TVアニメ『RE-MAIN』原作・総監督・シリーズ構成・脚本・音響監督:西田征史 インタビュー全文掲載
欧州では「キング・オブ・スポーツ」と呼ばれ、人気スポーツの一つとなっている“水球”を題材にして描くオリジナル本格スポーツアニメ『RE-MAIN』が遂に始動! そこで今回は、原作・総監督・シリーズ構成・脚本・音響監督を務める西田征史さんにインタビュー。本作への意気込みや想い、そして水球の魅力について熱く語っていただいた。
初の「アニメ総監督」として自らのオリジナル作品に挑む!
──本作の企画は、どのような経緯で立ち上がったのでしょうか?
西田数年前に自分の人生を振り返った時、これまでに体験してきたことを活かした作品作りができないかなと思ったんです。そこから高校時代に所属していた水球部の話をやってみたいという思いが芽生えました。あと、自分が10代の多感な時期に観た作品は原体験として強く残っていて、その後の価値観形成に大きく影響しているなと感じたので、同じように今の10代に向けた作品が作れないかと考えた時、部活ものは面白いジャンルじゃないかなと。それで『TIGER & BUNNY』でご一緒したプロデューサーの松井(千夏)さんにご相談して、今の流れに繋がっていった感じです。
──映画や舞台では演出のご経験がありますが、アニメーション制作に携わってみていかがでしたか?
西田アニメーションはすべてを新たに描き起こすところから始めるので、そこが実写との大きな違いですよね。書かないと、無、存在しないわけですから。たとえば消しゴム1個にしても、まず消しゴムがあるのかないのか、あるならどういうブランドの消しゴムなのか練り消しなのか、新品なのかボロボロなのか等を決めて設定を起こしますが、それを道路の電柱や看板などのアイテムから洋服まですべてを作るというのは、すごい熱量と時間が必要だと改めて感じました。でもそうやって、みんなで作っているところに青春感があるというか、ひとつのチームとして動いている実感があります。制作のMAPPAさんはほとんどの行程を社内で管理して各部署を回していくので、ビルのフロアを行き来しながらやりとりしていると「みんなで今ここで作っている」と感じられて楽しいですね。
──物語の方向性やテーマは、どのように作られていったのですか?
西田物語の進む方向にはいろんな可能性があったので、全体のペース配分も含めてとても悩みました。水球部員たちの物語として限られた話数の中でどこまで展開させていくのか、そのスピード感も慎重に決めていきました。主人公・清水みなとのバックボーンを活かした物語に自分の描きたいものを織り込む一方、これは部員メンバー7人の群像劇でもあるので、彼らを描いていく過程で自然と芽生えてくる展開もありました。それによって当初の想定とは違う方向へ進んでいったりするのも、自分としては面白かったです。また、公開されたPVでは、みなとが一度は水球から離れていたことを伺わせていますが、彼に限らず誰でも何かしら「想像していた人生とは違う」という思いを抱えていると思うんです。そこまでの時間に生きてきた人生があって、そこから先の人生もある。「それまでの自分とこれからの自分」というのが、作品全体のテーマと言えますね。
──そうした中で、ご自身が特にこだわりたいと思ったところは?
西田キャラクターたちが本当に生きているかもしれないと思ってもらえるような生活感です。嘘くさくならないように、派手になりすぎないように、という点にもこだわったかもしれません。
──キャラクターたちの設定も気になりますね。
西田主人公らしい派手さを出すかどうか、みなとは一番悩みました。突飛な髪型にするのか、色を工夫するのか。でも、身近に感じられるような平凡性も大事にしたかったので、スタッフさんたちに好きに動かしてもらうことも考えて、今の姿に落ち着いたという感じです。川窪ちぬは、主人公が行動を起こしていくきっかけになる存在で、本作の唯一のヒロインと言えますね。あと、まだ公開されていませんが、他校の生徒も多数登場します。
──今回は音響監督も務めていますが、キャスティングで意識されことはありますか?
西田水球部員は7人7様の色を出すために、役者さん自身の地声の色の違いを感じられたらいいなと。そういう意味で、声に特徴があり、各々似ていない方たちを選びました。もちろんキャラクターに合っていることが大前提ですけど、その上で声質とか雰囲気の違いを大事にして選んだという感じです。
学生時代の水球経験を活かしてマイナー競技ならではの物語に
──スポーツものでは仲間との熱いドラマも定番ですが、本作ならではのポイントは?
西田マイナースポーツの、よりニッチな部分というか、あまり知られていない水球という競技の「あるある」みたいなところかなと。この作品を進めるにあたって、水球関係の方々に協力してもらっているんですけど、皆さん「水球を広めたい」という思いが強いので、そうした競技への愛情も伝えていきたいなと思っています。あと物語的には、ひとつの目標に向かっている仲間同士の絆だけでなく、同じ才能を持っているわけではない個々の能力の出来不出来など、些細な葛藤も描いていきたいので、そこで7人7様の個性を出したいですね。
──西田さんのリアルな水球経験も盛り込まれているとか?
西田部室の設定は、完全に僕の高校時代の部室が再現されています(笑)。プールの設定もそうですね。あと、部室の目の前にプールがある感じとか、部室までの道程の雰囲気とか、自分の青春の思い出として刻まれているものが、いろいろと反映されています。
──試合シーンの表現など、映像面でこだわっている点はありますか?
西田映像に関しては、自分がアニメーションで初めて関わらせてもらう部分なので、監督として入ってもらっている松田(清)さんに助けてもらっています。普通にシュートする時でも、水の滴り方ひとつで迫力が全然違うので、水の描写や動きをどうドラマチックに見せていくかを模索しています。日々、見せ方を研究しながら進めているところですね。
──西田さんが自らプールに入って、資料映像を撮影しているとの噂も…。
西田はい! 昨日もプールに潜っていました。競技シーンや水の動き、筋肉の動きの参考にと、シナリオに則した水球のプレイを実際にプールで撮影させてもらっています。限られた時間内で多くのカットを撮っていくので、綿密な段取りの打ち合わせをするんですけど、水の中が得意なスタッフは僕しかいなくて…(笑)。僕が潜ってカメラを回して、水中からのアングルなどを2時間くらいかけて撮っています。自分以外は水球をまったく知らないスタッフ陣なので、試合での攻める選手と守る選手の距離感とか実際の映像で観てもらわないとわからないことも多くて、こういう撮影をしないと進めにくかったというのはありますね。自分も水の中だとスイッチが入るというか、気持ちのいい疲労感もあるので結構楽しいんですよ。これが迫力ある映像に結びつけばいいなと思います。
──『RE-MAIN』の制作を通して、改めて感じる水球の魅力とはなんですか?
西田自分は中学が水泳部、高校が水球部だったんですけど、競泳はリレーもあるけど基本的に一人で泳ぐじゃないですか。でも、水球部に入って仲間とボールを回したりする時にハッとしたというか、みんなで戦っている感じがしたんですよね。それがすごく面白くて、誰かがミスしたら互いにカバーしたりと、仲間との繋がりをより強く感じたことを覚えています。水球に限らず、チームスポーツはそういうものですけど、その魅力をアニメで描きたいなと思いました。あと、まだマイナーな競技だからこそ、敵も味方も「水球が好き」であることを前提で繋がっているんです。僕は東京の高校でしたけど、それでも当時は14校しかなくて、他校との横の繋がりもあったりして、みんなで一緒に水球を盛り上げようとする空気がありました。
──では、アニメ制作の面白さは?
西田いろいろな可能性を感じるところですね。アニメーションには実写そのままのリアルな表現では面白くならない瞬間があって、そこが難しいところですけど、スポーツものでは煽る見せ方も大事だなと実感しています。そうした「アニメーションならではの盛り上げ方」を今改めて勉強していますし、面白さを感じているところでもあります。
──作品に期待を寄せるファンに向けて、メッセージをお願いします。
西田自分が関わったすべての作品に言えることですけど、友情や絆を描く時は、学生時代の部活で培ってきたものが根底に流れています。今回は男子校の話なので、まさに自分が体験してきた男子校ならではのノリが表現されていますが、そこを微笑ましく感じていただけたらなと思います。振り返ってみると、よくあれだけの熱量で取り組めたなと思うくらい、本当に水球のことだけを考えて毎日泳いで、筋トレをやっていました。キャラクターたちは馬鹿な奴らではありますけど、お金のためじゃないのに一生懸命になれる尊さとか、真剣だからこそ笑えたり泣けたりする姿とか、そこも含めて楽しんでもらえたらいいなと思います。
PROFILE
西田征史(にしだ まさふみ)
脚本家、演出家、小説家として幅広く活躍。主な作品は、アニメ『TIGER & BUNNY』(シリーズ構成・脚本)、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(脚本)、映画『泥棒役者』(原作・脚本・監督)など。現在、「週刊少年マガジン」にて原作を担当している『テスラノート』が連載中。2022年には『TIGER & BUNNY 2』を予定。
<放送情報>
TVアニメ『RE-MAIN』
2021年テレビ放送決定!
【あらすじ】
中学3年の冬、ある出来事を境に水球をやめた主人公・清水みなと。彼は高校に入学し、ひとつの約束をキッカケにそこで出会った仲間たちと水球を始めることになる。だが、弱小水球部には様々な困難が待ち受けていて……。
【STAFF】
原作:西田征史、バンダイナムコアーツ、MAPPA/総監督・シリーズ構成・脚本・音響監督:西田征史/監督:松田 清/キャラクター原案:付藤加青浬/キャラクターデザイン:田中志穂/音楽:うたたね歌菜(TaWaRa)/制作:MAPPA
【CAST】
清水みなと:上村祐翔/岡栄太郎:西山宏太朗/城島譲:木村 昴/網浜秀吾:斉藤壮馬/江尻武一:古川 慎/猪俣ババヤロ豊:畠中 祐/牛窓喜晴:廣瀬大介/川窪ちぬ:Lynn
©RE-MAIN Project
TVアニメ『RE-MAIN』 公式サイト
https://re-main.net/
TVアニメ『RE-MAIN』 公式Twitter
/ ハッシュタグ#re_main