『マクロスF』Blu-ray Box 発売記念 中島愛(ランカ・リー役)×May'n(シェリル・ノーム<歌唱担当>)スペシャル対談
『マクロス』シリーズ40周年・『マクロスF』15周年の節目に、『マクロスF』TVシリーズのBlu-ray Boxが発売! それを記念してランカ・リー役の中島愛さんと、シェリル・ノームの歌唱を担当したMay'nさんによるスペシャル対談をお届けする。二人の歌姫に作品や楽曲への思い、ライブイベントの裏話などをたっぷり語ってもらった。
ようやく現代が『マクロスF』の世界に近づいてきたなって感じがします。(May'n)
──『マクロスF』のTVシリーズ放送から15年が経ちました。お二人にとって『マクロスF』とはどういう存在か、改めて教えてください。
中島月並みな言葉になってしまいますが、デビュー作なので、やっぱりかけがえのない作品です。この作品に出会えていなかったら今の自分はないと思う瞬間が、この15年に何度もあったので、自分の人生を変えてくれた作品だなと改めて思います。当時から反響の大きさは感じていましたが、年月を重ねるたびに「本当にすごい作品に出演させてもらったんだ!」と感じることが増えている気がします。
May'n私はすでにアーティストとしてデビューはしていたんですけど、『マクロスF』からMay'nに改名して、たくさんのステージに立たせてもらうようになったので、やっぱり今でも特別な作品ですね。15年経った今でもこうやってBlu-rayが発売されたり、ライブをさせていただいたりすると、たくさんの方に愛されている作品に関わっているんだなと感じます。
──そんなたくさんのファンに愛される『マクロス』シリーズですが、当時そのタイトルの大きさを実感したエピソードは何かありますか?
May'n私は、『マクロスF』の歌を歌うことになったと情報解禁された途端に、所属事務所の方たちから「すごいじゃん!」って声をかけられたことを覚えています(笑)。初代『マクロス』のファンだった方々だったみたいで。歴史あるシリーズに参加できたんだと実感しましたね。
中島私はマクロス25周年記念のライブでお披露目というかたちで、ステージデビューさせていただいたんですけど、新人の自分が飯島真理さんや速水奨さんという大先輩の方々と同じステージに立っていることが信じられなかったです。しかも、私が参加する時点で25年の歴史があるなんて……と圧倒されましたね。
──TVシリーズ放送時と今とで、作品の捉え方やキャラクターの印象が変化した部分はあるんでしょうか?
中島放送当時はランカたちと同世代だったので、高校生の気持ちが手に取るようにわかる一方で、オズマお兄ちゃんや大人世代のキャラクターの気持ちは正直よくわからなかったんです。でも今はお兄ちゃんやキャシーに近い目線で見ている自分がいるんですよ。例えば、あの頃は「アルトくんはシェリルさんとランカ、どっちかはっきりして!」と思っていたんですが、今なら「まだ高校生だしそんなにきっぱり決められないよね」って思ったり(笑)。
May'nそっか、考えてみればまだ高校生だもんね(笑)。
中島そうなんだよね。それに今なら、歌手になりたいランカより、ランカの芸能活動を心配するお兄ちゃんの気持ちに共感しちゃいますね。「大変なこともいっぱいだよ」って言いたくなりますから(笑)。
May'n私は逆に、当時も今もあまり変わらないかもしれないですね。いつもシェリル目線で観ていると言いますか、「シェリルつらいよね」「シェリル、最高だよ」って思っているので(笑)。むしろ、今観返しても古く感じないことがすごいなと思います。音楽も戦闘シーンも、今観てもかっこいい。設定が近未来というのもありますが、ようやく現代が『マクロスF』の世界に近づいてきたなって感じがします。作中でやっているようなホログラムのライブも、何年後かには実現するのかなって思うとワクワクしますし。
成長した今なら、「今日声を出し過ぎたら明日に影響があるかも」と調整するんですけど、当時の私たちは常に全力でした。(中島)
──15年経ってもまったく色褪せないのがすごいですよね。では、ご本人ではなくキャラクターとして歌う際に意識していることは何かありますか?
中島私は、一歳でも若くフレッシュに感じてもらえるように……(笑)。
May'n大人になっちゃって(笑)。
中島『劇場短編マクロスF~時の迷宮~』で少し大人になったランカの姿も描かれて、今の自分との距離が少し縮まった気もするんですけど、やっぱりランカらしいフレッシュさは大事にしたいなと。いつでも新鮮な気持ちで歌と向き合って、みずみずしくありたいなと思っています。逆に当時は、ちょっと背伸びしているというか、大人っぽく歌いたいと思っていた記憶がありますね。
May'nシェリルは最初からスーパースターなので、私は当時も今もシェリルを追い求めていると言いますか、シェリルに追いつくためにもっとどうしたらいいのかを常に考えていますね。自分自身がキャリアを重ねていくことで、少しずつ近づけている気はするんですけど、まだまだ終わりはなくて。だから、常にそのときの自分のベストパフォーマンスをぶつけることが、シェリルに一番近づく方法だと思っています。
──銀河のスーパースターであるシェリルの歌唱担当ということで、やはり当時はプレッシャーも大きかったんでしょうか?
May'n15年前は私もまだ若くて経験も少なかったので、菅野よう子さんが細かくディレクションしてくださった歌を、なんとかみんなに届けようと頑張っていましたね。シェリルらしい色気とかも、いろいろ研究して。でもこの15年のうちに自然と身に着いたものも多いので、ライブをするたびに「今回が1番シェリルでいられた」と感じるし、今後もまた『マクロスF』でライブに出演させていただく機会があれば、よりシェリルに近づけるんじゃないかなと思っています。
──『マクロスF』のライブイベントで、とくに印象に残っているエピソードを教えてください。
May'n初めて一緒にライブをやったのは、Zepp Tokyoだっけ?
中島うん、そのライブ(マクロスF超時空スーパーライブ デビュー! ランカ・リー with シェリル・ノーム)だったと思う。当時はステージとリハーサルと日常の境い目がないくらい、ずっと一緒にいた気がします。だからライブ中より、私はリハーサルの方が……。
May'nそのリハーサルの話、いつもするよね(笑)。
中島それくらい印象に残ってるから(笑)。当時は各ソロパートのリハーサル中に、お互いのパフォーマンスを見学させてもらうことが多かったんですね。それに、たぶん菅野さんの意向でもあったと思うんですけど、リハーサルから全力だったんです。
May'nそうそう、力を抜いたことがないよね。今なら自分でいろいろわかるけど。
中島成長した今なら、「今日声を出し過ぎたら明日に影響があるかも」と調整するんですけど、当時の私たちは常に全力でした。それでMay'nちゃんがリハで「Welcome To My FanClub's Night!」を歌うところを、後ろから見学していたんですけど、あの光景は忘れられないですね。後ろから見ていると、歌っている背中がかっこいいし、ヘルシーな色気にあふれていて……。しかも、あのパフォーマンスを後ろから見られるのって、私くらいじゃないですか。あの光景は、ファンのみんなにも譲れないですね(笑)。
May'nそんなに(笑)? でも嬉しい。私はライブのときに、愛ちゃんがどう見てもランカだったので、すごいと思ったのを覚えています。初々しさがあって、アイドルっぽい指先の表現や全身の使い方がまさにランカそのもので。シェリルの場合、声を遠藤綾さんが演じていらっしゃることもあって、私は「どうしたらライブでシェリルだと思ってもらえるんだろう」と試行錯誤していたんです。歌っているときの角度を意識したり、どういうパフォーマンスがシェリルらしいのか、答えを探さなきゃいけなかったんです。だからこそ、自然とランカでいられる愛ちゃんはすごいなって。
May'nちゃんの歌は、命をかけてるって伝わってくるんですよ。そういう姿勢まるごと好きですね。(中島)
──初めて会ったときのお互いの印象は覚えてらっしゃいますか?
May'n私が見学しに行ったアフレコで、一瞬だけ会ったのが最初かな?
中島でもあのときは挨拶ぐらいで、よく覚えてなくて。気づいたら隣にいた感じがする。でも、初対面のときのことしっかり覚えていたかったな……。
May'n毎日緊張している時期だったし、覚えてなくても仕方ないと思う。私は、先に愛ちゃんがランカ役だと世間に発表されたので、愛ちゃんに会ったときに「雑誌に載ってた子だ!」と思ったのを覚えてますね(笑)。同い年の子ということで、心強く感じていた部分もありました。
中島ちゃんとしゃべったのはレコーディングのときだったよね。いつも二人でレコーディングスタジオにいたから。
May'nそうだね。入れ替わりで録ることもあれば、二人の歌もあって。この業界はデュエットであっても一人ずつ別々に録るのが当たり前なんですけど、私たちは同じタイミングで一緒に録ることがすごく多かったんです。別のブースで録ることも、同じブースに入って「せーの」で録ることもあったよね。
中島あった! 第7話の「インフィニティ #7」がそうだったのを覚えてる。あれはデモだったのかもしれないけど。
May'nデモだとしても、そんなレコーディングの仕方はなかなかしないよね。
──ちなみに、お二人が最初に打ち解けたなと感じた瞬間はいつだったんでしょうか?
中島May'nちゃんが「この日は一緒にスタジオに行こう」と誘ってくれて、スタジオの最寄り駅前で待ち合わせしたことがあって。May'nちゃんは先にデビューしている芸能界の先輩という意識が強かったから、私からは誘えなかったんです。だからこそ、声をかけてもらえたのがすごく嬉しかったのを覚えてますね。
May'nそんなこともあったね!
中島ランカとシェリルは同じユニットというわけでもないし、当時はどこまで仲良くしていいかもよくわからなかったんです。ライバルっぽく、普段からもっとバチバチしていた方がいいのかなとか(笑)。「困ってることない?」って聞いてくれて、本当に嬉しかったな。
May'n同い年の子と一緒に仕事をするのは私にとっても初めてだったから、仲良くなりたかったんだと思います。
──素敵なエピソードありがとうございます。では、アーティストとしてお互いリスペクトしている点や、歌声の魅力などについて教えてください。
中島正直、魅力と尊敬できる点しかないんですけど……。
May'n(笑)。
中島なんとか一つ選ぶとしたら、常に歌に対してハングリーな姿勢ですね。細かい技術もすごいし、上手いのは当然なんですけど、何より熱いというか……。May'nちゃんの歌は、命をかけてるって伝わってくるんですよ。そういう姿勢まるごと好きですね。歌を中心に生きている感じがして、生まれながらのシンガーなんだなって思います。
May'n嬉しいですね。私は愛ちゃんが、ファンに寄り添う目線を常に持っているところを尊敬しています。表に立っていると、「自分がこうしたい」という気持ちがどんどん大きくなっていくのが普通だと思うんですけど、愛ちゃんはキャラクターとしてファンに歌を届ける意味みたいなものを、常に意識している感じがして。私も、そういう姿勢に刺激をもらっている部分はありますね。あと、あんなにみずみずしくフレッシュに歌えるのは本当に才能だと思います。愛ちゃんはフレッシュさを心がけてるって言ってましたけど、この前のライブで、ランカの10代の歌声が今でも出せることに衝撃を受けましたね。
中島本当に?
May'nびっくりした。まだ何も知らない10代の女の子みたいな声を出すんですよ(笑)。変わらない素晴らしさを感じましたね。
お互いが自分の全力をぶつけ合う曲だからこそ、不思議なパワーが生まれる気がする。(May’n)
──シェリル・ランカとして数々の曲を歌ってきたお二人ですが、とくに思い入れのある一曲を教えてください。
中島TVシリーズだと私はやっぱり「アイモ」かな。ランカはもちろん、シェリルも歌っているし、歌い継がれている『マクロスF』の曲ということで思い出深いですね。「アイモ」はいろんなバージョンがあるんですけど、実はそんなに苦労することなく録ったんですよ(笑)。アカペラから歌が始まるからどうしようと思いながらレコーディングに臨んだんですけど、「自分の好きなように歌ってみて」と言われて、気がついたら終わっていた感じです。あんなに何度も使われる曲なのに、さらっと収録しちゃったというか。だけど、あのときにしか出せない音色があったと思うので、そうやってさらっと録ったものが一番よかったなと自分でも思います。
May'n私は……本当に悩みますね。一番大切な曲は「ダイアモンド クレバス」なんですけど、「Welcome To My FanClub's Night!」もすごく印象深くて。というのもこれは、まだシェリルの候補者が何人かいる中で、デモを録った曲でもあったんですね。絶対に選ばれて歌手を続けたいと思っていたので、この曲に自分の人生をかけるという意気込みでレコーディングをしたのを覚えています。そういう意味では特別な一曲ですね。
──ライブなどで一緒に歌った曲についての印象的なエピソードはありますか?
中島「マクロスFギャラクシーツアーFINAL at パシフィコ横浜」で見つめ合って歌った「ライオン」は忘れられない。「ライオン」って、二人がバトルしているわけじゃないし、同志の曲でもないけど、一緒に歌わないと成立しない気持ちよさがある曲なんです。それで、あのライブで向き合って歌っているときに「10年後も二人ならこうやって歌っていけるかもしれない」というビジョンが見えた気がしたんですよ。自分のソロ曲でそう感じたことはなくて、「華やかなステージで歌えるのは今だけかも」って思っていたのに(笑)。
May'nそうなんだ! 『マクロスF』を代表する曲になるっていう確信があったの?
中島これはすごいっていう手応えがあったの。自分一人じゃ絶対に得られない感覚だったと思う。
May'nでも確かに「ライオン」は不思議な曲だなと思いますね。二人の曲だけど、たぶん力を合わせて歌おうとはお互いに思っていなくて。
中島うん、全然思ってない(笑)。
May'nでもお互いが自分の全力をぶつけ合う曲だからこそ、不思議なパワーが生まれる気がする。互いの色が一つに混じり合わずに、そのままぶつかっていると言いますか。一人じゃ歌えない曲だなって、パフォーマンスするたびに感じますね。
──それでは、Blu-rayで観返す際にとくに注目してほしいポイントを教えてください。
中島いやもう、注目してほしいポイントがありすぎて、具体的なシーンを言い出すとキリがないんですけど……(笑)。そういえば当時は、具体的にどこでどの曲が使われるかとかもよくわからないし、来週の台本の内容がギリギリまで知らされないことが多かったんです。May'nちゃんもそうだった?
May'n私なんて、よく「えーっ!?」ってファンのみんなと同じタイミングで驚いてたよ(笑)。もちろん「真空のダイアモンド クレバス」みたいな曲は、どういう場面なのかちゃんと教えてもらっていましたけど。
中島TVシリーズは最後の展開もけっこうギリギリに決まったみたいですし、実はものすごいライブ感で作られているんですよ。そういうことを知ってから観ると、また違った面白さがあるかもしれません。
May'nそれでいうと、河森総監督のひらめきみたいなものがリアルタイムで込められていた印象がありますね。例えばライブに来てくださった河森さんが、私が声出ししているのを見て「アーティストってこうやって声出しするんですね。シェリルのシーンに入れます!」と言ってくださったことがありました。そういう細かいこだわりが込められているので、歌手が出てくる作品としてすごくリアルに作られていると思います。そんなところも気にしてもらえたら、違った角度でより楽しめるんじゃないかな。
──最後に、ファンの方々へメッセージをお願いします。
中島『マクロスF』と『マクロス』シリーズを、長い間愛し続けてくださってありがとうございます。放送当時は観ていなかったけど最近観て好きになってくださったという方もいたり、いまだに広がりを感じるので、本当にありがたいなと感じています。さっきMay'nちゃんも言っていましたが、本当に古くならないんですよね。懐かしいというより、常に新しさを感じさせてくれる作品だと思うので、この機会にBlu-rayでその世界観を楽しんでほしいですし、シリーズに新たな展開があるように今後も応援し続けてもらえたら嬉しいです。
May'n私自身、命をかけてレコーディングしている曲ばかりですし、映像と一緒に聞くとまた印象が変わって聞こえる曲がたくさんあると思うので、Blu-rayでたくさん楽しんでもらえたらいいなと思っています。それから、この15年の間に、『マクロスF』を見て声優や歌手を目指したといった声を聞くことも増えていて、年齢やキャリアを重ねるほど作品のすごさを感じるんですね。私にとってすごく特別な出会いだったと改めて思っているので、この機会にまた新たに『マクロスF』に出会ってくれる方が増えるといいなと願っています。
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