インタビューココだけ | 劇場版 マクロスΔ 激情のワルキューレ
河森正治監督×根元歳三(脚本) 対談[劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ 「Blu-ray&DVD発売日までカウントダウンしちゃるかんねっ!」]
TVシリーズの放送から約1年半後、満を持して公開された『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』。それは総集編や再編集とは異なる、新たに構築された物語の創出と呼べるものだった。同時にそれは苦悩の日々でもあったと、監督の河森正治と脚本の根元歳三は振り返る。
大勝負を覚悟したメッサ―の見せ場
――『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』の制作が決定した時のお気持ちはいかがでしたか?
河森 僕はTVシリーズを作っていた頃からずっと「劇場版をやりたい」と思っていたので、ゴーサインが出た時はすごくほっとしました。2ndライブの中打ち上げの時に思わず「なんとかして劇場版やるから!」と、メンバーのみんなに言ってしまったぐらい想いは強かったんです(笑)。作るとすればどんな形に出来るのか、どれだけの尺に出来て、どれだけの新作カットを作れるのか。そこを詰めるのに時間が必要で、最終決定が出るまで数カ月月かかりましたが(笑)。
根本 作ることになった、でもまだどんな内容にできるか分からないから時間がかかる、という話になってからは「まだかな~まだかな~」とそわそわしていましたよね(笑)。
河森 作ることは決まっても総尺何分で新作の分量はどのぐらい、というのが確定しないと構成できませんからね。頭の中では考えているものの、プランA、プランB、プランC、どれが使えるか決まらないままに時間ばかりが過ぎていく、みたいなこともあったんですよね。
根本 3rdライブの開催も決まったので、それまでには作らないといけないというのは共通認識でした。ライブ直前に公開するだろうなという感じでしたね。となると、尺はどうあれワルキューレ中心の内容にまとめることになるかなと。ライブとセットで決まっていたような気がしますね。
――既存のカットを使いながらも、TVシリーズとは全く別の作品のように感じました。
河森 映画館で公開するからには初見の人でも観られるものにしようと考えていたので、そこはすごく意識しましたね。未来の銀河系が舞台で歌と戦闘がからむ作品、みたいな最低限の知識は必要かもしれませんが、詳しい年表を知らなくてもこの作品単体で楽しめるように。かといって、普通の作り方ではまとめることができないというのはわかっていました。
根本 河森さんの方で使い回しできるカット、できないカットの洗い出しをしてから、後で話を繋いでいきましたね。新作パートの分量が限られていて、シナリオを先に書くことはできなかったので。
河森 新作パートは総尺のうちの1/3以下くらいという制約がありますからね。そうすると総尺は短い方がいいんですよ。新作パートを長く、多く感じられるので。かといって尺を短くすると話が収まらない、と(笑)。絵を並べ替えながら考えたシナリオの流れとしては、1クール目のメッサーが死ぬエピソードをキーにして、彼が死ぬまでに2クール目の話をもっていく作りに大幅変更しました。フレイアの誕生日回にメッサーを参加させてあげたかったこともあって早めに出しましたね。
根本 メッサーに対しては大勝負という感じもありました。TVシリーズと同じことはできないし、かといって負けるわけにもいかない。違う味わい、感動をどう出せばいいんだろうかとずっと考えていました。シーン自体は変えられませんが、その後の感情の積み方を変えられたので、メッサーとハヤテたちの関係性もまた違った雰囲気で描けて良かったですね。
河森 序盤も新規カットを交えながら、簡潔になるようかなり変えていますし、ハヤテが最初から隊員になっているのも決めていました。第1話の入り方を変えれば印象が大きく変わると思ったので、第6話を導入に使おうと。でもそうすると「いけないボーダーライン」が使えなくなるので、第4話と組み合わせて編集して。そうするとハヤテが隊員であることも分かりやすくなるし、ミラージュとの関係も完全なパートナー、バディとして捉えられるようまとまったんですよね。それを短いセリフで表そうとしたのが例の…
根本 爆弾コンビですね(笑)。一言「爆弾コンビ」と言っておけば、あぁ2人は爆弾コンビなんだな、とわかるかなと思って(笑)。
河森 わずかな言葉でどれだけ印象を変えられるかというポイントでしたよね。
劇場版で披露された本来のワルキューレ
――TVシリーズと同じ映像でセリフが違うシーンも多くありました。
根本 尺が短くなった分、情報を強く、短い一言で語れるようにしているんです。恋愛感情の描写で例えると、尺を使ってじわじわ見せるのがTVシリーズ。Aと思っている、でも言葉ではBと言う、その繰り返しの積み重ねみたいな。ですが、劇場版では「好き!」と直球で言わせるような作劇を目指しました。
河森 感情の温度を上げるのが目的ですね。全体的に温度を上げないと沸点、要するにクライマックスの盛り上がりまでいかないなと思ったからです。
根本 セリフも含めて、なるべく総集編感をなくしたいという考えがあったんですよね。重要ではないセリフ、ギャグっぽいセリフも極力変えようと。
河森 むしろ細かいセリフこそ変えましたよね?
根本 ギャグこそ視聴者の心に残っていると思うので、かなり変えましたね(笑)。
――初見の人でもわかりやすく構成されていると感じました。
河森 頼むから劇場版を観る直前にTVシリーズを見返さないで欲しい、混乱するから予習しないで、とずっと祈っていました(笑)。それにしても普通の構成で考えると、ハヤテとフレイアのシーンはもう1~2シーンなければいけないし、空中騎士団とロイドとキースの話もあと1シーンは必要なんですよ。シーンの数不足でもなんとか見せるためには、ミュージカルに近い感覚を出さないといけないと思ったんです。
――だからあれだけ多数の曲が詰まっていたのですね。
根本 実際、僕も4DXで見た時はライブ感覚で楽しめましたね(笑)。
河森 今までの作りでそれをやると物語が入らなくなると思って、ためらっていたんです。ミュージカル映画だと普通の映画の半分くらいしかドラマが入らない、それはまずいなと。でも歌の力を使わないと、この映画をまとめるのは絶対に無理だと確信していて。だからセットリストのように先に曲順を考えて、どの順番で曲を変えると印象が変わるか、ということに気を使いました。
――河森さんが「これをやりたかったんだ」と思っていたシーンはどこですか?
河森 ワルキューレの「チェンジ!!!!!」のライブですね。そもそもワルキューレを5人にした理由というのが、フォーメーションを切り替えながら動いた時に全員が映れるギリギリの人数として考えていたんです。ロングショットはデジタルに、アップは手描きにするという想定で。でも、TVシリーズの最初の段階でデジタルチームから「こんなに戦闘シーンが多いとライブまで作れません」と言われて実現できず(笑)。だから今回「チェンジ!!!!!」でようやくフォーメーションを動かせるライブを作れた、というのが大きいですよね。僕からすると本来のワルキューレの姿が拝める、みたいな。
――Blu-ray&DVD発売を楽しみにしているファンの方々にメッセージをお願いします。
河森 繰り返し観ていただく事で、同じシーンの意味がより深まるように設計しているつもりです。また、TV画面では良い意味で、流しっぱなしにしていられる作品だと思うんです。TVの前に座ってじっくり見るだけではなく、料理をしながらでも、掃除をしながらでも、課題をしながらでも。何度も繰り返して気持ち良く楽しんでもらえればと思います。
根本 ライブ的、ミュージカル的な構成で、ドラマとしても当然ですが、ライブビデオ感覚で楽しんでもらえると嬉しいです。
PROFILE
河森正治(かわもりしょうじ)
1960年生まれ、富山県出身。サテライト所属。アニメ監督・演出家、メカニックデザイナー。『超時空要塞マクロス』でバルキリーのデザインを担当したことで注目を集める。代表作に『マクロスF』や『創聖のアクエリオン』など。
PROFILE
根元歳三(ねもととしぞう)
1974年生まれ、新潟県出身。脚本家。『マクロスΔ』ではシリーズ構成を担当。そのほかの代表作に『重神機パンドーラ』『妖狐×僕SS』『ログ・ホライズン』シリーズなどがある。
<Blu-ray&DVD情報>
キャラクター原案<実田千聖(CAPCOM)>描き下ろし 特製スリーブケース
マクロスビジュアルアーティスト<天神英貴>描き下ろし インナージャケット
劇場版 マクロスΔ 激情のワルキューレ Blu-ray & DVD【特装限定版】
2018年8月28日発売
Blu-ray特装限定版:¥8,800(税抜)/ DVD:¥7,800(税抜)
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