TVアニメ『RE-MAIN』江尻武一役:古川 慎×猪俣ババヤロ豊役:畠中 祐×牛窓喜晴役:廣瀬大介 キャストインタビュー
TVアニメ『RE-MAIN』Blu-ray&DVD第3巻が12月24日発売! 発売を記念して、江尻武一役の古川 慎さん、猪俣ババヤロ豊役の畠中 祐さん、牛窓喜晴役の廣瀬大介さんに、山南水球部メンバーの関係性についてや、総監督の西田征史さんとのやりとりで感じた『RE-MAIN』が持つ独特の面白さについて、またBlu-ray&DVDの特典として収録されるオーディオドラマの聴きどころも伺った。
──ご自身が演じたキャラクターについては、それぞれどのように捉えていましたか?
畠中ババヤロは基本的には「誰がどう聴いても優しい感じ」というお芝居を心がけていたんですが、オーディション時にいただいたセリフの中に、彼の抱えているものが見えてくるような言葉がいくつかあったんです。外見で運動ができると決めつけられることが多くて、彼なりに繊細に傷ついてきた過去があるから今があるんだろうなと。一歩踏み出す力はちょっと弱いかもしれないけど、周りのことをちゃんと見ていて、気遣ったり、踏み込みすぎないように相手に寄り添う力がある。それは自分が傷ついてきたからこその優しさなんだろうなと、演じていて面白さを感じたところでもありました。
古川畠中くんがババヤロみたいな役をやるのって珍しいよね。
畠中確かにそうかもしれない。どちらかって言うと、いつもは力強くワーッと騒ぐタイプの江尻寄りかなと。自分としては珍しい役どころでもあったので、そこも楽しかったですね。
廣瀬僕はオーディションの段階でも収録でも、とにかく声のボリュームを抑えてほしいと言われました。オーディションの時は最初に自分なりの牛窓のイメージでやってみたら、アプローチの仕方が「ちょっとアニメっぽすぎるかな」と言われたので、マイクに乗るか乗らないかくらいのボソボソ声でやったんです。そしたら西田(征史)さんから「いいね」と…(笑)。本当に聴こえないんじゃないかと不安だったんですけど、実際にオンエアを観たらそれが成立しているし、他のキャラクターとの関係性やバランスもハッキリと見えるようになっていたので、こんなアプローチの仕方もあるんだと驚きました。勉強になりましたね。
畠中確かに、最初のアフレコの時はマジで牛窓が何を言っているのか聴こえなくて、なんかボソボソ喋っている人が隣にいるな…って感じだった(笑)。
廣瀬僕も自分の声が聴こえなくて、これで本当に大丈夫なのかなと思いながらやってた(笑)。西田さんのビジョンがハッキリしているからこそのオーダーだなと思いました。
古川江尻は絵に描いたような熱血漢というか、ひと昔前の主人公タイプだと思うんです。イケイケで、ちょっと調子に乗っているところもある感じ。彼が水球部に入った動機の根底には若干の卑屈さもあったけど、前向きに捉えるのであれば、自分が輝ける場所を探していたというか…。だから水球部に入部してからは、どうしたらこのチームが強くなれるのかっていうのを江尻なりに考えていて、そこで網浜とぶつかったりしていたんですよね。
でも、自分がシュートを打って決めたいっていう欲求や、周りのことを当たり前のように気遣える部分はとても純粋なので、すごく素敵な人間だなと思って演じさせていただきました。沸点は低いけど、台本3ページくらい過ぎたらもう切り替わっているので(笑)、そういうところは見習いたいなと思いました。
──最終話までを踏まえた上で振り返ると、山南メンバーの変化にはどんなことを感じましたか?
廣瀬牛窓は何かと自分を責めてしまいがちなキャラクターなんですけど、そうじゃなくていいんだと、山南のみんなに徐々に心を開いて、思いを吐露できるようになっていったことは感慨深いです。チーム全体がどんどん仲良くなっていく感じも素敵でしたし、みなとが高校の記憶をなくしてしまった後でも、江尻がみなとに電話して試合前に筋トレしていいのか確認しているシーンとか、観ていてめっちゃニヤニヤしちゃいました(笑)。いい距離感の詰め方をしているなと微笑ましくて、僕はあの関係性が好きですね。
古川みなとが終盤で、あれだけ豹変した割に関係性は良くなった感あるよね(笑)。
畠中どうなることかと思いましたけどね。このまま仲悪くなっちゃうのかなと。10話でみなとと江尻が喧嘩した時も、どうするんだろう…って。
古川あそこで、みなとが変わってくれたのが良かったよね。みなとが成長したことで、山南の足並みが揃った部分もあって。だから江尻もみなとに電話したんだろうし、ババヤロもみなとにチョコを食べてもらえた。やっぱりこの作品はみなとを起点としているから、主人公の変化はすごく大きく感じられましたね。
廣瀬でも、記憶が元に戻らないっていうのは「そんな展開あるんだ…」とびっくりしました。記憶が戻っても、もう少し前半のみなとが混ざっているような、いい塩梅になるのかなとか思っていたら、完全に振り切っちゃったじゃないですか。
畠中もう、あのみなとはいなくなっちゃったっていうことですかね…。
廣瀬ババヤロが「良い人だったよね」って言うのが、もうね…。
古川誰よりも最初に言い切っていたから(笑)。
畠中中盤以降の展開で、人間関係を再構築する話になるのは本当に意外でしたね。あのまま進んでいって、どんどん関係性を積み上げていくんだろうなと想像していたので。
──主人公・清水みなとが中盤で中学時代の記憶を取り戻すという展開は、ご存知でしたか?
畠中まったく知らなかったです。僕はみなとは受けていないんですけど、オーディションの時にもらった作品資料に「(みなとは)二面性があります」というようなことが書かれていたんです。他のキャラは設定もセリフも結構ストレートに書かれていたけど、彼だけ全然違っていて。それはこういうことだったのかと。
廣瀬元々強い選手だったことは水球の技術面ではプラスに働いているんだけど、小6のみなとが無邪気すぎたから、そのギャップがね。
古川本来のみなとにも同情すべきところはたくさんあったと思う。気づいたらこんなことになっていたら、そりゃあ荒れるよね。最終的には、あそこまで成長してくれて良かったけど。
畠中あんなに仲間に寄り添ってくれるようになるとはね。それだけ“小6みなと”が残してくれたものが大きかったのかなと思います。
──原作・総監督・シリーズ構成・脚本・音響監督を務めた西田征史さんとのやりとりで、印象に残っていることはありますか?
畠中“間”、ですかね。西田さんなりのこだわりをものすごく感じました。掛け合いのテンポ感も独特でしたけど、それが面白いスパイスになっていたと思います。結構みんなで合わせてリアクションすることも多かったよね?
古川団体芸的なことが多かったね。
畠中普通なら声を入れ逃しそうなところも、みんなで入れていましたから。「えっ!?」とか、本当にひとつひとつ丁寧に録っていったので。
古川あるセリフに対して三者三様の反応をするんじゃなく、みんなで一斉に「え!?」って言うから、シリアスなやりとりにも若干のコント感が出てくることがあって。リアルな質感や“間”を追求する部分と、全員でコントの方向に倒れていく部分が、絶妙な具合に調和しているのが、『RE-MAIN』で感じた独特な面白さのひとつですね。それをやっていくにつれて我々のチーム感も増していったので、山南の関係値を作るための演出になったような気がします。
廣瀬僕は牛窓がみんなより遅れをとっていたこともあって、部活中は“溺れ息継ぎ”のような息を入れていたんですけど、それを西田さんにすごく褒めていただきました。溺れる芝居をするたびに「いいね!」って言ってくださるので嬉しかったんですけど、オンエアを観たら、ほぼほぼカットされていました(笑)。6話で一箇所だけブクブクするところがあったんですけど、それ以外は…。どの話数でも褒めてくださったのに、あれは壮大な振りだったのかなと。
古川ちゃんと今、回収されてるじゃん(笑)。僕は江尻が真っ直ぐなキャラだったこともあってか、西田さんから何か具体的なディレクションをいただくということはあまりなかったですね。
廣瀬でも、結構ディスカッションはされていましたよね。ここはこうしたら、もう少し伝わりやすくなるんじゃないか…とか。
畠中我々キャストからの提案に対して西田さんはいつも柔軟に考えてくださっていましたよね。
古川実際にセリフを言ってみて、言い回しや言葉の音的に伝わりづらいかなと感じたところを西田さんにご相談すると、快く変えてくれることが多かったですね。あと、水球に関してもわからないことには何でも答えてくださって、その点も心強かったです。でも考えてみたら、総監督やって脚本やって音響監督やって……。本当にゆっくり休んでください…!
──全話を振り返ってみて、お気に入りシーンやエピソードはありますか?
畠中僕は基本的に、ちぬさんの登場シーンすべてですね……好きなんですよ…。
廣瀬言い方が…(笑)。
畠中雨の中で、みなとに過去のことを話すシーンとか。あれはヤバかった。シーンとしても良かったし、胸にグッときたというか、むちゃくちゃ刺さった。
廣瀬彼女の態度の裏には、そんなことがあったのか…とね。
畠中そこで語られる過去の真実とか、雨の雰囲気も相まって印象的なシーンでしたね。
廣瀬ちぬさんは、みなとを突き放しきれない感じがいいよね。
畠中もちろんババヤロのシーンも良かったところはいっぱいありますよ。そこは誰かが言ってくれることを期待して…(笑)。
古川僕は本編じゃないけど、ドラマCD(※Blu-ray&DVDの特典)でババヤロの好きなシーンがあるんですよ。最近腹を立てたことを打ち明けるエピソードで、店のシャッターに落書きされたことを語るババヤロが本当に好きで。
畠中え、そこ!?(笑)
古川どう怒ればいいのかわからないババヤロに対して、山南メンバーが「もっとガツンと行けよ」ってレクチャーするんだけど、そこで怒ってみるババヤロの言葉がもう切実すぎて「怒り」じゃなくて「怨念」なの(笑)。あの徐々に怨念がこもっていく感じが「ババヤロって、すげー真面目でいい子なんだな」って思えて。
畠中ババヤロは普段「怒る」っていう感情がないですからね。でも、まさかドラマCDから出てくるとは。
廣瀬僕は本編で一瞬だけ出てくるババヤロのお父さんが好きだな。
畠中お父さん、いいよね。ちょっと拙い日本語で「どしたの?」って。僕も最初にオーディションでババヤロをやった時、英語っぽい発音でしゃべるのかなと思ったけど、西田さんに「そこはゴリゴリの日本語でお願いします」と言われたのを覚えています。
廣瀬ババヤロの家族は愛おしいですよね。あと、僕は江尻が好きなんですよ。怒った顔とか不機嫌な顔とか真剣な顔とか表情筋がすごく豊かだから、めちゃめちゃ面白くて。僕、猪突猛進系のおバカな子って好きだから。
古川おバカだからいいんだ(笑)。
廣瀬愛すべきキャラじゃないですか。あと、江尻が出てくると緊張感があるシーンでもちょっと緩んで、いい方向にバーンッとぶち壊してくれる。みんなの緩和剤にもなっている気がして、江尻にはもっと喋ってほしいなと思っていました。
古川それ、スタジオでもずーっと言ってくれてたよね。
畠中たまに繊細なところを見せるのもいいよね。おバカだけど愛されるって、ちょっと ズルいというか、一番いいポジションじゃないかな。
古川こっちは「迷惑かけてスマン」って思うことが多いんだけど(笑)。
廣瀬たぶん山南は江尻がいなかったら、もっと繊細なチームになっていたと思います(笑)。
古川確かに譲だけだと、ちょっと厳しかったかもしれない。
畠中譲も突っ走りきれない時があるからね。彼はああ見えて繊細だから。
廣瀬牛窓のシーンで言うなら、やっぱり6話ですね。クラスメートの横井から「(水球部を)辞めてもいいんだよ」と言われ「好きでやってる」って答えられた時、「わぁ〜、ウッシーいい顔するじゃん!」って思えて嬉しかったです。あそこから牛窓の目線が上がり気味になって、段々と笑顔も増えていきましたし。
古川最後の試合、牛窓が「牛窓シャウト」で1点決めたじゃないですか。あれは『RE-MAIN』屈指のカタルシスだと思うんです。あのシュートが入った瞬間、それまでの思いが全部弾けるくらい感動がものすごかった。途中までの牛窓は、仲間たちにも心配されるくらい頑張っているけどなかなか芽が出なくて、疲れてヒーヒー言いながらも真面目に練習に取り組んできた。そんな彼がシュートを決めた姿がカッコよくて、僕は陰の主人公だなと思いました。あそこでみなとが決めないというのも彼自身の成長の証なので、またいいんですよね。
あと江尻のシーンで言うと、さっき挙げてもらった、みなとに筋トレの相談をするところかな。みなとに強く反発していた江尻が彼に相談をするというのは、チームで一番激しくぶつかっていたところが軟化したことを表しているわけで。それが気持ちよくハマっていて、いいなぁと。ああいうシーンに出てくる西田さんならではの生っぽさというか、リアル感のある“間”がすごく心地よかったです。そこが印象的でしたね。
──Blu-rayとDVDには特典として西田さん書き下ろしのオーディオドラマが付いてきますが、こちらの聴きどころは?
廣瀬最後のVol.3のドラマCDは数人ずつに分かれたミニドラマ集なので、それぞれがどんなドラマを録ったのか、お互いに知らないんです。二人がやった「ミドルネーム」ってどんな話?
畠中江尻が急に「ミドルネームが欲しい」って言い始めて、ババヤロが「それは僕が命名するものじゃないんだけど…」って思いながらミドルネームを考える話(笑)。
廣瀬二人だけで!? それ、めっちゃ聴きたい。
古川なんの中身もない話だからね!西田さんは非常に楽しんで書かれたんだろなと思うけど(笑)。
廣瀬本編にない組み合わせでガッツリ絡んで、関係性が楽しめてコメディ要素もあるなら、そこが聴きどころですよね。
古川そっちはずっと無言なドラマなんでしょ?
廣瀬牛窓と網浜のドラマなんですけど、二人ともずっと無言で、台本も「………」ばっかりでしたね。「じゃあ呼吸してみる」って言って、僕と斉藤(壮馬)さんで、ホントにスーッハーッていうのを何回もくり返すだけ。そんな謎の30秒ぐらいの時間があって……オーディオドラマですよ!?
畠中スゲー……。
古川「呼吸してみる」って言って、それやるだけ?
廣瀬牛窓は網浜と二人きりでちょっと緊張しているんだけど、網浜は「自然体でいてください」って言ってくれて…。無理に話さなくてもいいよってことで、牛窓は「じゃあ」って、ただ呼吸するんです。
古川それ、どうなんですか。問題ですよ!二人の呼吸だけを楽しむオーディドラマって(笑)。
──最後に『RE-MAIN』ファンへのメッセージをお願いします。
畠中『RE-MAIN』は毎回すごく面白い現場でした。それは総監督の西田さんが脚本と音響監督も手掛けられたからこそ生み出された面白さだと思いますし、そこに全力でついていこうと頑張った山南水球部キャストのみんなもいて、僕自身は本当にすべてが楽しかったです。また山南水球部の活躍を観られたらいいなと思うので、引き続き応援していただけると嬉しいです。ぜひこれからも『RE-MAIN』をよろしくお願いいたします。
廣瀬ここまで応援してくださって本当にありがとうございます。皆さんの応援が今後につながるので、周りの人にお勧めしたり、ツイートしたり、いろんな方法で『RE-MAIN』への愛をたくさん放出してほしいです。皆さんの思いをぜひまわりに届けてください。僕もすごく楽しい作品に巡り会えたことに感謝しております。引き続き応援のほどを何卒よろしくお願いいたします。
古川『RE-MAIN』はTVアニメですけど、演出とか見せ方は舞台作品に近いものがあるんじゃないかなと僕自身は感じています。観る度に違う見方が出来る作品だと思いますし、Blu-rayやDVDで観ることによって、改めて気づくギミックみたいなものもあるんじゃないかなと。そんな仕掛けがたくさん詰まっている作品だと思うので、ドラマ CDも含めて心ゆくまで味わっていただけると有り難いです。そして、その感想や、また『RE-MAIN』を観たいという声をたくさんいただけると、山南水球部も活躍を続けられるんじゃないかなと思うので、皆さん何卒よろしくお願いいたします。
PROFILE
古川 慎(ふるかわ まこと)
熊本県出身。トイズファクトリー所属。主な出演作に『ワンパンマン』(サイタマ役)、『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(白銀御行役)、『転生したらスライムだった件』(ベニマル役)などがある。
PROFILE
畠中 祐(はたなか たすく)
神奈川県出身。賢プロダクション所属。主な出演作に『僕のヒーローアカデミア』(上鳴電気役)、『ウルトラマンZ』(ウルトラマンゼット役)、『SK∞ エスケーエイト』(喜屋武暦役)などがある。
PROFILE
廣瀬大介(ひろせ だいすけ)
東京都出身。ケッケコーポレーション所属。主な出演作に『A3!』(斑鳩三角役)、『王室教師ハイネ』(レオンハルト・フォン・グランツライヒ役)、ミュージカル『ヘタリア』イギリス役)などがある。
<発売情報>
TVアニメ「RE-MAIN」第3巻<最終巻>
2021年12月24日発売
Blu-ray:¥11,000(税込価格)
DVD:¥9,900(税込価格)
TVアニメ『RE-MAIN』 公式サイト
https://re-main.net/
TVアニメ『RE-MAIN』 公式Twitter
/ ハッシュタグ#re_main