インタビューココだけ | 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち
ヤマトファン待望の完全新作シリーズ!『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』福井晴敏インタビュー全文掲載
日本アニメーションの歴史に燦然と輝く不朽の名作『宇宙戦艦ヤマト』を、ヤマト世代の豪華スタッフ陣がリメイクし、2012年から2014年にわたり、劇場上映からTV放送まで展開した傑作『宇宙戦艦ヤマト2199』。その続編となる待望の完全新作シリーズ『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』が、2017年2月25日(土)より全国15館にて2週間限定で劇場上映される。そこで今回は、シリーズ構成・脚本を担当した福井晴敏さんを直撃! 本作のモチーフにもなっており、シリーズ最高傑作と誉れ高い『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の壮絶なる物語を、どのように再構築して21世紀に甦らせようと考えたのか話を伺った。
驚くことに48歳の僕が若い部類に入ってしまうんですけど、こんなことって珍しいですよ(笑)
──まずは福井さんと『宇宙戦艦ヤマト』との出会いについてお聞かせください。初めてご覧になられた「ヤマト」作品は何だったのですか?
福井劇場版の『宇宙戦艦ヤマト』(1977年公開)が、テレビで放送されたのを観たのが「ヤマト」との最初の出会いだったと思います。TVシリーズ(1974年放送)が放送されていた頃、まだ僕は6歳くらいで、リアルタイムでは観てないんです。本作のスタッフの陣容を見て頂ければ分かると思いますが、驚くことに48歳の僕が若い部類に入ってしまうんです。こんなことって珍しいですよ(笑)。普通はどこへいっても上の方なのに、この現場では下の方なんだって(笑)。そういう意味では、おそらく作品を観てくださっているメインの世代の方よりも世代的にいうと僕は少し下なのかなと思いますね。
──本作は『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(1978年公開)がモチーフとなっていますが、福井さんが初めて『さらば』をご覧になったのはいつ頃ですか?
福井僕が初めて『さらば』を観たのは、最初の劇場版と同じく、テレビで放送された時ですね。確か、最初の劇場版がテレビで放送されたのが、ちょうど『さらば』が公開される頃だったんです。その時に初めて「ヤマト」に触れ、こんなに真面目な作品があるのかと衝撃を受けたんです。当時、『さらば』の公開は話題にもなっていたので、両親に映画館へ連れて行って欲しいとお願いしたんですけど、父親に「ためにならん」と断られてしまい、代わりに『キタキツネ物語』(1978年公開のドキュメンタリー映画)を観に行ったんです。あれはあれで映画として非常に良かったんですけど、まるで違うものなので、僕の『さらば』を観たいという気持ちは『キタキツネ物語』では1ミリたりとも埋まらなかったですけどね(笑)。今思うと、僕らの世代で「ヤマト」がブームになったのは、むしろ『さらば』が終わった後に『新たなる旅立ち』(1979年放送)が放送されて、『ヤマトよ永遠に』(1980年公開)が公開された時が最高潮だったような気がしますね。なので、たぶん『さらば』は、『ヤマトよ永遠に』が公開される直前にテレビで放送されたものを観たんだと思います。
──待望の『さらば』をご覧になり、どのような感想をお持ちになりましたか?
福井実は先に『宇宙戦艦ヤマト2』(1978年放送)を観ていて、その後に『さらば』を観ているんです。なので、物語の結末を知った上で観ていたような気がしますが、それでもテレビの前で滂沱の涙を流していましたね。あとは、アニメーションでここまでやるのかと驚いた記憶があります。
作品を観た方たちが「なるほど、確かにこれは“愛の戦士たち”だ!」と思って頂けるものに
──大きなブームを巻き起こした『宇宙戦艦ヤマト』ですが、当時、他のアニメ作品と何が違っていたのですか? 福井さんが感じる「ヤマト」という作品の魅力を教えてください。
福井あの当時、自分の中で「ヤマト」以外に観たいと思うアニメ作品は正直ありませんでした。一般的に小学校4、5年生くらいの時って、子供時代のものとお別れして、少しずつ大人びてくる頃だと思うんです。あの頃は角川映画の全盛期ということもあり、『野性の証明』(1978年公開)を観たというのがクラスの男子の間では一つのステータスみたいになっていたり。そういう空気がある中で、もうアニメでもなかろうよと。まさか、その2年後にロボットのプラモデルを買うために行列に並ぶことになろうとは誰も想像していなかったですからね(笑)。そういう時代に、唯一観たいと思うアニメ作品が「ヤマト」でした。今までアニメと言えば児童向けがほとんどでしたけど、初めてターゲットをティーンから大人に絞ったパイオニア的作品が「ヤマト」だったのかなと。そう考えると、『機動戦士ガンダム』が出てくるまではオンリーワンの存在でしたね。
──シリーズ構成・脚本を引き受けることになった経緯について改めてお聞かせください。
福井原作元のボイジャーホールディングスさんから『宇宙戦艦ヤマト2199』(2013年放送)が終わるか終わらないくらいの頃に声を掛けて頂いたんです。ただ、当時はまだ『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』が動いていたので、さすがに両方は厳しいかなと。それは仕事面というよりは僕のメンタル面という意味ですけどね(笑)。それで『UC』が終わってちょうど一段落した頃に、もう一度連絡を頂いたんです。その時は『UC』が終わって、自分の中で次に何をやろうか模索していた時でもあったので、話を聞かせて頂いて、それだったらやってみたいなと思った訳です。
──シリーズ構成・脚本を担当する上で、特に意識されたことは何ですか?
福井とりあえず副題は「愛の戦士たち」にしようと反射的に思いついたんです。主題の『2202』だけでは少し弱くて、おそらく『2199』の八掛けくらいの形で全ての物事が推移してしまう可能性がある。でも、「ヤマト」の潜在的なファンはもっといるはずだと。そう考えると、その方たちに向けたものにしたい。『2199』を観た方たちを核として考え、それからどれくらい膨らませることができるか、その膨らみの部分に対して向けることが必要なことなのかなと。今どき“愛の戦士たち”かよって思うかもしれないですけど、少なくとも『さらば』を観た方は、あれが“愛の戦士たち”以外の何者でもない映画だってことは分かっていると思うんです。今回も作品を観た方たちが「なるほど、確かにこれは“愛の戦士たち”だ!」と思って頂けるものにしなければならない、というのが僕の中での一番の宿題でしたね。そこについては100%応えられたと思います。
どうせ『さらば』のリメイクだろって油断して観ていると正直ビックリすると思います(笑)
──製作発表会の際に「希望のない物語は作りません」と仰っていたのが印象的でした。福井さんは普遍的なものである「愛」をテーマに作品を描くことに対して、どうお考えですか?
福井普遍だからこそ、オールタイムでいつでも扱える題材であると思っています。ただ、今回の「愛の戦士たち」は「愛」と「戦」という字が組み合わさっているんです。この二文字で今の時代に最初に思いつくことって、とても悲しいことだけど自爆テロだと思うんです。『さらば』のラストも言ってしまえばそれに近いものなので、そういう世の中で、あの物語をどういう風に再構築していくかというところが命題だった訳ですけど、逆に言えば、ものすごくやりがいというか、挑戦しがいのあることでもありました。もちろん、作品の内容が内容だけに、過酷なところは当然出てくるし、今風にアップデートしていった時にはイメージとしてはもっと強烈なところが出てくるかもしれない。でも、そういう現実の世界と比較対照した時に、悲劇も含め何もかもが同じくらいの濃度で作品の中に盛り込んであって、かつ現実社会の中ではなかなか持つことができない“希望”というものを、「ヤマト」の世界の中で、どれだけ提示することができるのかというところは考えました。僕らももういい歳ですからね(笑)。有限なライフタイムを意味のあるものにしようと、全スタッフが同じ想いで作品と向き合っています。
──監督を務めるのは、これまでも「ヤマト」作品に深く携わっていた羽原信義さんですが、羽原監督の印象を教えてください。
福井僕が羽原さんの名前を最初に知ったのは、実はアニメーターとしてなんです。羽原さんが描かれている当時の絵は、表情がとても豊かで、人物としてのバランスが取れた清楚な感じが漂っている絵だったんです。今回の絵コンテを拝見していても、羽原さんらしい絵になっていて、キャラクターの佇まいがどことなく清楚なんですよ。僕が好きな絵を描いている人なので安心感はありますよね。
──羽原監督とのやりとりなどで思い出に残っていることがあれば教えてください。
福井やりとりという面で言えば、どちらかというと羽原さんよりも副監督の小林(誠)さんの方が多かったような気がしますね。羽原さんとは羽原さんの「これはやれるのか?」という問いに対して「こうしてみたらどうでしょうか?」と、こちらが提案させて頂く形で進んでいたこともあって、あまり「ああしたい」「こうしたい」みたいなやりとりはなかったように思います。
──いよいよ2017年2月25日より劇場上映が始まりますが、第一章の見どころを教えてください。
福井これは『さらば』でも『2』でもそうなんですけど、最初の頃はあまりバトルがないんです。でも、今回は第一章からガッツリ戦闘シーンがありますので、どうせ『さらば』のリメイクだろって油断して観ていると正直ビックリすると思います(笑)。それでいて、観終わった後には「あれがこれから始まるんだ!」と間違いなく思ってもらえるようになっているはずです。もちろん、『2199』の後の話ということで、『2199』で出された宿題みたいなものに対しても、一つひとつ答えをちゃんと出していますので、その辺も楽しんで頂ければと思います。
の付いたインタビューはV-STORAGE online限定の記事です。
PROFILE
福井晴敏(ふくいはるとし)
1968年生まれ、東京都出身。作家。著作の映画化作品も多く、近年ではアニメーションや漫画などの原作・脚本に軸足を置いた活動を行っている。主な著作に『亡国のイージス』、『終戦のローレライ』、『機動戦士ガンダムUC』などがある。
<上映情報>
全七章 劇場上映決定!!
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第一章
2017年2月25日(土)より全国15館にて2週間限定劇場上映!
<上映館>
■東京:新宿ピカデリー/シネマサンシャイン池袋/MOVIX亀有
■神奈川:横浜ブルク13 ■千葉:MOVIX柏の葉 ■埼玉:MOVIXさいたま
■栃木:MOVIX宇都宮 ■宮城:MOVIX仙台 ■北海道:札幌シネマフロンティア
■大阪:大阪ステーションシティシネマ/なんばパークスシネマ
■京都:MOVIX京都 ■愛知:ミッドランドスクエアシネマ/MOVIX三好
■福岡:T・ジョイ博多
<Blu-ray&DVD発売情報>
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第1巻 特別限定版Blu-ray
【BVC限定/初回限定生産】
2017年3月4日発売
特別限定版Blu-ray:¥10,000(税込)
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第1巻
2017年3月24日発売
Blu-ray:¥7,800(税抜)
DVD:¥6,800(税抜)
宇宙戦艦ヤマト2202/宇宙戦艦ヤマト2199【BVC限定】特設サイト
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 公式サイト
©西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会