『月とライカと吸血姫(ノスフェラトゥ)』アーニャ・シモニャン役 木野日菜インタビュー
『月とライカと吸血姫』Blu-ray BOX発売記念キャストインタビュー第2弾は、レフとイリナを支え続けたアーニャ・シモニャンを演じた木野日菜さんが登場。アーニャというキャラクターへの思いや一緒に収録に臨んだ林原めぐみさん、内山昴輝さんとの交流について語ってもらった。
──『月とライカと吸血姫』という作品に、最初に触れた時はどのような印象を持たれましたか?
木野作品へはオーディションを経て参加することになったんですが、その際に原作小説を読ませていただきました。人類が初めて宇宙に行くまでの歴史や、どのような訓練をするのかをまったく知らなかったので、原作小説を読んだ時はすごく衝撃的でした。前半は訓練がメインとなる描写がとても多くて、そのひとつひとつが新鮮で面白かったです。私のような宇宙に詳しくない人でも、すぐに物語に入り込めるような友情やイリナの恋心などのドラマも描かれていて、夢中になって読んであっという間に読み終わったという感じでした。
──作品に関わったことで、宇宙開発についても興味は持たれましたか?
木野最初に宇宙に行ったワンちゃんのお話があるんですが、それがすごく驚きました。動物が大好きなので、人類が宇宙に行く前の実験に使われたと知った時は涙が出そうで。そうしたエピソードも含めて、宇宙開発の話はやっぱり新鮮でしたね。グルグル回ってGに耐える機械(遠心加速器)に関しても、最近宇宙に行った民間人の方の訓練映像を見て「本当にあるんだ」と驚きましたし。そういう意味では、宇宙開発について、もっと知っていきたいと思うきっかけになりました。
──宇宙をテーマにした作品としては、他の多くの作品とは描写の仕方がかなり違いますよね。
木野そうなんですよ。やっぱり、宇宙の物語というと、当たり前のように宇宙に着いていて、そこから危機が訪れる話や、時空が歪むとかブラックホールに引き寄せられるとか、そういった印象を持っていたので。そういう意味では、すべてが訓練から始まるというか、宇宙に行くということだけでもここまで大変だったのかと思いましたね。本当に今まで触れたことが無かったので興味深かったです。
──想像とは違った作品だったということですね。
木野作品のタイトルから、吸血鬼が出てくるということも知っていたので、もっとファンタジー要素が強めな作品なのかなとも思っていたんですが、うまくリアルな要素と融合していて、違和感なく映像を楽しめる。そういう作品だなと思いました。きっと若い方や小さい子が見ても「凄い」って単純に思うだろうし、伝わったらいいなというメッセージもちゃんと心に届く作品になっていると思います。
──吸血鬼は、「人種差別」というテーマを描く要素でもありますが、そうしたテーマに関してはどのような感想を持ちましたか?
木野物語の結末を知らずに小説を読み進めていて、アニメ最終話あたりのお話になると、「こういうことをこの作品は伝えたかったんだ」と知ることになって、そこでも衝撃を受けました。私は、アニメの最後のセリフが大好きなんです。地球には国境なんかなくて、丸くて平等に住める星のはずだろうと。そういうメッセージにすごくジーンときました。原作を読んで感じたこの感動を、私もアニメを通して伝えられたらいいなと思ったので、アーニャ役に選んでいただいた時は頑張ろうと思いましたね。
──アーニャというキャラクターは、どのような解釈をして演じられていましたか?
木野物語を走り抜けてみると、アーニャはみんなの支えになったようなキャラクターだったのかなと思いますね。特に、イリナがいつ死んでしまってもおかしくないような状況に置かれて、レフとも離れてしまった中で、アーニャがいなかったらイリナの心はバラバラになってしまったのではないかと思うんです。アーニャの天真爛漫な明るさで、種族を越えて支えていったからこそ、みんなが輪のように繋がることができた。手を取り合って行けたんだろうなと。裏でサポートをすごくして、たくさんの人と人が傷つかないように、手と手を取って引き合わせるようなキャラクターだったのかなと思います。
──物語を見ていると、イリナとレフの関係性に視線が行きがちですが、ある意味イリナとアーニャの友情の話でもあるんですよね。
木野そうですね。あそこまでの友情を育める……というか、友情の域を超えていますよね。アーニャはそこが凄くて。あそこまで人を思うことができるんだって思いました。自分に危機が迫っているのに、何が何でもイリナをレフに会わせたいという気持ちで突進していくところもあり、そのひとつひとつの行動がすごく真っ直ぐで。わかりやすい人物なんですが、そこにじんわりときてしまう。そうした、わかりやすさがあるからこそ、イリナの固まった心を解くことができたのかなとも思いますね。
──アーニャに関しては、演じ易さなどはありましたか?
木野演じる上で、悩むことは無かったです。この作品では、音泉さんで「月とライカと吸血姫 ~アーニャ・シモニャン・ラジオニャン!~」というインターネットラジオをやらせていただいたんですが、その最終回のゲストがイリナ役の林原めぐみさんだったんです。そこで、「私が演じるアーニャはどうでしたか?」とおこがましくも聞かせていただいた時に、褒め言葉として「アーニャは木野ちゃんと重なって見えた」、「似ているように思えた」と言っていただいて。その言葉も衝撃的だったんですが、もしかしたら似ている部分が多かったから、あまり悩まずにストレートに演じることができたのかなとも思います。「こんな風に話しかけられたら、こう返す」という感覚がアーニャにちょっと似ていたのかもしれません。ただ、自分自身がアーニャに似ているかと言われたら、「そんなことおこがましくて言えません」ってなります(笑)。本当に素晴らしい女の子だったので。
──印象深いシーンを教えてください。
木野アーニャとして印象深いシーンは、イリナと湖で一緒に松ぼっくりを投げるシーンですね。イリナが、無邪気に笑ってくれたんですよ。あのシーンまでは、アーニャに対してあんな風に無邪気に笑ってくれることが無かったのですが、すごく素直にアーニャの言葉がイリナに響いて、そこに反応してくれているというのが、アフレコをしているときも林原さんの隣に立っていてすごく伝わって来て。演じていて、本当に楽しかったという思い出のシーンです。あそこから、二人の関係性も大きく変わった感じがしましたね。
──映像的には好きなシーンはありますか?
木野イリナが高所恐怖症で飛ぶのが怖いとなった時、レフが「空は楽しいところだよ」と夜間に飛行機で一緒に飛ぶシーンを観た時は、私もイリナみたいに「綺麗!」って感動しましたし、こんなに高くまで飛んでみたいなと本当に思いました。その他にも映像的に綺麗なシーンは多いですね。イリナのスケートのシーンも綺麗ですし、食事をするシーンでは食べ物がすごく美味しそうに見える。ロシアの料理はあまり馴染みがないので、イクラを載せたパンの味などは「どんな味なんだろう?」って想像したりしましたね。それから、やはり炭酸水。あの劇中に出てくる自動販売機で、炭酸水を飲んでみたいなと思いました。
──林原めぐみさん、内山昴輝さんと一緒に演じられて、いかがでしたか?
木野収録は人数制限があるので、林原さんと内山さんとほぼ3人の収録が多かったように思います。休憩時間では林原さんが私にすごく気を遣ってくださって。後から聞いたんですが、現場を「怖い」と思わないようにしてくださっていたようです。宇宙のことや、月の裏側に行く夢を見たことがある、というようなお話をしてくださったり、ご自身で作られた宇宙をモチーフにしたペンダントを付けて来られたりと、作品への向き合い方も素晴らしいなと思いました。そばにいるだけでいろんなことを伝えてくださる。そんな存在でしたね。内山さんは、作品関連のイベントなどで、一緒に動くことが多かったんですが、その度に私がワタワタして、言葉が滅茶苦茶になっても、ひとつひとつ繋ぎ合わせて「木野さんは、こういうことを言いたいんだと思う」という感じで、さりげなくフォローしてくださって。そういう部分は私にはレフそのものに見えましたね。本当に心の優しい方なんだなと。隣にいてくださるだけで安心感がすごくて、お二人とも偉大で頼りになる先輩だと思いました。
──アフレコ中のやり取りで印象深いエピソードはありますか?
木野イリナがイクラを食べるシーンで、噛むとイクラがつぶれる「プチ、プチ」って音が鳴るんですが、そこを「口で音を鳴らしてください」と指示があって。私は「口でプチプチ音をどう表すんだろう?」と思って、林原さんの演技をちょっと覗いてみたら、手を駆使してプチプチ音を出されていたんです。それが凄くて、「こんな技があるのか!」って思いました。また、イリナとアーニャはアドリブのシーンが多かったので、セリフに書かれていないことをキャラクター同士で会話したシーンは思い出深いですね。観直した際にも、ちゃんとキャラクター同士の会話になっていて、すごく良い関係性に見えて良かったです。
──アフレコの際に監督や音響監督からアーニャを演じるにあたって、何かアドバイスやオーダーのようなものはあったのでしょうか?
木野第1話の収録が始まる際に、監督からそれぞれのキャラクターがどんな人物なのか説明がありまして、その時に「アーニャは清涼剤のような女の子なので、可愛らしく演じてください」と言われたんです。だから私は、その言葉だけで12話走り続けました(笑)。そのため、印象としては、自由に演じさせていただいた感じがします。初めての収録に行く前は、アーニャの年齢感など結構不安があったんですが、「そのまま演じてくれて大丈夫です」と言って貰えたことがすごく勇気になって、その後は毎回楽しく演じていたなと思います。
──完成した本編を観直した感想はいかがでしたか?
木野とにかく映像が綺麗でした。アフレコをしていた時は、完成していない映像も多かったので、こちらの声に合わせて動かしてくださったシーンもたくさんあると思いますが、完成した映像を観ると、みなさんが力を合わせて作り上げてきたのが伝わりますし、ひとりひとりとの気持ちが全部同じ方向に向いていたからこそ出来上がった作品なのだなということも感じました。1話ごとに力を注いでくださったんだろうなと思いましたね。その一部になれてすごく幸せです。実はうちの両親は、ドラマなどはまとめて一気に観たいというタイプで、『月とライカと吸血姫』をお正月のタイミングで一緒に観たんです。その時の両親のリアクションが本当に新鮮でしたね。とにかく、イリナが死んでしまうのか、生き残るのかを凄く気にしていて。最終回直前の第11話のラストシーンでは、お父さんが号泣していて。すごく感情移入して楽しんでいる両親の反応を見ることができて幸せでした。特にお父さんは宇宙ものが大好きなので、映像を観ながら「これはこうだよね」と説明をしていたり、逆にお母さんとは実験に使われたワンちゃんが可哀想という会話をしていて。そして、ふたりとも共通していたのが、イリナがすごく可愛いってことでした。イリナはお話が進むとどんどん可愛くなってくるので。本当にたまらないですね。
──改めて、『月とライカと吸血姫』という作品に関わられて、どんな感想を持たれていますか?
木野この作品に関わることができて本当に良かったなと思っています。作品が伝えたいメッセージもすごく世界平和に基づくものなので、ぜひみなさんに観て欲しいと思いました。また、うちの両親にもこういうメッセージが込められたアニメを見せることができたのも嬉しいですし、一緒に観ることができ、本当に幸せな時間を過ごせました。
──では、最後に作品のファンに向けてメッセージをお願いします。
木野Blu-ray BOXの発売を楽しみにしている皆さんは、この作品をすごく気に入ってくださり、とても楽しんでいただけた方々だと思います。本当にありがとうございます。この作品は、制作の裏話を聞けば聞くほど面白くなるというところがあって、ラジオのゲストで監督の横山彰利さんや原作の牧野圭祐さんに来ていただいた時には、裏話が面白くてもっと聞きたい要素がたくさんありました。特典のアートワーク集やオーディオコメンタリーも充実していますので、そちらと併せてBlu-rayで何度も楽しんでいただければと思います。何度も見返すほどに面白くなる作品だと思います。ぜひ、よろしくお願いいたします!
PROFILE
木野日菜(きの ひな)
2月12日生まれ。埼玉県出身。主な出演作に『スター☆トゥインクルプリキュア』フワ役、『彼方のアストラ』フニシア・ラファエリ役、『群れなせ!シートン学園』大狼ランカ役、『はたらく魔王さま!!』アラス・ラムス役、『RPG不動産』ファー役などがある。
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▼月とライカと吸血姫公式サイト
tsuki-laika-nosferatu.com
▼月とライカと吸血姫公式Twitter
@LAIKA_anime
© 牧野圭祐・小学館/「月とライカと吸血姫」製作委員会