累計発行部数1000万部を誇る安彦良和原作による大ヒットコミックス『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』のアニメ化第3弾『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN III 暁の蜂起』は、2016年5月21日よりイベント上映されると大ヒットを記録した。そんな大反響を巻き起こした第3話には、ザビ家の四男であり末弟ガルマ・ザビがシャアの学友として登場。彼を演じる柿原徹也さんが、役さながらにシャアへの愛を語る。
全てはシャアのために、僕はガルマを演じていました
──ガルマを演じることが決まった時の率直な感想を教えてください。
柿原 どんな作品でもオーディションを受けさせて頂けるだけで有り難いのですが、今回の役が決まった時は飛び上がるほど嬉しかったです。今は多くの声優がいて、オーディションさえ受けられない人がたくさんいる中で、タイトルに『機動戦士ガンダム』という冠が付いている作品のオーディションに声を掛けて頂けたことは本当に光栄なことでした。しかも、自分がその前にやっていたのが『機動戦士ガンダムUC』という作品で、それこそ(池田)秀一さんが演じられているフル・フロンタルを敬愛するアンジェロ・ザウパー役として出演させて頂いていたので、まさか『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でもシャア・アズナブルの傍にいることになるガルマという役を頂けるとは正直思っていませんでした。それだけ『機動戦士ガンダムUC』で培った秀一さんへの愛、そういうもの全て含めて僕のシャア・アズナブルへの愛が伝わったのかなって(笑)。アンジェロを演じたことで、秀一さんから発せられる『ガンダム』に対しての熱量を長い間感じていましたし、本当に色々なものを勉強させてもらいました。自分も『ガンダム』という作品の尊さは分かっているつもりではいるので、そういう意味で、ガルマという役を「やっていいよ」ってガンダムの神様が、僕に役を降ろしてくれたのかなって思っています。もちろん責任は感じていましたけど、それ以上に役者としても人間としても、面白味のあるキャラクターを演じられるという楽しみの方が強くて、ゾクゾクしましたね。
──ガルマを演じるにあたって、意識したことや心掛けたことなどは何かありましたか?
柿原 僕も当然ながら『機動戦士ガンダム』を観ていましたが、『機動戦士ガンダム』ではアムロが主役で、敵対するシャアがいて、そんなシャアの仲間としてガルマが出てくるという立ち位置だったんですけど、この『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、シャアが主役で、シャアの士官学校の同期という形でガルマは登場するので、『機動戦士ガンダム』の時の距離感とは全然違うと思うんです。ですので、昔の『ガンダム』作品で出てきているガルマは一切なぞらないということを決めました。自分の中で台本を読んで、映像を見た時に生まれたものが全てで、隣にいる秀一さんのお芝居を見て、それを僕が受け止めて、その生の声を聞いて、僕が発した言葉の全てがガルマになると思っています。それこそ『ガンダム』は、作品の持つエネルギーが凄いので、僕がどんなセリフをどういう風に言い回そうが、どんな形でも成立するようにできているのが『ガンダム』という作品だと思うんです。そういう意味では気取らず、本当に自分の感性で受け止めたものを、スタッフのみなさんや『ガンダム』を観てくださっている方たちのことを信用して、格好をつけずに素直に出すのが一番良いんじゃないのかなって思っています。もちろん、『機動戦士ガンダム』で、ガルマが迎える結末は知っているんですけど、演じている時はそれを頭からは取っ払っていましたね。先のことを考えるのではなく、そこにはシャアへの愛しかないですね。全てはシャアのために、僕はガルマを演じていました。
秀一さんとお芝居をできるということに対しては感謝の気持ちしかない
──シャアを演じる池田秀一さんと『機動戦士ガンダムUC』以来、久々に共演された感想は?
柿原 先程も少し触れましたが、『機動戦士ガンダムUC』でのアンジェロは、最初からフル・フロンタルを溺愛している状態から始まっていて、アンジェロにとっては完璧な上司で、もしかしたら神様のような存在で、彼を崇拝するという関係性でした。それに対して、この『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でのガルマは、士官学校に入ってきたお坊ちゃんで、右も左もまだ全然分からないようなキャラがシャアに出会って変化していくという関係性でした。ですので、秀一さんとの距離感が『機動戦士ガンダムUC』の時とはまるで違いますよね。今回、秀一さんが投げかけてくるお芝居だったり、僕と喋ってくださる何気ない会話は、同期生という温度や目線の違いなのかなって。それは演じていて、秀一さんの方から歩み寄ってくださっているっていうのが当然伝わってきますしね。ご本人の前では言いたくないですけど(笑)、秀一さんが現場にいるといないとではやっぱり空気が違いますから。でも、それは当たり前のことだし、安っぽくなるので「さすがです!」とかは口にしたくないんです。秀一さんは大ベテランで、僕なんかまだまだ若手って言われてしまう世代です。そんな若手の一人に過ぎない僕が、秀一さんと一緒にお芝居をできるということに対しては、本当に感謝の気持ちしかないです。僕にとっては秀一さんもシャアも生きる伝説ですからね(笑)。今回の第3話の中に、漫画にはないシャアの言葉で「赤いな、実に良い色だ…」っていうセリフがあるんですけど、秀一さんが「あのセリフ、おいしいんだよね。シャア的には」と仰っていたんです。確かに格好良いセリフなんですけど、秀一さんが演じるからこそ存在感が違うものになるんです。あの圧倒的なシャアという存在感と、秀一さんがずっと演じられてきた声の深み。だから『ガンダム』はズルいなって本気で思いますね。例えば、どこかで聞いたことがあるようなセリフであっても、『ガンダム』のキャラクターたちが言うと、「これは歴史に残るだろうな」って悔しいけど思ってしまうんです。この第3話が上映された時、僕の口癖は「実に良い色だ!」になっていると思います(笑)。決して特別なセリフではないのに、こんなにも残る…これが『ガンダム』なんだなって改めて思いましたね。