1989年に「ヤングマガジン増刊 海賊版」(講談社)にて士郎正宗が原作漫画を発表、連載開始以来、押井守監督による『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995年)をはじめ、アニメーション、ハリウッド実写映画など様々な作品群を構成し、世界中に驚きと刺激を与え続けてきた「攻殻機動隊」シリーズ。
最新作『攻殻機動隊 SAC_2045』は、『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズを手掛けた神山健治と、『APPLESEED』シリーズを手掛けた荒牧伸志によるダブル監督、制作はこれまでの「攻殻機動隊」のアニメーションを制作してきたProduction I.Gと、SOLA DIGITAL ARTSの共同制作によるアニメーションシリーズとなります。
日本アカデミー賞6部門受賞の『新聞記者』や『余命10年』等、実写映画で活躍する藤井道人を監督に迎え、本シリーズのシーズン1に新たなシーンを加えて再構成した劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』が2021年11月より全国劇場公開。
そして、今回、シーズン2に新たなシーンと視点を加えて劇場版として再構成した劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』が11月23日(木・祝)より3週間限定・30館にて劇場公開がスタートしました。
この度、11月25日(土)に立川シネマシティにて実施した極上音響上映スタッフトークイベントのオフィシャルレポートが到着しました。
イベントには、演出と編集を手掛けた古川達馬さんと、「SAC_2045」シリーズを通してサウンドデザイナーを担当した高木創さんが登場。高木さんが直接音響を監修した、極上音響による上映を体験したばかりの熱いファンの前で制作にまつわる裏話が次々と明らかとなりました。
劇場版「攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間」極上音響上映スタッフトークイベント オフィシャルレポート到着!
『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』 極上音響上映スタッフトークイベント 概要
■日時:11 月 25 日(土)14 時 45 分〜15 時 15 分 ※上映後イベント
■登壇者(敬称略):古川達馬(演出&編集)、高木 創(サウンドデザイナー)
■場所:立川シネマシティ シネマ・ワン(東京都立川市曙町2丁目8−5)
▲写真左から 司会を務めた牧野治康プロデューサーと、古川達馬、高木創 ※敬称略
映画に愛のある劇場・立川シネマシティで映画を愛する観客たちが集まって開催された『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』スタッフトークイベントに、演出と編集を手掛けた古川達馬と、「SAC_2045」シリーズを通してサウンドデザイナーを担当した高木創が登場。高木は劇場に集まった観客たちを前に「こんなにたくさん来ていただいてうれしい」と笑顔を見せ、一方で今回上映後の開催ということもあり、古川は「普段語れない、突っ込んだ話もできればと思います」と語り、早くも観客たちから興味深々の目を向けられていた。
今回、高木が直接劇場に出向いて音響を調整した“極音上映”が実施されており、特に OP、ED の響く感じ、音質感、低域感をオリジナルの音源を知り尽くしている高木が調整しているということで「ここよりいいところはないくらいレベルが高い」と自負。実際にどのような調整をしたのかを聞かれると、高木は「そもそも映画の音響というのは国際基準があるんですが、実際は映画館のシアターの大きさや形で微妙に違って聞こえてきます。今回は直接劇場のスピーカーで聞きながら調整していて、何かを深く求めるというよりは、なるべく思い描いている音をお客さんに届けるための調整という感じです」と貴重な音響で体験できることを明かしつつ、「だから、これから劇場で見た時に、もし物足りないと思ったら劇場に『攻殻のスペックはこんなもんじゃない』とフィードバックしてください」というまさかのリクエストも飛び出し、観客からは驚きの声も上がっていた。
前作「持続可能戦争」では編集のみを担当していたものの、本作では編集に加えて演出も担当し「前作よりもより深く関わった」と語る古川は、公開を迎えたことについて「終わっちゃったなあ、という気持ちです」と正直な気持ちを吐露。元々「攻殻」シリーズのファンで、前作の時は「有頂天だった」という古川だが、「今回は完結までやってしまえて...振り返ると幸せな時間でした」としみじみ。
一方で、普段は藤井監督とともに実写作品を手掛けていることもあり実写とアニメでの編集の違いを聞かれるとそこまで違いはなかったとか明かす。「今回は 3DCG 作品だったこともあり、1 本の映画として自分が面白い、心が動くものを組み立てるという実写と同じ気持ちで挑みました」と語った。
同様に、実写作品とアニメ作品の音響の違いを聞かれた高木も古川の言葉に頷いていたが、明確な違いとして「シリーズとして作られていたものを編集する作業になるので、もとからある映像をカットして編集点を作っていくんですがそのポイントが前作より増えて...前作と同じ感じだと思ってやりだしたら、コマ抜きをしたり、モーションを遅くしたり等が積み重なって、結局 1000 カット以上になってしまいました」と想像以上の苦労を明かすと、古川は「普通は、編集をやり終わってピクチャーロックをかけたらそこから映像は変えないんですが、今回は『すみません、やらせてください』といってダビングステージでも変更させていただきました」と申し訳なさそうに苦笑いを浮かべていた。
そんな苦労を経て完成した本作についての反省点を聞かれると高木は「言い出したらきりがない。お酒とつまみをもって、2 時間くらい語れそう」と笑いを誘いながらも「シリーズのほうでは 30 秒くらいあった銃撃戦を劇場版では 10 秒くらいに短く変更している部分があって、完成したものを聞くと同じ音をリピートしているように聞こえる部分があるんです。もっとバリエーションつければよかったな、って...」と反省するも、一方で古川は「特にないです」とキッパリ。「前回の時もなかったんですけど、今回は試写の時に、荒牧監督が笑顔で出迎えてくださって、それでよかったなって思いました」というエピソードを明かした。
シリーズと異なる展開を迎え、ほぼ新規で録り直されたというクライマックスシーンについては、既存の音声と新たに録り直した音声のニュアンスを調整する必要があったという。その中でも特に大きな違いは最後のシマムラタカシのニュアンスについてだと高木は明かした。「シリーズの際には、タカシは他のことに電脳のリソースを割いていて、ほとんど自由がない状況で素子と話しているんです。でも劇場版では、タカシが素子のほうにもリソースを割いていて自由に話せる瞬間があって、藤井監督と神山監督とディスカッションして『ナチュラルな声が欲しいね』という話になったんです」。
クライマックスシーンについては、素子がタカシの”コード“を抜いたのか、抜かなかったのか、という解釈をシリーズでは視聴者側に委ねられていたが、劇場版では明確な答えが描かれている。そのことに高木は「制作陣の中でも一致していなかったんです」と明かすと、「劇場版の制作を始めた頃には納得がいかないというか、シリーズの結末に乗り切れない気持ちがあった」という古川も「わかりやすい敗北とか、ディストピアとかではないものを神山監督は見ていたんだな、とディスカッションするうえでわかってきたんです」と明かす。「そのうえで『であれば、こういう終わり方でどうでしょうか』とクライマックスに行きつくまでの過程を付け加えさせていただいた」と語った。
そんな変更を踏まえて高木は「結果的に映画の中で表現されているものが、現実とどうリンクしているかという部分が重要なんです」と語る。「『攻殻』シリーズの最も価値があるところって、現実世界を照らすものとしての物語になっていて、社会に対するアートになっているんです。だけどこれまでと異なるのは、Netflix で配信が始まったときよりも現実が悪化して、本当に地獄みたいなことが世界中で起きてしまい、この作品が配信時よりもファンタジー性を帯びてしまったんです」と想いを込める。
時代の変化を踏まえて新たに作られた『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』だが、「最後の人間」というタイトルになったことについて古川は、「最初の意図としては素子のことでしたが、神山監督とディスカッションを重ねる中で『実は逆なんだよねという話』があった」と明かす。
劇場版では1本の映画としていろんな選択肢に対しても希望をもって終わりたい、と神山監督に伝えていたという藤井監督と古川。そこで「じゃあそこにたどり着くために素子とタカシの会話はどうなるんだろうというのを考えていったので、より素子とタカシの想いが飲み込みやすいものになっていると思います。ある種の希望を持ったものが出来上がったと思っています。何度でも足を運んでいただきたい」と自信を見せ、熱いファンからの温かい拍手に囲まれてイベントは和やかに終了した。
【イントロダクション】
Season 2を新たなシーンとともに劇場版として再構成
神山健治(総監督) × 荒牧伸志(総監督) × 藤井道人(監督)による「攻殻機動隊」、完結
士郎正宗によるサイバーパンクSFの金字塔「攻殻機動隊」シリーズ最新作
人々の意思が“電脳”に繋がれた近未来において電脳犯罪に立ち向かう全身義体のサイボーグ・草薙素子率いる攻性の組織、公安9課。1989年に士郎正宗により発表された原作コミック『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』を起源とし、アニメーション、ハリウッド実写映画など様々な作品群が展開されている「攻殻機動隊」。シリーズ最新作『攻殻機動隊 SAC_2045』は、『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズの神山健治と、『APPLESEED』シリーズの荒牧伸志が共同監督としてタッグを組み、田中敦子、大塚明夫、山寺宏一ほか『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズのオリジナルキャストが再集結。Production I.G × SOLA DIGITAL ARTSにより制作され、シーズン1が2020年4月より、シーズン2が2022年5月よりNetflixにて世界独占配信が開始。また、シーズン1を再構成した劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』は2021年11月より劇場公開され、その鮮烈なSFアクションと、時代を予見した世界感とドラマにより、新たなファンを獲得し続けている。
前作『持続可能戦争』に続き、日本アカデミー賞6部門受賞の『新聞記者』や、『余命10年』の藤井道人が監督として、シーズン2を新たなシーンと視点により劇場版として再構成。シリーズ集大成となるラストが描かれる——。
【STORY】
草薙素子たち公安9課は、難民集団「N」を率いるシマムラタカシと邂逅する
進化の特異点迫る廃墟・東京で、ポスト・ヒューマンのレイドが始まる——
2045年。全ての国家を震撼させる経済災害とAIの爆発的な進化により、世界は計画的且つ持続可能な戦争へと突入した。電脳社会に突如出現した新人類“ポスト・ヒューマン”による電脳犯罪を阻止すべく、全身義体のサイボーグ・草薙素子率いる公安9課は、先の大戦で廃墟と化した東京へと向かう。奪取された原子力潜水艦による核大戦の危機が迫るなか、公安9課、アメリカ、ポスト・ヒューマンによる三つ巴の戦闘が激化していく――。
【作品概要】
■タイトル
攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間
■劇場公開日
2023年11月23日(木・祝)[3週間限定]
■キャスト
草薙素子:田中敦子/荒巻大輔:中 博史/バトー:大塚明夫/トグサ:山寺宏一
イシカワ:仲野 裕/サイトー:大川 透/パズ:小野塚貴志/ボーマ:山口太郎/タチコマ:玉川砂記子/江崎プリン:潘めぐみ
スタンダード:津田健次郎/ジョン・スミス:曽世海司/久利須・大友・帝都:喜山茂雄/シマムラタカシ:林原めぐみ
■モーションアクター
草薙素子:川渕かおり/荒巻大輔、イシカワ:曽世海司/バトー:笠原紳司/トグサ:岡田地平/サイトー:武井秀哲/江崎プリン:山城屋理紗
■スタッフ
原作:士郎正宗「攻殻機動隊」(講談社 KCデラックス刊)/総監督:神山健治 × 荒牧伸志/監督:藤井道人/演出&編集:古川達馬/脚本:神山健治、檜垣 亮、砂山蔵澄、土城温美、佐藤 大、大東大介/キャラクターデザイン:Ilya Kuvshinov/CGディレクター:松本 勝/3Dキャラクタースーパーバイザー:松重宏美/プロダクションデザイナー:臼井伸二、寺岡賢司、松田大介/モデリングスーパーバイザー:田崎真允/バックグラウンドモデリングスーパーバイザー:市川 聡/リギング&キャラクターFXスーパーバイザー:錦織洋介/リギングスーパーバイザー:井上暢三/モーションキャプチャディレクター:宇土澤秀公/レイアウトスーパーバイザー:崔 佑碩/アニメーションスーパーバイザー:山口雄也/エフェクトスーパーバイザー:清塚拓也/ライティング&コンポジットスーパーバイザー:高橋孝弥/テクニカルスーパーバイザー:大桃雅寛/音楽:戸田信子 × 陣内一真/サウンドデザイナー:高木 創/主題歌:「Secret Ceremony」「No Time to Cast Anchor」millennium parade/音楽制作:フライングドッグ/主題歌協力:ソニー・ミュージックレーベルズ/制作:Production I.G × SOLA DIGITAL ARTS/製作:攻殻機動隊2045製作委員会/配給:バンダイナムコフィルムワークス
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会
▼『攻殻機動隊 SAC_2045』公式サイト
https://www.ghostintheshell-sac2045.jp
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▼『攻殻機動隊 Information』公式サイト
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