インタビューココだけ | ガールズ&パンツァー 最終章
創業173年を誇る町の書店は、大洗の歴史資料館 江口文子 江口又新堂 店長 [ガールズ&パンツァー 大洗女子学園掲示板]
『ガールズ&パンツァー』の舞台・大洗で、より作品を身近に感じている方々に、作品と出会ったきっかけやエピソード、作品への思いなどを聞いていく『大洗町めぐり~大洗の今、そしてこれから~』。第34回は江口又新堂 店長 江口文子さんにお話を伺いました。
創業173年を誇る町の書店は、大洗の歴史資料館
──まずは「又新堂」という店名の由来をお教えください
中国の『大学』という古典書にある「日々新又日新」という言葉が由来です。殷の湯王という王様が顔を洗う洗面器に彫られた言葉で、「毎日、心を新たにする」という意味なんですよ。その言葉を創業者が気に入って店名にしたそうです。
▲江口又新堂(ゆうしんどう)
住所:〒311-1301 茨城県東茨城郡大洗町磯浜町718
営業時間:10:00(日曜 14:00)~19:00
──創業は幕末とお聞きしましたが。
嘉永元年(1848年)ですからペリー来航の6年前ですね(笑)。ですから創業173年になります。その頃の本屋は薬屋も兼ねていて、近所の薬屋さんも本を売っていたそうです。自分が嫁に来た時も薬を売っていましたが、私の代になってからは薬をやめて本だけ扱う事になりました。ウチには徳川綱吉さんや徳川吉宗さんの時代の薬の本がありますよ。もちろん『ガルパン』の本もたくさん取り揃えています。ファンの皆さんに支えていただいている感じです。
──店内左側の本棚の品揃えが独特ですね。『ガルパン』はもちろんミリタリー書籍や同人誌まで揃ってますね。
あの棚はかつて児童書や図鑑系のコーナーだったのですが、置いていた本が東日本大震災で落下して売り物にならなくなったんですよ。そこで空いたスペースにファンの皆さんからいただいたグッズを置いていました。やがてお客さんの要望に合わせて『ガルパン』やミリタリー関連の本を仕入れるようになったんです。今では注文してないのに問屋さんが送ってくるようになりました(笑)。戦車や飛行機系の本とか。
──今は通販で買える時代ですが、わざわざ遠方から本を買いに来る方も多いそうですね。
それは店舗特典のイラストを描いてくださる漫画家の先生方のお陰です。しかも最近はコミックだけでなくムックを買いに来てくださるお客さんもいます。
──あと昔の航空写真が展示してあるのが気になります。
あれは知り合いの人からいただきました。「捨てるよりはここに置いてもらいたい」と言ってね。このように歴史物がどんどん集まってくるのでウチは歴史資料館のようになっています(笑)。
──ファン向けのサービスとしてゴミ袋を売られているのは何故でしょう?
まだ商工会のバッジもなかったTV放送中の頃に始めたんです。町内の子に「おばちゃん家はゴミ袋しか売るもん無いね」って言われたのがきっかけでした。第3話のIV号戦車が走るシーンにゴミ袋が描かれていたので、アニメにも登場したグッズとして成立するかも知れないと。最初は「こんなので良いのかなぁ?」と半信半疑でしたが、最初に大阪から来たファンの方が「面白い」と言って買ってくれました。今も最も安い大洗土産として売れています(笑)。
──江口さんが『ガールズ&パンツァー』と出会った経緯をお聞かせください。
ある日、肴屋本店さんに行ったら『ガルパン』のポスターが貼ってあったんですよ。そこに描かれた戦車と女子高生という組み合わせと、「大洗が舞台」という文字に興味がわいて、大里(明)君に頼んでポスターを1枚もらいました。それを店に貼ったのが最初のきっかけですね。もともと自分もアニメが大好きなので(笑)。
──実際に映像をご覧になった印象はいかがでした?
女の子達のキャラが立っていて、戦車がリアルに動くのが良かったです。私は特にメカ好きという訳ではないのですが、「鉄で出来た物体が動く」のを見るのは面白いんですよ。あと大洗が舞台の話(第4話)は知っている場所ばかり出てくるので、画面を一時停止しては確認して楽しんでいました。ファンの皆さんと同じですね(笑)。ウサギさんチームが登った「おでぃば山」の木はすぐに分かりましたよ。あそこは毎週のように草刈りに行っていたので(笑)。ただ肴屋本店さんが壊されるシーンは驚きましたね。「よくOKしたなぁ」と思って大里君のお母さんに訊いたんですよ。そうしたら「私、聞いてないのよ」なんて言ってました(笑)。
──お店にはカバさんチームの左衛門佐のパネルが設置されていますが、パネルにまつわるエピソードがあれば教えてください。
大里君がパネルをウチに置くかどうか聞いてきたので、「ぜひお願い。でも来るのは左衛門佐だよね」と答えたんです。ウチは代々、店主が江口平左衛門を襲名していたので、一文字違いの左衛門佐しか考えられませんでした。そうしたら案の定でしたね(笑)。ただ左衛門佐のパネルを置いているためか、真田幸村に詳しいと思われてるんですよ。でも、私そんなに詳しくないんですよ。広く浅くなので(笑)。
──そうなるとお気に入りのチームはやはりカバさんチームになるのでしょうか?
はい。真面目なあんこうチームとは違い、ちょっと外れた感じが良いんですよ。Ⅲ号突撃砲F型にのぼり籏を立てて、塀越しに撃たれてしまうおバカなところとか大好きですね(笑)。ライバル校だと知波単学園の福田さんですね。あの健気なところが好きです。
──『劇場版』と『最終章』はご覧になられましたか?
水戸の映画館まで息子に連れて行ってもらって観ました。入るときに常連さんとすれ違って、「来たんだ」「来たよ」なんて挨拶しました(笑)。あと2017年の「大洗凱旋上映会」も行きましたよ。立体音響で砲弾がこっちに飛んでくるように感じて思わず身をよけちゃったんですよ。後ろの席にいたファンの子に「おばちゃんの反応の方が面白かった」って言われました(笑)。あと『最終章』はDVDで拝見しました。
──ファンとの交流で特に印象的な出来事は何でしょう?
昔、大里君が『ガルパン』ロケ地ツアーというイベントを企画したんです。それに私も同行したら、あまりに草ボーボーな「おでぃば山」を見たファンの子達が「草刈りをやらせてくれ」って申し出てくれたんです。そこで役場の教育委員会に許可をもらって始めたのが「おでぃば山除草作戦」です。教育委員会の人達は最初、第4話に登場した木の回りしか草刈りをしないと思ってたんです。ところが、あまりに多くのファンが集まったので、範囲が広がって日下ヶ塚古墳まで綺麗にしてもらったんですよ。教育委員会の人達もすごく感激していました。
──あの企画はもともとあった訳ではなく、ファン主導で始まったんですか!?
草刈り自体は「大洗町の歴史と自然を楽しむ会」の活動だったのですが、高齢者ばかりなので次第に参加者が減って休止していたんです。それが再開できたのはファンの皆さんのお陰ですね。今も活動は続いています。比率は町内の人とファンの半々ですが、『ガルパン』好きで大洗に移住してきた方もいるので、実際にはファンの方が多い図式になりますね(笑)。
──お店を訪れるのはどんな客層ですか?
ウチには戦車好きな人、ミリタリー全般が好きな人、アニメ好きな人、そして私と同じ縄文時代や弥生時代が好きな人、幕末が好きな人、城跡巡りが好きな人……と、幅広い層の方々がいらっしゃいます。そして店内で戦車好きのコロニー、ミリタリー好きのコロニーが出来て盛り上がっていますね。私とよく盛り上がるのは縄文土器と天狗党(※)が好きなコロニーです(笑)。
※幕末に活躍した水戸藩内外の尊王攘夷派。保守派の諸生党が水戸藩の実権を掌握したことや、幕府の政策である横浜開港の中止を求めて元治元年(1864年)に筑波山で挙兵。幕府軍との幾多の戦いの果てに降伏する。
──ファンの印象はいかがですか?
優しい方ばかりですね。そして器用な方が多いんですよ。先ほどお話しした草刈りの時、水戸藩主・徳川斉昭が掘らせた井戸が出てきたんです。そうしたらファンの一人が石を落として音で深さを測ってくれました。さらに翌週には正確な深さを測るため機材を持って来てくれた方もいたんです。「そんな事も出来るんだ!」って感心しました(笑)。
──テレビ放送時と今とではファンに変化はありますか?
最初の頃は30~40代の人ばかりでしたね。そして皆が皆、行動パターンが同じで、アニメと同じ角度で写真を撮るんですよ。そこで「おでぃば山に行くなら案内するよ」と言ったら、「自分の母親に近い年齢の人に『ガルパン』を教えてもらうとは思いませんでした」なんて言われました(笑)。『劇場版』公開後は女子やコスプレイヤーさんが増えましたね。ただウチの店はおっさん達のコロニーばかり出来ているので、女子は入り難いかも知れません(笑)。そして現在は孫くらいの年齢の若い子が来るようになりました。今売っている『最終章』 第3話のチケットにカセットテープが付いているじゃないですか。それを聞くためウチにあるラジカセを貸りに来たファンの方がいるんですよ。そしたら20歳くらいの子が「カセットって何ですか?」って言ったんです。そりゃ今の子は知りませんよね(笑)。そこで常連の方が一生懸命に説明していました。
──『ガルパン』ファンが大洗を訪れ、何度も足を運ぶのはなぜだと思いますか?
同じ趣味の話し相手がいるのが嬉しいのだと思います。ウチ以外のお店でも同じ趣味の人同士のコロニーを見かけますからね。あと大洗の「向こう三軒両隣」みたいな雰囲気がファンを惹き付けるのかも知れません。私が好きな縄文時代と似ているんですよ。でも「狩猟生活」は私には無理ですね。怠け者なので(笑)。
──なるほど。では車塚古墳などの古墳群が多い大洗は、縄文時代が好きな江口さんにとって理想郷ですね。
でも磯浜古墳群が国指定になるまでは、地元民でも古墳の事を知らない人が多かったんです。それまでは縄文土器の話をしても誰も通じませんでしたからね。ようやく時代が私に追い付いてくれました(笑)。
──最後にファンにメッセージをお願いします。
コロナ禍が落ち着いたら、また大洗に遊びに来てくださいね。そして3月27日にはポケットパークという施設もオープンするので楽しみにしていてください。
──では次に取材を受けて頂く方のご紹介をお願いします。
恐れながら商工会長の田山さんをご紹介します。大洗にガルパンを招いてくださった方です。田山さん、これからも頑張ってください。
PROFILE
江口文子(えぐち・ふみこ)
茨城県旭村(現:鉾田市)出身。『水戸黄門』好きの祖母の影響で時代劇ファンになり、土器や古墳、城跡などに興味を持つ。23歳で江口又新堂に嫁入りし、「大洗の自然と歴史を楽しむ会」のメンバーとしても活躍。1958年公開の『白蛇伝』再放送時からアニメを見続けているマニアで、『宇宙戦艦ヤマト』は旧作と『2199』から始まる新シリーズ双方のファン。近年でお気に入りの作品は『甘々と稲妻』『八十亀ちゃんかんさつにっき』。
『ガールズ&パンツァー 最終章』第3話 2021年3月26日(金)劇場上映!
▼TVシリーズ&OVA&「劇場版」公式サイト
http://girls-und-panzer.jp
▼「最終章」公式サイト
http://girls-und-panzer-finale.jp/
▼ガールズ&パンツァー 公式Twitter
@garupan
©GIRLS und PANZER Finale Projekt
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