インタビューココだけ | 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち
Blu-ray&DVD第1巻発売直前!『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』羽原信義監督インタビュー全文掲載
日本アニメーションの歴史に燦然と輝く不朽の名作『宇宙戦艦ヤマト』。1978年に公開され、シリーズ最高傑作と誉れ高い大ヒット劇場用映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』をモチーフとしながら、新たな物語の構築に挑む『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』が、いよいよBlu-ray&DVDでリリース開始! そこで今回は、ヤマト愛に溢れる羽原信義監督にインタビュー。羽原監督が語るこだわりのセリフやキャスティングの経緯とは?
ヤマトの魅力は、やっぱり愛とロマンじゃないですかね(笑)
──過去にも様々な形で「ヤマト」作品に参加されていますが、今回はどのようなお気持ちで監督を引き受けられましたか?
羽原過去に『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』でメカニック演出、その作品のディレクターズカット版でアニメーションディレクターとして携わり、『2199』では第九話と十九話の演出を担当していました。「ヤマト」の監督が果たして僕に務まるのかという不安はありながらも、やっぱり大好きな作品なので、オファーを頂けたのなら全力で挑んでみたいという気持ちになりました。でも、プレッシャーはもう口では言い表せないくらいでした(笑)。実際に監督をやってみて、出渕(裕)さん(『宇宙戦艦ヤマト2199』総監督)がどれだけ大変だったかがよく分かりました。
──羽原監督が思う『宇宙戦艦ヤマト』という作品の魅力とは?
羽原まずは群像劇としての部分ですよね。たくさんのキャラクターが実際に「ヤマト」の世界で生きているように感じられるのが大きな魅力だと思います。あとは、やっぱり愛とロマンじゃないですかね(笑)。そういった部分は忘れないように監督を務めていきたいと思っています。
自分にとっても大切な作品ですので、どのように『2202』を構築していくか、悩みまくっています
──本作は大ヒット劇場用映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』を再構築した現代版ということですが、監督をする上で何か意識されたことはありますか?
羽原中学3年生の頃、『さらば』を映画館で観た時に、自分を含めて劇場内の全員が泣いている状態だったことを鮮明に覚えています。自分にとってもすごく大切な作品ですので、どのように『2202』を構築していくか、本当に悩みまくっています。基本的には、福井さんからたくさん新しいアイディアを出して頂いて、それを基に映像を構築している形です。ただ、最初から福井さんと「旧作へのオマージュ的なシーンはなるべく入れていこう」と決めていたので、そこは大事にしています。第一章で言うと、第二話の“英雄の丘”のシーンはほぼそのまま同じように作っていますが、『さらば』の時とはまた状況が若干違っています。その違いを踏まえた上で、『2202』では最後に南部がアンドロメダに向かって「バッキャロー!」と言いますが、実は『さらば』では「バッカヤロー!」なんです。細かいところなのですが、今回の方が『さらば』の時よりさらに酷い状況なので、ニュアンスを含めて「バッカヤロー!」よりも語気が強く感じられる「バッキャロー!」という言い方に変えています。他には、TVシリーズ第1作になるのですが、第二話に登場するヤマトが起動するシーンに「重動力線コンタクト」という沖田艦長のセリフがあるんです。セリフ自体の意味はよく分からないんですけど、やはりこれら起動時のセリフはヤマトの魂のひとつだと思ったので、そのまま使わせて頂いています(笑)。
──本作と『さらば』では“ここ”が決定的に違うという部分があれば教えてください。
羽原本作は『2199』の続編なので、ガミラスと和平条約を結んでいます。ガミラスのエアカーの技術が導入されているので、古代と雪が乗っている車もエアカーです。社会の中に地球人とガミラス人が同居している状況というのが、まず違いますよね。ちなみに司令部にいたガミラス人含む4人はいわゆる「オブザーバー」です(笑)。そんな中で登場した新キャラクター、ガミラス人であるバレル大使とキーマンが、今後どのようにヤマトクルーと関わっていくのかが見どころになっています。
制作陣一人一人が持っている“俺のヤマト”を、どうやって一つにまとめるか
──実際に制作が始まって、監督として一番苦労されたのはどんなところですか?
羽原制作陣一人一人が持っている“俺のヤマト”を、どうやって一つにまとめるかっていうのが非常に大変ですね(笑)。自分の監督スタイルとして、「俺に付いて来い」っていうやり方ではなく、みなさんの意見を頂いて「それ良いですね」「これも良いですね」という形で、それを紡いでいくスタイルでやっています。そういう意味では楽をさせてもらっている部分もありますし、同時に大変な部分でもありますね。
──シリーズ構成を福井晴敏さんが担当されていますが、ご一緒されてみていかがですか?
羽原福井さんはアイディアが豊富すぎるんですよ(笑)。シナリオの密度が物凄くて、たくさん書いて頂いているんですけど、尺に収まらないんです(笑)。どうしても入り切らないところが出てくるので、その辺は特別限定版Blu-ray第1巻の特典に付いている第一話シナリオ集をご確認頂ければと思います。泣く泣くカットした部分もお楽しみください。
最初に脚本を読んだ時からもう神谷さんの声しか浮かばなかった
──キーマン役の神谷浩史さん、テレサ役の神田沙也加さんの起用は大きな話題となりましたが、キャスティングの経緯や、その意図をお聞かせください。
羽原キーマンに関しては、最初に脚本を読んだ時からもう神谷さんの声しか浮かばないくらいでした。キャラクターの容姿も含めて、どう読んでも神谷さんなんです(笑)。今後も古代役の小野(大輔)さんとの掛け合いが出てくるんですけど、二人の声はバランスがとても良いんです。今日もアフレコがあったんですが、キーマンの若干上から目線なセリフがピッタリハマっていました。テレサに関しては、キャスティングに悩んでいた時に、音響監督の吉田(知弘)さんから「神田さんはいかがですか?」と連絡があって、その瞬間に「ぜひオファーしてください」と返事をしました。『アナと雪の女王』を拝見していて、声の透明感がテレサにピッタリだと感じていたんです。神田さんに引き受けて頂けて本当に良かったです。
──実際に神谷さんと神田さんのアフレコをご覧になられて、いかがでしたか?
羽原自分の想像以上に素晴らしかったです。神谷さんはシナリオを読んでイメージしていた以上で、神田さんもスタジオで神々しく輝いているような印象を受けました。
──神田さんが普通の人間ではない役を演じるバランスの難しさについて仰っていたのですが、神田さんの演技についてはいかがでしたか?
羽原最初のテストの時はリアルな人間の演技をされていて、それはそれで非常に良かったのですが、「今回はもっと神に近い感じでお願いします」とオーダーをしたところ、ガラッと変わって完成版に近い感じになったんです。本当に演技の幅が広い方だなという印象を受けました。
アンドロメダは迷走する地球の象徴として描かれています
──第一章では「軍事強化を進める地球が向かっている先は、果たして本当の平和なのだろうか」という問いかけが印象に残りました。とても壮大で重要なテーマですが、アニメーションとしての娯楽性のバランスをどのように意識されていますか?
羽原元々『2199』の結末は、波動砲の封印という非常に重く意味のあるものだったと思います。それを覆してしまう世の中が一体どうなっているのかという部分は、福井さんがきちんと書かれていたので、僕自身もすごく納得して、これは新しいものになるなと思っています。ビジュアル面についても、副監督の小林(誠)さんがすごいイメージボードを次々と出してくださっているので心配していません。
──本作には最新鋭戦艦アンドロメダが登場しますが、この戦艦が体現しているものとは?
羽原ヤマトのクルーたちは波動砲が非常に危険なものだということを知っているし、それが封印された過程も知っている。波動砲を封印したことに彼らは納得し、地球は平和に向かおうとしていたはずなのに、アンドロメダには何で波動砲が2つも付いているんだという想いがあると思うんですね。今回のアンドロメダは、空母タイプが登場して五機編隊まで組まれ、『さらば』や『宇宙戦艦ヤマト2』に出てきたものよりも重い役割を担い、平和の捉え方を誤って迷走する地球の象徴として描かれています。なので、ファンの方にはヤマトクルーと同じ立場で観て頂きたい気持ちが強いです。
──第一章は戦闘シーンから始まる迫力満点の展開でしたが、作業はいかがでしたか?
羽原これは3DCGチームが非常に頑張ってくれまして、ご覧になられた方にはビックリして頂けたのではないかと思います。細かいところで言うと、大戦艦の色も実はグリーン一色ではなく、ポイントポイントで濃くしたり薄くしたりと微調整をして画面の密度感を上げています。あとは、コスモタイガーIIという戦闘機が今回から登場しますが、プラモデルと同じ形の3DCGモデルと『さらば』でスーパーアニメーターの金田(伊功)さんが描かれたもののように、羽根と機首が下がった感じを再現した「バージョンK」というアクション用の3DCGモデルの2種類を作っています。それで縦横無尽にアクションをするという、3DCGでは難しいとされる表現にチャレンジしています。今後も出てきますのでぜひ注目して欲しいですね。
福井さんの覚悟と、「愛とは何か」を真っ正面から描くんだ、という強い気持ちを感じた
──本作もそうですが、普遍的でありながら取り扱うのが難しい「愛」をテーマにした作品を現代に向けて発信していくことについて、羽原監督はどのようにお考えですか?
羽原最初に福井さんから出された企画書のタイトルが既に『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』だったんです。まず、僕らヤマトファンからすると『さらば』の時代設定は2201年なのに、なぜ2202年なんだろうという疑問がありました。でも、ロゴを拝見させて頂いた時に末尾の“2”が一番大きくなっていて“ヤマト2”に見えたので、「なるほどな」と。ただ、“愛の戦士たち”については今の時代に適しているのかなという想いが正直あったんです。でも、あえて古臭いと思われている表現を表題に付ける福井さんの覚悟と、ヤマトクルーを通して「愛とは何か」を真っ正面から描くんだ、という強い気持ちを感じまして、「これはもうやるしかない」と思って取り組んでいます。
──第一章の冒頭、ズォーダーが愛について語るシーンについて教えてください。
羽原やっぱりヤマトファンとしては、まず宇宙が映って「無限に広がる大宇宙…」という語りから始めたい訳なんですよ(笑)。そこをやりつつ、実はズォーダーの声だったというところで上手くいったのではないかと個人的に思っています。また、ズォーダーの役の手塚(秀彰)さんの演技が素晴らしいんです。最初は朗々と言っているんだけど、段々とズォーダーになっていく感じが良いですよね。
第二章「発進篇」の見どころは、もちろんヤマトの発進シーンです
──羽原監督にとって『宇宙戦艦ヤマト』とは?
羽原自分を作ったものの一部ですね。僕が『マジンガーZ』を観てアニメーターになろうと思った少し後くらいに、TVシリーズ第1作の放送が始まったんです。昔のヤマト作品には、奥から来て手前に迫って再び奥に抜けていく“バンクのカット”と呼ばれるものが必ず出て来たので、それをテレビで観てはパラパラ漫画で描いて、それを次回の放送時に確認して、「あっ、パルスレーザーの数を一個間違えた。もう一回描こう」みたいな感じで何度も描いていました。ヤマトはパラパラ漫画で死ぬほど描いているので、アニメーターとしての出発点の一つになっている作品です。そんな大切な作品に関われる機会を与えて頂いて、自分は本当に幸せ者だと思っています。
──では最後に、6月24日(土)から劇場上映される第二章の見どころを教えてください。
羽原これはもちろん、ヤマトの発進シーンです。このシーンが個人的に一番観たかったので、気合いを入れて作っています。ぜひ楽しみにして頂きたいですね。あと、全七章セット前売券のイラストとして麻宮(騎亜)さんが描いてくださった“アンドロメダとヤマトのニアミス”ですね。元々絵コンテにはそのシーンが入っていたんですけど、ちょうど3DCGシーンにこれから取り掛かるくらいのタイミングで麻宮さんのイラストが上がってきて、それを見た3DCGチームが「あれに近付ける」と意気込んで、ほとんど同じアングルで再現されています。あの格好良いイラストそのままに動きますので、ぜひ劇場でご確認ください。
の付いたインタビューはV-STORAGE online限定の記事です。
PROFILE
羽原信義(はばらのぶよし)
6月21日生まれ、広島県出身。演出家、監督。『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』にメカニック演出として参加し、ディレクターズカット版にてアニメーションディレクターを担当。続く『宇宙戦艦ヤマト2199』には第9話と第19話の絵コンテ・演出で参加した。
<上映情報>
全七章 劇場上映決定!!
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第二章「発進篇」
2017年6月24日(土)より全国20館にて2週間限定劇場上映!
<Blu-ray&DVD発売情報>
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 特別限定版Blu-ray第1巻
【BVC限定/初回限定生産】
好評発売中
特別限定版Blu-ray:¥10,000(税込)
※上記の商品写真は【BVC限定/初回限定生産】のBlu-ray第1巻です。
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 特別限定版Blu-ray第2巻
【BVC限定/初回限定生産】
2017年7月1日発売
特別限定版Blu-ray:¥11,000(税込)
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Blu-ray&DVD第1巻
2017年3月24日発売
Blu-ray:¥7,800(税抜)
DVD:¥6,800(税抜)
※上記の商品写真は通常のBlu-ray第1巻です。
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Blu-ray&DVD第2巻
2017年7月28日発売
Blu-ray:¥8,800(税抜)
DVD:¥7,800(税抜)
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち【BVC限定】特設サイト
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 公式サイト
©西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会