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TVアニメ『怪物事変』監督:藤森雅也×夏羽役:藤原夏海 スペシャル対談全文掲載

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集英社「ジャンプSQ.」連載中の人気コミックスをTVアニメ化した話題作『怪物事変』。放送がクライマックスを迎える中、藤森雅也監督と夏羽役の藤原夏海さんによるスペシャル対談が実現。作品の印象や見どころなどを伺った。

──原作漫画を読まれた時はどのような感想をお持ちになりましたか?

藤森絵は可愛いのにダークな内容を描いていることがまず印象に残りました。この企画は自分がやりたいと立候補するくらい、読んでみたら面白かったです。ただ、そのダークな部分をどのようにしてTV放送で表現するかについてはとても苦労しました。キャラクターの置かれた状況が非常に深くて、映像化する意欲を掻き立てられました。

藤原岡山県の田舎町で夏羽が身を寄せている叔母に迷惑がられているシリアスな始まりだったので、まず監督と同じようにダークな印象を受けました。そこから読み進めていくと、探偵事務所の皆と出会って仲を深めていくうちに夏羽の心がどんどん和らぎ、半妖でありながら人間のように成長していく。そこから『怪物事変』の世界に惹き込まれていき、続きがさらに気になりました。

──本作をTVアニメ化するにあたり、監督が一番意識されたことは何でしょうか?

藤森原作の絵をそのまま見せるのはTV放送にそぐわない場面があるので、その雰囲気をどういう風に別の手段で伝えていくかについてはかなり工夫を凝らしました。直接的に絵で見せられない分、カット割りや絵そのものの雰囲気で怖さを出すやり方を採用し、非常に気を配って制作しました。

──その他の部分で何か意識されたことはありますか?

藤森とても絵の魅力がある作品だと思っていたので、漫画内でポイントになっているであろう表情やポーズなどを、上手い具合に映像作品内に取り込んでいくことに苦労しました。漫画の進行とフィルムの進行は全く異なるので、漫画のコマ割りをそのままアニメのカットに置き換える訳にはいかないのですが、それを自然にフィルムの流れの中に埋め込む形で取捨選択をしました。その中でも特徴的な表情やポーズはできるだけフィルムの中に織り込んでいくことを意識しました。最初のうちはなかなか上手くできなくて、第1話の絵コンテは物凄く時間がかかったのを覚えています。

──夏羽役が決まった時の率直なお気持ちをお聞かせください。

藤原凄く嬉しかったです。主人公でありながらあまり感情を表に出さないタイプのキャラクターを演じるのは初めてだったので、自分にとっても挑戦だなという気持ちと早く皆さんに『怪物事変』を届けたいワクワク感もありました。色々な想いがありましたが、嬉しいという感情が一番大きかったですね。

──キャラクターのバランスが非常にうまくハマっていると感じました。キャスティングはどのように決まっていったのでしょうか?

藤森基本はオーディションで決めていきました。音響監督の長崎(行男)さんのやり方が少し変わっていて、今回は夏羽、織、晶、紺、綾の5名は、必ず2人か3人で掛け合いをしてもらいながら進めていきました。例えば夏羽と織と晶候補の役者さんに集まっていただいて、3人でブースに入り掛け合いのセリフを読んでもらいます。その組み合わせをいくつも聴いて、その中で各キャラクターの役を決定しました。後で編集して聴き比べることもできたので、キャラクター単体で喋ってもらうのではなくて、とにかく掛け合いで喋ってもらうことを重視していました。最終的には全体を組み合わせて判断できるので、こちらとしてはありがたいオーディションのやり方でした。その他のメインキャラクターは通常のテープオーディションの形です。

──主人公・夏羽の魅力はどこにあると思いますか?

藤森裏表がなく世間ズレしていない素朴なキャラクターですが、倫理観がどこか普通の人間とは異なっている。空気を読まない突拍子のなさを持ちつつ、それでも純朴な少年であるところに魅力を感じます。静から動に移った時のビジュアルがまた凄いですよね。TVアニメの最終話を観ていただければわかると思いますが、絵の凄まじさも一つの魅力だと思います。

藤原口調が淡々としていて感情を表に出さないけれど、実は仲間のことを大切に思う温かい心を持った子です。第11話で「晶はそんなこと言わない。何か嘘をつかなくてはならない理由がある?」というセリフなどを通じて、一人ひとりのことをきちんと自分なりに理解しようとする子だなと感じました。口調とは裏腹にそういうコミュニケーションをしっかり取れるギャップが魅力の一つですね。

──夏羽を演じる際に意識していること、または気を付けていることはありますか?

藤原夏羽は感情を表に出さない役ですが、ロボットのように気持ちがない訳ではないので、そこの塩梅は難しかったですね。夏羽の中に伝えたい想いはありつつ、それをしっかりと伝えられるようにするにはどうしたらいいのか悩みました。練習をする時に、私の中で夏羽の伝え方のレベルが何通りかあって、そのバランスの調節は色々と考えました。第1話と第2話の時点ではまだあまり心が動いていないので、音響監督の長崎さんから「もっと淡々としてください」とご指示を受けました。そこから話が進むにつれて、夏羽の感情のグラデーションを徐々に付けていけたらいいなと思いながら演じていました。

──監督は藤原さんの演技をご覧になっていかがでしたか?

藤森藤原さんを起用した理由として、夏羽の役は感情を抑えた演技をしてもらわなければならないとわかっていたので、抑えた演技でも声の中に温かさや優しさや素朴さが滲んでいて、聴いた瞬間にコイツは良いやつだなと感じられることが一番大きかったですね。ただ、アフレコ時は自分も含めて、「もっと感情を抑えて淡々としてください」という指導ばかりしていて申し訳なかったです。気持ちは伝わっておりますので、安心してください(笑)。

藤原いえいえ(笑)。とても嬉しいです。ありがとうございます。

──ハードな物語が続く中で怪物屋でのやり取りは一つの癒しになっています。実際のアフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?

藤原アフレコ自体はグループ毎に分かれていたので限られた人としか掛け合いはできなかったのですが、キャラクターについて話をしながら、花江(夏樹)さん、村瀬(歩)さん、花守(ゆみり)さんとご一緒させていただきました。花守さんとは一緒になることが多く、二人で夏羽と紺のシーンを演じた時に、お互いのキャラクターのことを「可愛いですね!」と褒め合ったりして、凄く楽しい現場でした。

──和洋の様々な怪物が登場するのも本作の魅力だと思いますが、その辺りの描写についてはどのような意図で演出されていますでしょうか?

藤森特に敵対する怪物が出てくる回は、いわゆるホラー映画の作りで導入することをかなり意識し、初めて怪物の正体が見えるカットは、ギョッとさせるような演出を心掛けました。どうすれば最初の印象が怖くなるかについては毎回考えていました。

──能力を駆使したアクションが大きな見どころとなる本作ですが、アクションの質を高めるために監督の立場、演者の立場でそれぞれどのようなことを意識されていますか?

藤森最終的な作画はアニメーターさんにお願いしますが、自分がコンテを描く時はアクションの中で妙な間を作らないよう臨場感に気を付けました。実際にその場でアクションが行われていたらどういうスピード感で物事が進行していくのかについては常に意識しています。アクションの最中は説明を一切飛ばして進行させていくので、少し展開が早すぎるという感想を持たれる方がいるかもしれません。ただ、お互いが殺し殺される関係である時にもたもたしている暇がある訳ないと思っています。自分は他の作品を観ていてもそこのもたつきが気になる人間なので、自分の作品では変な間を作らず、実際にその場にいたらこれぐらいのスピード感を持って行動するはずだと、臨場感をとにかく意識しています。

藤原全体的なアクションシーンというよりは、一つひとつの戦いにおいての夏羽の心情を大切にしています。仲間が助けを求めているから戦うなど、それぞれ戦う理由が違うのでそこをしっかり考えつつ、力強くぶつかっていくことを意識しました。

──お気に入りのエピソードや印象に残っているセリフはありますか?

藤森『怪物事変』は前半と後半でテイストが異なっています。前半は単発の事件を解決していく1話完結に近いような雰囲気で、後半は織の過去の話が始まる辺りからキャラクターを描く重たい話が出てきます。その転換点となった第7話「故郷」は監督として相当力を入れましたし、印象的なエピソードになっています。

藤原夜野さんが出てくる第4話「任務」の「俺にも恋ができますか?」という夏羽のセリフが、恋についての一般的な認識とのギャップを感じて面白かったです。夏羽が両親を求めて旅をするストーリーも組み込まれているので、このセリフから両親に対して真剣に向き合う気持ちと一般的な常識からは外れている夏羽の素直な可愛らしさが色々と感じられて、凄く好きなセリフです。

──3月28日(日)には最終話となる第12話が放送されます。最終話の見どころについて教えてください。

藤森織のお話である第7話と第8話は最終話に準ずるくらいの力を入れたので、第12話はそれを上回る物凄いものを見せなければいけないというプレッシャーがありました。第7話と第8話を超えるような見応えのあるアクションシーンを作っておりますので、ご期待ください。

藤原晶と結が段々と昔のような関係性に戻っていく過程や、夏羽のアクションシーンも見どころです。その後の隠神探偵事務所の皆がどうなっていくのか、ラストの結末に向かう流れもぜひ観てほしいですね。

──最後に、本作を楽しんでいるファンに向けてメッセージをお願いします。

藤原TVアニメ『怪物事変』を観ていただき本当にありがとうございます。監督のお話をお聞きしていて、この作品は素敵なものに仕上がっているんだなと改めて感じました。TVアニメ12話の中では描ききれなかった面白い部分が原作の中にはまだまだ沢山盛り込まれていますので、アニメと原作の両方を見ていただいて『怪物事変』をさらに楽しんでいただけたら嬉しいです。

藤森アニメ化するにあたって、とにかくキャラクターを好きになってもらわないといけない作品だなと感じていたので表情には物凄く気を遣っていて、それこそ作画があまり良くなければ次々とリテイクを出していました。魅力的なキャラクターたちの活躍を楽しんでほしいですし、気に入っていただけると本当に嬉しいです。

PROFILE

藤森雅也(ふじもり まさや)
11月11日生まれ。大阪府出身。アニメーション監督。作画監督や原画、演出家としても活躍。主な監督作品は『おまえ うまそうだな』、『劇場版 FAIRY TAIL 鳳凰の巫女』、『終末のイゼッタ』、『映画 かいけつゾロリ ZZのひみつ』など。

PROFILE

藤原夏海(ふじわら なつみ)
6月2日生まれ。静岡県出身。主な出演作品は『アイカツスターズ!』騎咲レイ役、『ガンダムビルドダイバーズ』夢源くるみ役、『東京喰種トーキョーグール:re』六月透役、『メジャーセカンド』茂野大吾役、『真・中華一番!』マオ役など。

<放送情報>

TVアニメ『怪物事変』
最終第12話 3月28日(日)放送!

<発売情報>

Blu-ray 第2巻
2021年4月27日発売
税込価格:¥7,700
品番:BCXA-1604

DVD 第2巻
2021年4月27日発売
税込価格:¥6,600
品番:BCBA-5032


Blu-ray 第1巻
好評発売中
税込価格:¥7,700
品番:BCXA-1603

DVD 第1巻
好評発売中
税込価格:¥6,600
品番:BCBA-5031

【あらすじ】
古来よりこの世の影に潜み、人に見つからぬよう、人と関わり合って生きる“怪物”(けもの)という存在。彼らの多くは人間の世界に適応し、社会に交じり生活していた。しかし現代では、人と必要以上に深く関わろうとするケースが多数報告されるようになっていた。探偵事務所を営む隠神は、そんな“怪物”たちが起こす怪事件のうちの一つを追い、片田舎のとある村を訪れる。そしてそこで夏羽という少年に出会う—。

【STAFF】
原作:藍本 松(集英社「ジャンプSQ.」連載)/監督:藤森雅也/シリーズ構成:木村 暢/キャラクターデザイン・総作画監督:立花希望/総作画監督:西岡夕樹・遠藤江美子/怪物デザイン・アクション作画監督:宮本雄岐/プロップデザイン:ヒラタリョウ/美術:インスパイアード/美術監督:西口早智子/美術アドバイザー:増山 修/美術設定:大原盛仁/色彩設計:中野尚美/撮影:旭プロダクション 白石スタジオ/撮影監督:佐藤哲平/オフライン編集:瀬山編集室/編集:松原理恵/音響監督:長崎行男/音響制作:JTB Next Creation/音楽:森 悠也/オープニング主題歌:小野大輔「ケモノミチ」/エンディング主題歌:佐咲紗花「―標―」/音楽制作:ランティス/アニメーション制作:亜細亜堂

【CAST】
夏羽:藤原夏海/織:花江夏樹/晶:村瀬 歩/隠神:諏訪部順一/飯生:花澤香菜/弥太郎:金元寿子/女将:乃神亜衣子/長男:田村睦心/妹:大森日雅


TVアニメ『怪物事変』 公式サイト
https://kemonojihen-anime.com/

TVアニメ『怪物事変』 公式Twitter
@Kemonojihen_tv / ハッシュタグ#怪物事変 #kemonojihen

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