忘れてしまった大切なものに出会う感動のSFファンタジー!『アリスと蔵六』松倉友二インタビュー全文掲載
第17回(2013年)文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した、今井哲也原作の“泣けるSFファンタジー”が待望のTVアニメ化! “研究所”と呼ばれる施設で生まれ育った少女・紗名は、あらゆる想像を具現化する「アリスの夢」と呼ばれる特殊な能力の持ち主だった。そんな紗名が初めての“外の世界”で出会った頑固な老人・蔵六。少女と老人の心温まる交流を描く感動のSFファンタジーアニメ『アリスと蔵六』。そこで今回は、本作のプロデューサーを務める松倉友二さんにインタビュー。松倉さんが語る作品の魅力とは?
原作を読んだ時から、ストーリーに古き良きSF感があって、
おっさん心をくすぐってくれるのが非常に良かった
──『アリスと蔵六』の最初の印象はいかがでしたか?
松倉原作が連載されている「月刊COMICリュウ」は毎号読んでいて、同じ業界の知り合いと『アリスと蔵六』はいつかアニメにしたいよね」って話していたんです。今井さんが描かれる原作を読んだ時から、ストーリーに古き良きSF感があって、おっさん心をくすぐってくれるのが非常に良かった。ちょっと切なかったり、非常にハードな話だったり、自分たちが昔読んでいた漫画ってこんな感じだったなと。続きを読みたいっていうのと同義だと思うんですが、ワクワクする漫画だなと思ったんです。自分だったらこういう風にアニメにするだろうなってよく妄想するんですけど、非常にアニメ向きな原作だなと思っていました。
──その根拠はどのようなところですか?
松倉感覚的な部分ですが、キャラクターの描写や動かし方が、アニメにしたら面白いだろうなと。こう動いたら可愛いだろうなというのが思い浮かぶんですよ。だからスタッフも時間をかけて選びましたね。まずはシリーズ構成の髙山文彦さん。知ってる人は知っているアニメ業界の大仙人です。非常に構成力が高い方なので、まだ原作の連載が続いている作品の着地点をどこに持っていくかというところで、髙山さんのお力を借りようと思いました。今井哲也さんの漫画が持っている空気をベースに、映画のような雰囲気をプラスしてくれることを確信しています。
──今井さんと髙山さん、松倉さんでの話し合いはあったんでしょうか?
松倉最初の段階で原作の今井さんとスタッフで集まって話はしました。今井さんは最初に僕らと打ち合わせをした時にビックリしたらしいですけどね(笑)。髙山さんが何気ない1コマ、何気ないセリフに意味を求めて、掘り下げた話を聞こうとしていたから(笑)。漫画の技法によって、セリフやコマに対する解釈の仕方って変わっちゃうじゃないですか。黒ベタに一言だけ書いてあるとか、モノローグで喋っているのは誰なのかとか。髙山さんはそう言う部分を掘り下げておきたかったんですよね。問題は掘り下げすぎちゃうところ(笑)。そこは気にしなくても良いですって。そういう部分を上手くコントロールするためにも、髙山さんとよくタッグを組んで貰ってる桜美かつしさんに監督をお願いしました。
何よりも今井さんの希望を叶えてあげたいなっていう考えを念頭に置いています
──スタッフィングは試行錯誤されたんですか?
松倉そうですね。今井さんはSF感がある漫画をすごくしっかり描かれているんですが、本人は「キャラクターを可愛く表現してもらえたらうれしいです」と仰っていたので、ストーリーとビジュアルでその両方を埋められるようにしました。キャラクターデザインは岩倉和憲さんに入ってもらって、他の作画スタッフも柔らかいモノが描ける人を選んでいるので、ベースのストーリーはSFをやりつつ、表層は柔らかく、みたいなさじ加減に出来ています。SFとは言っていますが、半分は異世界モノみたいな感じでもありますね。そういう雰囲気を上手く出せれば何よりです。何よりも今井さんの希望を叶えてあげたいなっていう考えを念頭に置いています。最初の1話が60分放送なので、間違いなく見応えはバッチリですよ。
──今井先生は、実際に1話のシナリオをお読みになられて、アニメが2話分のボリュームになったことは納得されましたか?
松倉原作第1話のここまで行かないとアニメの1話にならないよね、っていうのが明確にあるので、じゃあそこまでやるのは仕方ないなとおっしゃっていました。アニメの1話冒頭は、特に良く髙山さんがアレンジされているんですよ。今井先生からはアニメにするにあたって脚色もOKをいただいていたのですが、1話に関しては冒頭を膨らませているくらいです。
──シリーズ構成の髙山さんも原作を読まれたうえで引き受けることを決めたのですか?
松倉そうです。あまり深くは聞いていないですが、基本的には気に入らない仕事は断っちゃう方なので。そういう部分もあって、僕らより上の世代の人は特に好きなテイストだと思っているんですよね。
動く一条さんのアクションを見れるのはアニメだけですよ(笑)
──映像的な部分でこだわっているところは?
松倉アクションシーンが多いので、そこはちゃんと見せ場にしていきたいですね。原作ファンの皆さん、動く一条さんのアクションを見れるのはアニメだけですよ(笑)。僕は一条さん派なので番外編を作りたいくらいです(笑)。
──松倉さんがプロデュースされているアニメの本数って多いですよね。
松倉昨年は8〜9タイトルくらいですね。比較的目立つタイトルがあるというのもありますが。
──ほとんど松倉さんが見つけた作品ですか?
松倉いや、原作を自分で選ぶ暇がないので、提案していただいた作品が多いです。自分から提案したのは『アリスと蔵六』が久しぶりですね。その前は『青い花』くらいまで遡っちゃうんです。あれも髙山さんを入れたドリームチームでしたね(笑)。
──では最後に、放送を待ち望んでいるファンの皆さんにメッセージをお願いします。
松倉まず原作がすごく良い作品なので、書店に行ってコミックスを手に取ってもらいたいと思います。それからアニメ、という順番でもいいのではないかと。せっかくすごくいい原作をアニメ化させていただけるので、それがもっとよい作品になるように、頑張って大人の事情を切り崩しつつアニメにしています(笑)。期待していてください。
の付いたインタビューはV-STORAGE online限定の記事です。
PROFILE
松倉友二(まつくらゆうじ)
2月27日生まれ。J.C.STAFF執行役員制作本部長、プロデューサー。異例といえる20代の若さでプロデューサーを任され、数々のアニメに携わる。『とある魔術の禁書目録』や『ふらいんぐうぃっち』など近年人気を博した作品まで、多数のヒット作をプロデュースしている。
<放送情報>
■TOKYO MX:2017年4月2日より毎週日曜22時30分〜
■KBS京都:2017年4月2日より毎週日曜23時〜
■サンテレビ:2017年4月2日より毎週日曜24時30分〜
■BS11:2017年4月4日より毎週火曜24時〜
■AT-X:2017年4月7日より毎週金曜22時〜(リピート放送:毎週月曜14時〜/毎週木曜6時〜)
※放送日時は変更となる可能性がございます。
アリスと蔵六 公式サイト
©今井哲也/徳間書店・「アリスと蔵六」製作委員会