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エウレカプレス 第1弾 藤津亮太が語る 「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリーション1」 3つの魅どころ

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TVシリーズから12年、ゼロから始まるレントンとエウレカの新たな物語が劇場版3部作として、9月16日、ついに『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』が全国ロードショーとなる。 TV放送時から『エウレカセブン』シリーズが持つ魅力はそのままに、『ハイエボ』がもたらす新しい『エウレカセブン』の魅どころを3つの観点からコンパクトに解説! これを読めば『ハイエボ』が観たくなる!

[魅どころ1]
『ハイエボリューション1』では
「サマー・オブ・ラブ」が完全新作映像で描かれる。

TVシリーズでは歴史上の出来事として称され、詳細は描かれることのなかった「サマー・オブ・ラブ」は主人公レントンが4歳の時に起きた、スカブコーラルと人類の戦いが起こした世界の危機。レントンの父アドロック・サーストンは、この事件を止めるために命を落とし、英雄として讃えられることになった。この大事件の現場で何が起こっていたのか。
それが本作冒頭でかなりの時間を割いて描写される。
きっかけは人類が、地球の大地を覆う珊瑚状の謎の存在スカブコーラルを殲滅するために行った大作戦だった。スカブコーラルも身を守るための抗体コーラリアンを発生させ、人型機動兵器KLFなど人類側の攻撃に対抗する。
だが作戦は予想外の方向へと進み「サマー・オブ・ラブ」が発生する――。
抗体コーラリアンとKLFが繰り広げる圧倒的な空中戦。飛び交うビームやミサイル。
手描きで繰り広げられる圧巻の戦闘シーンは、見応え十分だ。
そしてその戦闘シーンと並行して進むのがアドロックを中心とするドラマ。後に英雄と呼ばれる男は、本当は何を考えていたのか。残していく息子レントンに、人型コーラリアン・エウレカにどんな思いを抱いていて、世界を救おうとしたのか。
人類とスカブコーラルの関係という大状況。レントンという少年を取り巻く小状況。この2つの側面において「物語の原点」が描かれるのが映画冒頭の「サマー・オブ・ラブ」のシーンなのである。第二部に繋がる描写も多そうなので、細部まで注目して楽しみたいところ。
なおTVシリーズでは登場してもひとこともセリフを発しなかったアドロックだが、この冒頭ではついにセリフを喋る。それを演じるのがさまざまなヒーロー=英雄を演じてきた古谷徹というのも見逃せないポイントだ。

[魅どころ2]
『ハイエボリューション1』は
主人公レントンが自分の行く道を見定める物語。

世界を救った英雄アドロックの息子というプレッシャー。優しいけれど、なかなか打ち解けることのできない養父母のチャールズとレイ。そして自分の目の前に現れた人型コーラリアン、エウレカとの出会い。映画では14歳のレントンが背負ったり、悩んでいることが、本人のモノローグを軸に綴られていく。
ここで注目したいのはフレームサイズ。
レントンが「これまでの成り行き」を語るシーンは、フレームサイズがTVシリーズの時と同じ4:3になっているのだ。これらのシーンはTVシリーズの素材を利用し再撮影を行ったシーンでもあるが、決して素材の都合で選ばれたフレームサイズではない。4:3の上下をカットしてビスタサイズにした映画というのは決して珍しいものではない。つまりこの4:3は意図的に選ばれたフレームサイズなのだ。
思い返せば、京田知己総監督は監督デビュー作の映画『ラーゼフォン 多元変奏曲』でも作中でフレームサイズを変化させることに意味を込めていた。そう考えると、本作で4:3が使われた部分は、レントンのモノローグと組み合わせることで「主観」「個人的な思い」に寄り添ったシーンなのではないかととらえることもできる。
もしそうなら『ハイエボリューション2』以降にも4:3の画面が意味を持って登場するのではないか? そんな今後の予想も含め本作の語り口に注目したい。

[魅どころ3]
映画を構成する要素に対応するように“音楽”が存在する

本作の主題歌は尾崎裕哉の歌う『Glory Days』。本作のために、尾崎さん、いしわたり淳治さん、蔦谷好位置さんの手によって書き下ろされた楽曲だ。
尾崎さんが主題歌を担当するにあたって発表したコメントには「僕はレントンと境遇が似ているところがあって、レントンの『父親に会いたい』という気持ちを想像しながら作りました。」というくだりがある。歌詞を聞くと確かに、尾崎さんが自分自身の体験を手がかりに、アドロックとレントンの関係を想像しながら作った曲であることがよくわかる。
そんな『Glory Days』はのびのびと開放的な曲で、レントンの少年時代の終わりを明るく締めくくっている。
『エウレカセブン』は劇中に登場する専門用語が音楽用語から採用されていることからもわかる通り、音楽とは縁の深いタイトルだ。当然ながら『ハイエボリューション1』も音楽的に聞きどころが多い。本作では映画を構成する要素に対応するように主題歌・挿入曲が使われている。
先述したとおり、レントンの心を代弁する『Glory Days』が主題歌として採用されている。本編中では、TVシリーズでもチャールズのテーマとして使われたHIROSHI WATANABEの『GET IT BY YOUR HANDS』の新バージョンが流れ、さらに『エウレカセブン』の作品世界を象徴するともいっていいHardfloor『Acperience7』が冒頭の「サマー・オブ・ラブ」のシーンを飾っている。
3つの楽曲がそれぞれの“切り口”で『ハイエボリューション1』を表現する一方で、TVシリーズから関わる作曲家・佐藤直紀の劇伴が映画全体に情緒とスケール感を与えている。
音楽という観点でも、非常に楽しめる要素が多いのが『ハイエボリューション1』なのだ。

PROFILE

藤津亮太(ふじつりょうた)
●アニメ評論家。各種媒体でアニメについて執筆中。主な著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)、『声優語~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル』(一迅社)などがある。


<公開情報>
9月16日より全国ロードショー

交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション 公式サイト

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