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『コードギアス 反逆のルルーシュ』15周年記念 福山潤(ルルーシュ役)スペシャルインタビュー

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2006年から2007年にかけて放送された伝説的なTVアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』『コードギアス 反逆のルルーシュR2』。今回は15周年を記念して、「コードギアス」シリーズで主人公のルルーシュを演じた福山 潤さんにインタビュー! 自身が演じたルルーシュやファンへの想い、当時のアフレコの思い出など、ここでしか聞けない貴重なお話を伺った。

一番重要なのは、作品の熱量を感じ取ってくれていること

──『コードギアス 反逆のルルーシュ』がTV放送から15周年を迎えました。今の率直なお気持ちを聞かせてください。

福山当時は、長く続けていくことや愛されることはもちろん、終わった先については実はあまり考えていなくて。まずはこの作品を最後までやり切ることが何よりも重要で、良い形で終えることが目標でした。そこから15年が経ち、未だに皆さんに愛され続けていることが素直に嬉しいです。

──本作がここまで愛され続けている理由は何だと思いますか。

福山それは色々ありますね。キャラクターもその1つだと思います。日本アニメ史の中の魅力的なキャラクターの1人にルルーシュを挙げてくれる方もいます。ルルーシュは隙間やツッコミどころのある人物でありながら、初志貫徹に見える部分もあり、その一方で大きく揺らいでいる。決して完璧ではないけど、少なくとも彼の人生の中での筋は最後まで貫き通したところが、作品の魅力に繋がっていると見ることもできます。もしくは、SNSのない時代の最後の刺客として、ストーリーが毎週クリフハンガーで終わっていて、最終回まで含めてどうなるか分からない。展開を予想していた人も実際に観るまではその実感を得られない構成の物語を描き切ったことも理由の1つです。あとは、TVシリーズにも関わらず、手描きのアニメーションであれだけのロボットアクションをやり切ったことも大きく、とにかく要素を挙げればキリがありません。ただ一番重要なのは、当時観ていた人も後から観た人も、作品の熱量を感じ取ってくれていることです。色々なものが溢れている昨今、『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』(以後『R2』)まで含めると1年ほどの長さ(全50話)がある作品に時間を注いでくれる理由はそこにあると思っています。どのような入口かは観る人次第ですが、その作品を観続ける、そして観終わった後も想ってくれるだけの熱量が作品にあるかどうかが大切です。僕らもそれぞれの立場から熱を込めたつもりなので、それは大きな理由の1つだと思っています。

──ルルーシュの「お誕生日おめでとう上映会」は3年ぶりの開催となります。今回どのような想いでステージに立たれますか?

福山今回は河口(佳高)さん、湯川(淳)さん、谷口(悟朗)さん、大河内(一楼)さんも登壇されて、一見同窓会のように見えますが、気を抜いたら僕はフルボッコにあいますから(笑)。お会いするのは楽しみですが、どこか嫌な気持ちもありました(笑)。15年も経つと当時を思い返すこともありますが、今だからいいかが通用しない可能性もある方たちなので。最近でも、谷口さんは『ONE PIECE FILM RED』(監督)、大河内さんは『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(シリーズ構成・脚本)と、商業的に成功する作品もあれば観た方の心に刺さるような一作まで、お二人とも15年間常に刺激的な作品を世に送り出しています。「コードギアス」は恐らくお二人にとっても転機になった作品だと思います。それを振り返って思い出話のような流れになるのか、打ち合わせもどうなるのか、その場に立ってみなければ分からないですね。

──放送から15年も経ち、TV放送時とは違うタイミングで作品をご覧になった方々もいらっしゃると思います。ファンから頂いた声で印象に残っているものはありますか?

福山考察や批評、僕に対する評価などはあまりないですね。「好きでした」「感動しました」「青春でした」などの主観的な感想を頂くことは多かったです。「この作品があったからアニメが好きになりました」、その逆で「アニメは好きじゃないけどこの作品は好きでした」といった声もありました。老若男女を問わず熱く語ってくれる人がいるので、正直に言うと珍しい経験だと思っています。当時観ていたような熱量で今も伝えてくれる方の感想を、当時の自分だったらどう聞いているかなとか、当時の自分に教えてあげたい言葉だなと思っています。僕はもう15年前の自分とは違うので、嬉しい反面とても複雑ですね。ただ、今もシリーズは終わっていないので、そういう人たちが支えてくれている作品であることは常に背負うようにしています。

僕が楽をして発声できないラインがルルーシュとゼロの大きな違い

──「ルルーシュはこうやればいいといった定義がないキャラクターだから毎回収録が大変」と以前仰っていましたが、アプローチの仕方は今も変わっていないのでしょうか。

福山変わっていないではなく、全部違います(笑)。違わないように聞こえていたら一番良いのですが、僕のやり方は毎回違いますね。例えば、『コードギアス 反逆のルルーシュ』(以後『第1期』)第1話から『R2』の最終話までの間でトーンは半オクターブ下がっています。ルルーシュとスザクのダブルメインで、正義と悪が逆転して描かれるけど実際の社会的な正義と悪は逆転していない。悪役としてもヒーローとしても描くわけではなく、ルルーシュはトーンを下げ、逆にスザクのトーンはなるべく上げる。二人が寄り過ぎないようにする狙い込みの出発から始まりました。色々な葛藤が音響スタッフにも監督サイドにもあったと思いますが、エコーやマスクといった加工以外に、ボイスチェンジャーで物理的に声を下げ過ぎても、僕が演じる意味があまりなくなってしまいます。僕が楽をして発声できないラインがルルーシュとゼロの大きな違いと定義していたので、リアルタイムでは常にその時にできる限界に挑戦していました。そのためどんどんトーンは下がり、圧力は上がって、以前できなかったことができるようになっていきました。僕自身楽をしていなかったので、ルルーシュが状況に抗い続けている感じが出て、結果としては上手くハマっていたと思います。ただ、15年も経てば、当時やっていたことが楽にできるようになります。『コードギアス 復活のルルーシュ』のような新作は全く違うやり方をしていますが、今やっている『コードギアス Genesic Re;CODE』(以後『Genesic Re;CODE』)や『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』(以後『ロストストーリーズ』)は当時の時間軸で続いているものです。当時のトーンを出すことはできますが、それをやるともう抗うことは必要なくなってしまう。この人だと思う定義は何かと考えた時に、声や言い方も多少は必要ですが、それ以外のところに定義づけを求めたいなと。なので、あまり当時を再現しようとは思わないことが1つのポイントなんだと思います。当時の熱量や感じ方は覚えていますが、それを再現することは一切していません。そうでないと間違えてしまう気がするので。15年前から観ていた人、途中から作品に触れた人たちがどうしてこの作品を面白いと思ったのか。それは僕の演技が上手かったからでは絶対になく、作品に熱量があったからなので。だとすれば今の僕が込められるものは、横綱相撲のように楽に進めることではなくて、その時その時の限界までやったらどうなるかをやり続けないといけない。それを続けて沸点を越えて、もはや別人になってしまったら、僕が代わる時期なんだと思います。この先については考えていなくて、今の自分が出せる本気をやり続けるしかない。そういう感覚で今もやっているので、アプローチが変わった部分と変わらない部分、その両方があるかもしれないですね。

──ルルーシュは福山さんが演じられた代表的なキャラクターの一人として多くの方に愛されています。ルルーシュは福山さんにとってどのような存在になっていますか?

福山明らかに僕の代表作ですが、特別扱いする気がない人ですね(笑)。応援してくれる人たちは理解してくれると思ってわざとそういう言葉を使いますが、僕はこの作品にぶら下がる気はないので。むしろこの作品が過去のものであるといち早く自分の中でも提示していかないとダメだなと思うくらい大きな存在ではあります。少し捻くれているかもしれませんが、だからこそ特別扱いはしません。ルルーシュを演じてきましたが、僕がルルーシュを作った訳ではなく、皆で作り上げた中で結果的に出来上がった轍としてのルルーシュがあるだけなので。本当に言い出しそうで怖いですが、仮にもう10年経った時に「オリジンを改めて今の子たちに届けようよ」と言ってTVシリーズの作り直しが決まった時に、僕はそこのフィールドに立っているとは思っていません。立つかどうかは僕に選択肢がある訳じゃなくて、これから作る人たちとそれを観る人たちの想いになります。だから、ずっと僕がルルーシュであることすらも特別視せず、あくまでやってきた結果として受け止めています。僕は彼を作らせてもらえたので、ルルーシュは過去に演じてきたキャラクターの中の一人として捉えていますね。

──ルルーシュが発したセリフ(言葉)で未だに忘れられないものはありますか?

福山言えて嬉しかったのは「ボロ雑巾のようにして捨ててやる」です。声優になって、「この恨みはらさでおくべきか」や「この泥棒猫が」といった古典的なセリフを言ってみたかったんですが、それを越えたのがあのセリフですね。時代劇のようなあのセリフを言えたのは一つのご褒美として捉えています。そういうものを除いて一番好きなセリフは、「スペックでは圧倒しているはずなのに」です。確か24話、ガウェインでコーネリアのグロースターと戦っている時に、コーネリアに圧倒されながらそのセリフを吐くんですよね。これは「コードギアス」の中でのルルーシュをよく表している言葉だなと。まず訓練もなしにナイトメアを操れること自体が天才的な才能です。けれど、きちんと訓練を受けている人たちには勝てない。ルルーシュとコーネリアの目標は全く異なっていて、立場を変えたら完全にラスボスと戦っているヒーローの構図で、ルルーシュが明らかに悪のポジションに見えますよね。面白いセリフのようにも聞こえますが、あの言葉はルルーシュ自身もよく理解していて、いくらスペックで上回っていても能力の高い人間とのギリギリの戦いでは勝てない。それを分かっているからこそ、色々な策謀を駆使してどうにか勝とうとする。これは無印の時のセリフですが、僕の中ではルルーシュの人間像を表す重要な一言になっていますね。

その後の声優人生にとってものすごく大事な時間だったと思います

──アフレコ現場での未だに忘れられない経験やエピソードがあれば教えてください。

福山良い想い出も沢山ありますし、ふざけんなよと思うことも同じくらいありますね(笑)。1回目の収録から考えると17年経過していますが、あんな収録の仕方をしたのは「コードギアス」だけでしたし、あれだけの時間がかかったのも、無駄な時間がなかったのもこの作品くらいです。音響に関する監督が3人いて、それぞれからフルボッコにあった演出も初めてでした(笑)。とりあえず1話は収録しましたが、求めているルルーシュ像にまだ及ばないと音響監督の浦上(靖夫)さんが判断されて、音響面として最低ラインを築くために事前に集まりましょうと提案されました。当時は火曜日の朝に収録をしていたので、素材が上がったタイミングで土曜日の昼にスタジオで2時間ずつ、2話から5話までの間の計4回、僕と浦上さんのマンツーマンで特訓しました。僕が演技をする度に浦上さんに演出をしてもらうことを繰り返して、それを必ず1話丸々やっていました。もちろんそこでの演出と実際の現場は違うものになりますが、この経験はとても大きかったですね。実力がまだ足りないと自覚できますし、逆に言えば信用もされているなと。打って響かないやつだと思われたら収録前にわざわざ呼ばず、現場に残すはずなので。次に、目指しているものは同じだけど、音響サイドの考え方と谷口監督の考え方の道行きが異なっていることも見えました。それと自分が考えてきたことを瞬時に捨てる力も身に付きました。最初は全然質が違うと戸惑いましたが、作り手の角度が変われば見せ方が変わるのは当たり前で、主観で仕事をしていると意外と気づけないんですよね。何か大正解を出さなきゃいけないとか、求められていないハードルを勝手に作ってしまいやすい中で、既成概念に捉われないで考えていきましょうと、その1ヵ月間は提示してもらっていた気がします。この作品だけでなく、その後の声優人生にとってもの凄く大事な時間だったと思います。

──2022年10月1日から、OP&ED楽曲を刷新した特別版『15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ R2』が放送されています。新しい主題歌をお聴きになった感想を教えてください。

福山今までも編集版やスペシャル版などでその時のアーティストの方たちが担当するケースがあり、今回も編集は変えていますがOP映像の素材を全て新しく作り直したわけではないので、違和感はなかったですね。当時だったら考えられないFLOWさんとORANGE RANGEさんのコラボで「デイドリーム ビリーヴァー」を聴ける。時間が経っていないとできない、経っているからこそ面白い施策をアーティストサイドも考えてくれる作品になっていることをOPEDからも感じられました。当時の雰囲気を感じさせる面もありつつ、今の人に向けた新しい要素もあり、大変幸せなタイトルだなと。純粋に楽しませてもらっています。

──スマートフォンゲーム『コードギアス Genesic Re;CODE』や『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』はプレイされましたか? 福山さんはどのように楽しんでいますか。

福山ヘビーにやったり、ライトにやったり、色々と遊んでいます。『コードギアス 双貌のオズ』など『Genesic Re;CODE』には自分が関わっていない作品が多いので、純粋に別物として触れています。今はマルチバースの概念が根づいたおかげで、アンソロジーの組み換えをこちらから説明しなくても受け入れてもらえるようになりました。演じている時もこれはこれとして、バカバカしいこともシリアスなことも思いっきりできます。対する『ロストストーリーズ』は、実際にあった歴史を変えない様にやっていくのでもっと難しいです。『Genesic Re;CODE』は久しぶりに新作をやっている感覚ですね。

『コードギアス 奪還のゼット』はゼットが何かを奪還するんですよね(笑)

──未だに謎の多い新作アニメーションシリーズ『コードギアス 奪還のゼット』に期待することはありますか?

福山期待するとなったら、当時僕らが味わった苦しみを味わってほしいです(笑)。もちろん良い意味でですよ。今のコロナ禍の中でこれを作り上げていくのは相当難しいはずです。僕らはありがたいことに約30人が同じところに集まってやれたので、上手くいくこともいかないことも含めて一緒に共有できていました。土台の世界を共有している『コードギアス 奪還のゼット』に至っては、どのような熱量を込めるかについてそれぞれが責任を持たなければいけないので、僕らよりよほど大変な作業をしているはずです。今の人たちが生み出した「コードギアス」の熱量を期待したいですね。僕は完全な視聴者ですから、正直ストーリーもあまり知らないので、ゼットが何かを奪還するんですよね(笑)。ルルーシュは反逆して、アキトは国が失われた訳ですからね(笑)。時系列は聞いていますが、物語の始まりも終わりも知らないので、いち視聴者として楽しみにしています。

──では最後に、「コードギアス」シリーズを愛するファンへメッセージをお願いします。

福山もちろん望んでいたことではありますが、シリーズ化は予想していなかったことでした。企画の出発段階では「コードギアス」の名前もなく、元々は単体作品『反逆のルルーシュ』として作られ始めたものが、「コードギアス」の冠を持ったことによってシリーズ化できるようになりました。あくまで作り切った先の願望であって、作っている時にシリーズ化させようとは考えていなかったはずです。それが幸いなことに観てくださった皆さんの熱量の結果として、『反逆のルルーシュ』が外れて「コードギアス」という1つの世界が出来上がった。これは作り手側だけではなく観る側の支えがないと絶対になし得ないことなので、シリーズになったことは本当にただただ感謝の一言です。そのおかげで過去にやった作品が忘れられるわけではなく、今も存在していることを常に毎年この時期(12月)になると知らされます。それがどれだけ幸せなことなのかは、多くの作品に携わっていれば分かります。今後「コードギアス」が皆さんにとって新しい刺激になり、そしてまた原点と言って頂けるのであれば、原点に帰れる1つの窓口になっていくことを願っています。「コードギアス」はその時代で常に新しいものをくれるコンテンツなんだと思って頂けるようなシリーズになることを僕も願っております。これから共に「コードギアス」シリーズの1人の視聴者として一緒に支えていけたら幸いです。

取材当日行われた、
「15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ お誕生日おめでとう上映会」
公式レポートはこちら

PROFILE

福山 潤(ふくやまじゅん)
大阪府出身。2007年に初代声優アワード主演男優賞受賞など数々の受賞歴を誇る。主な作品に『七つの大罪』キング役、『暗殺教室』殺せんせー役、『おそ松さん』松野一松役、ゲーム『ペルソナ5』主人公役などがある。

 

<発売情報>

コードギアス 反逆のルルーシュ 5.1ch Blu-ray BOX(特装限定版)
好評発売中
税込価格:¥33,000
品番:BCXA-0986


コードギアス 反逆のルルーシュ R2 5.1ch Blu-ray BOX(特装限定版)
好評発売中
税込価格:¥33,000
品番:BCXA-0987

 

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