インタビューココだけ | コードギアス 復活のルルーシュ
12月5日Blu-ray & DVD発売記念!『コードギアス 復活のルルーシュ』谷口悟朗(監督)×福山潤(ルルーシュ役)スペシャル対談[復活のルルーシュ 集中講座]
ファン待望の完全新作映画『コードギアス 復活のルルーシュ』のBlu-ray&DVDが12月5日に発売! 発売を記念して、「コードギアス」シリーズを生み出した監督の谷口悟朗さん、ルルーシュを演じた福山潤さんによるスペシャル対談が実現。13年もの間、作品に携わり続けてきたお二方からここでしか聞けない貴重なお話を伺った。
──2006年から始まったTVシリーズを経て、2019年ついに『復活のルルーシュ』が公開。そして、ルルーシュの誕生日である12月5日にBlu-ray&DVDが発売されました。ここまで「コードギアス」シリーズに携わり続けてきた、今の率直なお気持ちをお聞かせください。
福山 TVシリーズの収録をしていた当時、「コードギアス」がここまでの作品になると考えていた人は多分誰もいなかったと思います。監督をはじめとするスタッフの方々には、長く続くシリーズにできるようにという想いはあったと思いますが、その通りになるかは分からないので、役者陣は毎回その当時の全力で演じていました。ルルーシュはある程度の変化を許容してくれるキャラクターです。彼に出会ったことで僕の声優としての道行き、何より考え方が大きく変わりました。本当に思いも寄らない出会いでしたね。その幸せは、プロジェクトに参加させて頂く度に強く感じています。
谷口 スタッフにしてもファンの方にしても色々立場が違う13年間。ある方にとってはもう完結した過去、他の方にとっては現在進行形の作品なので、それを感じながら作っていく過程には面白いものがありましたね。過去のインタビューでも答えているんですけど、その一方でやらなければよかったなという想いもありました(笑)。誤解しないでいただきたいのは『復活』の話ではなく、プロジェクトとしての関わり方の話ですね。今はもう全てを受け止められる心構えがありますけど、色々な心の変遷があった上での13年間です。
──2月に公開され、舞台挨拶でファンの反応を実際に感じられたと思いますが、いかがでしたか?
福山 一つの作品に10年以上関わり続けて、しかもそれがお客さんに受け入れてもらえているなんて滅多にできない経験だと思います。もちろん作品を作り続けている僕らの中にも新しい発見はあるんですけど、当時(TVシリーズ)の熱量は昔のことになっている中で、今もなお現在進行形のものとして作品を捉えてくれるファンの方々の空気を一緒に味わえるのはありがたいですね。形容しがたい不思議な感覚です。
谷口 スタッフやキャスト、ファンの方も含めたそれぞれの人たちの中で比重の差はあるにせよ、人生の一部になってくれているんだろうなと。それに対して答えを出すだけの経験値が私の中にまだないので、そういう形で受け止めるのかと感嘆しました。それぞれの人の中で「コードギアス」が一部になっているんだなと、その重みを実感しました。
──ルルーシュが復活するシーンはファンが待ち望んでいた場面だったのではないかと思います。演出された谷口監督、そして演じられた福山さんはどのような想いで制作に臨まれましたか?
谷口 まず、タイトルに「復活」とつけることを渋っていました。プロデューサーに分かりやすいからと説明されたんですけど…。
福山 めちゃくちゃストレートなタイトルだったから意外だなと思っていたんですけど、谷口さんは嫌がっていたんですね(笑)。
谷口 ストレート過ぎて逆に「コードギアス」っぽくないんじゃないかなと思っていました。それと、ストーリーに関して脚本の大河内(一楼)さんと話したのは、皆の心の中だけでの復活も“復活”と言えるけど、「コードギアス」のファンはそんなものでは許さないだろうと(笑)。最後の最後に復活しておしまいも違う、やっぱり復活したからには活躍してくれないとしょうがないので、それなら最初から出しちゃえと思って、ルルーシュの顔が見えてタイトルインになりました。復活のシーンは、作画監督の木村(貴宏)さんが大変そうな顔をしていたのが印象に残っています。今までルルーシュがギアスを使うシーンは、TVシリーズの第1期と第2期のどちらも千羽(由利子)さんが担当していたんですよ。ところが、今回は木村さんの担当だったので、相当困っていましたね(笑)。動きのパターンは今まで幾つもやってきているので、そこはかなり混乱したみたいです。
福山 そういうパート分けがあったんですね。
谷口 そうですね。ここは木村さんが向いている、こっちは他の人が向いているみたいに。
福山 僕は、TVシリーズが終わった段階で今後の展開について考えていなかったですね。お呼びがかかればやるもんだと思っていました(笑)。また皆で続編を作りたいなと希望的観測が持てる作品もありますけど、「コードギアス」の場合はそこをつついたら凄く地獄を見そうな気がしていて。下手に発言すると追及されそうなので、半ば責任を取りたくないといいますか(笑)。TVシリーズの時に、制作陣とキャストを含め、自分たちの中ではやりきった上でしっかりと着地点を見つけたので、あとは見る人たちそれぞれの感じ方次第と割り切っていました。個人的に復活のシーンでのルルーシュを一言で表すと、「気まずい」ですね(笑)。
谷口 凄く気まずいですよね。アフレコの時にもそういう話をしました。
福山 このプロジェクトが発表された時から、どの面下げてと、ずっと思っていました(笑)。10周年のイベント(2016年11月27日開催「コードギアス 反逆のルルーシュ キセキのアニバーサリー」)の前にTVシリーズを見直したんですけど、改めて冷静に振り返ると疑問は色々湧くんですよね。今回の復活も、なんでこういう選択をしたんだろうなと思うところも、その根幹には「気まずい」があるからと考えると納得がいくので、当時もそう思って演じていたんだろうなと。全てにおいて、実は僕の中では根幹に「気まずい」があります(笑)。
──ルルーシュが復活するシーンは音楽も印象的でした。音楽面で気をつけられたことはありますか?
谷口 ルルーシュ復活のシーンでは、多くの人たちの声による賛美「カンタータ」が欲しかったんですけど、私の説明がいけなかったのか、「教会的な方のカンタータ」ができてしまって。ダビングの時に一度それをはめ込んでみたんですけど、終わった瞬間に立ち上がって「ダメだ、これじゃ復活できない」と言ってしまいました(笑)。要するに、10年以上待っているお客さんの期待に応えるには、通常の組み方だとインパクトが足りないんですよね。そのことは音楽と音響のチームに話をして、意識を切り替えていきました。中川(幸太郎)さんの音楽が良い悪いということではなく、TVシリーズから10年以上経ったので微妙なズレが発生してしまうことが分かりました。結果的に別のところで想定していた曲を使っています。
──ラストシーンは、どのような想いで演じられましたか?
福山 自分がどのスタンスでやるべきなのかを幾つか考えていたんですけど、結局カタルシスを持つのはやめようという方向に行き着きました。演者側として、このシリーズを追い掛けてくれた人たちに対して最後の言い訳をしてしまうと、本当に「コードギアス」が終わっちゃうなと。それと、ルルーシュってそんな奴だっけという想いも湧いてきたり、色々と迷ったんですけど、なんとなくカタルシスを持ってはいけないんだろうなと思い至りました。『復活のルルーシュ』は見ている人たちがそれを感じることはあっても、演じる側の僕が感じるカタルシスはTVシリーズでもう終わっていたので、『復活のルルーシュ』を演じ切った僕の想いはまた別の形で昇華しないといけないだろうなと考えていました。上映されたばかりの時はどっちが正しかったんだろうと思いながら見ていたんですけど、今はなんとなくこれで良かったんだなと思っています。
谷口 私としてはそれで大正解です。ラストは別に覚悟を持てと強制していないんですよね。ただ事象として提示しているだけなので、演じる側が変に構えてしまうと西洋的な意味での“God”になっちゃう。私としては、世界を構成する一つの要素としてC.C.やL.L.がいるイメージだったので、そこに絶対神が君臨するとバッドエンドになってしまいますから。
福山 僕もそこに迷いはなかったですね。色んな選択肢はあったんですけど、ルルーシュの最後の物語だからといって、華々しくやり切るぞという想いは微塵もなかったです(笑)。それは自分の中で確固たるものとしてありましたし、感傷的な気持ちではやらないようにしようと思っていました。
──Blu-ray特装限定版の特典Discに収録されているビジュアルコメンタリーは、2時間半近くに及ぶ充実した内容となっていました。こちらの収録はいかがでしたか?
福山 本編より長いですから、半ば地獄でしたよ(笑)。谷口さんは聞かれたら何でも答えてくれることは分かっていたので、僕もアホのふりして聞いていますけど。TVシリーズの時は、それが監督と主演の共通見解になってしまうのは避けたかったので、あまり聞かないようにしていました。共通見解を得て演じると、受け手が自らの感覚よりも制作者や演者の言葉を“答え”として捉えてしまうのかなと思っていたんですけど、10年以上経って、仮にそう捉えられたとしても恐らく邪魔にはならないかなと。『復活のルルーシュ』は思った以上に情報量が多いので、ほんの数秒でその情報が忘れられてしまうのは勿体無いですし、これをフックに使ってもらえたらいいなと思います。本来ならここまで根掘り葉掘り聞きたくないタイプなんですけど、櫻井(孝宏)さんもいらっしゃったので、聞いた方が面白いかなと思ってやらせて頂きました。
谷口 オーディオコメンタリーだと10分くらい喋らないことも普通にあるんですけど、今回はビジュアルコメンタリーなのでラジオ収録しているような気分になりましたね。ワザと途中に20分くらい、3人でピザを黙々と食べているシーンを入れればよかったなと後悔しています(笑)。
福山 普通あんなテンポでは喋らないので、ラジオだと3時間以上の量を喋っていますよ。
谷口 もっと意味のないことを喋っておけばよかったですね。
──同じく特典Discには、本編のその後のエピソードが描かれるピクチャードラマ「Re;f 103.00 深海のカケラ」が収録されています。L.L.(ルルーシュ)とC.C.の雰囲気がとても新鮮でしたが、収録はいかがでしたか?
福山 いや、僕はもっとヒドいものが来ると思っていたんですよ(笑)。「コードギアス」の過去のピクチャードラマやドラマCDは、本編となるべく関わりを持たせないがために大胆なキャラ構図のものを演じさせられるケースが多かったんですけど、今回は思っていたほどではなかったですね。過去の収録で耐性はできていますから(笑)。「コードギアス」は長くやっている分だけあって、キャラクターたちのifの話を過去に幾つも作っています。例えば、ルルーシュがずっとナイトメアフレームのシミュレーターで頑張っているピクチャードラマだったり(笑)。本編で描かれるルルーシュのストーリーはこれで終わりだけれど、別に彼らの物語自体がここで終わったわけじゃないという一つの優しい提示だと思います。
谷口 私の立ち位置としては、本編はこちらが仕切っているので、ピクチャードラマやドラマCDに関しては脚本家さんに自由にやってもらっています。
──ここまで長い期間苦楽を共にしたルルーシュに、本作を終えた今、声を掛けるとするならば…。
福山 ルルーシュは物語が終わって一つの区切りがついたけど、僕はまだ区切れていません(笑)。実は、ルルーシュはこうやればいいという定義が未だにないんですよ。普通は口調や声のトーンやテンポなど色々なもので形作ってキャラクターを構築していくので、何年か経ってまたやることになってもその感覚を今の自分に落とし込んで再現することができます。ですが、ルルーシュに関しては、初めからそのルールで作っていませんでした。自分の方法論にないものから出発するキャラクターは唯一かもしれないですね。TVシリーズの頃と比べたらもっと楽にやれているはずなのに、その時の限界をやるのがルルーシュに近い感覚なので、毎回収録がキツいんですよ(笑)。なので、声を掛けるとしたら「お前は休んでいても俺は休めないからな!」という愚痴ですね(笑)。
──Blu-ray&DVDで改めて注目してほしい、楽しんでほしい本編のポイントはありますか?
谷口 初見は普通に再生して見て頂きたいです。2回目以降は、藤堂の持っているお酒のラベルなど細かい設定もちゃんと作っているので、その度に一時停止して楽しむことができますね。映画館で見ていた時には分からなかったシーンを見直せば、より理解しやすいものになると思います。個人的には、夜の村で扇とルルーシュが会話をするシーンは可笑しくて可笑しくて仕方がなかったので、ぜひそこは何度も味わって頂きたいですね(笑)。
福山 あそこは考察をしたら楽しいシーンですよ(笑)。
谷口 あのシーンは、ステージ上で福山さんと真殿(光昭)さんに実際にやってもらいたいですね(笑)。
福山 ビジュアルコメンタリーでもそこに触れているんですけど、僕と谷口さんが考えていることは多分同じだったんだなと分かって満足しました(笑)。
谷口 それと、A-on STORE(バンダイナムコアーツ公式通販ショップ)でご購入頂いた方限定の特典としてビデオコンテが付いてきます。ビデオコンテには、絵コンテや指示書など私をはじめとした作画担当、原画担当などの各スタッフがそのカットを構成するにあたって、どのような意図で1つのカットを作り上げていくのかが分かりやすいものをセレクトして入れてあります。映像制作に興味のある人に向けて用意したものなので、楽しんで頂けると嬉しいです。
福山 僕は、映像特典の『1分くらいでだいたいわかる「コードギアス」①②③』を全部見たんですけど。公式がこんなにイジってくるんだと思いながら、とても楽しみました(笑)。
谷口 「コードギアス」は前から公式がおかしいなと思うことが何度かありましたよね(笑)。
福山 でも、あの映像特典は大変面白かったのでオススメです(笑)。『復活のルルーシュ』から「コードギアス」に入るという人は、ぜひともその映像を見てから本編を楽しんでほしいですね。
谷口 劇場総集編3部作「コードギアス 反逆のルルーシュⅢ 皇道」特装限定版Blu-rayの特典のBOXには『復活のルルーシュ』が入るスペースを空けてあります。そういう仕様だと受け止めて、ぜひ一緒に購入して頂けたら嬉しいです。
──では最後に、「コードギアス」シリーズを愛する全てのファンの方にメッセージをお願いします。
福山 この時期になると、ファンの方から「12月5日はルルーシュの誕生日です」とメールやお手紙を貰うんです。あまり自分の演じたキャラクターの誕生日をいつまでも覚えている方ではないんですが、10年間も言われ続けると流石に覚えてしまいました(笑)。皆様のおかげで僕はちゃんとルルーシュの誕生日を覚えることができました(笑)。TVシリーズから13年も経つと、0歳の子が中学生になり、小学生が二十歳になるわけです。それだけ長い時間お付き合い頂いた皆さんとは、ルルーシュというキャラクターを一緒に作り上げたような感覚なので、『復活のルルーシュ』を余すところなく見て頂いたら、きっと僕と同じ境地になると思います。いつでもルルーシュに会えるという気持ちでいて頂けたら嬉しいです。今後、もしまたルルーシュが「復活」するようなことがあったら…面白いですね(笑)。
谷口 『復活のルルーシュ』を描いたことで、自分の中で『反逆のルルーシュ』編に完全決着をつけることができました。今回のプロジェクトは、皆さんの心の中にあるルルーシュ像を一旦預からせてほしいという気持ちで臨みました。劇場総集編3部作と『復活のルルーシュ』が完成した今、あとはこの作品を受け止めて頂いたファンの方々、スタッフやキャストに、ルルーシュや他のキャラクターをお返しする気持ちです。今後皆さんがどう作品を解釈し、遊んでも、著作権に関わらない範囲であれば、こちらからどうこう言うつもりはありません(笑)。今後も皆さんの中でルルーシュやスザク、C.C.などのキャラクターたちを愛して頂けたら、もうそれ以上のことは望みません。
PROFILE
谷口悟朗(たにぐちごろう)
愛知県出身。アニメーション監督、演出家。監督としての代表作に『無限のリヴァイアス』『スクライド』『プラネテス』『ID-0』『revisions リヴィジョンズ』などがある。2020年には総監督を務めるTVアニメ『スケートリーディング☆スターズ』が放送予定。
PROFILE
福山 潤(ふくやまじゅん)
大阪府出身2007年に初代声優アワード主演男優賞受賞など数々の受賞歴を誇る。主な作品に『七つの大罪』キング役、『暗殺教室』殺せんせー役、『おそ松さん』松野一松役、ゲーム『ペルソナ5』主人公役などがある。
コードギアス 復活のルルーシュ 公式サイト
コードギアス シリーズ特集サイト 「コードギアス 復習のルルーシュ」
コードギアス 復活のルルーシュ A-on STORE特集サイト
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