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エウレカプレス 第3弾 レントン役 三瓶由布子 インタビュー
アフレコ時「脳みその一部をフル稼働した感じがした」と語る三瓶由布子さん。
新たな物語を主人公・レントンといっしょに最前線で進む三瓶さんに、『ハイエボリューション』の見どころをうかがった。
共に成長したキャラクターだからこそ再びゼロから始めるのは難しかった
――『交響詩篇エウレカセブン』(以下TVシリーズ)TV放送から12年。『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(以下『ハイエボ』)で再びレントンを演じられることについての心境をお聞かせください。
TV放送から12年ってすごいですよね…十二支が一周していますから(笑)。なかなか無い経験をさせていただいているなと思います。確かにびっくりした気持ちもありましたが、それ以上にありがたいなという気持ちの方が大きかったですね。映画『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』(以下『ポケットが虹でいっぱい』)であったり、『エウレカセブンAO』(以下『AO』)であったり、なにかしらの形で『エウレカセブン』シリーズをいつも近くに感じていたので、すごく懐かしいという感覚はないんです。今でもこの作品は皆さんに求めてもらっているんだなと思うと本当に、感謝の気持ちが大きかったです。
――ご自身の中で、TVシリーズの最終回を迎えて物語が完結した感覚はなかったですか?
TVシリーズの最終回でレントンとエウレカの物語の結末は観られたかなと思っています。ただ、やっぱり“その先”を想像させるような終わり方になっているので、最終回を終えたから彼らの物語が完結したのかというと、そういうことでもないのかなと感じていました。どこか別の世界で生きているんだろうな、という感じでしょうか? でもそれを言うと、全てのキャラクターがそうなるのかなって。作品の中で死を迎えない限りは、彼らの人生は続いていくと思っています。
――台本を読んだときの感想をお願いします。
まず、今回はどう来るんだろう?とドキドキしていました。TVシリーズと『ハイエボ』の間に『ポケットが虹でいっぱい』や『AO』があるので、そういうところも影響してくるのかな、とか。蓋を開けてみるまではどうなるのか分からない部分が多かったのが本音ですね。実際に読んでみてですが、まぁこれは大変だなぁと思いましたね(笑)。現場でアフレコが始まったら、その気持ちがさらに強まりました。
――アフレコはいかがでしたか?
改めて、劇場版なんだっていう緊張感がありました。肩に力の入る緊張感ではなく、良い作品を作ろうという緊張感に包まれていました。あと、小杉十郎太さん(チャールズ・ビームス役)と久川綾さん(レイ・ビームス役)が現場の雰囲気を優しくしてくれました。でも現場からは、その日で録り切ろうという気合いを感じて、最後の方はちょっと意識が朦朧とするくらいハードでしたね(笑)。
――現場の壮絶さが伝わってきます(笑)。
そうですね。前半…最初の2時間くらいは出番の関係で心穏やかでした。そこから先はノンストップという感じで…。みんなでお弁当を選ぶのは楽しかったです、そこまでの記憶はあります(笑)。そこから先の記憶が曖昧です。50話で1年間を駆け抜けるのとは違う大変さがありました。次はこのハードな役目が誰に回るのかな(笑)。
――アフレコはどのようなところが大変でしたか?
単純に、まず体力が必要でした。あと、気持ちを切り替える処理能力というか(笑)。今回、レントンと誰かの会話に加えて、モノローグがたくさんもりこまれているので。会話とモノローグでは、演じるのに切り替えが必要でした。
あと、一度TVシリーズで演じたシーンがあると、演じたことがあるっていう気持ちと、新しく演じ直している気持ちとがせめぎ合ったりして、ひとつひとつ気持ちを整理しながら役に入り込みました。でも、今回新たに作品が再構築されたことによって、レントンの設定もTVシリーズの時とは違うものになっています。TVシリーズにあったシーンでも、言い方や距離感が違ったりして、覚えているのに「初めて演じる」っていう感覚になりました。そういう部分で、レントンの感情を拾ってお芝居するのが、一度は最後まで演じたからこそ難しかったです。聞き比べていただくと、きっと違うなって感じてくださる箇所がいっぱいあると思います。脳みその一部をフル稼働した感じでした(笑)。
――TVシリーズ当時と、演じ方は違ったのでしょうか?
全然違いましたね。TVシリーズは物語の進行に合わせてレントンの感情を逐一拾うことができました。制作サイドの皆さんもすごく気を遣ってくださっていて、なるべく先の展開は教えないようにしてくださったんです。でも今回はTVシリーズの結末を知っている上で演じる事の大変さもあるし、モノローグでしっかりレントンの気持ちに寄り添わなくていけないところもあり…。レントンの生い立ちも違うので、物事や人への感じ方も多少変わってくるのかなというところを、改めて考えさせられました。そんなレントンは、同じシーンでも、TVシリーズよりちょっと大人っぽくなったかな、と感じています。レントンもそうですが、私の中の時間が経ったのもあるのかなという気はしています。『ハイエボ』のアフレコの時、京田(知己)さんと若林(和弘)さんには「ちょっと暗すぎる」って言われたんです。(レントンが)大人っぽすぎるというか、暗い、重いっていうふうに言われて。それは多分、私の中のレントンがTVシリーズで一度物語の最後まで辿りついたからだと思います。あ、これじゃダメだなと、“ゼロから旅立つ少年”をちゃんと作り直しました。
――レントンはこれまでで一番長く付き合われているキャラクターですね。
これだけ定期的に会う機会があるという意味ではそうかもしれないですね。当時19歳で、声優のお仕事を始めて5年目くらいだったんですけど、初めて主役を担当した作品だったので、当時の1話目の収録ではすごく緊張したのを覚えています。「三瓶ちゃんすっごい緊張してたよね。なんで?」って今でも名塚さんに言われるんです(笑)
――レントンとは、三瓶さんにとってどんな存在ですか?
昔からの友達という感じですかね(笑)。TVシリーズで演じていたときは、とにかくレントンと一緒になって必死に前に進む、といった感じでした。一度ゴールを迎えて、でも今、またレントンと一緒に新しいスタートラインに立っているので、よりリアルに彼のことを感じている気がします。それは自分が成長したからこそ、拾ってあげられる部分が多くなったからかなと。自分が大人になった分、彼が感じた痛い部分も昔より分かってあげられるんです。けど、それを知っているように演じてはいけないので、一旦忘れるという作業が難しいですけどね(笑)。
――改めて、TVシリーズを観ると、とてもドラマチックな物語が展開されていましたよね。
いやぁそうですよ。だってあんなお話を、朝7時から放送していたっていうところがもう珍しいというか変わっているというか(笑)。『ハイエボ』の公開が決まってから、現場の若い20代の子たちが「昔観てました~」とか「僕の青春でした!」とか言ってくださったりしました。「『エウレカセブン』を観てアニメ制作の現場に入りました」というスタッフさんもいらっしゃって。「よく朝7時から観てたね!」みたいな(笑)。ああいう形で1年間、オリジナル作品の主人公を演じさせてもらえたことが本当にありがたかったですね。
――また、この作品に“音楽”はとても大きな要素だったと思います。
京田さんたちがすごくこだわっているのが伝わってきますよね。『エウレカセブン』という作品の中でも、音楽という部分は際立っているように感じます。色彩やロボットのデザインにも通じるんですが、全部がスタイリッシュだと思うんです。レントンとエウレカが乗るニルヴァーシュも最初は「…ボードに乗るロボット?」ってどんな動きなんだろうと思っていました。ロボット同士が殴り合うわけでもなく、剣を持って振り回すわけでもなく。動きがスマートというか、スポーツをしているような。それに音楽が合わさるとよりスタイリッシュに見えて、ロボットなのに爽やかというか(笑)だからロボットアニメとしてもすごく珍しいなって思った人が多いんじゃないでしょうか。それは視聴者が惹かれたことの一部だと思うんです。観ている世代の人たちに何か通じるところがあったんだろうなと感じますね。
――10年以上経ってからTVシリーズを観ても、全体的に全く古びていない感じがしますよね。
絵も音楽もそうですし、いわゆる子供向けのアニメとか、正義と悪とかっていうことを描いているわけじゃないっていうのが、そう感じさせてくれるポイントでしょうか。いわゆるボーイ・ミーツ・ガールな作品ですが、レントンの片想いが、甘いだけじゃないというのも共感できる部分なのかなと思います。良い意味で普遍的な作品に作ろうとしたわけではないと思うんですけど、結果的にそうなっているのがすごいですよね。
――演じられた側としてもいちばん印象に残っているシーン、もしくはエピソードはありますか?
いっぱいあって難しいですね。当然1話のエウレカとの出会いは忘れられません。今回の映画の中に入っているシーンもすごく印象深くって。レイとチャールズとのシーンは親を知らないレントンが初めて温かさを感じるすごく重要なシーンですし。TVシリーズなら、最終回の月にハートを描くのもずいぶん大胆なことをするなぁと印象深いシーンで…シリーズを通して考えると難しいですね(笑)。あとは、レントンの恋心を感じさせるシーンも好きです。エウレカが初めて涙を流したシーン(9話「ペーパームーン・シャイン」)もすごく印象的で。好きな女の子の涙を初めて見たときの、男の子の表情や気持ちってこういう感じなのかな、って思わせられるんです。どうしたらいいか分からないけど守ってあげたいと思った彼を演じて、ああこれはレントン完全に落ちたな、と思いましたね(笑)
――この記事の読者は、『ハイエボ』がどういう作品になるのか楽しみにしていると思います。三瓶さんご自身は、どういったところに期待して欲しいでしょうか?
『エウレカセブン』ファンの期待を裏切らないような、でも良い意味で期待を裏切られる、そんな作品になっているんじゃないかなと思います。私はレントンと一緒に汗水を垂らしましたので、その熱を少しでも感じていただければ嬉しいです。TVシリーズのファンの方はもちろんですが、「『エウレカセブン』とはなんぞや?」という方にも観ていただきたいですね! 声、音楽、絵、物語、全部がミックスされた『ハイエボ』が、どんな色の作品になってくるのかというのを、私も1人の視聴者としてすごく楽しみにしています。皆さんにも、ぜひ劇場の大きなスクリーンで動く彼らを堪能していただいて、これが新たな始まりなんだと感じて欲しいです。ぜひ『エウレカセブン』を応援しに、そしてレントンたちを見守りに、劇場へ足を運んでいただけたら嬉しいなと思っていますので、よろしくお願いします。
PROFILE
三瓶由布子(さんぺいゆうこ)
●2月28日生まれ、東京都出身。アクセルワン所属。主な代表作に『Yes!プリキュア5』夢原のぞみ(キュアドリーム)や、『つぐもも』加賀見かずや、『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』うずまきボルトなどがある。『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』で、再び主人公・レントンを演じる。
<公開情報>
9月16日より全国ロードショー
交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション 公式サイト
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