鋼牙っていうキャラクターは10年後も20年後もやれる役だよって言っていたような気がするね
──10年経った今なら分かる、監督からの言葉は?
小西いっぱいありますけど、すぐパッと思いつくのは「この先10年、15年観てもらえる作品にしよう」っていう言葉ですね。僕らにとって最初はピンとくる言葉ではなかったと思うんですけど、今こうして最初のファーストシリーズがテレビで再放送されていることも含めて、そういう想いが込められていたんだなっていうことは分かりますね。
雨宮鋼牙っていうキャラクターは10年後も20年後もやれる役だよって。年を重ねても、その年なりの演じ方があるっていうか、そんな話をしたことがあるような気がするね。
肘井30歳になっても40歳になっても、カオルがお母さんになっても、おばさんになっても、おばあさんになっても続くんだ、そういう物語なんだって仰っていましたね。
雨宮その頃、零くんはお墓に入っているのかな?
藤田入っているでしょうね(笑)。
小西それこそ、玲くんは最近ずっとやっている訳じゃないですか。
藤田そうですね。
雨宮今は主役でやっているんだから、大したもんだよね。
藤田だから、本当に代表作になりましたね。
雨宮スピンオフって言って、スピンオフじゃないからね。
小西鋼牙の言葉すぐパクって(笑)。
藤田それは違うでしょ(笑)。
小西ちょっと文字の順序変えて言ったりとかして。
藤田パクリじゃなくてアレンジですよ(笑)。
雨宮魔戒騎士学校で教わるんだよ。
藤田そう、魔戒騎士学校で練習するんだもん、みんなで。
肘井そうなんだ。
藤田キメるときは言う。「貴様の陰我、俺が断ち切る」って。
小西違うよ。僕が「貴様の陰我、俺が断ち切る」だったでしょ。今は「切ってやるぜ、貴様の陰我」みたいなことを言ってるじゃん。
雨宮割ともろのワードも言ってるよ。
小西同じことも言ってるんですか?
雨宮テンションは違うけど、背中で言ってる。
肘井オマージュだよ。
小西それについてどう思いますか?
藤田何のためらいもなかった(笑)。
雨宮最初「監督、このセリフって鋼牙の決めゼリフだから、僕言えないですよ」って言うかと思ったら、もうペロッと言った(笑)。
藤田だって、もう『絶狼<ZERO>-BLACK BLOOD-』の時にも言ってますし。
雨宮めっちゃ言ってる、二刀流だよ。何なら俺のセリフだくらいの感じで(笑)。
肘井こっちから観た人は、こっちが本家だって思うかも。
藤田むしろパクった人ですよ。
小西あれ、これって零が言ってたやつじゃない?みたいな。
藤田そうですよ。
小西なるほどね。本当、パクってすみませんでした(笑)。
藤田おかしいでしょ。
雨宮次、鋼牙の映画を作った時に逆襲すればいいじゃん。鋼牙が甘いものを食べるとか、零のやつを全部持ってっちゃう。
藤田二刀流とか(笑)。
小西二刀流ね。
藤田どうせなら日替わりで黒いコートとか着ればいいじゃん(笑)。
小西フランス語でケーキの名前を言ってた時のやつ、何て言ってたか覚えてる?
藤田全く覚えてない。アガトードゥポンプルムースとガトードュホワンズワースが“まだ来てないよ、お姉さん”みたいな。
小西アガトードゥポン…ダメだ、そんなの絶対言えない。
肘井言わなくていいよ(笑)。
藤田じゃあ、これあげる。ピリピリピリ、ピッ。
小西は? ああ、あのバンドエイドのやつか。
藤田やっていいよ。
肘井雨の中で叫んだら?
小西ワァー、ドンッ!って(笑)。
肘井あれ良いよね、格好良いし。
小西良いね。今度ちょっと逆襲しよう。
藤田それ面白いですね。
小西今度逆襲しようって普通に言ってるけど、今度またやるの?
藤田ここで宣言した。
小西僕は大々的に卒業って言って、卒業してますから。
藤田めっちゃ泣いたんだから、卒業の時。
小西それ嬉し泣きでしょ? 主役の座は俺のもんだって。
藤田違う違う違う(笑)。
小西これで堂々と「貴様の陰我」って言えるなみたいな(笑)。そういうつもりで、あの映像をもう一度観て欲しいですよ、みんなに。
藤田全くもってないですよ。
小西目の奥が笑ってる(笑)。
藤田僕は一緒に卒業すると思っていたんですよ。そうしたら監督がボソッと「お前卒業しないだろ、何で泣いてんだ」って言って。
小西恥ずかしいやつだ。
藤田すごい恥ずかしかった。でも、涙は止まらなかった。
肘井懐かしい。
小西監督が「肘井さんは30過ぎてから、良い女優になるよ」って言ってたのをすごい覚えてる。
肘井覚えてるし、小西くんが覚えてるということでさらに覚えてる(笑)。ずっと言ってくれてるから。
小西そういう言葉で、10年間本当に色んなことやってきたでしょ。
肘井励まされるよね。30歳になって何年か経ちましたけど(笑)。
雨宮焦んなくて良いんだよね、肘井のキャラっていうのは。生き急がないようにした方が良いと思う。
肘井生き急ぎ過ぎて、今ちょっと落ち着いてきました。
小西今は結構穏やかだったりするの?
肘井穏やかになったと思う。
小西これから来るよ、肘井さんの女優時代が。
雨宮来るだろうね。
肘井ありがとうございます。
小西和製オードリー・ヘプバーンが。
雨宮アハハハハ。
藤田似てる、似てる。
肘井優しいね。
雨宮和製松平健さん。
小西いやいや(笑)。
藤田松平健さんは最初から和製です(笑)。
肘井でも、すごい似てるよね。
小西言われるんだよね。松平健さんに会ったことないのに、言われるんだよねっていうのが映像として流れることについて、どうかなって思いますけど(笑)。
雨宮暴れん坊将軍、狙ってるんじゃないの? 似合ってるよね。
小西僕いくらでも暴れん坊ですから(笑)、宜しくお願いします。監督が作ってくれるのが一番ですけど。
藤田暴れん坊騎士とか(笑)。

実際にはあるんだけど、自分で失敗したなって思ったことを全部記憶から削除するんだよ
──この10年間で一番の失敗談は?
雨宮難しい質問だよね。
小西パンツ忘れたことかな(笑)。こんなに肘井さんが、ずっと言い続けるとは思わなかったもんね。
肘井衝撃的だった。
雨宮クランクインしてどれくらいだったっけ?
肘井う〜ん、1ヵ月くらいとか。
雨宮そんなに早かったっけ。
小西そのワードだけ聞いたらビックリすると思うけど、マジで必死だったんだから。
肘井必死だったね。びしょびしょだったもんね。
小西もうね、撮影が終わってフラフラで帰ってたから、パンツくらい忘れても許してよ。
肘井許します(笑)。
雨宮パンツ履かないで帰ったんじゃないよな?
小西そんな訳ないじゃないですか。
藤田そういうことじゃないの?
肘井替えのパンツは持ってたよ。
小西どっかのロッカーみたいなことじゃないですよ。
藤田シド・ヴィシャスみたいな。
小西格好良いじゃん(笑)。
雨宮それ、どこで?
小西そこは別に掘り下げなくていいですよ。
肘井ロケバスです。
藤田ロケバスで!?
雨宮最初の頃って、着替える場所もそんなになかったし。
藤田そうでしたね。
雨宮今は割とケアしているけど、最初の頃は結構すごかったよな。
小西放ったらかしのところ、結構ありましたよ。
雨宮それで女の子も肘井しかいなかったからさ。今は3人、4人いたりするからさ。
肘井そうなんですか?
雨宮いるじゃない。『牙狼<GARO>-GOLD STORM- 翔』とか。
小西人が増えてますもんね。
雨宮女優さんが何人かいるから。
小西こんな真面目にパンツの話をされると、余計恥ずかしくなるね(笑)。
藤田すなわちパンツは大丈夫だったってことですよね?
肘井もうネタになったからね。
小西僕は監督の失敗談を聞いてみたいですね。
雨宮たぶんあるんだよ。
小西例えば?
雨宮例えばが出てこないんだよ。実際にはあるんだけど、自分で失敗したなって思ったことを全部記憶から削除するんだよ。
小西今すごい表情で面白いこと言ってますよ(笑)。
雨宮だから、失敗したなっていうことはない。
小西今まで監督から言われた言葉で、一番説得力ないですよ(笑)。
雨宮失敗だって思って生きていくっていうのが、どうなのかなって。
藤田悲しいことですもんね。
肘井だって、パンツもネタになっているしね。
小西パンツまだ言う?
藤田過去の成功ですよね(笑)。
肘井私のオーディションの話も若干ネタになってるし。
小西ああ。「『牙狼<GARO>』どう思う?」って言われて、なんて言ったんだっけ?
雨宮違うよ。「『牙狼<GARO>』ってタイトル変ですよね。ゲロみたい」って(笑)。
肘井正直、それ聞いてどう思うんですか? 私に何でそんなこと聞くのか全然分かんない。
雨宮変な娘だなと思う(笑)。
肘井まあ、そこはあまり影響してないってことですよね。
雨宮印象には残るよね。何が好きって聞いたら、落語が好きって言うから、ビックリしちゃった。
小西アクションの失敗とか結構ありますよね。
雨宮それは割とどっかで言ってるけど、失敗っていうか後悔っていうか、第7話のビル落ちのアクションでカット的に2カット足りないんだよね。だから、毎回観返す度にみんなすごいって言うんだけど、ちょっと自分的には2カット足りてないところがすごい気になってて。
小西今そこだけ撮り直します?
雨宮それ、実は『牙狼<GARO>〜MAKAISENKI〜』でやってんの。第7話のシグマと鋼牙が最初に戦う、鉄骨のところのシーンで。全然形が違うから、普通に観ても分かんない。それで、カットの繋ぎのことを横山にも言ったら、確かに気になるねって話をしてて、そうならないようにするにはどうしたら良いかっていうのをちょっとやってたんだよね。
小西なるほどね。現場で僕らも映像でどうなるかっていうところまで分かってなくて。
雨宮多分みんなは現場で撮って、撮った画を観ずにアフレコに来て完成した画を観てるけど、そこに行くまでのプロセスで、さっき言った失敗したことっていうのかな、そこを解消しているんだよね。だから、失敗を削除するっていうのは、実は失敗したけど取り返しがついているから、記憶に残ってない。今日収録したコメンタリーで観た、カオルがいてカオルのお父さんがいるっていう何気ないカットだけど、あれも実は現場ではもっと離れて撮っているんだよね。離れてしまうと合成しにくいっていうのと、後でお母さんを入れないといけないっていうんで、編集を変えて真ん中を切って適度な距離にしているんだよね。
小西へぇー、そうなんですね。
雨宮実はあの二人、あの距離で芝居してんだよ。気付かなかったでしょ?
肘井全然気付きませんでした。
雨宮そういうのいっぱいあるよ。役者の手がぷらんぷらんしているのを、上手くごまかすようにトリミングしたり。
小西それはもしかしてなんですけど…。
雨宮それは言えないです、その人に。失礼だから。
小西言えないですか。そっかそっか。
藤田いやー、僕10年前はできなかったことで今できること、手をぷらぷらさせないですね(笑)。
雨宮これ本当なんだよ。『絶狼<ZERO>-BLACK BLOOD-』で新しいキャストの子にその話をしたの。そうしたら観たいって言うから、藤田に実際にやってみろって言ったの。そうしたら、もうできないんだよね。小っちゃい男になっちゃったなと思って(笑)。
藤田いやいやいや、どういうこと(笑)。ぷらんぷらんしてた方が良かったってことですか?
小西枠に収まらない感じが、なくなっちゃったんじゃない。
雨宮あいつ、1O年前から言ってんのにって。
藤田そうですね、できた方が面白かったですね。
小西規格外だったもんな。
雨宮滑舌も微妙に良くなってるしな。
藤田微妙に(笑)。まだ言えないことは多々ありますけどね(笑)。
肘井伸びしろだね。
雨宮難しい?
小西難しいですね。『牙狼<GARO>』に出てくる言葉って。
藤田綺麗な言葉も多いですし、堅い言葉も多いんで。
小西ゲストの人たちも、あんなベテランの役者さんでも言い辛そうにしているセリフとかあるじゃないですか。
雨宮ベテランの人がテンパる時あるよね。木下ほうかさんも『牙狼<GARO>〜MAKAISENKI〜』の時は魔戒法師ラテスやってたじゃない。今宵なんとかって言って。「難しいね、このセリフ」って言ってて。大杉漣さんもそうだったんだよね。「この単語の意味が分からなくて」とかって言って。
肘井特別な言葉が多いですもんね。世界観も。
小西意味がない訳でもないし、難しいですよね。
雨宮その度に螢(雪次朗)さんがニヤニヤするんだよ(笑)。
藤田もうプロフェッショナルですからね、螢さん。
肘井お手の物だもんね。
雨宮難しいでしょ?みたいな顔するんだよ。
小西さっきのカットのことで思い出した場所があるんですけど、シグマが初めて屋上のところで登場してきて、やられた後に剣を構えるシーンがあって。現場ではこの構えを少しずつ変えていって、そこでシグマが消えちゃうっていうカットだったんですけど、変えていったはずなのにシグマが消えた瞬間の次のカットがこれに戻ってて。あっ、なんか撮影の尺もカットされているって思っていたのを覚えています。
肘井すごく小さいことがいっぱいある。ここは瞬きをしちゃいけなかったとか。
藤田ああ、ある。
肘井ここでしちゃダメでしょみたいな。緊張感がなくなっちゃう。
小西僕ら二人とシグマが三つ巴で対決するところがあるじゃないですか。その時に、僕の剣が一つ背中に入ったままになっているとか、今観ると面白いですよね。
雨宮あれも色々あるんだけど、まあ良いかなって。合成で直すって手もあったんだけど。
小西でも、ああいうちょっとした隙みたいのも面白いなって思うんですけどね。

映像を観ている最中に喋れだなんて…あれだけの作品なんだから、どうしたって観入っちゃう
──コメンタリー収録をやってみての感想は?
藤田肘井さんが一番経験あるんじゃないですか?
肘井そうだね、一番やってると思う。
小西グループによって色が違うよね。
肘井全然違う。藤田くんとやった時は、本当に藤田くんが素晴らしく仕切ってくれて。ちゃんとした情報が多いんだよね。
小西へぇー、すごい。プロだ。
雨宮コメンタリーのプロ。
藤田それはそれでどうなんですか? でも、今日3人と一緒に収録して、何てひどいんだと思って(笑)。
小西もうちょっとオブラートに包んでもらえますか(笑)。
肘井良いところいっぱいあったよね(笑)。やたら褒めてくれたじゃん(笑)。
藤田いや、仲の良さとか。
小西またカメラ回っているからって、そうやってワザとらしい言い方して(笑)。
藤田でもね、良いシーンに限って肘井さんがお菓子を食べてボリボリ言い始めるし。
小西まあ、肘井さんにはそういうところあるよね(笑)。
藤田すぐ裏切った(笑)。このボリボリ音、肘井さんなのかなと思ったら監督だったり(笑)。
肘井今日すごい反省した。俺が食べている時は、お前らは話さなきゃいけないんだよって言われて、そうだよなと思って、つられて食べちゃったんだよね。
小西そうだよの前に、色々言わなきゃいけないことあるけどね。俺が食べている時は喋れよって言う監督って(笑)。
雨宮俺に食えって言ったんだよな。
肘井どうぞみたいな(笑)。
藤田良い感じだなって思いましたよ。
雨宮でも、解説とかさ、そういうのはどっかで見ればいいじゃんって。
藤田もう喋ることないですよ、『牙狼<GARO>』のことに関して。
小西観入っちゃいますしね。終わったあとなら2時間でも3時間でもいくらでも喋れますけど、映像を観ている最中に喋れだなんて。あれだけの作品なんだから、どうしたって観入っちゃいますよ。今、文句しか言ってないよね(笑)。
肘井でも、すごく楽しかった。
小西これはちゃんと言っておきますけど、スタッフさんが食べろと言わんばかりに音の鳴るお菓子を置くんですよ。
肘井そう、マイクの前に置くんだよね(笑)。
藤田でもね、今日そっちには聞こえてないと思いますけど、あるプロデューサーがこちらにしかマイクが聞こえてない状態で、「誰だよ、乾き物置いたの」って怒ってたんですよ(笑)。
肘井どういう意味?
藤田音が鳴り過ぎるって(笑)。
小西本来は信玄餅を置く予定だったみたいよ。
雨宮音が出ないからね。
藤田コメンタリーに信玄餅は置かないでしょ、普通(笑)。
小西そうだね。
左から、藤田玲さん、雨宮慶太監督、小西遼生さん、肘井美佳さん
※尚、この座談会の模様は“牙狼<GARO>HDリマスター 魔界同窓会”として12/22発売のBlu-ray BOXにも
一部映像特典として収録されています。
の付いたインタビューはV-STORAGE online限定の記事です。
PROFILE
雨宮慶太(あめみやけいた)
1959年生まれ、千葉県出身。有限会社クラウド代表。TVドラマ『鉄甲機ミカヅキ』、映画『ゼイラム2』をはじめ、数多くの特撮作品で原作や監督を務める。2005年に放送を開始した『牙狼<GARO>』シリーズの原作・総監督。
PROFILE
小西遼生(こにしりょうせい)
1982年生まれ、東京都出身。キューブ所属。2005年に特撮TVドラマ『牙狼<GARO>』に、主人公・冴島鋼牙役で出演し、甘いルックスと体当たりのアクションで話題に。映画、舞台をはじめ、特にミュージカルには数多くの作品に出演している。
PROFILE
肘井美佳(ひじいみか)
1982年生まれ、福岡県出身。スターダストプロモーション所属。日本映画界の巨匠・森崎東監督の『ニワトリはハダシだ』で映画初出演にして初主演デビューを果たす。趣味のカンフーを活かし、『牙狼<GARO>』シリーズではアクションシーンも披露。
PROFILE
藤田玲(ふじたれい)
1988年生まれ、東京都出身。ドルチェスター所属。2003年に放送された『仮面ライダー555』で俳優デビュー。『牙狼<GARO>』シリーズでは涼邑零役を好演。零を主人公にした2017年放送予定の『絶狼<ZERO> -DRAGON BLOOD-』への期待も高まっている。

<Blu-ray BOX発売情報>
牙狼<GARO> Blu-ray BOX
2016年12月22日発売
¥35,000(税抜)
牙狼<GARO> 公式サイト
©2005 雨宮慶太/Project GARO ©2006 雨宮慶太/東北新社・バンダイビジュアル