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映画『リライト』松居大悟監督 インタビュー全文掲載

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6月13日(金)より全国公開される映画『リライト』。法条遥の同名小説をヨーロッパ企画の上田誠が脚本化した青春ミステリーだ。モデルや歌手としても活躍する池田エライザを主演に、映画初出演となるジュニア所属の阿達慶、さらに橋本愛や倉悠貴らなど、個性豊かなキャストが揃う。そんな注目作のメガホンを取った松居大悟監督に、本作の脚本やキャストの魅力を伺った。

──“SF史上最悪のパラドックス”として評判を呼んだ法条遥氏の同名小説が原作となっています。この小説とはどのように出会われたのでしょうか?

松居大悟(以下 松居)今回の脚本を手掛けられたヨーロッパ企画の上田誠さんから「この小説で松居くんと映画を作ってみたい」と言われて、それで手に取りました。実際に読んでみると、物語が進むにつれて主観がどんどん変わっていくので、1秒先も読めない展開が面白くて。これまであまり出会ったことのないタイプの小説で、上田さんはどのようなイメージで、これを映画にしたいと思われたんだろうと興味が沸きました。

──上田さんとは“師弟関係”にあると伺っています。実際はどのようなご関係なのでしょうか?

松居僕はもともと演劇サークルで役者をやっていて、2005年に初めてヨーロッパ企画の舞台を観ました。それまで僕が観ていた演劇は、シェイクスピア作品のように少し敷居の高いイメージがあったんですが、ヨーロッパ企画では笑いながらセリフを言ったり、小さなことにこだわったりしていて衝撃を受けました。すごく面白いうえに、演劇に対して親近感が湧いて、こういう作品なら自分も作ってみたいと思い、作・演出を始めました。そういう意味では、上田さんは僕をこの世界に導いてくれた恩師だと思っています。

──これまでにも“タイムリープ”ものは数多く作られていますが、今回の作品で新味に感じたことを教えてください。

松居従来の“タイムリープもの”は、理屈はさておき、エモーショナルな方向に振っていく『アバウト・タイム 愛おしい時間について』のような作品か、逆にすべての辻褄を合わせていく作品のどちらかで。でも、『リライト』は小説の世界がリライトされて、どんどん世界が変わっていくけれど、それがパラレルワールド化していくのでなく、1つの世界線でできているんですね。その視点が少しずつ変わっていくことで物語の面白味が生まれるというのは、そもそもの原作の魅力と、それをうまく活かした上田さんらしい脚本だなと思いました。

──演出するうえで意識したことはありますか?

松居まず、説明的な映画にはしたくないというのはありました。この作品においては、お客さんの半歩先を行かないといけないなと思って。それがお客さんに抜かれてしまうと先読みされてしまうことになるし、逆に僕らが2、3歩先に行くと、お客さんを置いてきぼりにすることになるので、その加減はつねに意識していました。

──『リライト』はジャンルとしては青春ミステリーですが、イタリアのウディネ・ファーイースト映画祭で上映されたときには、あるシーンで観客席から笑いが起きたそうですね。

松居あれはうれしかったですね。ただ、我々としては笑いの要素は意識していなくて、結果的にそうなればいいなと思っていたくらいです。逆に、最初は主人公の美雪(池田エライザ)の視点で物語が進んでいくので、美雪とクラスメイトの間に、ある種の違和感が生まれるようにしたいと思い、そこは意識して作っていきました。

──美雪を演じた池田エライザさんの印象を教えてください。

松居美雪はとても難しい役だったと思います。例えば、橋本愛さんが演じた友恵は、役を突きつめればつめるほど業を深めていける役なのですが、美雪はつねに受け身の立場なので、周りの人を引き立てるお芝居を要求されるわけです。ですが、エライザさんはそれを楽しみながらやってくれて、すごく安心感がありましたし、エライザさんが受け身でいてくれるから、みんなも遠慮なく芝居ができているところがあったと思います。

──300年後の未来からタイムリープしてくる転校生の保彦役の阿達慶さんは、オーディションで選ばれたそうですね。

松居保彦は未来人なので、どこかミステリアスな空気をまとっているんですね。なので、最初はそういうミステリアスな雰囲気のある人をキャスティングしようと思っていたのですが、オーディションに現れた阿達くんを見たときに「保彦だ!」と思いました。彼は今回が映画初出演ではありますが、保彦は演技力ではない“何か”が必要だと思っていたので、逆に阿達くんから保彦のイメージ像を教えてもらったところがあったように思います。それに阿達くんを前にすると、みんなニコニコしちゃうんですよね(笑)。彼には持って生まれたスター性があるし、これからどんどん大物になっていく気がします。

──今回、広島県の尾道で撮影されていますが、原作小説はバッドエンド版『時をかける少女』とも称されていて、大林宣彦監督の映画『時をかける少女』でも尾道が舞台になっていました。大林監督にオマージュを捧げられたところもあったのでしょうか?

松居僕も原作を読んだときに『時をかける少女』を彷彿とさせる作品だと思いました。小説では静岡が舞台になっているのですが、せっかく映画版を作るのであれば「尾道で撮影をしたい」と提案させていただきました。シナリオハンティングで実際に尾道を訪ねてみると、「ここでは絶対にタイムリープは起こりそうにない」と思うくらい穏やかな町だったので、ここで撮影したいと改めて思いました。

──印象に残っている場所はありますか?

松居劇中に美雪がお地蔵さんに手を合わせるシーンがあるのですが、あそこは尾道らしさをワンカットで撮れる場所を求めていて、結構探し回ったうえに見つけました。細い路地に民家が密集していて、その向こうには海が見えるというのは、まさに尾道の風景だと思うので、とてもさりげないシーンではありますが、僕としては気に入っています。

──最後に、映画を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

松居おそらくこの映画が公開されたら、さまざまな意見や感想が出てくると思います。でも、情報少なめに観たほうが絶対に面白い作品だと思うので、なるべく早めに映画館に行って楽しんでもらえるとうれしいです。

文:馬場英美

 

<上映情報>

映画『リライト』
6月13日(金)全国公開

出演:池田エライザ、阿達 慶、久保田紗友、倉 悠貴、山谷花純、大関れいか、森田 想、福永朱梨、若林元太、池田永吉、晃平、八条院蔵人
篠原 篤、前田旺志郎、長田庄平(チョコレートプラネット)、マキタスポーツ、町田マリー、津田寛治、尾美としのり、石田ひかり、橋本 愛
監督:松居大悟
脚本:上田 誠
原作:法条 遥 「リライト」(ハヤカワ文庫)
主題歌:Rin音「scenario」
音楽:森 優太
製作・配給:バンダイナムコフィルムワークス

<原作情報>

法条 遥 「リライト〔新版〕」(ハヤカワ文庫JA)


乙野四方字「リライト〔映画ノベライズ〕」(ハヤカワ文庫JA)
原作:法条遥 脚本:上田誠

 


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