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「名作ヒストリー」カウボーイビバップ[特集サイト「プレイバックエモーション」]

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パッケージメディアの転換点を象徴するタイトル『カウボーイビバップ』

まだ覚えている人も多いと思うが、『カウボーイビバップ』はパッケージメディアの転換点を象徴するタイトルだった。少し前にリリースされたゲームハード・プレイステーション2は、DVDプレイヤーとしても高性能であることが知られていた。当時、このプレイステーション2で見るためによく買われているとしばしば人々の口の端に上ったのが、このスペースオペラならぬ、“スペースジャズ”を自称する作品のDVDだった。

当時はまだ、普及率No.1のVHSと、マニア御用達である直径30cmのレーザーディスクが現役。そんなアニメファンのメディア環境が、ぐっとDVDへと傾くきっかけとして『カウボーイビバップ』の存在は大きかった。どうしてそんなことが起きたかといえば、端的に言って『カウボーイビバップ』が「よりハイスペックな環境で楽しみたい」と思わせるだけの、シャープで洗練されたビジュアルと粋なクールな音楽でできていたからだ。華々しい導入から始まる『Tank!』、それと同期しながら展開される、ソール・バスにも通じるグラフィカルなビジュアル、このオープニングを見れば、本作をDVDで“浴びたく”なった当時の人の気持ちはすぐ伝わるはずだ。

紆余曲折あった後、WOWOWで『カウボーイビバップ』が全話放送されたのは1998年秋から1999年春にかけて。舞台は2071年の太陽系。その太陽系をまたにかけて犯罪者を追う賞金稼ぎ=カウボーイたちがいた、というのが基本の設定だ。儲かる仕事じゃないが、世間からドロップアウトしてしまったメンツにはちょうどいい身の丈にあった賞金稼ぎという仕事。スパイクたちは、もともとは惑星間航行漁船だったビバップ号を根城として、賞金首を追って宇宙を東奔西走(?)する。

魅力的なキャラクターたちを描き出したのは川元利浩。主人公のスパイクは、その長い脚を少しだらしなく折り曲げた力を抜いたポーズがよく似合う長身の男。彼はマフィア・レッドドラゴンの構成員であった過去もあり、ベビーイーグル(ジェリコ941)片手のアクションも得意で、ジークンドーの使い手でもあるという設定だ。ジークンドーは、『燃えよドラゴン』などで知られるブルース・リーが作り上げた武術。ここでわかる通り『カウボーイビバップ』には、1970年代から1980年代前半ぐらいまでの“そのあたり”のジャンル映画の影響も色濃く受け継がれている。スパイクがタバコを嗜む姿も、今から見るとより増して、“あの頃のヒーロー”らしく見えてくる。

シリーズ構成は信本敬子。そこにさまざまな脚本家が参加して、まるで万華鏡のようにさまざまなストーリーを展開した。例えば、スパイクの過去を知るライバル、ビシャスが登場すれば、甘さと苦さが交錯する血の味のバラード、あるいは、ガニメデの港町で相棒のジェットと別れた女が再会をすれば、言えなかった言葉を飲み込むようなオトナの演歌。こんな調子でアクションをベースにしながらも、サスペンステイスト、ホラーテイスト、サイバーパンクに人情話と、シリーズのイメージをひとつに絞らせない。この幅の広さは、各話を印象づける小道具を並べると、「肉なし青椒肉絲」から始まり「βのビデオデッキ」「スペースシャトル」「冷蔵庫の中になんだかよくわからないもの」と、脈絡がまったく感じられないものになることからもよくわかる。

そして音楽を担当したのが菅野よう子。『Tank!』に代表される軽快でクールな音楽だけにとどまらず、カウボーイというキーワードからの連想か、ブルースやカントリー調の音楽も多くあり、そうした楽曲からこの作品がその奥底に湛えている情感がにじみ出てくる。

そう、『カウボーイビバップ』といえば、「クールで粋」「かっこいいアクション」という魅力がまずもって語られることになるが、そうした一番言葉にしやすい魅力の奥に、また別の魅力が眠っているのだ。それはいうなれば「青春の後始末」にまつわる情感といってもいい。

かつて過ごした幸福で充実した時間。それはもはや消え去ってしまった。そのことを頭では理解しながらも、終わってしまった時間の残り香に迷う、「青春の尻尾」ともいえる一種のモラトリアム。そこから生まれる情感が、『カウボーイビバップ』に、屈折した青春ものという側面を加えている。

現時点から振り返ってみると、監督である渡辺信一郎の作品には、この「モラトリアムが終わっていくこと」に関する作品は案外多い。具体的には、直接的にそこを描いた作品としては『サムライチャンプルー』『坂道のアポロン』が挙がるだろうし、総監督・河森正治の色も濃いとはいえ、初監督作品『マクロスプラス』も「終わってしまった青春時代に改めてケリをつける物語」であった。

そして、劇場版『COWBOY BEBOP 天国の扉』はまさに、この「終わってしまった時間にケリをつけること」をめぐる物語となっている。ここでスパイクが追うヴィンセントという男は、かつて彼が生きた幸福で充実した時間の「残り香」の中にだけ生きている存在だ。そういう意味でヴィンセントは、スパイクの合わせ鏡のようなキャラクターなのである。そのことをスパイクが自覚していることを示すラストのカットは特に印象的だし、だからこそ、TVシリーズのどこかに入るエピソードとして制作された劇場版が、TVシリーズの最終回の前触れのようにも見えるのである。 放送開始から四半世紀が経ち、当時プレイステーションとDVDを買った世代ももういい年齢のはずだ。自分の中の「若き日々の尻尾」に、指鉄砲で「バァン」と止めを指すのにもいい頃合いかもしれない。

 

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