インタビューココだけ | THE REFLECTION
話題沸騰のヒーローアクションアニメ!『THE REFLECTION』長濵博史監督インタビュー全文掲載
ハリウッド映画にもなった『アイアンマン』や『スパイダーマン』など数々の大ヒット作を手掛けてきたアメコミ界の巨匠、スタン・リー。『蟲師』や『惡の華』など独創性の高い作品を作り出してきたアニメーション監督、長濵博史。ポール・マッカートニー、ペット・ショップ・ボーイズ、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドらのヒット曲を数多く生み出している音楽プロデューサー、トレヴァー・ホーン。米日英の3大クリエイターがタッグを組んだ話題のオリジナルアニメーション『THE REFLECTION(ザ・リフレクション)』が、いよいよ2017年7月22日より毎週土曜23時〜NHK総合テレビにて放送スタート! そこで今回は、長濵博史監督に放送開始前の意気込みを伺った。
近所の書店で『スパイダーマン』のコミックスを見つけて、
そのリアルに描きこまれたキャラクターに魅了されたんです
──アメコミがお好きだとお聞きしたのですが、それが今回の作品へ繋がったのでしょうか?
長濵アメコミは大好きですね。実は子供の頃、日本の漫画の絵柄が好きになれなかったんです。ところがある日、近所の書店で『スパイダーマン』のコミックス(1978〜79年に光文社より翻訳版として刊行された全8巻のシリーズ)を見つけて、そのリアルに描きこまれたキャラクターに魅了されたんです。以前アメコミの関係者が日本に来た際に、アニメ関係でアメコミに詳しい人がそれほど多くなかったこともあり、知人から「長濵さん、アメコミ好きでしたよね?」と声がかかったんです。そこで、その方々とお話をさせていただいて、「君、詳しいね」「よく知っているね」と意気投合したんです。「今度向こうに(アメリカ)に来る時はまた会おう!」とも言っていただきました。そこから「君、スタン・リー(『スパイダーマン』『X-メン』などの原作者で、アメコミ界を代表する偉人)好きだろ、会いに行こう!」と本当に声をかけていただいて実際に会えることになったんです。そしてスタン・リー(以下:スタン)に紹介されて話をするうちに、彼から「画もかけるんだったら、一緒に何か作るか」と言われたので「作る!」と即返事をしたんです。当然ですよね(笑)。そのまま「何かアイディアはあるのか?」という質問をされたこともあって、滞在期間を伸ばしてアイディアを練りました。キャラクターを描いて1週間後に「こんなことがやりたい」と持って行くと、スタンに「これ、面白いね、じゃぁ具体的にどう進める?」と言われたんです。アメリカは、「何かやろう」となると物事が具体的に動き出します。そこで「じゃあ考えます」「検討します」と言った時点で消極的と見られて、次の人達が入ってきてしまう国です。この時に「やる?」とスタンに聞かれて、すぐに「やる!」と返せたからこそ、現在の『ザ・リフレクション』への始まりになった訳です。
ストーリーやキャラクターの名前などはスタンに一緒に考えてもらい、
意見もたくさんもらいました
──スタン氏とはどのようなやり取りをされましたか?
長濵彼は当時、すでに80歳を過ぎていたんですが常に若々しくて、疑問に対しては妥協せずに徹底して追求してきます。例えば「どうしてここにこんなツノがあるの?」といった質問をしてくるんですが、こちらが「こういう攻撃をするためだ」といった説明をすると、「わかりづらい、こうやらなければダメだ」と具体的な話をしてくれる。例として、“こうやって、『スパイダーマン』や『X-メン』が作られた”というものをいろいろ見せてくれたのですが、残念ながらその時の企画は実現せずに終わってしまったんです。でもその時は、自分がスタンと一緒にやれたという経験が嬉しかったです。それから数年経って、アメリカの関係者から「長濵さん、まだスタンと何かやる気ある?」という連絡が来て、スタンと話をすることになったんです。その際に、向こう側にスタンのビジネスパートナーとしてギル・チャンピオン(2016年に英国で制作されたTVシリーズ『スタン・リーのラッキー・マン』のプロデューサー)がいて、ちゃんと制作費を用意してビジネスとして成功させられるのかを問われたんです。自分がプロデューサーではないことを伝えると「スタンと君が作るものに対しては絶対の信頼をおいているが、本当にビジネスになるのかはアメリカでも日本でもわからない。前回のように話が流れてしまうのは嫌なんだ」という話をされました。それで親交のあるスタジオディーンの野口和紀プロデューサーに相談したんです。ギルと野口さんが話をまとめてくださり、現在に至っています。企画の話が進み内容を決めていくのですが、ストーリーやキャラクターの名前などはスタンに一緒に考えてもらい、意見もたくさんもらいました。ですから、こちらで勝手に作っている部分はなく、全部スタンの監修のもとで作業をしています。特にスタンはキャラクターの名称を決める際に、その名前から何が想起されるか?を大切にしつつ、音のニュアンスで作っていくところがあるんですね。特に、印象に残るように、名前の頭文字(英文字)は韻を踏んで同じアルファベットで始めるといった工夫もしています。
最終的な理想としては、
新たな“スタン・リーのユニバース”となるようにしたいんです
──新たなヒーロー(世界観も含む)を創造することの難しさはありましたか?
長濵新しいヒーローを創造するというよりは、逆に既視感のある雰囲気を持つヒーローにしています。例えば主役の“アイガイ”も、“アイアンマンみたいなやつ?”と言われたい。作品を知らない人が、「『ザ・リフレクション』知ってる?」と聞かれて「あのアイアンマンとかスパイダーマン風のキャラクターが出てるやつ?」と答えた時に、「だって、同じスタン・リーが原作だからね!」と聞いて驚いてもらいたい(笑)。そういった意味では、今“ザ・リフレクション ユニバース”(ユニバース=作中で描かれる架空の世界)として様々なキャラクターを作っているんですが、今回はその一部が登場します。TVアニメの後もいろいろと展開して、それらのキャラクターたちを出していければと考えています。そして最終的な理想としては、新たな“スタン・リーにとってのユニバース”となるようにしたいんです。キャラクターのデザインづくりに関しては、小さい子供にも似顔絵が描けるのが重要だと思ってるので、わかりやすい様にアルファベットをモチーフにしています。エクスオンなどは、「顔にバッテンが描いてある人」みたいな呼ばれ方をしてもらえたら嬉しいですね(笑)。
ダメ元でトレヴァー・ホーンの日本の事務所へ相談をしたところ、
それは面白いということになって、奇跡的に話がまとまりました
──ティザーではスタン氏の姿も見えますが、お馴染みのカメオ出演はあるのでしょうか?
長濵もちろんあります! 役どころはまだ明かせませんが、カメオではなくスタンの要望でキャラクターとして登場します。それにアメリカ版では当人が声を当ててますよ(笑)。
──作画面で意識されたことはありますか?
長濵私の好きなアメコミのタッチを極力活かしていきたいと思っています。キャラクターに通常の影をつけずに黒いベタの影で処理したり、撮影時の特殊効果は一切行わない。空間やリアリティに関しては、極力無駄を省いたシンプルでアーティスティックに見える方が、観た人の脳で補完されて良いのではないかと考え、場面を切り出して印刷したらコミックのコマにしか見えないようなビジュアルにしています。
──音楽プロデューサーにトレヴァー・ホーン氏を起用された理由をお教えください。
長濵それについては以前から、野口プロデューサーと「トレヴァー・ホーンの曲で何かやりたいね」と言っていたんです。ダメ元でトレヴァー・ホーンの日本の事務所へ相談をしたところ、それは面白いということになって、奇跡的に話がまとまりました。そして彼の住むイギリスに行って、キャラクターやストーリーについて話をしたんです。トレヴァーは僕の話を聞きつつ、なにか口ずさんでいて。話し終わると「すぐに作りたい」というので、こちらは「作ってくれるの?」と聞き返したら「ん? 作るのはもう決まっていたんだよ」と言われたので、驚きましたね。プレゼンテーションのつもりで一生懸命話していたのに、トレヴァー曰く「作るのは昨日すでに決まっていて、内容が聞きたかっただけなんだ」と。その時に彼が「日本のアニメーションに関われて光栄だよ」と言ってくれたことが印象に残っていますね。
昔のように同じ時間に同じものを観て、
翌日はその話でみんなが盛り上がる…そんな時間が作れればいい
──9nineが作品に関わるきっかけは?
長濵たまたま番組でご一緒する機会があった時に、ライブにご招待いただいたことがきっかけでした。トレヴァーにも楽曲を作ってもらうにあたって、9nineの映像を観てもらいました。彼女たちのパフォーマンスの素晴らしさに、トレヴァーも刺激を受けたようで、9nineのプロデューサーもやってもらうことになりました。さらに、今回の作品では劇中のキャラクターとしても登場させることにしました。
──個人的にお好きなアメコミヒーローは?
長濵デアデビルですね。最初にルックスを見た時に目がマスクの部分と同色なのが不思議に思ったことがきっかけです。彼は目が見えない設定で、マスクに目を開ける必要がないから同じ色なんだと知った時は、目が見えないハンディがありながら、持ち前のスーパーパワーを持ち、それでいて人間臭い一面に格好良さを感じました。それからは、ずっと好きなヒーローです。
──本作にかける意気込みをお願いします。
長濵この作品を観てくれたら、絶対にびっくりさせる自信があるんです。各話ごとに「え!?」と驚く瞬間を仕込んで、放送終了後はみんなでその驚きを共有できたら良いなと思っています。昔のように同じ時間に同じものを観て、翌日はその話でみんなが盛り上がる…そんな時間が作れればいいですよね。「ちょっとヒーロー物は苦手」と言う方がいらっしゃっても、単なるヒーロー物とは一味違う魅力も描いていきますので、ぜひ観続けていただけたらと思っています。
の付いたインタビューはV-STORAGE online限定の記事です。
PROFILE
長濵博史(ながはまひろし)
●1970年3月15日生まれ。アニメーターを経て、2005年『蟲師』で監督デビュー。以降『デトロイト・メタル・シティ』『惡の華』などの監督作で話題を集める。
<放送情報>
7月22日より毎週土曜23時〜NHK総合テレビにて放送開始!
※放送日時は変更になる場合がございます。
THE REFLECTION 公式サイト
©スタン・リー, 長濵博史/THE REFLECTION製作委員会