インタビューココだけ | 転生したらスライムだった件
TVアニメ続編制作決定! 2020年始動!!『転生したらスライムだった件』原作・伏瀬インタビュー
早くもTVアニメ続編制作決定が発表となった『転生したらスライムだった件』。そこで今回は、伏瀬先生に作品世界観やキャラクターの構築方法、自身書き下ろしの第24話「外伝:黒と仮面」の制作エピソード、第2期決定を受けてのお気持ちなど様々な話を伺った。
キャラクターありきでありつつ、“強さ”はシビアに数値化
──TVアニメの放送をご覧になっていかがでしたか?
伏瀬エイトビットさんにはこれ以上ないぐらいに丁寧に作って頂いて、ありがたく思っております。web版を書籍化したときもそうですが、ものづくりは一人ではできないですよね。アニメともなると100人単位の方々が携わって一つの作品を作り上げていく。そういう中で皆さんが作品に対して思いを込めて作ってくださっている。毎週観ていてそれを感じることができて、原作者としても嬉しい限りです。
──公式サイトで「現時点ではイメージ通りの制作進行となっております」というコメントがありました。具体的にどんなところでしょうか?
伏瀬派手な戦闘アクションだったり、王城の内部からちょっとした小道具一つとっても細かく設定されているところですね。原作を隅々まで読み込まれていて、テントの構造も実在する物を参考に再現されているし、その横に掘られている溝もきちっと描いてくれている。観ていてアニメ制作サイドの熱意を感じ取れて、スタッフの皆さんの取り組みに感心しました。
──作品の舞台はどのように構築されていったのでしょうか?
伏瀬登場人物から逆算して構築しています。まずどういうキャラクターを動かしたいのかというところからスタートして、そのキャラクターが生きていても不自然じゃない世界とはどんなものなのかを考えていきます。けっこう何でもありの世界観にしていますね。
──サラリーマン時代は土木関係のお仕事をされていて、そのときの経験が三上悟(リムル)のキャラクターだけでなくて、転生後の国作りにも反映されている気がします。集落が発展していく様子にも段階があって、先ほど仰ったようにテントの基礎から溝の描写まで、他の作品とはアプローチが違うように感じました。
伏瀬そこは大事なところだなと思っていて、機会があったら描写したいと考えていました。小説の書籍では自分の苦労話や体験談を膨らませて、社会に出るとどういう苦労があるのか、というのをちょっとしたスパイスとして書けたら面白いかなと思い入れています。
──小説では巻数を重ねるのと比例してキャラクター数も膨れ上がっていきますが、キャラクターの配置など気を配られているところはどこでしょう?
伏瀬少年漫画のセオリーで、主人公が成長して敵ボスに勝利しても、またさらに強い敵が現れて、また主人公が成長して倒す…。敵も主人公もどんどん強くなっていく、いわゆる「インフレバトル」と言われる現象が起きがちなんです。僕の中では一番強いヤツは決まっていて、どれだけインフレしているように見えても上限は決まっています。そこを頂点にして、他のキャラクターの戦闘力や体力値みたいなものを割り振っていますね。そこを把握しておかないと収拾がつかなくなってしまうので、丁寧にやっています。
序盤に8話を費やすことが次の展開へつながる
──第1話をご覧になっての感想は?
伏瀬自分の書いた小説が漫画になり、ついには声と動きがついたアニメまでになった。自分の作品でありながら他人事のようで、すごいなという感じを受けました。
──三上悟(リムル)がスライムとして転生して間もないころは視覚も聴覚もない。それをアニメでどう表現されるのか、難しいシーンだったかと思います。
伏瀬そこは漫画でも工夫された描写になっていました。アニメでは単純に漫画を踏襲するのではなく、アニメならではの表現が模索されていて、テンポよく描かれていると思いました。リムルが捕食者のスキルでシズの姿を得るまでをひと区切りとすると、24話中8話分をプロローグに費やすのは少し長いといえるかも知れません。でも、世界観やキャラクターの土台を丁寧に描いて初めて次の展開につながるので、この作品に関しては正解だったなと感じています。
──三上悟がスライムになって、声が寺島拓篤さんから岡咲美保さんに切り替わる。そのタイミングが絶妙だったと思います。
伏瀬そこに関しては当初、意見が分かれていたんです。僕のイメージでは、心の声は常に男性だったんですよ。心の声は男性で、スライムのときは女性の声を少し変えて、シズを取り込んで人間の姿になったら女性の声で話す、というのが僕の案だったんです。けどこれに関しては「視聴者が混乱するのでシズを取り込む前のスライムの状態から女性の声にしたほうがいいでしょう」というのがスタッフ皆さんの意見でした。僕も改めて考えて他のアニメで途中からいきなり主人公の声が変わったら、確かにすごく違和感が残る。さっき言ったように、リムルが人の姿を得るまでの序盤を丁寧に描いていくのであれば、第1話で切り替えてしまったほうが、混乱させないだろうと。僕も納得のうえでその選択に落ち着いた感じですね。
──主人公のリムルの造形に関しては小説・漫画・アニメでちょっとずつ変わってくると思いますが。
伏瀬アニメのデザインは、キャラクターデザインの江畑(諒真)さんが小説と漫画のテイストをうまく取り込んでマッチングされているなと思います。漫画の絵柄に寄せようとすると作画のカロリーが高くなりますし、ラフデザインが上がった時点で意見のすり合わせは行っていますので、すべて納得のうえで進めてもらっています。
──リムルは部下思いで、戦いにはみずから矢面に立つ気概もある。だからといってワンマン社長ではなく、いい意味で放任主義。“上に立つ者”の理想に近い感じがします。
伏瀬そこについては僕から見て、リーダーはこういう人がいたらいいな、という理想を反映させています。基本的には全部理想だけれども、物語で理想を語らずに苦労ばかりさせてもおもしろくないですよね(笑)。物語の中だけでも成功例があったほうがいいなと思ってやっています。
シズはいちばんブレ幅が大きいキャラクターになった
──前半の重要キャラクターのひとりとしては「運命の人」であるシズが挙げられると思います。
伏瀬シズは漫画の影響がいちばん大きかったキャラクターですね。小説の書籍第1巻ではそんなに重要なキャラクターのつもりでは書いていませんでした。第1巻を書き終えたあとに、なぜシズはレオンにこだわっていたんだろう?と、レオンとシズの関係をもう一度深く掘り下げてみたんです。彼女の人生を振り返って、ある程度キャラクターが固まってきたころに、漫画の企画を頂いて連載が始まりました。なので、シズに関しては小説よりも漫画で丁寧に描かれているぶん、僕が思っていた以上にキャラクターがいい方向に変わっていったと思います。いちばんブレ幅が大きいキャラクターかもしれません。
──第8話でシズが息を引き取り、本人の願いに応えてリムルがスキル捕食者を発動するシーンがありました。アニメならではのリムルの心情が反映されていて、きれいで優しい表現になっていました。
伏瀬そうですね。初めシズは、醜い容姿のほうがいいと思っていたんですよ。火傷で顔の半分は焼けただれていて美人には見えない。それがリムルに取り込まれたことで傷が癒えて元のきれいな姿に戻って美しさが際立つ、というのを描写したかったんです。でも担当編集さんに止められて、火傷は模様程度の表現にとどめて、亡くなってから老婆になる描写に落ち着きました。シズは僕が生み出したキャラクターというより、周りの意見を取り込んでいくうちに必然的にできあがっていったキャラクターですね。
第24話は伏瀬さんによるオリジナル、そして第2期決定!
──第24話はご自身による書き下ろしエピソードですが、制作されるにあたって意識された点やこだわられたところはありますか?
伏瀬第24話をオリジナルエピソードにすることがいつの間にか決まっていて、「書いていただけるんだったら何でもいいです!」と言われて(笑)。シズとディアブロにつながりがあることはずっと前から想定であったので、シズでお話を締めるのもいい流れだと思えたので決めさせて頂きました。ただ書いてみたら「これ長いよね…2話分かかるよね」ということになってしまい、シリーズ構成の筆安一幸さんに無理を言って、1話に収まるように削ってもらいました。ただちょっと気になるのは、シズ以外は第1話〜第23話で登場していたキャラクターが全然登場しないところですね(笑)。
──第24話はプロットとして書かれたのでしょうか?
伏瀬自分はプロットが書けない人なんですよ。自分が頭を悩ませるところだけを箇条書きにするくらいです。プロットにするよりも小説にして書くほうが早いので、それを元に筆安さんに脚本にして頂きました。
──そして、第2期の制作決定が発表されました。
伏瀬企画当時は第2期の制作は決定していなかったので、もうちょっと先のエピソードまで進める予定でした。それを第2期を見据えて、あえて原作でいちばん人気があるエピソードのちょうど手前で第1期を締めたのは勇気ある決断だったと思います。ここに至るまでに紆余曲折がありましたが、無理矢理お話を詰め込んでいたら破綻していたかもしれないですし、結果的にとてもいい流れで第2期につなげることができました。皆さんに応援して頂いたおかげです。本当にありがとうございます。原作者として第2期がとても楽しみですし、皆さんも楽しんで頂けたらうれしいです。
PROFILE
伏瀬(ふせ)
WEBに『転生したらスライムだった件』を2013年より投稿。現在、視聴数5億PVを誇る人気作品となる。2014年よりノベライズが、2015年にコミカライズがスタート。関連書籍のシリーズ累計1200万部を突破。
<Blu-ray&DVD発売情報>
転生したらスライムだった件
Blu-ray第2巻&DVD第3巻
2019年3月26日発売
Blu-ray:¥18,000(税抜)
DVD:¥5,400(税抜)
<展覧会情報>
転生したらスライムだった展
日時:2019年3月27日(水)〜4月9日(火)
午前10時〜午後8時(入場は閉場の30分前まで)※最終日午後5時閉場
会場:松屋銀座8階イベントスクエア
料金:[当日]一般1,000円 高校生700円 中学生500円
[前売]一般800円 高校生600円 中学生400円
[グッズ付き]当日1,500円 前売1,300円 ※小学生以下無料
※詳細は『転生したらスライムだった展』特設サイト をご確認ください
転生したらスライムだった件 公式サイト
©川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会