インタビューココだけ | コードギアス 反逆のルルーシュ
メインスタッフインタビュー第3回「木村貴宏」全文掲載
最終章となる第3部「皇道」が、いよいよ5月26日(土)より劇場公開開始! そこで今回は、シリーズの大きな魅力となっているキャラクターデザインを担当する木村貴宏さんを直撃し、各キャラクターが今のビジュアルになった経緯や劇場版の新設定など様々な話を伺った。
ひと目でCLAMPキャラクターだと感じていただけるように
──TV放送から10周年ということで、改めてキャラクターデザインというお仕事について振り返りを交えてお伺いさせてください。
木村『コードギアス』に参加するお話をいただたときには、CLAMPさん原作のアニメ作品はいろいろ拝見していたので、自分にCLAMPさんの絵をアニメーションに落とし込めるかなという不安はちょっとありました。ただ今回はCLAMPさん
の漫画原作をアニメ化するのではなくて、CLAMPさんからキャラクター原案をいただくというポジションであるのと、アニメの作業に関してはスタジオに一任されるというスタイルでした。自分としてはCLAMPさんの絵の雰囲気をまず掴むところから始めました。とにかくCLAMPさんの漫画をいっぱい読んで、描いて手になじませる。その後はやれるだけやってみようという感じでしたね。
──CLAMPさんは作品によって絵柄を変えてこられていますよね。
木村そうですね。年代によっても変わってきていますし。企画時に『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』を「週刊少年マガジン」(講談社)で連載されていて、少年誌掲載であることを意識した絵柄にしていらしたと思うんですよ。デザイン作業をしていた当時、拠り所にしていたのはそこですよね。過去の作品ももちろん勉強しましたけど、特に『ツバサ』はそれまでのCLAMP作品のキャラクターが今の絵柄で登場してくるので、いろんなタイプのCLAMPキャラクターが網羅できるという意味でとても参考になりました。漫画原作のアニメ化だったら、デザイナーの持ち味が漫画原作の絵柄と多少違っても認識できると思うんです。けど、『コードギアス』はアニメオリジナル作品で、なおかつCLAMPさんがキャラクター原案に参加されていることは大事なアピールポイントにもなっていました。
──木村さんの責任は重大だったわけですね。
木村CLAMPさんのファンが『コードギアス』を見てひと目でCLAMPさんの原案だと感じていただけるように、自分の線をCLAMPさんの絵柄に近づけるように、とにかく最初は意識しました。
──その甲斐もあって、ルルーシュたちは画面でもCLAMPさんデザインであることがひと目でわかりますよね。谷口吾朗監督とは、キャラクターデザインについてどんな点についてお話しをされましたか?
木村CLAMPさんが描かれる漫画だと、キャラクターの頭身が若干高めに描かれているんです。企画段階でCLAMPさんからキャラクター原案をいただいて、谷口監督から「この頭身で画面にまとまりますか?」という相談をされました。当時でもTV放送だと画面比率が16:9ですから横に長い。横長の画面に頭身が高いキャラクターを全身で収めようとするとどうしても小さくならざるを得ないので、これまでどおりの画面構成でも成立させることができるかを気にされてました。
谷口監督とご一緒した『ガン×ソード』のヴァンもそうですが、あの時期は頭身が高めのキャラクターを描く機会も多かったので、そこに関しては無理せずできたかなとは思います。
谷口監督作品の男性キャラはなかなか本音を見せない?
──デザインされる際に苦労したのは、やはりルルーシュでしょうか?
木村主人公はいちばん気を遣いますよね。主人公には普通の少年らしく見えるキャラクターを置くのが定石ですので、派手な特徴はない。プレーンなデザインなので自分のクセが出すぎないように、いかにルルーシュを主人公としてまとめられるかにいちばん気を遣いました。
──ゼロの仮面はどなたがデザインをされたのでしょうか?
木村仮面もCLAMPさんから原案をいただきました。あの仮面こそ自分からはそうそう出てこないデザインラインなので、できるだけ忠実に線を拾っていきました。個性の強い仮面もCLAMPさんが描かれる漫画の一枚絵として見ると、違和感がないんですよね。それをアニメーションとして色を付けて他のキャラと並ばせると、ゼロがすごく異質な存在感として浮き出てますよね(笑)。谷口監督も1期 STAGE 04でのゼロ登場のシーンはとても気を遣われてました。
『コードギアス 反逆のルルーシュ』STAGE04より
──スザクはどうでしょうか? ルルーシュとの対比として設定されたキャラクターでもありましたが。
木村彼は絵柄というよりも、スザクというキャラクターがなかなかつかめなかったという点で苦労しましたね。本当の心情をめったに見せないキャラなので、表情やしぐさの付け方で苦労しました。自分でも内面が読めない段階では、表情の振れ幅を大きく想定してデザインしてます。他のキャラクターだと、設定には後から見ればらしくないちょっとキツめの顔や、ロロだと本編にはない妖しい顔つきがありますよね(笑)。
──男性キャラは比較的スムーズに作業できたのでしょうか?
木村逆です。女性キャラのほうがスムーズでしたね。ある程度自分の好みやこだわりがあって、そこは素直に出していいよと、谷口監督から最初に言われてました。
谷口監督作品にCLAMPキャラクターの華やかさが後押し
──第2期では最初にどのキャラクターから手をつけられたのでしょうか?
木村ルルーシュ、スザク、C.C.(新衣装のみ)、ナイトオブラウンズ、の順番だったと思います。ルルーシュ、スザクは『R2』用にキャラ表を新しくすることになり、新衣装やジノ、アーニャはCLAMPさんから原案をいただいて作業しました。ナイトオブラウンズのアーニャに関して、おへそを出したのは自分のアレンジですね。原案の段階だと露出低めのデザインだったんですよ。それをキャラごとにバリエーションの幅を広げることになって、アーニャもいじることになりました。
『コードギアス 反逆のルルーシュⅡ 叛道』より
──星刻とV.V.は木村さんのデザインとのことですが、谷口監督から何かオーダーがあったのでしょうか?
木村メインキャラでCLAMPさんから原案を頂いていないのは星刻とV.V.でした。星刻は第1期のSTAGE 23でちょっとだけ出たんですが、絵コンテでは後姿で髪の長い中華風の青年が立っているだけで、監督からは外見の指示は特になかったと思います。CLAMPさんの漫画を参考にしながら、自分でアレンジしましたね。V.V.はC.C.と同じ“コード”をもった特殊なキャラという扱いなので、ただの人間じゃないなって、ひと目でわかる感じにはしました。
──他に木村さんのほうで手がけられたメインキャラは?
木村セシルさんは原案を頂いていたんですけど、キャラの扱いが変わってしまったこともあって、こちらでほぼデザインし直すことになりました。
──セシルさんはCLAMP作品に登場していても違和感のないキャラですよね。
木村そこは頑張りました(笑)。
──『亡国のアキト』でもキャラクターに関しては本編と同じ行程を経ていったのでしょうか?
木村メインキャラはCLAMPさんからひととおり原案を頂きました。
衣装周りも原案からきっちりと描かれていました。CLAMPさんへの発注時に、E.U.軍はブリタニア軍のようなクラシカルな感じではなくて、大戦中の欧州軍をベースにまとめたほうがいいんじゃないかという話は出ていたようです。「日本やアメリカにはないスマートさがあった」と。
──『アキト』の監督をされた赤根和樹さんが軍服のデザインにこだわりを持っていたとのことですが。
木村かっこよくしたい、というこだわりもありつつ、レイラのスカート丈にもこだわりを持っていましたね。スカートの前を後ろより短くして、正面から太ももが見えるように。横から見ると斜めになっているんです。ルルーシュによく似た(笑)ジュリアス・キングスレイも原案を頂いてます。ルルーシュとは微妙に髪型が違っています。
10年後の総集編はすごくいいタイミング
──では、今回の劇場総集編3部作制作の決定を聞かれたときの感想をお聞かせください。
木村すごくいいタイミングかなとは思いましたね。10年という期間はいろいろなことに整理がついてきて、考え方やものの見方が転換していくサイクルでもありますよね。たとえば10代で作品に夢中になった人が20代になって改めて見ると、同じ作品でもまた違った見え方になっている。そういう意味でも、昨年と今年に『興道』『叛道』『皇道』を公開できたのは、作品にとってもファンの皆さんにとってもベストなタイミングだったのかなと。
──木村さんにとっても10年ぶりの『コードギアス』ということになりますが。
木村『コードギアス』のお仕事は定期的にいただいていたこともあって、久しぶりという感覚はあまりなかったんですね。ただTVシリーズから始まったルルーシュたちが劇場の大画面に映るんだなと思うと、ワクワク感みたいなものはありましたね。
──劇場総集編3部作では木村さんはどんな関わり方をされたのでしょうか?
木村TVシリーズで足りていなかった部分を補ったり、服装に関して追加したものもありますね。例えば『叛道』でスザク、ロイド、セシルがE.U.に遠征するシーンは新作で、服装もちゃんと冬仕様になっています。
──セシルはクマ耳っぽい帽子を被っていてかわいかったですね(笑)。
木村セシルさんはTVシリーズのときから、センスがどこかズレている人なので(笑)。
『コードギアス 反逆のルルーシュⅡ 叛道』より
──同じく『叛道』ではシュナイゼルが上着を脱いでますよね。
木村シュナイゼルは(TVシリーズ制作中の)最初に“偉い人で、途中からラスボスにもなりかねない謎のキャラ”と言われてました。感情が乏しいので表情集もほぼないんです。キャラの成り立ち故に、服のバリエーションが作れなかったんですよね。他に似合う服がなかなか思いつかないキャラクターになってしまいました。
10年経って中の服がどうなっているか、ようやく考えたんですよ(笑)。
『コードギアス 反逆のルルーシュⅡ 叛道』より
──設定を起こさず、そのカットのみだったんですか?
木村そのカットきりですね。千羽由利子さんが作監で、自分が総作監で服装だけチェックする形で作らせてもらいました。
──他にも何か10年経って、感じることはありましたか?
木村作画スタッフも、実力のある若い人たちが今回参加してくれました。千羽さんが声掛けしてスタジオに入ってくれている方など、そうした新しい人たちの参加もとても良かったと思います。
──『コードギアス』シリーズは、それまでの谷口監督作品とは受け止められ方というか、広がり方が違っていた気がしますね。
木村谷口監督の作品は型にはまらない、でも根っこが地に足の着いた作品が多いですよね。『コードギアス』ではそこに華やかさが加わった感じがしていて、それはやはりCLAMPさんに参加していただけたことがすごく大きかった気がします。原作があるアニメなら放送前でも原作がきっかけで興味をもってもらえる。でもオリジナルアニメは放送前だと、見てもらえるきっかけを作るのが難しい。『コードギアス』はビジュアル面からも興味をもってもらえたことで、すごくうまくいったと思いますね。
──最後にファンの皆さんへメッセージをお願いします。
木村およそ2年をかけて追いかけた作品を10年後に追体験される方、また新しく体験される方もいらっしゃると思います。要素がたくさん詰まった『興道』『叛道』に対し、終息に向かう『皇道』はより作品に没入できるかと思いますので、しっかりラストまで見ていただいて、次に用意されている作品へどうつながっていくのか? 楽しみにしていてください。谷口監督をはじめスタッフが一丸となって作ってます!
PROFILE
木村貴宏(きむらたかひろ)
福岡県出身。アニメーター、デザイナー。多くの作品で原画、作画監督を手がける。キャラクターデザインでは『勇者王ガオガイガー』『ベターマン』『BRIGADOON まりんとメラン』『神魂合体ゴーダンナー!!』『SDガンダムフォース』『GUN×SWORD』などがある。
<上映情報>
コードギアス 反逆のルルーシュIII 皇道
大ヒット上映中!
<Blu-ray&DVD発売情報>
コードギアス 反逆のルルーシュⅡ 叛道
2018年6月8日発売!
Blu-ray[特装限定版]:¥7,800(税抜)
DVD:¥5,800(税抜)
コードギアス劇場3部作 公式サイト
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