人気小説をTVアニメ化した異世界ロボットファンタジー!『ナイツ&マジック』山本裕介×天神英貴スペシャル対談(後編)全文掲載
異世界転生×魔法×ロボット…全てのアニメファンに捧ぐ新ヒーロー誕生! 主婦の友社100周年記念&ヒーロー文庫初のアニメ化作品としても大きな話題を呼んでいる『ナイツ&マジック』が、2017年7月2日(日)よりTOKYO MX、BS11他にて絶賛オンエア中! そこで今回は、制作現場の中心を担う山本裕介監督とメカニックデザインを担当する天神英貴さんにインタビューを敢行。ひとりでも多くの方に観てもらいたいと語るお二人。作品にかける意気込みをたっぷり伺いました。
●スペシャル対談(前編)はこちら
この作品はロボット物であると同時に、冒険活劇でもあり、ヒーロー物でもあるんです
──主人公のエルをはじめ、本作に登場するキャラクターたちの魅力はどこにあると思いますか?
山本エルの魅力は牽引力だと思います。周りを巻き込んで、ロボットを創るというプロジェクトをどんどん進めていく。いろんな能力のある人たちが周りにいて、それを一つの方向にまとめていく力がものすごいなと思います。本作は群集劇でもあるんですが、これだけアクの強いキャラクターが大勢いる中で、ちゃんと主人公として“ドン”と真ん中に存在しているっていうのは、今の時代では実は少ないんじゃないのかなと。これだけ主人公として立っているキャラクターというのは、もしかしたら本当に久し振りかもしれないですね。しかも、エルは意外と表情豊かで何をやっても楽しそうで、愛嬌があって、どんなに危ない目に遭っている時でもニッコリしていて、ヒーローとしても非常に清々しいですよね。女の子みたいなビジュアルとの見た目のギャップもありますしね。この『ナイツ&マジック』という作品は、ロボット物であると同時に、冒険活劇でもあり、ヒーロー物でもあるんです。
天神普通は主人公が変わっていくことで物語が進んでいきますが、この作品は逆パターンなんです。主人公が変わらないので、周りが変わっていく。エルと同世代のアディやキッドが成長していくことが、物語を測る指針の一つになるんです。しかも、彼らは双子なので基本的に恋愛関係にならないという前提がある、これがまた上手いですよね(笑)。ありがちな恋愛関係には陥らず、ロボット物として続けていくための人物関係や構成がしっかりとできている。だからこそ、キャラクターたちがみんな魅力的なんですよね。
──シルエットナイトのデザインは原作イラストの黒銀さんが担当されていますが、天神さんはどういった部分を担当されたのですか?
天神原作の小説には出てこないメカや、シルエットナイト内部のコクピットデザインなどを担当しています。
山本エルが最初に自分用に開発する機体のコクピットは天神さんのデザインです。アニメの演出として「これが欲しい」「こうしたい」という部分に全部応えてくれて、原作との隙間を埋めてもらっているのが天神さんです。ドワーフ族が使っているスパナやレンチなどの工具デザイン、シルエットナイトの進化図や内部設計図など、ものすごい数の作業をしてもらっています。こういうものがあることで物語の世界観に深みが出てくるので本当に助かっています。
天神先程の話に補足をさせて頂くと、黒銀さんのデザインをより魅力的にするために、シルエットナイトの外観に汚しやマーキングを入れさせてもらっています。それが監督からの最初の要望でしたね。傷一つとっても、これはどういう風に戦ってできた傷なのか、ここに傷があるということはこういう風に戦っているんだっていうことが視聴者に一発で分かるようにする。そういう作業が『ナイツ&マジック』では重要で面白いんです。
山本自分の中で傷一つないピカピカのロボットが城壁の街に立っているという姿が、どうしてもイメージできなくて。それで必要なのは汚しやマーキングだと思ったんです。「そういうのは今の時代流行らない」と天神さんにレクチャーして頂いたんですけど、どうしても入れたくてお願いしました。
天神ロボットが横一列に並んだ時に同じ場所に汚れが入っていると、違和感がありますから、汚れも多少ランダムに入れていかないと画面が成立しない。アニメでロボットに汚しを入れるって、実はすごい手間がかかる作業なんです。
──メカをデザインされる際に、一番意識されていることは?
天神ちゃんと動きそうに描くということですかね。誤魔化すのではなくて動きそうに描く。これは僕の師匠である河森正治(※アニメ監督。代表作に『マクロス』シリーズなど)さんから口を酸っぱくして言われたことですが、完全実証主義といって、要は機能のディティールの積み重ねでデザインはでき上がると考えているんです。つまり、誤魔化してはいけない。本当に必要なものっていうのを、ちゃんと見極める。一目見てこれがどんなメカなのか、メカに詳しくない人でもわかるようにデザインする。というのも、アニメって基本的に一瞬しか出ない(映らない)ので、その一瞬で、視聴者に「これはこういうためのものなんだ」ってことが伝わらないとデザインとして意味がないんです。
原作では描かれていないメカのデザインにも期待して頂けると嬉しいです
──本作の見どころを教えてください。
山本まず、本作はロボット物なので、文字通りロボットが進化していくというそのプロセスに力を入れています。エルの活躍でどんどん新型が生まれていって、空も飛べるようになっていく。それに見合った腕試しのトラブルも起こります。そのトラブルをエルが如何(いか)に解決していくかに注目してください。物語の流れとエルの目的とが一致してイベントが起こっていくので、その過程を楽しんで欲しいですね。あとは、エルが活躍することで周りの人間がどんどん成長していきます。それは同世代だけでなく、エドガー、ディー、ヘルヴィといった先輩にも影響を及ぼします。エルの影響を受けてキャラクターが変わっていく様は、まさにドラマチックですし、この作品の見どころの一つかなと思っています。
天神やっぱりメカに注目して欲しいですね。登場するのは後半になると思いますが、チャリオットという三式の馬車が出てきます。原作の小説にはイラストはないのですが、形が変わって、こういうものになるという記述はあるんです。シルエットナイトを3機も乗せているとか…一体どういうメカなんだと(笑)。でも、原作ファンのみなさんにはそれぞれのチャリオットのイメージがあると思うんですよね。そのイメージを全て超えなければ、私がやる意味がないと思うので、必死に情報を集めて、小説で書かれている機能を試行錯誤しながら積み重ねていって、デザインをさせてもらいました。なので、原作では描かれていないメカのデザインにも期待して頂けると嬉しいですね。
──監督にお聞きします。本作で描きたいテーマがあれば教えてください。
山本エルのように生きることができれば人生楽しいよねってことですかね(笑)。目標が明確にあれば、人を引っ張っていくだけの根拠もあって、周りもそのプロジェクトに乗っかっていける。それで、みんなが楽しめるのは非常に幸せなことだと思いますね。エルの場合、それがたまたまロボットでしたけど、いろんなことに当てはめて、みんなに人生の目標みたいなものがあれば本当に幸せだろうなと思いますね。時々、現場でスタッフたちと打ち合わせをしている時に、自分が言ったことに頷いてくれていると「ちょっと今、エルっぽいかも? 良いこと言っているかも」と思います(笑)。エルには邪念もなければ、欲もないですから、エルみたいになるには正直難しいですよね。ちゃんと人のことも考えているし、友情に厚いし、信頼も持っている。非常にいい主人公だなと思います。決して目的のために手段を選ばない人間とは違いますよね。こういう主人公を描くこと自体が今回の作品のテーマというか、目的でもあるのかなと思っています。
一人でも多くの方に作品を観て頂くことが、今の一番の目標です!
──他の作品でも一緒にお仕事をされていると思いますが、お互いの印象は?
山本初めてお会いした時に、ちょっと変わった方だなと思いました。まず、その紹介のされ方がすごく変わっていて、「イラストレーターであり、デザイナーでもある。しかも、声優もやられて、テコンドーもやられて、尚かつイケメン」だと。最初はなんて近寄りがたい人なんだろうと思いましたね(笑)。それで実際に会ってみたら、その時の服装のイメージもあるんですけど、本当にヒーローに変身しそうな感じの人だなって(笑)。最初はそんな印象でしたね。
天神最初に監督とお会いしたのは『アクエリオンEVOL』(総監督:河森正治)という山本さんの監督作品でした。お仕事の相談を受けた時に「なんという合理的で、理論的な演出やオーダーのし方をされる方なんだろう」と思いました。この監督は光を放っているという印象がありました。有名な方たちが上にも下にもいる状況下で、自分の立場をちゃんとキープしつつ、しっかりと指示を出されていたので、僕はすごく尊敬しています。
──では最後に、放送を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
山本僕自身もロボットが大好きでこの業界に入った人間なので、自分のロボット萌えの部分を全力でぶつけていくつもりでいますし、ロボット好きな方に楽しんで頂けるように作るつもりです。また、キャラクターたちの魅力も『ナイツ&マジック』という作品の柱の一つなので、彼らの魅力を最大限まで引き出せるように頑張ります。ロボットに興味がない方でもきっと楽しめると思いますので、一人でも多くの方に作品を観て頂くことが、今の一番の目標です。
天神ロボット物、メカ物という、非常に言いにくい言葉や不思議な単語がいっぱい出てくる作品で、エル役の高橋(李依)さんは必死で頑張っていますし、本当にエルになりきっていると思います。そして、役者全員がそれぞれの役になりきって演じています。あと、正直なことを言うと、ロボット物って日常物などに比べて設定や資料などが3倍くらい必要なんです。僕や監督はもちろんですけど、スタッフや役者も含め、相当な熱量がここに集結しているので、その情熱みたいなものを肌で感じ取って頂けると嬉しいですね。カテゴライズはあまり気にせず、作品を観て楽しんで頂ければと思います。
の付いたインタビューはV-STORAGE online限定の記事です。
PROFILE
山本裕介(やまもとゆうすけ)
演出家、監督。サンライズの制作進行を経て、2001年の『しあわせソウのオコジョさん』で監督デビュー。『ケロロ軍曹』では初代監督を務めた。その他にも、監督として『アクエリオンEVOL』『ヤマノススメ』など数々の作品を手掛けている。
PROFILE
天神英貴(てんじんひでたか)
イラストレーター。有限会社スタジオ天神代表。『マクロス』シリーズではメカニカルアートを担当。また、『ガンダム』シリーズのプラモデルなどのボックスアートも数多く手掛けている。声優や俳優としても活躍している。
<放送情報>
TOKYO MX、BS11他にて大人気放送中!
■TOKYO MX:毎週日曜22時30分〜
■KBS京都:毎週日曜23時〜
■サンテレビ:毎週日曜24時30分〜
■BS11:毎週火曜24時〜
■AT-X:毎週日曜21時〜
※放送日時は都合により変更になる場合がございます。
<Blu-ray発売情報>
ナイツ&マジック Blu-ray第1巻
2017年10月27日発売
¥12,000(税抜)
ナイツ&マジック 公式サイト
©天酒之瓢・主婦の友社/ナイツ&マジック製作委員会