋の中。知らない場所。澄んだ空気は少し冷たくて、木々を思わせる自然の香りが、色濃く鼻をくすぐる。 また、私の身体がゆっくりと揺れる。見覚えのない部屋が、上下に揺れている。揺れているのは私の小さな身体で、そんな私を温かな手が後ろから優しく包み込んでいた。 歌が、聞こえてくる。 大好きな歌。大切な歌。 私のすぐ後ろに、大好きで大切な人がいる。 私を抱きしめる温かく柔らかい手が、私の頭をそっと撫でた。 私は──本当は嬉しいのに、どこか気恥ずかしくて、そのことを大好きな人に知られたくなくて、真っ直ぐに前を向いて、揺れる床に視線を落としていた。 意地っ張りな私。 今すぐにでも振り向きたいのに。 優しい笑顔がすぐそばにあるのに。 一緒に、歌いたいのに。 上手だねって、褒めて欲しいのに。褒めて欲しいから、内緒でずっと教えて貰った歌の練習だってしているのに。 そのときの小さな私はただ、ぎゅっと自分の服の裾を握るだけ。 ほんの少しの勇気を出せば、振り返ることだってできる。そうすれば、すぐそばにある大好きな笑顔を見ることができる。 私は、ありったけの思いを込めて、顔を上げる。 振り子のように揺れる椅子に座っている、私の大好きな人。その膝の上にちょこんと座っている、小さな私。 恥ずかしさも照れくささも押しのけて、私は後ろを振り向く。 ──振り向いた、はずだった。 だけど私の身体は、まるで水の中にあるように、自由に動くことができなかった。 近くにあるはずの笑顔が、ずっとずっと遠くへ行ってしまうように感じて、私は自然と涙がこぼれていた。 大切な人のことを、何度も何度も呼び続けた。 それなのに、伝えたかった言葉はまるで水に溶けるように声にならない。 ──どうして? 私は戸惑い、必死に身体を動かそうとする。だけど、身体を動かそうとすればするほど、私の意思は手足に伝わらず、小さな私は今もまだ、揺れる床を見続けているだけ。 やがて、すぐそばにあったはずの大好きな手が、温もりが、私から離れていく。 歌も、いつの間にか聞こえなくなっていた。 ──待って! まだお話ししたいこと、伝えたいこと、たくさんたくさんあるのに! 揺れる心。再び風が吹く。 集まっていた意識が、もう一度風に吹かれてちりぢりになっていく。 空に散らばったそれは、もう雲ではなくなっていた。 これは、そうだ──いつもあの場所で見ていた、夜空に浮かぶ星。 そのとき、私はやっと気づいた。 ううん。 本当は最初から分かっていた。 分かっていたのに、認めたくなかっただけ。 今、私が見ているものは、見ていると思っていたものは──全部、夢なんだ。 ******* つづきは、Blu-ray第1巻封入特典「SIDE STORY BOOK」でお楽しみ下さい!

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