『攻殻機動隊 REALIZE PROJECT』プロジェクト発表会レポート
コミック、映画で描かれたテクノロジーが、リアル化=リアライズする! 「攻殻機動隊」に影響を受けた企業、大学の研究開発社、製作委員会らが、SF世界をリアルに実現する可能性を追求するプロジェクトが本格始動! そこで今回は、大々的に行われたプロジェクト発表会の模様をレポートしよう。
『攻殻機動隊』で描かれた世界は遠くない未来に実現する?
攻殻機動隊25周年記念作品となる映画『攻殻機動隊 新劇場版』の6月20日公開を記念した「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT(リアライズ・プロジェクト)」のプロジェクト発表会が、6月12日、六本木ヒルズ クロスポイントにて開催された。本プロジェクトは、日本を代表する企業、大学の研究者、製作委員会たちが一体となって、“「攻殻機動隊」らしい”最先端科学技術の実現(REALIZE)に向けた情報発信と研究開発ならびに起業活動支援を活動目的としたものである。
発表会は二部構成で行われ、【第一部】のプロジェクト説明会にはプロジェクト実行委員長で、プロダクション・アイジー代表取締役社長の石川光久さんが登壇。石川さんは「『攻殻機動隊』が25周年を迎えられたのは、士郎正宗さんの原作コミックが持つ芯の強さにある」とコメント。さらに、「2029年に近づけば近づくほど、士郎さんの未来を見通す目に驚かされる」と絶賛。その上で「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」には、『攻殻機動隊』に登場したテクノロジーの実現を目指すだけでなく、作品では描かれていないが、その世界をより広げてくれるものを産み出すという、二つの方向性があることを明かした。
イベントでは様々な技術が発表されたが、中でも大きなインパクトを残したのが、日本初のフォトグラメトリー専用スタジオ・AVATTA(アバッタ)を使用し、3DCGの草薙素子を作成するプロジェクトだ。写真家の桐島ローランドさんは「AVATTAは80台以上のカメラを用いてあらゆる角度から同時に撮影することにより、より短時間でCGモデルを作成することができる」と語った。また、実際には撮影していないポージングをさせることはもちろん、髪型や衣装を自由に替えることも可能なため、「一度データをスキャンしてしまえば、役者がいらなくなる時代が来るかも知れない」と驚きの発言も飛び出した。イベントではこの他にも、『攻殻』の世界に近い技術などを独自に取材しキュレーションを実施し、webサイトやfacebookなどのSNSを通じたメディア・ソリューションを展開する「メディア事業」や、注目を集めた個人や団体などを表彰する「the AWARD 事業」、攻殻機動隊の世界をテーマにしたコンテストやハッカソンを開催する「インキュベーション事業」など、本プロジェクトの根幹を支える事業の展望が説明された。
多彩なテーマで盛り上がったトークセッション!
休憩を挟んで引き続き行われた【第二部】のトークセッションでは、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズの神山健治監督と、『攻殻機動隊 新劇場版』の脚本を手掛けた冲方丁さんが登壇。「攻殻機動隊の世界はどこまで実現できているか?」をテーマに、慶應義塾大学の稲見昌彦教授、南澤孝太准教授と共にREALIZE公開ブレストを実施した。「義体・ロボット」、「電脳・人工知能」、「都市」といった各セクションごとに進行し、作品の制作秘話はもちろん、未来のエネルギー問題などディープな話も飛び出した。
トークセッションの最後には登壇者が一人ずつコメント。稲見さんは「私は光学迷彩という、まさに『攻殻機動隊』にヒントをもらって研究しています。そういう意味で、今の私がいるのは『攻殻機動隊』という作品があったおかげです。今後は、プロジェクトの中で“ロジコマ”や“タチコマ”を形にできたらと思っています」。南澤さんは「僕は『攻殻機動隊』をリアルタイムで観ていた世代ではないのですが、作品の緻密な世界観に魅せられました。自分たちのモノ作りにおいて、それを超えるものを作りたいと考えるきっかけになっていて、研究に役立たせてもらっています」。神山監督は「物語を作る上で、僕らは研究者の書籍を読んだり、取材をさせて頂くなどして、なるべく絵空事ではない、リアリティーのある作品を作ろうとしてきました。今では研究者の方に『攻殻』から逆に研究のソースを得たと仰って頂けることもありますので、とても勇気をもらっています。これからも相互に“並列化”をしながら、プロジェクトを通じて情報共有できることを期待しています」。冲方さんは「現実のテクノロジーがここまで進んだことに、参ったなという気持ちでいます。SFはサイエンスフィクションというよりも、専門家からすれば“どんな条件が揃えば何が実現できるのか分かっている”状態です。SFや『攻殻』の世界はどんどん広がってきていますし、もしかすると『攻殻機動隊』の世界観でスポ根ものが描かれる日が来るのかもしれませんし、今まで考えつかなかったアイディアがフィクションから生まれるかもしれません。皆さんの人生を懸けた研究成果を“並列化”させて頂ければと思います」。約2時間に亘って行われたイベントは終了を迎えたが、まだまだ語り足りないといった様子の登壇者たち。彼らの話を聞いていると、『攻殻機動隊』の世界が提示したテクノロジーの数々は、そう遠くない未来に実現するのかもしれない、そう思わせるに十分な説得力があった。「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」の今後の展開に期待しよう!