デフォルメキャラクターデザインのレジェンドがついに対面!「SDガンダム」の産みの親である“横井画伯”こと横井孝二さんと人気マンガ『ポプテピピック』の著者でありサンライズオフィシャル4コママンガ『IPポリスつづきちゃん』を手掛けた大川ぶくぶさんのおふたりが東京・池袋のサンライズワールド TOKYOで初対談が実現しました。V-STORAGEでは、対談のダイジェスト版をお届けします。
デフォルメクリエイターのふたりが語る“デフォルメの魅力”
――おふたりは今回初対面と仰っていましたね。今まで何か交流などはあったのでしょうか?
大川 念願かなってようやくお会いできました。『ポプテピピック』のカードダスのお仕事でコラボしたことはあるんですが、そのときもやり取りは会社を挟んでだったので、僕たちは直接のやり取りはしていませんでした。
横井 関係性としてはSNSでフォローし合っているという程度だったので、今日はお会いできて嬉しいです。
大川 こちらこそよろしくお願いいたします。
――まずは、大川さんにとってデフォルメキャラを描く大先輩である横井さんはどんな存在ですか?
大川 僕が最初に買ったスーパーファミコンのソフトが『SDガンダム外伝2 円卓の騎士』だったんです。それくらい幼少期から影響を受けていて、実家に帰って昔の落書きをしたノートとかを見るとあちこちに騎士ガンダムが描いてあるという感じで。僕たちの世代にとっての“あるある”なんですが、物心がついたときにはすでに「SDガンダム」が存在していて、頭身の高いガンダムよりも先にSDガンダムに出会うという、そういう時代だったので僕を含めて横井さんに影響を受けた人は数多くいらっしゃるんじゃないかと思います。
僕らは横井さんの絵を見てすんなりSDガンダムをはじめとしたデフォルメキャラを受け入れているわけですが、横井さん自身は鳥山明先生から影響を受けていると聞いたので、デフォルメキャラの影響にも系譜があるんですね。
横井 僕のデフォルメの原点というか、基本ラインは『Dr.スランプ』の鳥山明先生を踏襲しようとしたところはありましたね。一方で、鳥山先生だけじゃなく、僕が愛読していた幼年誌などのマンガのカットなどでは、すでにロボットをデフォルメしたイラストもありましたから、そういうものにも影響を受けつつ、形状は鳥山風にアレンジしていったというところがありますね。
――おふたりは、リアルなメカや頭身の高いキャラクターをデフォルメ化することにどんな魅力があると思っていますか?
大川 個人的にデフォルメの魅力だと思うところは、“馴れ馴れしさ”みたいなところかなと思っています。もとがあるデザインから頭身を縮めることで省略されたものなので、堅苦しくなく、想像する余地みたいなものがたくさん残っていると思うんです。親しみやすさもそうですが、デフォルメされることで適切な距離を保ってくれて、受け手にいろいろと委ねてくれる感じがありますよね。
横井 そうですね。一般的な自動車などの乗り物や飛行機などは、実物を見ると相当エッジが立っていたり、細かいディテールがあったりするんですが、デフォルメは全体のイメージを残しつつもそれを見やすくできるんですよね。本当に親しみやすさがあり、ついでに描きやすさもある。
大川 それを言うと、デフォルメを描くときは、情報の取捨選択みたいなものが楽しいですよね。
横井 やり過ぎてデフォルメなのにディテールを描き込みすぎちゃうこともあれば、逆に省略しまくってディテールをまったく描かないものもある(笑)。
大川 省略していくとツルンとした感じになっちゃったりしますよね(笑)
横井 もとになったデザインのそれぞれの味というか、それらしさが出ればいいんですが、デフォルメはその加減が面白いですし、悩むポイントでもありますよね。
大川 描き手の個性みたいなものも出てきますしね。お仕事でデフォルメイラストを描かせてもらうときには、個人的には二頭身くらいで描きたいと思っているんです。でも、依頼してくるメーカーさん的には省略してほしくない情報というのがあって、その結果だんだん頭身が高くなってきちゃうという悩みはありますね。
マスプロダクトで求められるデフォルメと理想のデフォルメの違い
――例えば、デフォルメされていても関節を動かしたいという商品のデザインであれば、そこに応えて本当は省略したいところを残すようなお仕事もあるわけですよね。
大川 横井さんが手掛けたSDガンダムは模型にもなったりするので、そういう制約って大きかったんじゃないですか?
横井 でも、出だしはほとんどディテールを入れることができないようなSDガンダムのケシゴムだったので、そのときは「もう関節可動なんて関係ないや」って始めちゃったから。
大川 関節などの構造は、設計する側が苦労すればいいと(笑)
横井 当時はレイアップという商品開発会社にいたんですが、開発に関わる側からすると関節可動する形が設計段階で見えていたのと、「SDガンダム戦国伝」や「SDコマンド戦記 G-ARMS」のメンバーはちゃんと関節が可動するサイズに落とし込んでくれたのでそこは上手くいきましたね。
大川 そこは最適化されていったわけですね。
横井 初期の頃に関節を動かしたりすることには自分は向いていないと諦めた感じがありまして。「SDガンダムBB戦士」はあの形になる前にデザインのコンペがあったんです。バンダイでデフォルメのプラモデルをやろうという話になったとき、うちのチームではケシゴムの通りに関節が無いようなデザインで描いちゃったんだけど、そのときに今石進さんもコンペに参加されていて。今石さんは以前、設計を手掛ける会社にいらした方で、わりとしっかりとした形に描かれていたんです。その絵を見たときに「ああ、自分はもうこういうことはやらなくていいかな」って思いましたね(笑)。その後は自分の道を進んだというか、自分も思うままに関節は縮めていこう、省いていこうという気持ちになりました。
大川 何でも動かせる人がいるならその方に任せればいいと。その結果、伸び伸びとデザインに集中することができたわけですね。
横井 結果的には、プラモデルのBB戦士は「武者頑駄無」シリーズのようなハードディテールのものが登場し、僕が担当していたカードダスのイラストは、あまり関節可動は関係のない形状になる……というような枝分かれをしていきましたね。
――商品化などのオーダーが絡まず、好きにデフォルメを描いてほしいとなった際には、どういった表現がそれぞれの好みになりますか?
大川 僕は「球体」に近づけたくなりますね。ずんぐりむっくりさせたい。白い球体にガンダムの顔だけ描いてあるみたいなのが好きですね。
――どれだけ省略して、デザイン的な形で抽象化していくかというところですか?
大川 そうですね。それが美しいというか、綺麗に収まっていると思います。
横井 僕はちょっと抜いた形で描くデフォルメが好きですね。例えば、キャラクターを一枚絵で描いてほしいと言われた場合、メインのキャラは目立つ形で描くわけですが、頼まれてもいないのにそのキャラの後ろにワチャワチャと描き足すくらいのちょっと抜いた感じがいいんですよね。ど真ん中に描くキャラは、ディテールをある程度正しく描いたりして、多少気遣いをしなくちゃならないじゃないですか。
大川 メインキャラはスポットライトがパシッと当たっている感じがしますよね。
横井 その横にいるキャラクターたちは自分で都合のいいようにディテールを減らして、見やすいように描けるので、それくらいのものが好きですね。
大川 カードイラストなんかで小さいキャラがたくさん描いてあると見る側も嬉しいというか、ちょっとネタが隠されているようなのがいいですね。『SDガンダム外伝』のジムヘンソン一家の犬のボールとか(笑)、あれはそういうことなんですね。
横井 ああいう小ネタを仕込むのも楽しいんですよね(笑)。
大川 プラスアルファを出力してくれていることが、受け手にはしっかり伝わっていそうですね。デフォルメにアレンジして描くことは、ファンの方と同じ目線のはずなので、ファンの方が「ここでこのモビルスーツはこの武器を持ってこそだろう」みたいなシーンを再現できると「いい仕事をしたな」って思ったりはしますね。
デフォルメキャラを描く苦労とこだわり
――デフォルメデザインのお仕事の依頼は、もとのデザインからの再現度も結構細かく指示されるのでしょうか?
横井 あまり自由に描きすぎるとチェックが入りますね。ベルトのディテールが少ないとか、各部の形状ももっときちんと描いてほしいとか。そういうチェックに応えて修正していく感じですね。
大川 さきほども描き込むうちに頭身が高くなるという話をしましたが、もとのデザインが腹部にディテールが多いキャラクターだとどうしても胴長になりがちですね。身体に細かいタトゥーが入っているキャラクターの依頼が来ると青ざめますね。設定画をいただくと、タトゥーのデザインがしっかりと決まっていて「これを描かないとダメなのか……」となるときもあります。
横井 最近はキャラの衣装を含めた設定も細かくなってきますからね。
大川 そうですね。僕はアプリゲームのキャラクターなどのデフォルメを依頼されることが多くて。例えばアプリゲームの新規追加キャラクターなんかは、全部の箇所にディテールがいっぱい盛り込まれていて、各部のディテールもしっかりとしていて、その見た目で人気を出したいという気合いの入ったものが多いんです。そうなるとデフォルメにするときにディテールを抜くところがないんですよね。そうしたものを基本に「新キャラ10体分のデフォルメをお願いします」と資料を渡されると「なんでもっとデフォルメを描きやすくしてくれないんだ。デフォルメする人のことを考えてなさすぎ」と思ったりもします(笑)。もとのキャラクターをデザインした人が悪いわけじゃないんですけどね(笑)
横井 そこをぶっちぎって省略したりはしないんですか?
大川 したいんですけど、あとからディテールを足してほしいという要望も入りますね。それでも折り合いをつけて「この辺で落とし所を」ってなります。僕は小賢しい手段として、武器を持っているキャラクターならそれをよく活用します。前面に武器を大きく描いて身体を隠すという(笑)。このテクニックは騎士ガンダムのイラストから覚えました(笑)
横井 その手法はよくやってましたね(笑)。武器が見えれば右手が見えなくてもいいですからね。
大川 デフォルメとしては理に適っていますし。
横井 よく考えたらデフォルメ自体がパース絵みたいなものですからね。それをもとにギュッと圧縮すればいいわけだから。
大川 僕が横井さんのイラストを見て一番参考にさせていただいているのは、「ポーズをデフォルメする」っていうことかもしれないです。僕は美少女キャラ的なものをデフォルメすることが多いんですが、美少女キャラのデフォルメはポーズが凝り固まっているんですよね。だから、そのキャラクターの劇中で見せるポーズの印象をそのままデフォルメするという横井さんの真骨頂とも言える手法は、恥ずかしげもなく真似させてもらっています。
横井 デフォルメのポーズに関しては、会社員になってから学んだんですよね。自分で好き勝手にやっていた頃はポーズを付けずに設定画の立ち絵のままギュッとデフォルメしたものを描いていたんです。その後、仕事として描き始めると、それに付随してイメージイラストやシール用などのものも描くようになり、立ち絵だけでは面白くないなと思い始めていろいろと先輩や同僚、アニメなどの映像を観ながら吸収して学んでいったという感じですね。昔のアニメだとデフォルメのきいたアニメーションを描くアニメーターがいらしたので、参考にしつつ「デフォルメで縮んでいるけどあのポーズはとれるかな?」とやっていましたね。
※対談の続きと店舗体験レポート全文はサンライズワールドWEBをご覧ください。
©サンライズ ©SUNRISE/PROJECT GEASS Character Design ©2006-2017 CLAMP・ST
▼サンライズワールド 公式サイト
https://bandainamco-am.co.jp/official_shop/sunrise-world
▼サンライズワールド 公式X
https://x.com/sunriseworld_pr