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「カフカの東京絶望日記」鈴木拡樹インタビュー

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──本作は、現代の東京でフランツ・カフカが小説家兼フリーターをしているというユニークな設定になっていますが、この企画を聞いたときの率直な感想を教えてください

面白いところに焦点をあてていて、やりがいがありそうだなと感じました。フランツ・カフカさんの作品は「変身」などがとても有名ですが、ご本人が取り上げられることはあまりないので、知ってもらうきっかけになるのかなと。実際にどんな生活を送っているかは台本をいただくまでわかりませんでしたが、きっと未知との遭遇になるんだろうなとも思いました(笑)。

──ご自身が演じるカフカの印象を教えてください

実際のところ、僕が演じているカフカさんは、すごく誇張されていますし、実在した彼本人というわけではありません。原案の漫画にも描かれているように、彼は恋人に送った手紙で自分をものすごく蔑んでいるんですが、そこには読み手を楽しませようとする意図もあったのかなと僕は受け取ったんですね。だからドラマ版のカフカさんは、ご本人が持っていたエンターテイメント性を具現化したというのが近いと思います。たぶん実際の彼は、ドラマのカフカさんほどおかしな人じゃなかったはずです(笑)。

──なるほど。カフカ自身が“自分はこういう人間だ”と表現していたキャラクターを膨らませたのが、ドラマ版のキャラクターなんですね

僕はそう考えています。だからこそ振り切って演じたほうがいいと思いました。例えば街中を歩いているだけで笑われるけれど、「なぜ笑われるのかわからない」というシーンがあるんですが、普通の人間として演じると説得力があまりない気がしたんです。だから視聴者の方に「この人ならそう思われるだろうな」とストレスなく見てもらえるくらい、思い切ってやることにしました。

──そんなカフカの魅力はどんな点でしょうか

自分だけでなく、周りに対しても真剣に向き合って絶望できる優しさを持っているところですね。だからこそ現代社会で僕らがあまり気にしないようなことに対しても、ギャップを感じて絶望してしまう。考えすぎなんでしょうけど、文学をやっている人らしいなと思います。

──ご自身と似ているところ、共感できるところはありますか

まず最初にマイナスを考えるところは似ていると思います。僕は性格的に、真っ先にマイナスを想定したうえで、どうしたらプラスになるかと考えるタイプなので、カフカさんのように絶望しっぱなしということはないですが。彼はマイナスにマイナスを重ねていきますから(笑)。でも、たいていの人は気にしないことをマイナスに捉えて悩んでしまうといった点では、わかるところもありました。

──演じるにあたって、大切にしたことや意識したことはありますか?

カフカさん自身はマイナスになっているけれど、周囲の人たちがそれをプラスに受け取るというのが面白いところなんです。絶望することによって、周りが希望を感じる。だから、すごく難しいことですが、どうすれば周りをプラスな気持ちにできるのかは常に考えていました。

──カフカを取り巻く人々もかなり個性豊かで、登場シーンの紹介文にサラっと強烈なエピソードが盛り込まれているのが印象的です。とくに気になるキャラクターは誰ですか?

裏設定がすごく面白いので、あの紹介文は注目してほしいです。だから、気になると言えばみんなになっちゃうんですよね。例えば喫茶ナルメ友のマスターは、奥さんに逃げられていますけど、その後いい出会いはあるのか……とか。アパートの大家さんなんて、旦那さんの保険金殺害疑惑までありますが、実際はどうなのかな。カフカさんは、そんな大家さんから毒入りかもしれない焼き芋を受け取って食べていますけど大丈夫なのか(笑)。

──撮影現場で印象的なエピソードや、撮っていて大変だった、またはとくに楽しかったシーンを教えてください

3話の撮影で山へバーベキューをしに行ったのは、みんなで旅行に行った気分になれて楽しかったですね。本作の撮影で遠出することになるとは思わなかったので、驚きました(笑)。3話は店長の人柄も少し見えたり、すごくいいバイト先だなってわかったりする回なんです。でもカフカさんが動けば何かが起きるので、明るく楽しいだけでは終わらないという(笑)。

──ちなみに鈴木さんといえば、漫画やアニメを原作とした2.5次元舞台で活躍されていますが、映像作品との違いを意識する部分はありますか?

原作がある作品は、僕たちサイドはもちろんですが、見ていただく方にとっての違いが大きいのかなと思います。キャラクターを知っている状態で観劇してくださる方が多いので。漫画やアニメが原作だと容姿や声のイメージもあったりしますが、僕としてはそういった制約があるのも楽しいんです。原作ファンの方のイメージに近づけつつ、その中でどう個性を出すか考えるのが毎回楽しいので、かっちりキャラクターの設定があるからやりにくいということはないですね。舞台との違いという意味だと、映像は台本の最初のシーンから順番に撮影できるわけじゃないので、そこが難しく感じます。すでに撮影したシーンより前のシーンを撮るとなると、「あそこに繋げるなら……」という思い出し作業が必要なんです。まだ映像における場数が少ないこともありますが、そこまで体力を使っていないはずなのに、映像の現場が終わるとすごく疲れていることもありますね。

──舞台では目の前にお客さんがいて反応が直接伝わってきますよね。そういう点でもやっぱり映像とは違う部分は大きいんでしょうか

そういう違いについては考えますね。舞台の場合は、最後列のお客さんにも届くように、円で包み込むような感覚で表現しているんです。だから映像の場合も、「画面の向こうにちゃんと伝わるように」という意識を持っていないといけないと最初は思っていたんですね。でも映像を多くやっている方から「カメラを意識せず、一部を切り取ってもらう方がいい」という話を聞いて、なるほどと感じました。でもまだまだ試行錯誤しています。それから映像だとカット割りがあるので、一連の流れで撮影していても編集する可能性がありますよね。だから長回しのシーンだと、すぐに返事をするような会話の場面でも、ちょっと隙間を開けておいた方が編集しやすいといった話を聞いたんです。そこから意識するようになったんですが、そうすると今度は自然な会話じゃない気がして……。めちゃくちゃ難しいことをしてるんだなぁと思いました。でも編集していただいた完全版を見ると、テンポ感がよくなっていたり音楽が入っていたりして、より心地いいものになったと感じます。現場では、もっととてつもなくシュールなことをやり続けてしまったように感じていたので(笑)。

──ご自身が演じた空間がどう切り取られているかは、できた映像を見てみないとわからないという違いですね

多少は把握した方がいいとも思うんですが、僕は撮影した直後にカメラの映像を見ないスタンスをとっているんです。もちろんチェックする方もたくさんいるんですが。というのも、最初に入った現場で「カットがかかってもすぐに動くな。そのまま切り返して撮るかもしれないだろ」と言われたので、それ以来カットがかかっても「よし」と言われるまでは一歩も動きません(笑)。

──この作品は鈴木さんにとって地上波のドラマ初主演作となりますが、その意気込みと放送を楽しみにされているファンのみなさんへメッセージをお願いします

今改めて「地上波のドラマ初主演」と聞いて、ちょっと絶望してしまいました(笑)。見ている方が、ちょっと頬を緩めてしまうような作品になっているといいなと思います。この作品を知らなかった方にも見ていただきたいですし、YouTubeから見てくれている方にも、よりカフカさんの魅力が伝わればとても嬉しいです。

カフカの東京絶望日記 公式サイト

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