インタビュー | 数分間のエールを

『数分間のエールを』公開記念 花江夏樹(朝屋彼方役)×伊瀬茉莉也(織重 夕役)スペシャルインタビュー【後編】

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新進気鋭の映像制作集団「Hurray!」が初の長編アニメであり、「モノづくり」をテーマに描かれる青春群像劇『数分間のエールを』が大ヒット公開中。自身の作ったもので誰かの心を動かす「モノづくり」に邁進する主人公の高校生・朝屋彼方を演じる花江夏樹さんと、彼の熱を動かすけれど「モノづくり」の道を諦めようとしているシンガーシングライターの織重 夕を演じる伊瀬茉莉也さんに、インタビュー後編では、本編の好きなシーンや、作品の鍵となるMVについての印象、そして自身の「モノづくり」についてなど、多岐に渡ってお話を伺った。
※本インタビューは本編の内容に言及する部分がございます。

──好きなシーンを教えてください。

花江彼方が独り言をつぶやきながらMVを制作している場面が好きです。ここは演じていても面白かったなって思います。「どんどんアイディアが溢れ出てくる感じがほしいです」っていうディレクションもあったりしたのですが、本当に一人でずっとしゃべっているんですよ。こんなに一人でつぶやくことはあまりないなぁ、と思いつつも、それをどう説得力があるように伝えられるかなというところで、「どうしよう」と自分でもアイディアをひねったので気に入っています。

──アフレコの際には絵がなかったと思いますが、その後実際に絵がついた状態でご覧になっていかがでしたか?

花江まず彼の制作環境がすごく潤沢ですよね(笑)。機材が。そんななかで時間が過ぎていく情景みたいなものが出ていて、完成した映像はより素敵だなと感じました。

──伊瀬さんはいかがですか?

伊瀬彼方くんと外崎が会話しているシーンで、外崎が「あれはさ、終わりの歌なんだよ」って言うところがあるんです。織重先生の歌を、彼方は「めちゃくちゃいい!」ってポジティブで素敵な楽曲だって捉えてくれているんですけど、外崎も自分の絵を描いていて、才能に少し限界を感じていて、壁にぶつかっている最中だからどちらかというと織重先生の気持ちがわかってしまうんですよね。「あれは違うんだよ。終わりの歌なんだよ」って自分の気持ちに諦めがつくように、折り合いをつけるために自分のなかにある想いを吐き出している、終わりにする歌なんだって言っているシーンがすごく好きです。最後に外崎が「なんで先生が先生やっていると思っているんだ」みたいなことを言うんですね。別に好きで先生をやっているわけじゃないって。あの歌のことをなにもわかっていないんだよって言っているシーンがすごく切なくて。外崎も壁にぶつかっていて、織重先生の気持ちがわかってしまう自分が嫌だろうし、本当はどちらかというと彼方に「夢を追いかけようぜ」って言いたいけど言えない自分だったり、彼方がまぶしく見えるだろうしっていうところも、それを言われてハッとする彼方のシーンがすごく好きです。

物語の鍵となる「未明」のMVは彼方くんが一生懸命作ったんだな、と思うとそれだけで可愛いし、素敵だなって思う作品でした。(伊瀬)

──今回、歌唱で参加されたのはアーティストの菅原圭さんです。織重 夕の歌声はライブシーンでも出てきますが、印象をお聞かせください。

花江歌声がスッと入ってくるんですけど、要所要所で熱量がバーン!とアガるような歌い方で、荒々しい部分だったりとかに織重先生の人生が重なっているなと感じて、「もっと聴きたいな」と思わせられるような中毒性がありますね。

伊瀬音楽によって、聴いている人の気持ちを揺り動かすじゃないですか。菅原圭さんが歌われている楽曲は、織重先生の気持ちを代弁した、押し出した楽曲だと思うのですが、聴いていてグッと掴まれるような、胸を強く握られている感じがして切なくもあり、ちょっと衝動的で野性味や荒々しさを感じられて、彼女の心の内の叫びみたいなものも楽曲にしっかり込められているなって感じました。

──そして物語の鍵となるのが「未明」のMVです。彼方は一度、作ったMVを夕から突き返され、「それでも」と立ち上がって再び作り上げたものでした。このMVをご覧になっての感想をお聞かせください。

花江こだわりを感じるMVだったと思います。先ほど、伊瀬さんがおっしゃった彼方と外崎のやりとりのように、見る人によって感じ方も違ってくる場合もあるのかなと思いました。でも僕個人としては彼が情熱をこめて、ひとつひとつをこだわって作っているMVだなって思います。もともとの曲も素敵ですが、それがよりイメージが膨らんだような印象を受けました。

伊瀬見ている人の精神状態や状況によって同じ作品でも受け取り方って変わると思うんです。ある人が「映画や作品を見終わったときに出てくる感想は、自分自身との合わせ鏡なんだよ」っておっしゃっていたことがあったのですが、なるほどと思ったんです。作品を見てポジティブな印象を受けたのであれば、今、自分自身のなかで湧き出てくるものがポジティブでエネルギーが溢れている状態で、逆であれば自分自身が落ち込んでいたりエネルギー値が下がっている状態。「合わせ鏡なんだよ」っていう言葉を思い出しました。「未明」のMVに彼方くんがどういう風に想いを込めたか。それがもちろんダイレクトに、見てくださっている方々に伝わることも大事ですが、見てくださっているみなさんがそれぞれにどんな状態であったとしても、受け取り手のなかで出たものが正解だと思うので、「モノづくり」のそういう部分を伝えたいのかな、と感じました。逆にみなさんはどう感じましたか?と尋ねたいです。

──その伊瀬さんから素直に出た感想というと?

伊瀬「素敵!」でした。彼方くんが一生懸命作ったんだな、と思うと愛おしいというか。それだけで可愛いし、素敵だなって思う作品でした。

──花江さんはいかがですか?

花江「素敵!」です(笑)。もともと作っていたMVからすごく変わっている時点で、彼がたくさん悩んだんだろうな、ということが見えますし、それだけ変えるのも相当な労力だと思うんです。「こうしたい」と新しいアイディアが浮かんでできたんだろうな、という物語も込みで素晴らしいなって思いました。

──このMVを作らせてほしい、と一度は突き返されたけれど彼方が夕のもとへと走るシーンも印象的でした。お二人が「諦めきれず、また立ち上がった」経験を教えてください。

花江この前、すごく欲しい洋服があって、すぐに買いに行ったものの完売していたんです。もう売ってない、という状態だったのですが、海外の通販でも探したらフランスに一つだけあって、それを個人輸入しました。執念で。それこそ「諦めきれない」という想いでした。

伊瀬そんなに欲しかったなんて、情熱ですね。わたしはある作品のアフレコでのことなのですが、わたしではなく別の方がディレクションを何回も受けられていたんですね。監督が意図していたものが伝わりきれていなくて。でも演者さんもすごく素敵なお芝居をされていたので「これはこれでOKでしょう」ってなったんです。ただ監督はこだわりを持たれていて「もう一度!」と録り直しを重ねていたんです。最終的には全部が素敵なテイクだったので「このなかから選びましょう」となってアフレコも終わったけれど、「お疲れさまでした」と帰るときに監督がちょっと悲しそうな顔をされていたんですね。わたしもスタジオを出て、雨の中を帰っていたのですが、その監督の顔が忘れられなくて、スタジオに戻って残っていらっしゃった監督に「あのシーンってこういう意図ですよね」って言ったら、監督がぱぁっと笑って「そう!」って言われたんです。あの現場、あの瞬間はたぶん誰もが演者さんのお芝居に感動していたのですが、監督はそのとき孤独になられていて、わたしが戻ってきて「こういうことですよね、わかりましたよ」って言ったのが相当嬉しかった様子だったんです。そのまま帰っても良かったけれど、勇気をもって戻って伝えられて、よかったなって思った出来事でした。

──今、学生をはじめとした「モノづくり」に熱中している人たちへエールをお願いします。

花江若さがあるので、なんでもやってみることは大事だと思います。思いついたらやってみる。その繰り返しだと思います。自分のなかにある「こうやりたい」というイメージは常に大切にした方がいいよなってことは、大人になった今も思います。

伊瀬わたしはもともと監督業に憧れてこの業界を志したので、本当は撮る側をやりたかったんです。当時はカメラを買うなんて大変なことでしたし、iPhoneもなかったですし、パソコンもそんなに身近なものではなかったですから、そもそも当時は自分で撮るという発想がなく、「モノづくり」に着手すらできなかったです。今の時代はネットにスマホ、パソコンをみんなが持っていて当たり前ですし、チャレンジをする機会は多いだろうから、なんにでも挑戦してみることは大事だと思います。

──では最後に、お二人が今とくに情熱を注いでいることを教えてください。

花江子供たちとの時間です。毎日ころころ変わるし、一週間で別人みたいに成長するので、それを楽しみにしています。僕がどう、というよりもそれを見守るのが楽しみだなって思います。

伊瀬日常生活をいかに毎日、生き切ったというか。後悔なく充実した毎日を送れるかを大事にしています。年々、一日一日が早くて、秒で過ぎていくんですよね。朝起きて、次に意識したときにはもう夕方みたいな感じなので、一日一日を大切にしなくちゃいけないなと切々と感じています。関わる人、関わってくださる人たちに対しての感謝の気持ちや、誰に対しても平等に想いを掛けたい、愛情を持ちたいと思っていますし、それが綺麗ごとではなく本当に実践できる人になりたいと思っています。情熱みたいなものは常に持ち続けていきたいので、日々をクリエイトすることに夢中になっています。

PROFILE

花江夏樹(はなえ なつき)
6月26日生まれ。神奈川県出身。出演作に『鬼滅の刃』竈門炭治郎役、『東京喰種トーキョーグール』金木研役など。

PROFILE

伊瀬茉莉也(いせ まりや)
9月25日生まれ。神奈川県出身。出演作に『HUNTER×HUNTER』キルア=ゾルディック役、『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』フー・ファイターズ役など。

インタビュー前編はこちら

 

<劇場公開情報>

数分間のエールを
2024年6月14日(金)大ヒット公開中!

 


映画「数分間のエールを」 公式サイト
https://yell-movie2024.com/
映画「数分間のエールを」 公式X
@yellmovie_2024

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