最後に小野さんが挙げたのは「ウィリアムとの一騎打ちに向かうシャーロックを送り出すジョン」のシーン。「友達を救うんだろ?」と伝えるジョンが印象的と語る小野さんに、「お母さんみたいだよね」とツッコむ古川さん。小野さんはこのシーンでジョン自身の在り方の変化を感じ、出会いからシャーロックと共に事件を解決してきたが、ここでは「最終的にたどり着いたのは(シャーロックを)信頼して託せるジョン」になっているところが、二人の関係性も含めて好きだと語る。古川さんも「ジョンはこの作品の良心ともいえる存在。そんな彼が最後にシャーロックの背中を押してくれたのは嬉しかった」と振り返った。

さらに追加として、古川さんが選んだもうひとつのシーン「シャーロックの同居人オーディション」も紹介。小野さんが3役(売れない役者、娼婦、老人)を兼ねて演じた迷シーンだが、古川さんは「声優・小野友樹の本気がここにある!」とオススメする。当時のディレクションについて斉藤さんから尋ねられた小野さんは「笑わせるような作品でもないので極端な芝居をしちゃいけない。それをやると『声優・小野友樹がいろんな声を出すだけ』になってしまい、作品世界の人たちではなくなってしまうので」と、楽しみながらも難しいバランスで演じ分けしていたことを語った。
続いては「印象に残っているセリフ」。ただし、ウィリアムの「Catch me if you can, Mr.Holmes.」は誰もが思い浮かべる名ゼリフなので「殿堂入り」として、それ以外からのチョイスとなった。斉藤さんが挙げたのは、1話のウィリアムから「タバコ一本分しか待てませんよ」のセリフ。世界を良くするために自ら悪になろうするウィリアムが、やがて灰にしかならないタバコを吸い、「一本分」が刹那の間を表しているところが作品を象徴しているようだと独自の解釈を語る。1話からアニメオリジナルで描くという、制作陣の攻めた姿勢も印象的だったとのこと。その深い考察に感心する古川さんに、斉藤さんは「まぁウィリアム、ですからね」とおどけた。
佐藤さんはシャーロックがウィリアムと初対面したシーンでのセリフ「明らかじゃん」を挙げる。このセリフはシャーロック役のオーディションにもあったため、完成版でどう演じられているか注目し、古川さんの芝居に「そうだよね!」と納得したとのこと。「探偵としてではない“人間”シャーロックの人生の変遷、面白さや楽しさ、難しさを、この一言で見せてもらって『好き!』と思った」と語り、古川さんを感激させた。
すかさず小野さんも「横からいいですか?」と付け加える形で、「まこっちゃん(古川さん)は語尾の『じゃん』の扱いがすごく素敵」と語り、会場内に拍手が起こる。シャーロックの「殺すわけねぇじゃん」のセリフもやはり「じゃん」に惹かれて印象に残り、言い捨て感が絶妙な古川さんを「じゃんの名手」と称えた。
そんな古川さんは、アイリーン・アドラーのセリフ「実力で自分が正しいと証明しなさい」を「マジで痺れた!」と挙げる。アイリーンが役者を目指す少女に言ったセリフだが、古川さんが印象に残っているのは収録時の様子。アイリーンを演じる日笠陽子さんは、本番のテイクでは諭すような優しさを含ませていたが、テストではより堂々としたニュアンスで、そこに役者としての矜持を感じて「日笠陽子カッコいい――!」と感動したとのこと。また「自分の持っているものにもっと自信を持ちなさい」というアイリーンの思いは、自分を含めて誰の心にも刺さるはずなので、そういう意味でもまた聴きたいと感じるセリフだと語った。
小野さんが挙げたのは「俺たちは相棒じゃなかったのかよ……! シャァロォォ――ック!!」のセリフ。語尾が「〜だよな、シャーロック」となるセリフが多いジョンだが、ここまで激しい雄叫びを上げるのは珍しい。ジョンはシャーロックを誤解しているが、前出の「シャーロックを送り出すジョン」に繋がるシーンでもあるので、こういうところもジョンの成長には必要だったと思うと印象に残っていると語る。加えて古川さんも、信頼するジョンに対しても欺瞞を使ってしまうシャーロックにとって、ジョンのこうした素直なリアクションはあって嬉しいものだと思うし、二人の関係性が感じられるシーンだと語った。
次のお題は「自身のキャラクターの人間性が出ていると感じたシーン」。斉藤さんは前出のシャーロックとの戦いで、ウィリアムが「僕の負けだ、シャーリー」と呟くシーンを挙げた。「兄弟すらも立ち入れない領域で、対等の友達として理解してくれたシャーロックに唯一本音を言えたシーンだったのでは」と語り、収録では「言葉を言う」ではなく「言葉がこぼれ出てしまう」という感覚を味わい、そこで自分とウィリアムの気持ちがひとつになれたと思い返す。
そのほかに斉藤さんは、OVA「モリアーティ家の休日」でウィリアムをたじろがせたマダムのシーンもチョイス。あれは斉藤さんの演技プランにないウィルだったとのことで、彼の唯一のユーモラスなシーンとして選んだ。
佐藤さんが挙げたのは、少年時代のアルバートが貴族という存在に疑問を抱き始めるシーン。アルバートの根っこの部分が描かれ、自分自身が貴族なのに「貴族は殺しちゃったほうがいいな」と思ってしまう思春期ならではのズレ具合がたまらないと語る。アルバートの原点とも言えるエピソードなので、彼の少年時代も演じさせてもらえてよかったと振り返る。この話題の途中で明かされたのが、佐藤さんが14歳のアルバートを演じることになった経緯。1話収録後の現場で、スタッフからいきなり「14歳オーディションをします」と振られたとのこと。どうにか受かったと語る佐藤さんだが、斉藤さんは「さとたくさん(佐藤さん)の少年声はめちゃくちゃレアなんです!」と強調した。
古川さんが挙げたのは、シャーロックが「もし、あのとき俺が…」とホープの幻影に銃を向けるシーン。ニヒルなイメージがあるシャーロックだが、作中では頭を抱えることも多く、10話ではホープを撃つか撃たないかという板挟みで悩むシーンが描かれた。古川さんは「その人間臭いところが、めちゃめちゃ彼らしいなと思う。正義の探偵ではあるかもしれないけど完全無欠ではない。危うさを抱えながらも、自分のポリシーは曲げられないところに行き着こうとしているのがシャーロックだと思うので、ここを選ばせていただきました」と語った。
小野さんが挙げたのは、同シーンでホープを撃たなかったシャーロックにジョンが「一瞬でも君のことを疑った僕を許してくれ!」と謝るシーン。ジョン的にはシャーロックを疑っていた感情も、そのことを謝る感情も、全部ストレートにぶつけていて、そこに彼の人間性を感じたとのこと。また、ここまでの各テーマで自らが選んだシーンは時系列を遡っており、最初に挙げた「ジョンを送り出す」シーンへ向けて、シャーロックとジョンの絆は深まっていったのだと、改めて実感したと語った。
そして「自分に似ていると思うキャラクター」についての回答は、スクリーンで一気に発表。それぞれに理由をコメントで添えた。
・斉藤さん→ウィリアム。本が好きなので、非常に私に近い部分を感じるなと…。
・佐藤さん→ルイス。慕う人に尽くしたいというのが自分の信条とかぶって共感する。
・古川さん→ジョン。ひとりの市民として、わきまえているところに親近感が持てる。
・小野さん→ジョン。クソ真面目で猪突猛進なところ。なんだか声も似てるし(笑)。
ほかにも放送当時の思い出を語っていく中で、モリアーティ3兄弟がBlu-rayの映像特典でアフタヌーンティーを楽しんだ企画が話題に。スクリーンには、そのロケでの斉藤さんと佐藤さん、ルイス・ジェームズ・モリアーティ役の小林千晃さんの写真が映し出された。 そんな話題が出たところで、今回のイベントに惜しくも参加できなかった小林さんからのメッセージ映像を紹介。小林さんはルイスについて、「思慮深くて落ち着いた雰囲気だけど、兄さんに害をなす存在には牙を剥く。そんな情熱的な演技を向けていた思い出があります。ね、古川さん」と語り、観客の笑いを誘った。
さらに、原作者・三好輝先生からのメッセージを斉藤さんが、監督・野村和也さんからのメッセージを佐藤さんが代読する形で紹介。いずれも最後に「キャスト陣へのちょっとした質問」が付け加えられ、それに答えつつのトークも繰り広げていった。
さらに「ミュージカル『憂国のモリアーティ』」にてウィリアムを演じる鈴木勝吾さんとシャーロックを演じる平野良さんからのサプライズ映像も。今年6月に原作連載10周年記念公演を予定しているミュージカルコンビから、アニメ5周年へのお祝いメッセージに、客席から拍手が起こった。
続いてのコーナーでは「ウィリアム&シャーロックへの挑戦状」と題し、オリジナルの朗読劇と謎解きチャレンジを融合させた新企画が開幕!
ウィリアムとシャーロックそれぞれの元に届いた謎の差出人からの挑戦状。そこに書かれた暗号を解き、指示された場所に向かうと…。そんなアニメさながらのドラマが展開されていくかと思いきや……「出題」のターンでは役から離れて、キャスト全員で謎解きにチャレンジするという構成。問題は3問。1問目の暗号は若干苦戦しつつもヒントを手がかりに正解。2問目は水平思考ゲームになっており、解答を知る観客に拍手で協力してもらいながらこたえにたどり着くという流れで、会場全体がキャスト陣を応援する雰囲気になっていった。3問目では、ステージ全体が謎解きのパーツになっていた。キャスト陣が座っていた椅子の裏に隠されていたカードを見つけ出し言葉をつなげると…、ついに最後のキーワード「ファミリー」を導き出すことに成功! 謎解きパートから朗読パートに戻ると、難なく謎を解いたウィリアムとシャーロックの会話が続く。シャーロックは差出人の正体に気が付いたようだ。今回の謎解きを仕掛けた挑戦状の差出人の最後の手紙の内容は本人の声で読み上げられた。声の主はシャーロックの兄、マイクロフト・ホームズだった。マイクロフト役の安元洋貴さんのサプライズボイス出演が朗読劇のラストに華を添えた。
告知コーナーでは、原作最新コミックス22巻や本格コラボジュエリーの発売情報のほか、今回の5周年記念のために描き下ろされた公式ちびキャライラストを公開! 当日の来場者全員に、このイラストを使用したスペシャルメッセージカードがプレゼントされることが伝えられると客席から喜びの声が上がった。

そして、いよいよ終幕を迎え、キャスト陣はそれぞれに今回のイベント開催の喜びと作品を愛するファンへの感謝、アニメ『憂国のモリアーティ』への思いを語った。斉藤さんはイベント冒頭でのスペシャルダイジェストムービー上映中に一旦捌けた際、この日の満席の会場内を見て、真っ先に佐藤さんと喜び合ったことを明かす。そして「自分たちが役者として、魂を賭して声を吹き込んだ作品を、5年経っても熱烈に愛してくださる方々がいるのは本当に幸せなことだなと思いました。今、原作がめちゃめちゃ面白いので、またいつかこの世界に舞い戻ってきて、我々声優陣も情熱を注ぐ場をいただけたら嬉しいなと思います。それがいつになるかはわかりませんが、皆さんと同じく作品を愛しているという気持ちがその縁を繋いでくれると確信しております。これからも『憂国のモリアーティ』を応援していただき、またどこかでお会いできたら嬉しいです。本日はありがとうございました」とファンへのメッセージを贈り、イベントを締めくくった。
アニメ『憂国のモリアーティ』公式ホームページ
https://moriarty-anime.com/
アニメ『憂国のモリアーティ』5周年記念イベント特設サイト
https://moriarty-anime.com/5th_anniversary
アニメ『憂国のモリアーティ』公式X
https://x.com/moriarty_anime
©三好 輝/集英社・憂国のモリアーティ製作委員会