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「イマレコ!」おねがい☆ティーチャー&おねがい☆ツインズ[特集サイト「プレイバックエモーション」]

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「男の子達の夢」と「生々しさ」を合わせ持つ「おねがい」シリーズ

『おねがい☆ティーチャー』と『おねがい☆ツインズ』は、2002年~2003年にかけて放送され、世界も舞台も、制作スタッフも同じくする。「おねがい」シリーズと総称され、「おねてぃ」「ツインズ」の愛称で呼ばれる両作品は、当初は地上波での放送もなく、視聴者も限られていたはず。それでも10周年、20周年のイベントごとに湧き上がるファンの熱気は、逆説的に存在感の大きさを物語っている。

「おねてぃ」「ツインズ」に共通する要素は、1つには「男の子達の夢」に全力で応えたということ。主人公はどちらも思春期の男子であり、シチュエーションだけを抜き出せば「美人の女教師と結婚」と「ふたりの美少女と同居生活」である。日常から嬉しい何かがあふれ出すのは約束されているし、実際にその約束は守られている。

もう1つは、夢の先にある「生々しさ」にも正面から取り組んだことだ。教師と生徒が人目に隠れて新婚生活を送ったり、あるいは多感な10代の男女3人が1つ屋根の下にいることは、周囲にも波乱やあつれきを及ぼす。そうしたドロッとしかねない情念を、両作品とも避けるどころかドラマのダイナミズムに昇華していった。

夢が仰ぎ見る憧れだとすれば、情念は地に足付いた共感を呼ぶ。羽音たらくの可愛らしさと深さのあるキャラクター原案、魔法少女からガンダムまで才能の爪痕を残した黒田洋介のシナリオ、それらを爽やかにしてしっとりしたドラマに紡ぎ上げた井出安軌監督の手腕。そこにキャラクターの息づかいまでも細やかに表現するキャストの絶妙さも加わり、「おねがい」シリーズは20年を経た今なお愛され続け、不朽の魅力を放ち続けているのだろう。

「おねてぃ」「ツインズ」それぞれの良さ

もちろん、それぞれ2作ともに異なる味わいがある。「おねてぃ」は、高校1年生の草薙桂が湖に宇宙船が不時着するのを見た翌日、クラスの新担任として風見みずほが着任。お隣に引っ越してきたみずほが、昨夜見た宇宙人だったことを思い出す……という、SF色の濃いストーリーだ。

ふつう教師と生徒が付き合うだけでも一波乱となるはずだが、「宇宙人であることを口止め」という非日常的にも程がある動機が「結婚」まで突破してしまうドライブ感。叔父夫婦が「実はみずほが赴任する前に2人は結婚していた」という設定を考えたり、それに校長が理解を示して丸ごと受け入れたり、みずほも乗り気になったりと、怒濤の展開には快感さえ覚える。

しかし、桂は成り行きに流されるようなヤワな主人公ではない。3年間もの「停滞」(昏睡状態)があったため、実際の年齢は18歳。その停滞を打ち破ろうと、前へ、前へと進もうとする。精神年齢も高いのか、見た目には年齢差のあるみずほと対等の“夫婦”として振る舞った印象もある。

かたや「ツインズ」は、物語の始まりとなった「正体不明のUFO騒ぎ」(おねてぃ関連である)以外はSF色はほぼ皆無。テレビに写った一軒家は、1人の少年と2人の少女が持つ写真にもあった……。2年後、その家を借りて住む高校生・神城麻郁のもとに、活発そうな宮藤深衣奈とおしとやかそうな小野寺樺恋が訪れる。

麻郁はイケメンで在宅プログラマーとして働き、一軒家を借りるほどの稼ぎもある。結局、深衣奈も樺恋も家に住まわせて養っており、恋愛アニメの主人公としては異例の自立ぶりだ。責任感もあり、ぶっきらぼうながらも優しい。ヒロインどころか、視聴者まで惚れかねないのである。

そして深衣奈も樺恋も、「麻郁の肉親かもしれない」から同居でき、肉親でなければ同居できないが恋人にはなれる。そのため2人は「恋愛同盟」を結成し、互いの恋を応援し合う。この緊張関係が、視聴者をしてドラマの行く末に前のめりにさせるのだ。

「聖地巡礼」ブームの先駆け

こうして「恋愛アニメの最先端」を走った両作品は、楽曲面では2000年代初めの恋愛ゲームの文脈を取り入れている。「おねてぃ」のI'veは『AIR』などのビジュアルアーツに所属し、「ツインズ」のfeelは『みずいろ』等に楽曲を提供していた集団だ。当時の美少女ゲーム、特にオープニングは楽曲の最先端に位置している1つだった。

そして「おねてぃ」「ツインズ」とも、冒頭の本編からオープニングへとなだれ込む。それが主題歌を印象づける一因となったのかもしれない。

最後に「おねがい」シリーズで忘れてはならないのは、「聖地巡礼」という言葉が世間に浸透するよりも早く、両作品の舞台である木崎湖を訪れるファンが現れ始めたことだ。

2000年初頭に、デジカメが普及した時期でもあったからか、実際に2003年頃に「巡礼」した人のブログ等には、「デジカメを買った」との記述も見られる。アニメの制作サイドもロケハンに活用し、視聴者もロケ地を撮りに行く。そうした聖地巡礼のサイクルを回し始めたのが「おねがい」シリーズではないだろうか。

文:多根清史

PROFILE

多根清史(たね きよし)
大阪府大阪市生まれ。京都大学大学院法学研究科修士課程修了。『CONTINUE』の編集デスクを経て、フリーのライターとなり、ゲームやアニメなどのジャンルで精力的に執筆中。著書に「教養としてのゲーム史」(ちくま新書)、「ガンダムと日本人」(文春新書)などがある。

 

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