インタビューココだけ | 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち
羽原信義×福井晴敏 ヤマト音楽を語る。[宇宙戦艦ヤマト紀行]
いよいよ10月14日(月・祝)に開催が迫る、「宇宙戦艦ヤマト2202」コンサート2019 ソノ・トキ・キミ・ト —Close to you tonight—。
早くも3月27日(金)にBlu-ray & DVDの発売も決定した本公演にむけ、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を創り上げた監督と脚本家が語る、ヤマト音楽の魅力とは? パンフレットに掲載される、ヤマト愛に満ちたおふたりのトークから一部を抜粋してお楽しみください。
初めて「ヤマト」音楽を意識した頃
──おふたりが『宇宙戦艦ヤマト』の音楽を意識されたのはいつ頃のことでしょうか?
福井僕は、本編を観るより先に、まず音楽に触れました。親戚のお姉さんがブラスバンド部に入ってたんですが、そこで『ヤマト』の音楽を演奏してたんですよ。劇場版をテレビで観るより先に、それを聴いた覚えがあります。その頃には、そういうふうに学生がブラスバンド部で演奏するくらいには、『ヤマト』の音楽も有名な曲になっていたということですね。
羽原僕は最初のテレビシリーズで、映像とともに意識しましたね。劇場版が公開する直前くらいに「宇宙戦艦ヤマト」(1977年発売)という名前のLPが出たんです。「君は覚えているか! ヤマトのあの熱き血潮を!!」というコピーがついていたのを覚えています。「これでやっとBGMが聴ける」と思って針を落としたら「無限に広がる大宇宙……」というあのナレーションが流れて、ドラマが始まるんですよ(笑)。「BGM集じゃない!!」と、がっかりしましたね。
福井それはストーリーがダイジェストで入っていたの?
羽原そうなんです。その前後にもソノシート(1978年発売)が出て、「これだ!」と思って買ったんですが、これも「無限に広がる大宇宙……」って(笑)。LPは全26話の中からセレクトした回を収録したものでしたが、こちらはドメル戦までのストーリーをダイジェストにしたものでした。
福井BGMだけのアルバムというのは、なかなか出なかったんですね。
羽原そうなんです。その後、LPより少し小さなサイズのレコードで「宇宙戦艦ヤマト 主題歌・BGM集」(1978年発売)が出たんですが、それがBGMを商品化した最初のレコードだと思います。
福井「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」(1977年発売)は?
羽原あれも正確にいうと、オリジナルのBGMではなかったんです。
福井そのために作った曲なんでしたっけ?
羽原そうです。もちろんメロディーは同じなので、それはそれで嬉しかったんですが、オリジナルが聴きたいという気持ちは満たされなかったんですね。
「ヤマト」音楽の新しさ
──そこまでこだわりが出るほどに、音楽の重要さを広く認識させた作品だと思います。
福井最初の『ヤマト』は奇跡ですよね。あれだけメロディアスな曲が揃っていて、それが見事に決まる。それ以降の成功はお金かな(笑)。
──確かに。『ヤマトよ永遠に』あたりからの厚みが増した楽曲は、音楽予算の増額を感じます(笑)。
福井作品がヒットすることによって、音楽の予算も増えて、多くの曲を作ることが可能になる。その中から、必要かついい曲だけを選んで使うことができるようになって、それがあの密度感を生み出していたと思うんです。
羽原豪華ですよね。『ヤマト』って、未使用曲が沢山ありますから。
福井我々はそこから曲を選んで使えるわけですよ。本当に贅沢な環境でした。
「小遣いをはたいて、ヤマトのレコードを買ってました」(羽原)
──『さらば宇宙戦艦ヤマト』の中から選ぶならどの曲がお好きでしょう?
羽原ラスト「僕たちの結婚式だ」と古代がつぶやくシーンに掛かったピアノから入る「大いなる愛」ですね。しばらく曲を聴くたび、あのシーンを思い起こして泣いてました。もう条件反射で泣く感じでしたね。『2202』で、あの曲は第二十五話の該当シーンには掛からなくて、別なシーンに使われていたんですが、これがまた見事に決まっているんですよ。吉田(知弘)さんの選曲にはうならされました。
──『さらば宇宙戦艦ヤマト』のパイプオルガンのように、敵ごとにテーマ楽器を活用したというのも印象的でした。
福井パイプオルガンというとまず教会、つまり神様を連想させる楽器じゃないですか。本来、神聖な存在を描き出すはずのものを、正反対の、大宇宙を進撃する巨悪のテーマを描くために使った。それがすごいですよね。本来なら神の偉大さを描くためにふさわしい楽器で、逆に今度は底知れぬ恐怖を持つ敵をイメージさせるんですよ。そこがうまいなと思うんです。絶対に勝てそうにない、って感じですよね。
羽原:『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の最初の会議で、あのパイプオルガンをどうするか実は議題に上がったんですよ。というのは、『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』では、ガトランティスの登場シーンに打楽器を使っていたんですよね。
──あの打楽器は、こんな解釈があるのかと驚かされました。新しいイメージを見事に描き出していましたよね。
羽原そうなんですよ。よかったんです。でも今回もその流れを踏襲するのか、となった時に、今回は『さらば』なんだから、やっぱりパイプオルガン使いたいよね、ということになったんです。『星巡る方舟』に登場した蛮族は、あくまでもガトランティス軍の辺境を預かる一派だから、という解釈ですね。
福井逆にいえば『星巡る方舟』でパイプオルガンが使われなくてよかったとも言えます。もしあそこで使われていたら、今度はこっちで使えなかったかもしれない。
羽原あそこでイレギュラーなことをやってくれたので、結果的に今回のパイプオルガンが、新鮮なままゴージャスに聞こえるようになりました。
福井そういう意味では、『星巡る方舟』は、『2202』にとってのよい予告になったと思いますね。
「音楽に関して、ヤマトは戦略的だったと思うんです」(福井)
『2202』音楽の魅力とは?
──『2202』音楽で印象に残ったシーンは?
羽原第二十一話で銀河が山南を助けに現れるシーンに「果てしなき戦い」が掛かったのには、鳥肌が立ちましたね。「この曲をここで使うのか!」という感じで。
──コンテの段階では意図していなかった?
羽原絵コンテを描く時には、よくそのシーンに使われる曲を想定するんですが、第二十一話はまったくのノープランだったんですよ。衝撃でした。ダビングの時に泣きました。
福井僕が音楽に関して印象に残ったのは、最終回ですね。最初に上がってきたプランでは、もっと音楽がついてたんです。それがどうにもしっくりこなくて、何度も曲を差し替えてみたんですけど、うまくいかない……。とはいえもうダビングの現場だったので、その場で結論を出すしかないんですね。
──実際の映像とはまったく違うものだったんですね。
福井最終的にAパートは1曲残して全部取ってしまいました。だからAパートはほとんどBGMはついてないんです。
──とても静かなAパートでした。
福井本来なら音楽がつくことで、人の情動を高めることができるんです。でも1話前の第二十五話で、そうした盛り上げをかなりやってしまった。その直後だから、ここは静かに観てもらおう。最後にドンと波打つところだけ、しっかり音楽で高めればいいんだと思い直しました。そういう意味で旧作は、音楽だけでなく静寂の使い方もうまかった。沖田艦長が死ぬ瞬間なんて、佐渡先生が「ハッ」と息を飲むだけでしょう。強迫観念的に音楽をつけたがる現代の我々が、忘れてしまっている演出ですね。音楽をつけないことの大切さもあるんだと感じさせられました。
──シナリオを書かれる時、音楽を想定されるのですか?
福井ここは音楽で保たせようというシーンは想定しますが、それ以外はまったくのノープランです。どんなふうになるのか、というのを待つ感じですね。
──今回のコンサートのもう1つの主役である、エンディングのために作られた主題歌についても、おふたりは話し合われたりしたのでしょうか?
福井僕から希望したのは、ラストに「ヤマトより愛をこめて」が流れるようにしたいということだけです。新曲の中で敢えて1曲選ぶとするなら「月の鏡」が印象的でしたね。
羽原神田沙也加さんの声がきれいでした。
福井あの曲を聴いた時、「そうか、『2202』という作品はこういう具合に進んでいくんだな」というのが見えたような気がしたんです。それに初めて聴いたはずなのに、なぜかすごく懐かしい感じも受けました。
羽原あの曲は『宇宙戦艦ヤマト2』の「テレサよ永遠に」という曲のイメージでとお願いしたんですよ。
福井そうなんだ(笑)。「月の鏡」は第二章のエンディングでしたけど、ちょうどその頃から、舞台挨拶で地方を巡るようになったんですね。エンディングが流れる時、我々は挨拶に備えて舞台袖にいるので、そこでよくこの歌を聴いたんですよ。だからこの曲を聴くと、今でも地方に行った記憶が蘇ります。そういうふうに音楽というのは、映像だけじゃなく人間の記憶にも紐付くものなんです。
羽原日本中周りましたよね。楽しかった。
福井なにせ『ガンダム』より周ってますから(笑)。
──それでは最後に、おふたりから『ヤマト』音楽の魅力を改めてお聞かせください。
福井アニメというのは所詮「絵」ですから、音楽に助けられる面というのはすごく多いんです。その点、今の目からすると『ヤマト』は音楽について、とても戦略的だったんだなと思いますね。「とにかく音楽の比重を高めよう!!」そんな想いが感じられます。これは有名な逸話ですけど、亡くなられた西﨑(義展)さんが初めて宮川(泰)さんのところに『ヤマト』の音楽を頼みに行った時、目の前で泣きながらストーリーを語ったそうなんです。とにかく感情を喚起するような音楽が欲しいという西﨑さんの想いを、何より雄弁に物語っている逸話ですよね。僕は西﨑さんが宮川さんのところへ音楽を依頼しに行った時点で、この勝負は勝ったと思うんですよ。
羽原『ヤマト』に関して言えば、音楽や音もまたキャラクターの一部なんですね。掛かる音楽も、ヤマトが飛ぶ時の音も、全てヤマトの一部なんです。今回のコンサートが成功したら、今度はぜひパイプオルガンのある会場で、ファンのみなさんといっしょにあの「白色彗星」を生で聴きたいですね。
インタービュー全文はコンサート2019パンフレットでお楽しみ頂けます。
パンフレット詳細はこちら
PROFILE
福井晴敏(ふくい・はるとし)
1968年11月15日、東京都生まれ。小説家・脚本家。1998年に『Twelve Y.O.』でデビュー。同作で第44回江戸川乱歩賞を受賞。翌年発表した『亡国のイージス』は、2005年に映画化され、氏の代表作となった。『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』では、小説執筆に始まりメディアミックス、スピンオフ作品の原作を担当。続く『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』ほか、現在のガンダムシリーズにおける中心的役割を担う人物のひとりである。また作家としてだけでなくプロデューサー的な領域においても活躍。本年公開の映画『空母いぶき』では企画のひとりとして参加した。『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』ではシリーズ構成と、岡秀樹氏と共作で全話の脚本を務めている。
PROFILE
羽原信義(はばら・のぶよし)
1963年6月21日、広島県生まれ。アニメーター・演出家。葦プロダクションにて、『装甲騎兵ドルバック』『超獣機神ダンクーガ』『マシンロボ クロノスの大逆襲』『超音戦士ボーグマン』などの作品に作画や各種デザインワークとして参加。のちにプロデューサーの下地志直氏、企画文芸の佐藤徹氏とともにXEBECを設立し、『ゾイド -ZOIDS-』などでテレビアニメにおけるCG演出の黎明期を支えた。監督作品としての代表作に『蒼穹のファフナー』シリーズがある。『宇宙戦艦ヤマト』には『復活篇』のメカニック演出、ディレクターズカット版のアニメーションディレクター、『2199』の各話演出を手がけたのち『2202』を監督。現在はXEBEC解散に伴い、SUNRISE BEYOND取締役を務める。
「宇宙戦艦ヤマト2202」コンサート2019
2019年10月14日(月・祝)
Bunkamura オーチャードホール
18:00 開演 ( 17:00 開場 )
<STAFF>
音楽:宮川彬良/構成:小林 治/企画:ボイジャーホールディングス、バンダイナムコアーツ/主催:宇宙戦艦ヤマト2202コンサート製作委員会/制作:バンダイナムコライブクリエイティブ/著作総監修:西﨑彰司/舞台監督:長谷部達也(ワンポイント)/構成:小林 治
<CAST>
演奏:宮川彬良(ピアノ)・角田 順(ギター)・一本茂樹(コントラバス)・川瀬正人(パーカッション)・山本友重(バイオリン)・溝口 肇(チェロ)・平原まこと(サックス)・武沢侑昂(ギター)・有木竜郎(キーボード)・金森佳朗(ベース)・河野道生(ドラム)
歌唱:山寺宏一・平原綾香・ありましの・星野裕矢
総合司会:中村繪里子
一夜限りの劇伴特別アレンジと豪華アーティストによる歌唱を映像化!
「宇宙戦艦ヤマト2202」コンサート2019 Blu-ray発売決定!
<収録内容>
10月14日(月)開催「宇宙戦艦ヤマト2202」コンサート2019 ソノ・トキ・キミ・ト
-Close to you tonight-
2020.3.27 Blu-ray ON SALE
Blu-ray特装限定版:¥9,800(税抜)
※特装限定版は予告なく生産を終了する場合がございます。
<封入特典>
■コンサート音源収録CD(1枚)
■特製メモリアルブックレット
<映像特典>
■コンサートメイキング映像
■「愛のヤマトークナイト」音楽特集
■2202劇伴収録風景&宮川彬良インタビュー
<音声特典>
■オーディオコメンタリー
<仕様>
■三方背収納BOX
※特典・仕様は予告なく変更となる場合がございます。
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち コンサート2019
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©西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会
©西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2202コンサート製作委員会