インタビュー | 君のことが大大大大大好きな100人の彼女

TVアニメ『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』佐藤 光監督インタビュー

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2023年10月に放送されたTVアニメ『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』、通称『100カノ』。中学で失恋100回を達成した主人公・愛城恋太郎が高校で100人の運命の人と出会うことになる、同名漫画を原作とする大人気ドタバタ学園ラブコメディだ。魅力的なヒロインたちとのコミカルな日常ギャグと純愛ストーリーで話題を集め、第2期の制作も決定している本作。そこで今回は、第1期の振り返りと制作秘話、そして制作スタッフだからこそ語れる作品の魅力について、本シリーズで監督を務める佐藤光監督にお話を伺った。

──アニメ化にあたり原作を読んだときの感想を教えてください。

佐藤「すごくぶっ飛んでるな」って思いました(笑)。監督をやるにあたって、どうすればいいのか実は分からなかったんです。彼女がいっぱいいるんだけど、どうしようかという気持ちになって。自分の作品への向き合い方として、キャラクターの気持ちに自分が入り込むことが必要になってくるので、最初はすごく悩みました。(愛城)恋太郎に気持ちを沿わせるのがとても難しくて、それが最初にぶち当たった壁です。

──その壁はどのように乗り越えたのでしょうか?

佐藤やっていくうちになんとなく(笑)。恋太郎がとにかく誠実だということに基づけば、理解できるところがあるなと思うようになって。やっていくうちに“慣れていった”感じです。

──逆に、アニメにするのが楽しみだったポイントはありますか?

佐藤原作はすごくパロディが多い作品。自分は割とパロディネタを扱うのが好きなので、そこはまず楽しみだなと思いました。原作を読んでいてすごくいいな、好きだなと思ったエピソードは2期に登場するので、今楽しみながら制作しています。

──原作の中村力斗先生とはどのようなやりとりがあったのでしょうか。

佐藤基本的にはコンテやシナリオのチェックバックの内容を元にしながら作っていく形でした。キャラクターの心情に関連する部分はかなり細部までバックをいただくことが多く、先生の作品に対する愛情の深さを感じる内容でした。振り返ると、自分が恋太郎を理解する上で、必要なやりとりだった気がしています。先行上映会で少しお話できたのですが、時間が足りなかったな、と。もっとたくさん直接お話しする場が欲しかったなぁと思いました。

──制作過程で特に大変だったことはありますか?

佐藤自分は手が遅いので大変なのは大変ですが、いつもの事と思えば、平常運転…という感じです。それも含めて思い返せば楽しみながらやっていたと思います。…それに付き合うスタッフ皆には迷惑をかけて申し訳なく思います…。

──第1期を制作していて印象に残っているエピソードなどはありますか?

佐藤この作品を作っていてすごく感激したのは1話のカッティング(アフレコ前の編集作業)のとき。カッティングを1回やった段階で「なんかすごい面白いな」って感じて。アニメを制作する上で僕が一番面白く感じるのはコンテの段階ということが多いのですが、その場合、映像になった時をイメージしながら見ているので、いつもならカッティングしてそのイメージで上がる印象ですが、今回はカッティングしてみて、思っていたものを超えてできていく感覚で…。それは自分の経験ではすごく珍しいことでした。1話でその気持ちになれたことがすごく印象に残っています。

──制作が進むにつれて、面白みが重なっていく感じ?

佐藤まさにその通りです。作品が完成に近づくほど面白くなっていきました。だから制作の苦労よりも楽しさの方が印象に残っている作品です。

──アフレコはいかがでしたか?

佐藤原作はタイトル通りすごくキャラクターの多い作品という印象ですが、最初は恋太郎、(花園)羽香里、(院田)唐音の3人から始まるのでこぢんまりとした人数の少ないアフレコでした。それが回を重ねていく中で、気づけば増えてきて。2期になったらなんかもうすごく人がいっぱいいるアフレコになっています(笑)。

──キャストのみなさんとはどのようなやりとりがありましたか?

佐藤基本的には音響監督の土屋(雅紀)さんに要望を出して伝えてもらう形でした。細々いろいろとリクエストを出したのですが、たくさんあって忘れちゃいました(笑)。声が入るとカッティングやコンテの段階で自分が思っていたものと変わってしまうことは往々にあるのですが、『100カノ』はこれも超えてくる感じで。カッティングですでに面白いと感じていましたが、アフレコして声が入ったら「もっと面白いぞ」と。キャストさんがすごくキャラに入り込んでいる感じがあったし、むしろキャストさんがキャラ本人みたいな感覚がありました。キャストさんの演技でより理解が深まることもたくさんありましたね。

──ほかに手応えを感じた話数などはありますか?

佐藤質問と反れるかもしれないのですが、「水着回」(第6話「皆大好き水着回」)はやってよかったなと。ちなみに実を言うと僕はアニメでよくある「水着回」というものがあまり得意ではなくて(笑)。でも『100カノ』の場合はあってよかったなって思いました。それも第1期の思い出です。

──「水着回」があまり得意ではない理由はあるのでしょうか?

佐藤作品によっては物語の本筋と関係ないお話だったりすることも多いので、あんまり意味がないと思うことが多くて(笑)。ただ、『100カノ』では「水着回」ですごく絆が深まったり、重要なキャラクター同士の繋がりのエピソードになっていることもあって、すごくいい話数だなと思っています。「水着回」に限らず、話数ごとにキャラクターの絆がどんどん深まっていくのが感じられるのも『100カノ』の魅力だと思います。

──アニメ第1期の反響でうれしかったことはありますか?

佐藤割と実況を見るのが好きなのですが、細かいところに気づいてくれているコメントを見るとうれしくなります。僕はどこで何が映るのかも、何が起きるのかも、内容は全部知っているけれど、観た方にちゃんと気づいてもらえるのは、楽しいしうれしいし、面白いです。

──気づいてもらえてうれしかったシーンを教えてください。

佐藤11話のエンディングは自分がコンテを切ったのですが、曲(「今日のエンディングは私が買い取ったから好きにしていいわよね♡」)の中に(フェリックス・)メンデルスゾーンの「結婚行進曲」のメロディが入っていたので、「夏の夜の夢」のネタを入れました。気づいた人が何人かいたようで、それは結構うれしくてテンション上がりました(笑)。かなり気づきにくいポイントだと思っていたので。

──監督が思うアニメ『100カノ』の魅力とは?

佐藤漫画は読む人によってスピードが違うものだけど、アニメの場合は30分の中で作ったテンポ感があります。そのテンポ感こそがアニメの魅力になっていると思っています。『100カノ』はそんなにテンポが早くは感じられない気はするけれど、実はものすごく早い。そこがアニメ『100カノ』のいいところだとも思っています。あと、原作とあわせて楽しむのがいいんじゃないかなと思います。原作では話もだいぶ先まで進んでいるし、週刊連載をリアルタイムで追いかける楽しさがありますよね。アニメは物語の最初から描くので、原作を読んでいる方には懐かしい話に見えるかもしれません。でも、改めて振り返ることで記憶の中で固まっていたものを思い出したり、新たな発見もあったりするところが面白いんじゃないかなと。野澤(ゆき子)先生の絵もすごくいいし、アニメは矢野(茜)さんの絵がある。それぞれ魅力があってすごく素敵だし、改めて『100カノ』っていいなと思います(笑)。

──キャラクターデザイン・総作画監督の矢野さんのインタビューも掲載予定です。矢野さんとのお仕事の印象を教えてください。

佐藤キャラデザに関しては何も言うことはないです。キャラクター設定チェックの段階でも画的なもので注文をつけるところは全然ないという感想でした。とにかくキャラがすごくかわいい。コンテでヒョロヒョロと描かれていたものがどんな風になるのか、毎回矢野さんから上がってくるものを見るのを楽しみに待っていました。

──キャラクターが多く、作るのが大変そうだと想像していたのですが、制作現場はとても楽しそうですね。

佐藤楽しいです。1期も楽しかったですが、1期を経て2期があってこそやる気がまさっているという感じもありますし。

──第2期には監督がアニメ化で楽しみにしていたエピソードも入っていますしね(笑)。

佐藤そうなんです。2期にも結構大きなエピソードがあるので、いろいろと考えながら制作中です。1期の後半のキーパーソンは羽香里でしたが、2期のオチは誰がキーになるのか楽しみにしていただければと思います。

──ちなみに、監督が描きたいと思ったエピソードは第2期にすべて登場していますか?

佐藤2期には結構入っています。でも、原作は進めば進むほど面白いエピソードが出てくるので、まだまだ描きたいところはたくさんあるのですが、このペースで作っていくと残りの人生を全部かけても終わらない気がします(笑)。

──第1期をBlu-rayや配信などで楽しんでいただいている方、そして第2期を楽しみに待っている『100カノ』ファンへのメッセージをお願いします!

佐藤小ネタがいっぱいの作品なので、放送で1回観ただけでは拾いきれないところがあります。何度でも観れる作品なので、何度も観ていただきたいと思います。隅々まで仕掛けがあるので、楽しんでください。

PROFILE

佐藤 光(さとう ひかる)
アニメ監督、演出家。『けんぷファー』(09)、『バクマン。』(10)、『BORUTO』(17)、など多数のヒット作で演出を務め、人気アニメ『食戟のソーマ』(15)では演出のほか助監督も担当。初監督作は『帰宅部活動記録』(13)。18年からは『邪神ちゃんドロップキック』シリーズの監督・総監督としても注目を集めている。

 

<発売情報>

君のことが大大大大大好きな100人の彼女 4(特装限定版)
Blu-ray
2024年6月26日発売
税込価格:¥7,700
品番:BCXA-1886

<イベント情報>

本作初の展覧会
「君のことが大大大大大好きな100人の彼女展 Love for Family」
7月15日(月・祝)まで開催中!

【開催期間】2024年6月7日(金)~7月15日(月・祝)
【開催時間】10:00~19:00(最終入場18:30)
      ※7月15日(月)のみ17:00まで(展示最終入場16:30)
【開催場所】東京アニメセンター in DNP PLAZA SHIBUYA
【主催】アニメ「100カノ」展運営委員会

『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』作品概要

君のことが大大大大大好きな100人の彼女
第2期 2025年1月より放送開始!

あらすじ
中学で失恋100回を達成した愛城恋太郎は、高校でこそ彼女を!と願い訪れた神社で、現れた恋の神様から「高校で出会う運命の人は100人いる」と告げられる。しかし神様いわく、運命の人と出会った人間は、その相手と愛し合って幸せになれなければ死んでしまうという……。次々に待ち受ける運命の人との出会いーーどうする恋太郎? どうなる100人の彼女!?

放送情報
2025年1月より第2期放送開始!

配信情報
第1期配信サイトにて配信中

原作情報
集英社「週刊ヤングジャンプ」にて好評連載中!
原作コミックス1~17巻&ノベライズ好評発売中!

 


▼君のことが大大大大大好きな100人の彼女 公式サイト
https://hyakkano.com/

▼君のことが大大大大大好きな100人の彼女 公式X
@hyakkano_anime / 推奨ハッシュタグ#アニメ100カノ

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