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「イマレコ!」ストラトス・フォー シリーズ[特集サイト「プレイバックエモーション」]

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TSR.2MS、ブラスト・オフ! 「美少女×ミリタリー」アニメの夜明け。

本作は、発表当時最初のキービジュアルで、それまで相容れられなかった軍事マニアと美少女アニメを見事に融合してしまった。というのも、そこには主人公たちが駆るブリティッシュ・エアクラフト社の試作攻撃機「TSR-2」が描かれていたからだ。この機は、1960年代にイギリスの試作機で、核搭載可能な低空侵攻型の戦術攻撃偵察機として開発計画が進められた。開発予算が大幅に超過したこともあり、時の労働党政権により計画がキャンセルされてしまったが、その先進性は航空機マニアを魅了し、かなりマイナーな機体であるにもかかわらず、根強いファンが存在するのである。
そんなカルト機を主役においたことで、航空機ファンの注目を浴びる事となり、挙句には、海外の模型メーカーがプラモデルとして発売するまでに至ったことは、ミリタリーファンには周知の事実だろう。

登場メカニックに関しても、タイトルになっている本作オリジナル機ストラトス・フォー(本来の名称はストラトス・ゼロ)を差し置き、TSR-2(劇中仕様は本シリーズオリジナルの改良機、TSR.2MSとなる)以外にも、練習機として旧ソ連の超音速防空戦闘機Yak-28、『ストラトス・フォー アドヴァンス』では、TSR.2MSに代わり、旧ソ連のMIG-31戦闘機(この機体の設計母体となったMiG-25は、1976年に日本に亡命した事件で有名。その上、このMIG-31は実際の登場前、1982年の映画『ファイヤーフォックス』では実機とは異なる近未来の架空の戦闘機として描かれたのは、飛行機映画好きの記憶に残る)を出してくる上、1950年代のイギリスの計画機・ヴィッカース・アームストロング社のタイプ559などという計画機(実際には作られなかった)まで持ち出し、アメリカ空軍でB-52 爆撃機との競作機として作られたYB-60ジェット爆撃機に懸下して出撃するといった映画『ライトスタッフ』(1983)をオマージュしたドラマまで繰り広げ、飛行機好きを驚喜させた。


MIG-31戦闘機


タイプ559

が、さらに驚くのは、劇中での徹底的にマニアックな航空機描写だ。登場キャラクターたちの、専門的な航空&軍事用語を多用したセリフ、航空管制のやりとりからレーダーモニター表示に至るまで、かなりリアルな表現を使っているのである。当然、航空機自体の詳細なディテールは勿論、稼働時のプロセスにも余念がない。(輸送起立発射機によるゼロ距離発進まで採用するという凝りよう)

今でこそ、『ガールズ&パンツァー』(2012)や『艦隊これくしょん-艦これ-』(2013)といった作品の登場によって、アニメファンとミリタリーオタクが両立され、その知識を語ることに違和感もなくなったが、本シリーズ発表当時はまだまだ“カタブツ”だったミリタリーマニアが美少女アニメを観る等ということは、プライドが許さなかった時代であり、本作のリアルな描写が正統に評価される機会に恵まれていなかった点は残念でならない。(この頃の一般のオタク知識では、決して本作について行けるまで至らなかった…汗)
とはいえ、専門的な知識がなくとも、山内則康氏の描く主人公たちをはじめとした美少女たちは、『AIKa』(1997)、『ナジカ電撃作戦』(2001)同様、そのルックスや明朗快活なキャラクター、さらには健康的なお色気もあり、多くのファンを生み出した。これは、重くなりがちな人類と地球外生命との遭遇を扱うSF作品としては、異例なほどのライトさを醸し出し、お気楽そうに見えて深い内容を秘めた快作として本シリーズを昇華させた一因と言えるだろう。尚、山内氏は本作でメカニックデザインも担当している。

また、そんなキャラクターたちが活躍するドラマも、地球に次々と迫りくる彗星群迎撃に骨子を置きながら、その中に謎の地球外生命による感染、それに伴う天体危機管理機構上層部の暗躍といった展開が添えられているが、宇宙人や怪物といった安易な対象ではなく、映画『アンドロメダ…』(1971)を思い起こさせる、ウイルスのような目に見えない存在としての地球外生命というのも新鮮且つ現実味のある設定であった。

そうした本シリーズを軽快且つスケール感を持って支えているのが、サウンドトラックである。快活でPOPなノリで、主人公たちの元気さや心情を表す一方で、緊迫する彗星迎撃シーンなどでは、宇宙という広大な舞台にふさわしいフルオーケストレーションによる音楽が観る者を緊迫感に包む。その楽曲を担当したのが、OVA『ジャイアントロボ THE ANIMAITION -地球が静止する日-』で一躍脚光を浴びた天野正道氏であり、ワルシャワ・フィルハーモニー・オーケストラも参加していると聞けば、納得せざるを得ないだろう。中には、飛行機好きの琴線に触れるホルストの組曲『惑星』の「木星」や、映画『ライトスタッフ』のテーマ曲にインスパイアされたと思しき楽曲があるのも嬉しい。
そして、メロキュアが全作を通して歌い上げた主題歌や、主人公たちの心情を表した各挿入歌の数々も忘れてはならない。
発表から20年たった今、「美少女×ミリタリー」を大きく受け入れられるようになった時代になったからこそ観直し、その構築された世界観を今一度再評価しても良いのではないだろうか。

文:中村宏治

 

<発売情報>

ストラトス・フォー CPL. BD-BOX
2024年2月28日発売
価格:¥26,400(税込)
品番:BCXA-1896

 

▼ストラトス・フォー 公式サイト
https://www.stratos4.jp/
▼商品サイト
https://v-storage.jp/sp-site/stratos4/

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