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かわぐちかいじ原作、初の実写映画化!『空母いぶき』伊藤和典(脚本)インタビュー

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大ヒット作『沈黙の艦隊』や『ジパング』で知られる巨匠・かわぐちかいじの同名漫画『空母いぶき』が、西島秀俊、佐々木蔵之介らオールスターキャストで待望の実写映画化! 2019年5月24日(金)より大ヒット上映中! そこで今回は、『機動警察パトレイバー』シリーズ、『平成ガメラ』シリーズなどに携わり、本作の脚本を担当された伊藤和典さんにインタビュー。本作に参加することになった経緯や、脚本制作のマル秘エピソードなど、ここでしか聞けない話が盛りだくさん。 映画本編を観る前に、ぜひご覧ください。

24時間の出来事にすることは、割と早い段階で決まっていました

──本作に関わられたきっかけからお聞かせ頂けますか。

伊藤もう5年くらい前になりますけど、プロデューサーの小滝(祥平)さんから「かわぐちかいじさんの漫画作品を実写化したい」とオファーされて、以前からかわぐちさんのファンだったこともあって参加したんです。でも、諸事情あって当初の企画はなかなか上手く行かなくて…このままお疲れ様でしたで解散するのもアリだけど、せっかくだからこの面子で何かできないか考えようということになって、ちょうどその頃『空母いぶき』の連載が始まったので、この作品で企画が再浮上することになりました。

──原作で気に入った部分はどこですか?

伊藤原作だと尖閣諸島が中国に占領されるじゃないですか。僕は最初その“問題作”な部分に食い付いたんですよね、これは面白いぞ!って。だから「映画では中国ではなく、架空の国にしよう」と決まったときに、一度心が萎えかけたんです。でも、よくよく考えてみると中国が相手だと日本の中国大使館を通じての外交交渉みたいな部分は必然的に描かないといけない。国交のない架空の国ならそこよりも現場の自衛官たちをメインに描けるし、2時間の枠に収めるという意味ではその方が良い、と気付きました。

──今回の映画版は原作のキャラクターや雰囲気を残しつつ、単なる原作のダイジェストではないオリジナル作品になっている印象があります。

伊藤24時間の出来事にすることは、割と早い段階で決まっていました。そうすれば映画の尺に収まるだろうと。企画の立ち上げは連載開始直後の頃だったのですが、原作は空挺部隊まで投入されて、話がドンドン大きくなっていましたし。《いぶき》周辺の人々を描きつつ、当初の企画用に作っていた内容を加えれば、24時間の出来事としてまとめられるだろうという目測で動き始めた感じですね。

長谷川さんが「男臭い方」担当で、僕はコンビニやP-Panelなどの「緩い方」担当というか(笑)

──プロットや脚本作業に関しては、どのように進められたのですか?

伊藤最初はメインスタッフでブレインストーミングして、それをまとめたものを叩き台にして僕や小滝さんと長谷川(康夫)さん、福井(晴敏)さんとで意見を出し合いました。それで「このプロットなら行けるんじゃない?」という形が見えてきたところで、僕が初稿を書くことになったんですけど…これが遅れに遅れて、夜逃げしたくなるレベルまで追い詰められました(笑)。

──遅れたのは、何が原因だったのですか?

伊藤初稿を書いている間も『空母いぶき』の漫画連載は当然続いているので、ここは使えるという部分を採り込んだりしていたんです。でもそうすると、原作の切り貼りみたいになって収まりが悪いというか、自分で読んでいて、これで行くぞ!という形になかなかならなくて…。

──脚本は長谷川さんとの連名になっていますが、役割分担は?

伊藤特に明確な分担はないんですけど、どちらかと言えば長谷川さんが「男臭い方」担当で、僕はコンビニやP-Panel(ネットニュース社)などの「緩い方」担当というか(笑)。僕が初稿を上げた後は、原作がその間に進んだ分を長谷川さんがアップデートしてくださったり、それを僕の方でまた直したり、ずっと卓球みたいな感じでやり取りしていました。

アニメは色んなことが淡々と進んでいくんですけど、実写はお祭り感がありますね

──コンビニやP-Panelだけでなく、民間人がいぶきに乗り込むのも原作にはない要素ですが、これはどういう意図だったのでしょう。

伊藤民間人が乗っている状況で突発的に事件が起きるというのは、以前の企画にもあった要素なんですよ。映画という多くの方に見てもらうメディアですから華も欲しいということで、マスコミ側の民間人が2人乗り込むことにして、P-Panelの偉い人も女性に設定しています。その後、もう少し女性を増やしたいという要望があってコンビニ店員のシーンをプラスすることになり、それに応じて中井(貴一)さん演じる店長の役が生まれた感じですね。コンビニのシーンは、最初は人々が買い物に押し寄せる場面しかなかったんですよ。

──こういう実写作品のシナリオの場合、制作の規模をある程度想定しながら書かれるのですか?

伊藤いえ、あまり気にしません。実際の撮影に関してはまったくの素人で、書いたシーンにどのくらいの費用と時間が掛かるかは正直分からないので。後で「これは無理です」と言われたら、そこで改めて考え直す感じです。

──アニメの現場と比べて、一番違いを感じる部分は?

伊藤どうだろう…アニメは色んなことが淡々と進んでいくんですけど、実写はお祭り感がありますね。アニメだと原画が終わって次は動画で、背景上がりましたけど彩色はどうなってますか?みたいにすべての作業が淡々と進んで、アフレコやダビングの段階でようやく少し盛り上がる感じだけど、実写だとどの段階でも常に何かしら盛り上がりがある気がします。

──撮影現場には行かれたのですか?

伊藤アニメだとアフレコには立ち会うようにしているのですが、実写の場合は基本的にノータッチです。撮影現場にも1回くらいは行くんですけど、むしろ迷惑かも…と思う部分もあったりするので。だから『空母いぶき』の現場も1回だけ行きました。

西島さんは意外とかわぐちかいじ顔だなと気付きました(笑)

──今回は、《いぶき》の艦長と副長の関係性がドラマの軸になっていますが、主演のお2人の演技はいかがでしたか?

伊藤お2人だけでなく、俳優陣は皆さん素晴らしかったですね。西島(秀俊)さんも佐々木(蔵之介)さんも本当に頑張ってくださいましたし、西島さんは意外とかわぐちかいじ顔だなと気付きました(笑)。作品自体の出来も、凄く満足しています。

──自分の書いたものがこうなるんだ!?というような、驚かれた部分はありましたか?

伊藤当初はシミュレーション映画やポリティカル・フィクションのようなイメージで書いていたんですけど、舞台設定を12月23日から24日にかけての出来事にしたことで、計らずもクリスマス映画になっていて。だからオールラッシュを観たとき、思っていた以上にクリスマス感が強くて、ちょっとビックリしました(笑)。「クリスマスもの」って割と定番ですし、僕自身『魔法の天使クリィミーマミ』『機動警察パトレイバー』『MM9』でも書いていますが、僕の誕生日がイブだからというのもあって、「クリスマスもの」は割と力が入るんです(笑)。だから今回は最高のクリスマス映画ができたなと思ったし、これでもうクリスマスものは書かなくていいかな、とも思いました。

──「クリスマス」というキーワードのおかげで、コンビニと《いぶき》艦内を繋げるネタも生まれました。

伊藤あれは脚本協力でクレジットされている、森下佳子さんのおかげですね。あそこはどうしても繋げたくてみんなで色々と考えたんですけど、なかなかいいアイディアが出なくて。

「平和って何だろう?」と改めて考えて頂けるような作品になるといいなと思いますね

──エンターテイメントでありながら、「戦争」や「平和」について考えさせられる作品にもなっていると思います。

伊藤それは観た方々が、それぞれ心の中で考えて頂ければ良いと思います。戦争はいけないことは当然誰もが分かっていることで、だからそれを声高に叫ぶのではなく、「平和って何だろう?」と改めて考えて頂けるような作品になるといいなと思います。書いている最中は、正直言って締切のことで頭がいっぱいでしたけど(笑)。ただ僕の場合、そういう作品に対するスタンスは『ガメラ』シリーズの頃からほとんど変わってないと思います。

──福井さんも仰っていましたが、相手の命まで考えながら戦争にならないように配慮するという自衛隊のスタンスは、海外では通じにくいかも知れませんね。

伊藤平和憲法を持っている日本という国ありきのお話ですから、日本人のための映画だと割り切って作っていますし、これはこれで良いと思います。海外マーケットを意識して書くことはありません。かえって気持ち悪いものになってしまいそうですし。

──では最後に、映画をご覧になる方へのメッセージをお願いします。

伊藤まずは、楽しんで観て頂きたいです。そのうえで、毎年クリスマスが近付いてきたら、『空母いぶき』を観ようかなと思って頂けたら、本当に幸せですね。

PROFILE

伊藤和典(いとうかずのり)
1954年12月24日生まれ、山形県出身。早稲田大学在学中からドラマの助監督やシナリオライターとして活動し始め、中退後アニメ業界入り。『うる星やつら』で本格的に脚本家としての活動を開始し、以後は特撮など実写作品も幅広く手掛ける。また、『機動警察パトレイバー』シリーズでは、原作チーム・ヘッドギアにも名を連ねる。代表作に『ガメラ 大怪獣空中決戦』『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『七瀬ふたたび』などがある。

 


公開情報
空母いぶき
2019年5月24日(金)より大ヒット上映中!

 

配信情報
ボイスドラマ『第5護衛隊群かく戦えり-女子部-(映画「空母いぶき」より)』全三章
映画『空母いぶき』公式サイト特設ページにて配信中!

空母いぶき 映画公式サイト

映画『空母いぶき』特集サイト“V”的極秘ファイル

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