長岡 今回、いろいろイベントをやったけど、放送から20年も経った作品にこんなに沢山お客さんが来てくれるんだという驚きと感謝ばかりですね。ほんとにありがたいですね。
森岡 20年前、たしかWOWOWの放送に先行した上映会をやりましたよね。
長岡 九段会館でしたっけ?
森岡 九段会館でもやりましたし、大阪でもやったかな。
長岡 あぁ、そういえば新幹線に乗ったような気もする。あのときのお客さんがそのままついて来てくれてるとしたらほんとに凄い。原作がいまも続いているのも凄いけど(笑)。
森岡 『星界の紋章』を書いたときには、続きを書かせてもらえるなんて思ってもいなかった。
米村 発売後、すぐに増刷がかかったんですよね?
森岡 『紋章』のⅠが出て、一週間くらいだったかな、午前中に「増刷をするかもしれない」という電話を受けててその日の午後に「増刷が決まりました」と。Ⅱは発売と同時に重版が決定、Ⅲは発売一週間前に重版が決まるという思いもよらない展開だった。
長岡 それだけ勢いよく売れたら、アニメ化しようって人が出てきますよね(笑)。
森岡 バンダイビジュアル(現:バンダイナムコアーツ)さん以外にも制作スタジオからの企画書というのも見せてもらって、ラフィールのキャラクターデザインがついていたのもあった。
長岡 サンライズで制作するってのは?
森岡 最初はバンダイビジュアルからの企画書で、バンダイビジュアルにお願いすると決まってから制作会社はサンライズで、という流れだったかな。
米村 バンダイビジュアルに行くくだりは今回のBlu-ray BOXのブックレットに赤井さんが描いてますよね。
長岡 SF大会の上映会はどうだったんですか?
森岡 思ったより沢山お客さんが入ってました。
米村 コミックスの宣伝もさせてもらって。そこでも少し話したんですが、監督は映画指向なのかなと。『紋章』1話の絵コンテを参考に見せてもらったんですけど、コンテを見てると、背景をたっぷり使って、長回しのカットを並べてて、これはTVのオープニングじゃないよなと(笑)
長岡 そうですね。正直、アニメのシリーズというより映画を作るようなつもりでいました。そもそもオープニングにキャラクターがぜんぜん出てこないTVアニメなんてないでしょ(笑)あれはわざとで、別に予算がないとかそんな理由じゃないんです。『紋章』は特に、世界観というか、アニメっぽ過ぎる見せ方をしたくないなというのはありましたね。シリーズを通して、やりたいこととできることのギャップに悩み苦しみながら作ってました。
米村 マンガもそうですが、そもそもデザインする物量が凄いですよ。
森岡 ああ。小説では文字で書くだけですけど、お二方には大変な苦労をおかけして。
米村 ぼくはコミカライズをやるにあたって、アニメのいろんなデザインを参考にさせてもらったので助かってますが、それでもこれはどうしよう?って悩むことが多いです。
長岡 ああいう世界観なので、画面にあるものすべてデザインが必要なので(笑)。資料写真を渡して、こんなのでお願いってわけにいかない。ワンシーンしかでてこないキャラとかメカもおざなりにできない。設定がないと描けないので。ざっくり描いて、あとで作監でディティールアップしてとかいろいろ試したんですけど。やっぱり最初っから設定を作らないと画面がもたない。
森岡 そこらへん表裏一体なんですよね。小説家としては、マンガもアニメもそうだけど絵があると「こういう世界なんだ!」というのがパァッとひと目でわかる。見てもらえるのが強いと思うんです。それを文章で書くってけっこう難しくてですね。くどくど書いてもなかなかわかってもらえないし、そんなことを書いていると話が進まない。その点マンガやアニメはうらやましいなと思ってたんですけど、そうですよね、絵は全部設定しないとひと目でわかるところまで描けないんですよね(笑)。小説なら、書かなくてもいいというか別にそのことを思いつきもしないような部分を設定してからじゃないと描けないんですね。
米村 ただ、世界観の広がりを示すのが細かな設定の説明やデザインだけじゃなくて、この世界はこうなんだ!って印象づける表現が小説にはあって、その場面を的確に描くって言うのを優先する意識はあります。
長岡 今だと撮影技術が発達したので、そんなにハードルも高くはないんですけど、20年前は全部手描きだったので、人でも戦艦でもモブシーンがものすごい壁として立ちはだかるんです。発注すると「描くのは描くけど、それどんな服を着てるの?」と質問がくる。すると宇宙港にいるありとあらゆる人たちの服装はどんなのだ?という設定を作っていかないといけない。服装以前にどんな人種がいるの?とか。そもそもワンフレームに、たとえば30人の通行人をいれたいけど、背景扱いのそのカットにどれだけ労力をかけるの?という判断が必要になるとか、まぁそういう世界なので。
米村 そうですよね。ぼくも今回、7巻は反帝国クラスビュール戦線、えーと、ミン、マルカ、ダスワニ、ビル、葬儀屋…5人?かな。この5人が画面のどこかに出てて、それは会話の続く場面でラフィールやジントのアップばかりだとまずいので描くんです。
長岡 わかります。フレームの外を意識しないと《狭い絵》になっちゃうんですよね。見えないところをどれだけ意識してその《絵》を決めたかで、お客さんが受け取る印象に大きく差がでるんだと思いますね。
米村 まずキャラクターの立ち位置を決めて。ラフィールが話しているときに、このキャラはなにをしているのか、こっちのキャラがフレームインしてくるような動きをしているとか考えてレイアウトしないともたないですよね。
長岡 それをアニメではワンシーンを複数の絵描きがよってたかって描くので、まあ間違う間違う(笑)。
米村 リテイクは多かったんですか?
長岡 監督なので、全体をまとめるのが仕事で、各話のキャラの出入りまで細かくは見てないんですが各話の演出さんがそのへん苦労してた筈(笑)。
米村 画面の中の動きで上手下手を決めたりすると思うんですが、キャラクターの力関係で上手下手を入れ替えたりしませんか?
長岡 やりますね。辻褄合わせより心象を優先しがちです。どれだけ各話の演出さんに伝わって、フィルムに活かされているのかは、それぞれの回でまちまちですけど。基本的にはそういうスタンスですね。あと星界は長回しのカットが多いので、レイアウトでどれだけ心象が表現できてるかは気にしてました。セリフが長いので必然的にワンカットが長くなる。原作で自分が良いと思ったセリフは極力カットしないで長いままアニメに使ったんで。まぁ1話あたりの総カット数はその分減ってるんですけど、尺が長い分ワンカットの密度をあげないともたないので、現場の大変さは変わらないかな。それに会話シーンで減ったカット数は、戦闘シーンであっという間に使っちゃうんで、シリーズ通したカット数は通常のアニメと変わらないという結果に(笑)。
米村 森岡さんは平面宇宙のビジュアルイメージってあったんですか?
森岡 ビジュアルイメージといわれると凄く困りますね。我々が知覚できるのは四次元時空までなので、平面宇宙そのものはこの宇宙の外側みたいなものって設定しましたけど、そこがどんなビジュアルなのかと言われると(笑)。平面宇宙という異質な世界の中に我々の四次元時空の粒が浮かんでいるということにした。
長岡 それを我々は画面に映しださないといけない(笑)。
森岡 アニメ化の話を聞いたときに「平面宇宙はどうするんだろう?」って思ったんですよ(笑)。時空泡というものを何故出したのかと言うと、宇宙戦艦同士の格闘戦みたいなのをやりたかったんです。通常の宇宙だと何十万キロも離れたところからピッピッピと攻撃し合うことになるけれど、そうじゃない宇宙戦を書きたかった。そのための平面宇宙なんですけど。
米村 帆船時代の、戦列艦同士の横づけで砲撃し合うようなイメージですか?もうちょっと距離は離れているのかな。
森岡 そうですね。時空泡の中が小さな宇宙、広さに限界がある宇宙の中で戦艦が戦う形にしたかったんです。
米村 時空泡の直系を何キロにしようか、迷ったんですよ。ゴースロスは原作より大き目に設定したんですけど、その艦がある程度動けて戦闘する広さの時空泡、回避行動ができて有利な位置の取り合いをする広さってこれくらいかなと考えて、これは森岡さんの方へ質問は出さず勝手にサイズを決めて描いてますが。
森岡 時空泡の大きさは質量によって決まるんです。時空泡の質量は外からの観察でわかるんですけど、その中がどんな内訳、突撃艦がたくさんいるのか、輸送艦とその護衛なのか、はたまた戦列艦なのかはわからない。
長岡 その駆け引きはドラマとしてやれるんですが、じゃあ時空泡の中はどんな風景なのかというのがアニメ的には問題で(笑)。凄い単純な言い方をすると、時空粒子は、マリンスノーが深海に降り注いでいるようなイメージで。クリアじゃなくて少しザラっとした感じにしてますが。時空泡自体はどうにも表現できないわけですよ。わかりやすく宇宙に壁があるわけじゃないんで。だからモニターで戦闘状況を表示しつつ、実際の絵をだすときは時空粒子が漂っている感じで、近接戦闘をすると。
森岡 敵を倒して、時空分離するんですが、実際はどうやって分離するのかちょっとごまかしてるんですね。相手が完全にやられちゃうと時空泡発生機関もなくなるので、すべてが時空粒子になってぱぁっと散っていく。分離?ってことになるのでそこはちょっとね。
米村 自分の時空泡の中に敵の時空粒子が質量として残るのかどうかってことですよね。敵の質量を抱え込んでしまう。
森岡 そうですね。時空泡発生機関がなくなると時空泡を保てなくて、時空粒子になってしまう。
米村 敵を抱え込んだままだと残骸の時空粒子分の質量が増大して動きにくくなってしまうんで、相手が身動きとれなくなった時点で時空分離、ですよね。
森岡 そうですね。抱え込んだ時空粒子を吐き出す手段はないか。
長岡 今はCGがかなり使えるようになったんで、がんばればなにか表現できるかもしれませんけど、そこまでやってお客さんになにかアピールできるかどうか、という判断が必要になってきますよね(笑)。
米村 質量を抱え込んでしまって、戦術がかわってくるとか面白そうですけどね(笑)。
長岡 まあなんにせよ、実際映像にしたわけですが、あれを手で描いてたかと思うとゾッとしますね。
米村 いや、凄いですよね。
長岡 TVシリーズでやれるギリギリは実現できてるんじゃないかと。実際の戦闘シーンは『紋章』で言うと、2話分くらいですかね。あれが全話で戦闘を繰り広げてとかいう構成だと、作れなかったですね。
米村 アニメも『戦旗』になると、艦隊戦もだいぶ手慣れた感じですよね。
長岡 そうですね。デジタルで戦艦の素材を作って、アナログで合成をしてる時代なので、いまより余計な手間がかかってますけど、手描きよりはいろいろできるようにはなってましたね。『戦旗Ⅲ』になると完全にCGなんですが。『戦旗Ⅱ』はハイビジョンだったんで、メカの手描きはツライ(笑)。ちゃちく見えちゃうんで。モニター関係もまだ手描きだったものですから。イベントでも話したんですけど、星界はタイトル毎に制作システムが変わっていく時期にもろぶつかって。ノウハウが蓄えられてないから、実験作みたいな面もあるんです。
米村 メカデザインの作業の流れってどういう感じだったんですか?
長岡 メインは森木(靖弘)さんですかね。後半は今石(進)さん。「アーヴ帝国と人類統合体で、博士が違います!」って発注した気がします。人類統合体のほうがゴツゴツしたイメージで、アーヴ側は優雅なデザインにしてくださいって。ただ電磁投射砲が突き出てるんでいろいろ大変で。もう無理だと思って『戦旗』から内蔵式にしたんです(笑)。だからゴースロスだけちょっと違和感があるんですね。
米村 『紋章』に出てくる艦は全部外付けですよね、電磁投射砲。
長岡 そうですね。カウ級から後は内蔵でその前は外付けかな。「もうこれでは動かせない!」って途中から。最初からわかれよ!ってことですが(笑)。トライアル&エラー。
米村 原作の描写と違うのは分かっていたんですけど、マンガでは最初から外付けは無理!って事で内蔵式でデザインさせてもらいました。
森岡 なにも考えずに書いて、ご迷惑をおかけしました(笑)。
米村 すみません。電磁投射砲を外付けにしちゃうと、パースがつきすぎるんです。巨大感をある程度だそうとすると大ゴマしか使えなくなって、マンガのコマ割に制限が出てくる。レールが一本入ってしまうと、嘘パースも使えなくなる。
森岡 アニメには口出ししないって方針だったんですが、ゴースロスの最初のデザインを見せてもらったら、電磁投射砲がだいぶ小さくて。そもそも電磁投射砲って砲自体が巨大で、その巨大な砲を運用するために艦もでかくなっているって設定なんで「すみませんけど、電磁投射砲はもう少しでかくしてください」って頼んだ覚えがあります。
米村 アニメも『戦旗』で内蔵式になりましたね。
森岡 内蔵か外付けかっていうのは小説では決めてないので大丈夫です(笑)。
長岡 ゴースロスの最初のデザインは赤井さんとこの若い衆から出してもらった奴で、メカ作監もやってくれた筱(雅律)君が最終的にリファインしたんです。
森岡 キャラクターもそんな感じじゃなかったですか?
長岡 そうですね。基本的に赤井さんの原案があって、渡部(圭祐)くんがアニメ用にデザインしたんですが。
森岡 赤井さんもモブからなにから全部は無理なんで、自分のところのスタッフに脇役系は振ってて。例によってデザインには一切口を出さないと決めてたんですが、クファデスだけは最初のデザイン案が非常になさけない感じだったので「すみません、アーヴって全員美形という設定がありますんで、ちょっとこれだけはもう少しなんとかしていただけないかと」って口を出した覚えがあります(笑)。
長岡 クファデスはなさけない感じは役者が担ってくれたので(笑)。深見梨加さんのスポールとの対比で更に際立って。梨加さんもすごい良かったですね。まんまスポールだった(笑)。キャスティングは凄いハマった人がいっぱい居て。結構自慢なんです(笑)。『紋章』のときから大御所揃いでしたし。うれしかったなぁ(笑)。洋画の吹き替えみたいだって(笑)。『戦旗』からの大塚明夫さんもうれしかった。サムソンはオーディションなしで「大塚さんに頼めないかなぁ」って言ったら実現した(笑)。
米村 アニメはうらやましいなぁ(笑)。たとえば小説は1章まるまる会話が続いても、感情の起伏が緩やかでも違和感がないじゃないですか。マンガはもっとスパンが短いので、このコマはこの感情、ここにきてこう変わる。ってある程度起伏を出すために必要以上に表情をつけたりしてるんです。アニメは絵はクールな表情のままでも声優さんの演技で感情の起伏が表現できるじゃないですか。うらやましいって(笑)。
森岡 そう。アニメは音があるのがすごいうらやましい。声優さんの演技、BGM、ほんとにうらやましい。
長岡 キャラクターを映さないで違うものを映したりしましたからね(笑)。野っ原にいるカマキリとか(笑)。空の雲とか。そこに役者が感情表現をつけてくれるんで。
米村 マンガだとそうはいきませんからね(笑)。
森岡 もちろん小説でもカマキリの描写をしたって、感情は伝わらない(笑)。
長岡 『星界』はね、役者の力がめちゃくちゃ大きいんですよね。それももともとのセリフが面白いからですけど。つまんなかったらそもそもカットしますけど、ぜんぜん切れないくらい面白いんですよね、森岡さんの書くセリフって。
森岡 ありがとうございます。
米村 マンガでも、どこを切ってどことつないでマンガ用の長さに合わせようかと検討したんですけど、やっぱり切れないんですよ。セリフの組み立てを分解しちゃうとキャラが崩れちゃうんで。読者もセリフの組み立てが変わっちゃうとダイジェストに感じるんじゃないかと思うんですよね。
長岡 そうなんですよ!ほんとにね、セリフがいじれないんですよ。
森岡 いやぁ、ありがとうございます。
米村 このセリフとこのセリフの情報を合わせてここで出せるなって考え付くんですけど、やっちゃうとダメなんですよ。アニメは大胆にカットしてるところもありますよね。
長岡 諦めて、やらないならシーン丸々カット。中途半端にやらない。切るならバッサリ。
米村 それしかないですよね。自分でマンガ用にセリフを構成しなおし始めて、これは大変だなと。アニメも苦戦したんだろうなって(笑)。
長岡 でも原作を読んで、自分がこれやりたい!って思った一番大きなところはセリフの面白さ、キャラクターの面白さだったので…
森岡 ああ、うれしい(笑)。
長岡 なにをおいても、自分が面白いと思ったところを人にも見てもらいたいって考えましたね。多少「わかりづらい」とか言われても必要な情報を端折ってでも面白いセリフは入れたい!という優先順位でやりましたね。地上波の深夜枠だったらもう少し考えたでしょうけど、冷やかしでくるお客さんがいない環境だと思ったので、やれたんですけど(笑)。いきなりアーヴ語のナレーションで始めるとか、地上波だったらやってなかった。それにしても壤晴彦さんのアーヴ語のナレーションは、すごい説得力だった。架空の言語で日本語のテロップがついて重々しいBGMで、もう雰囲気たっぷりだったでしょ(笑)?没入感というかスタートダッシュはあれでバッチリだと思いました(笑)。
米村 アニメも多くの人に受け入れられたからマンガでも普通にアーヴ語のルビを振っていけるんですよね。
長岡 監督が言っちゃうのもなんですが、これは役者の芝居を楽しむ作品ですよ(笑)。豪華としか言いようのないキャストですし。A-on STORE特典のドラマCDを録ったじゃないですかこないだ。あれに土井美加さんが来てくれるとかちょっと考えられない感じですよね。皇帝陛下の高貴な感じが凄くいい(笑)。
森岡 A-on STOREの購入特典って、何人くらいが聴いてくれるんでしょうね(笑)。わたし、他にも書き下ろしの特典やりましたし。まさか特典をコンプリートする人はいないでしょうけど(笑)。
長岡 Blu-ray BOXが沢山売れたら、ほんとに続編の話がリアリティをもってくるんでしょうか(笑)?
森岡 いやぁ、原作者としては沢山の人に見てもらいたい。そしてアニメが続くならこんなにうれしいことはないとしか言いようがありませんが(笑)。
長岡 せっかくコミカライズが続いてて、米村さんのかっこいメカがあるんだから米村メカで新作をやらせてくれないかな(笑)。
米村 うれしいですね(笑)。
長岡 リブートで『紋章』から作り直させてくれないかな。特に『紋章』は原作3冊分を1クールにしちゃってるんで、もっと絵にしたいところが沢山ある。『戦旗Ⅲ』でも演習のシーンを全部端折っちゃったんで、あれも作り直せるならやりたいし。ダイジェストにはしたくなかったんで苦肉の策としてあの構成だし。それに今の技術なら挑戦したい絵がいっぱいある。
米村 見たいですね(笑)。ぼくはCGのことあまり詳しくないんですけど、たとえばモノが動くときにゆがみが出るじゃないですか。あれ、戦艦が回頭するときに船体をゆがませる演出とか計算とかやられているんでしょうか?手書きの重さに近づけるには必要な気がするんですが。
長岡 ありかもしれないですね。
米村 目には見えないでしょうけど、300メートルの艦が動き始めたら力は順番に伝わっていって、前後でずれが生じるだろうから、そういうのが感じられると艦の重さも伝わってくるかなと。
長岡 ロボなんかだとウソの絵って入れるんですけど、それをCGでやったら効果があるかも。
米村 カメラレンズのシミュレートではないウソの絵は欲しくなりますね。
長岡 そうですね。それはこれから考えていかないといけない部分ですね。いまのCGはウソの絵がないんで、なんとなく違うなって思っちゃうんですよね。宇宙戦艦がたくさん出てくるCGアニメが増えてノウハウが蓄積するか、だれかCGの天才が現れてすごい表現をしてくるとみんながマネして、重厚感が増してくるんでしょうけど。
米村 今回のBlu-ray BOXの宣伝企画の一環で、アニメ版のメカやアニメ準拠のキャラクターを描いていて、こういうのも面白いなと思ってるんですけど。
長岡 米村版襲撃艦で新作を一本とか、バンダイビジュアルさんやらせてくれないっすかね?
米村 開発バナシとかいいと思うんですけど、やっぱりキャラクター欲しいですよね。ジントやラフィールが出てこないってわけにはいかないんじゃないですか?
森岡 わたしはなんでもウエルカムですが。
米村 遭難した艦が残存パーツをやりくりして、どうにか脱出していくとかどうですか?
森岡 砂漠に落ちた双発機がって奴ですね。さすがに砂漠は無理でしょうけど、どこかの惑星で、どうやって宇宙に戻るかとかやれそうですね。
長岡 星界は世界観もキャラクターもしっかりしてるし、なにしろ森岡さんのセリフがあれば成立するんで、なんでもやれると思いますよ。
米村 キャラを捨ててオリジナルをやるのはさすがにもったいないので、原作の時系列に矛盾しない時間軸に新たな出来事を入れ込む感じでしょうか。ここまできたキャラクターは得難い資産ですから。
森岡 基本的にアーヴって交易種族なんで、一本しか書いてないけどソバーシュさんの交易日記みたいな話はまだまだ書けるって考えたことある。
米村 交易は惑星国家間のものですか?それともアーヴ同士?
森岡 交易っていうのは貴族の特権なわけです。地上世界に領民政府があって、そこの産物を他の世界とやりとりする。領民政府にはその権利がないので領主に任せる。
米村 アーヴ間の交易を描くか、アーヴと地上世界との交易を書くかでずいぶん物語が変わるような気がするんですけど。
森岡 そうですね。ソバーシュは少し変わった人なので、アーヴがあんまりやらない地上世界との直接取引をしたりする。以前書いたソバーシュネタの『断章』は音楽家を探すってやつなんだけど、音楽家の収入というのは個人レベルとしては大したものなんだけど、さすがに惑星規模では大したことがない。そんな連作で続編とか。
長岡 森岡さん、新作にガッツリ噛んでもらって、原案だけじゃなくてダイアローグライターとかどうですか?セリフは全部森岡さんに書いてもらう感じで。
森岡 できますかね?
長岡 森岡さんのその才能は、アニメにも活かしてもらいたい。どう逆立ちしても、自分からは絶対出てこないセリフが星界にはいっぱいあるので、新作をやるなら是非森岡さんにダイアローグ担当で参加してもらいたい。ジントは出てこないけど、ラフィールの翔士修技館時代の3年間でなにかやれませんかね。
森岡 うーん、そうですね。今回のボックス特典の『断章』はジントの修技館時代にラフィールがやってくるというエピソードだったから、同じ方法でなにか…
米村 ラフィールって、『紋章』で連絡艇を失って、『戦旗』で最初のバースロイルを失ってて、フネをつぶしてるじゃないですか。けっこう因果だなと。その心象をつなげて展開していっても面白いかも。
森岡 翔士修技館では、平面宇宙理論というのを学ばないといけないので高等数学からはじまってく。基本的に通常空間で宇宙船を飛ばすというのはアーヴにとって生まれたときからできるようなことなので、平面宇宙を航海するための勉強をするのが翔士修技館。時空泡発生機関のしくみだとか。
長岡 米村さんに新メカをデザインしてもらって、ラフィールの修技館時代のエピソードをって方向かな。
米村 トラブルがあった方がキャラクターを動かしやすいですよね。使えない艦をもらってとか。
長岡 企画のブレストになってきた。これ求められてる座談会と違いますよね?(笑)
森岡 たくさんの人がアニメを見てくれて、あたらしいアニメが作られるといいなぁという話ですから、いいんじゃないですか(笑)
米村 マンガもBlu-ray BOXと同時期に7巻が発売になるので、そちらもよろしくお願いします(笑)。
▲原作者・森岡浩之
1962年生まれ。第28回星雲賞日本長編部門受賞『星界の紋章』、第30回星雲賞日本短編部門受賞『夜明けのテロリスト』、第36回日本SF大賞受賞『突変』。『星界の戦旗』はシリーズ継続中。最新刊は『風とタンポポ〜惑星環物語〜』。
▲監督・長岡康史
1959年生まれ。キャラクターデザイン:『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』、『ルパン三世 ロシアより愛をこめて』/監督作品『新キューティハニー』、『星界』シリーズ、『神魂合体ゴーダンナー』他
▲コミカライズ作者・米村孝一郎
1966年生まれ。代表作は『MISSING GATE』、『STREGA!』など。漫画家、イラストレーターのほか、アニメ・ゲームなどのメカニックデザインも手がけている。
森岡作品では『メタルダム機械たちの荒野』も担当。
星界 Complete Blu-ray BOX 2019年12月25日発売
価格:40,000円(税別)
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
品番:BCXA-1492 スペック:カラー/本編1318分+映像特典58分/リニアPCM(ステレオ)・・一部 DTS-HD Master Audio(5.1ch)/AVC/BD50G×12枚/4:3<1080i High Definition>・一部16:9<1080i High Definition>
【映像特典】
■星界 COMPLETE BLU-RAY BOX 発売記念特番
■星界の紋章 特番
■星界の戦旗 ミニガイド
■星界の戦旗 番宣スポット
■星界のCM・PV集
【封入特典】
■星界のガイドブック(68P)
■星界のビジュアルブック(52P)
■森岡浩之新規書き下ろし小説「星界の断章 継承」(36P)
【音声特典】
■星界のラジオドラマ全話
■「星界の紋章」(第2話)、「星界の戦旗」 (第1話) 、「星界の戦旗II」 (第1話) 、星界の戦旗III」 (第1話) 新録オーディオコメンタリー <出演者:川澄綾子(ラフィール役)、長岡康史(監督)、森岡浩之(原作)>
■「星界の紋章 特別編」、「星界の戦旗 特別篇」、「星界の戦旗II 特別篇」、「星界の戦旗III」 オーディオコメンタリー(2005年版)
【仕 様】
■赤井孝美 描き下ろし収納BOX
■渡部圭祐 描き下ろしインナージャケット
※特典・仕様等は予告なく変更する場合がございます。
©森岡浩之・早川書房 ©サンライズ
森岡浩之 ディザスターストーリーが初の書籍化!
【タイトル】風とタンポポ~惑星環物語~(アークライトノベルス刊)
【発売日】2019年12月13日 ※電子書籍版も同日配信予定
【価 格】1,500円(税別)
【発売元】株式会社徳間書店
【発行元】株式会社アンビット
©Hiroyuki Morioka 2019
米村孝一郎が描く コミック最新巻!
【タイトル】星界の紋章 第7巻
【発売日】2019年12月20日発売
【価格】650円(税別)
【発売元】:株式会社ほるぷ出版
【発行元】:フレックスコミックス株式会社
©森岡浩之・早川書房 ©サンライズ ©米村孝一郎/COMICメテオ
▼星界シリーズ 公式サイト
http://www.sunrise-inc.co.jp/seikai/