第二章 「地上の星」
―――統合軍パイロット・工藤シンが漂着した南海の孤島、マヤン島の上空。
新型可変戦闘機を駆る統合軍と反統合同盟の両軍は、マヤン島に眠る遺跡をめぐり、激しい戦闘を行っていた。
「ベータ3(スリー)、落ち着けアスカまで飛べるか…」
被弾した部下のパイロットに激を飛ばす、統合軍スカル小隊の隊長、スカル・フォッカーは、戦闘にまだ不慣れなヒヨッコ共の面倒を見ながら、敵機と交戦していた。
…が、目の前で部下のVF-0Aのコクピットが撃ち抜かれる。
暗雲の隙間の太陽を背にフォッカー機に向かい急降下してくる黒い機体が1機。
そのとき、互いの機体に乗るパイロットは、すれ違いざまにハッとする。
「フォッカー!?」
「D・D・イワノフ!」
かつて戦場で幾度となく戦った、歴戦の戦友(ライバル)が、お互いを認識したのだ。
峡谷内を撃ち合いながら、飛行する2機の可変戦闘機VF-0SとSV-51。
ファイター形態からガウォークへと変形し、さらに、バトロイドへと変形しながら、ミサイルをガンポッドで撃ち落し、狭い峡谷を颯爽と駆け抜けてゆく。
しかし、逃げるフォッカー機を銃撃しながら追うイワノフの黒のSV-51の燃料ゲージが赤く点滅してしまう…。
「ちっ、ガス欠か…」
「また、会おう」
コックピット越しにイワノフは笑いながら、フォッカーのVF-0の頭上にある、岩山をガンポッドで破壊し、上空へと去っていった。
その頃、シンはジャングルで怯えながら震えているマオを見つける。
「マオ~、無事か~!」
シンの声に気づき、嬉しそうに叫ぶマオ。
「助けにきてくれたの?」
立ち上がりながら、シンに近づこうとしたそのとき、轟音と共に被弾したVF-0が背後から迫ってくる。
「伏せろ!」
バランスを崩しながら、地表へと不時着するVF-0。そのコックピットから出てきた、負傷したパイロットが爆発で吹き飛ばされる。
「あああ…」
そのとき、シンは、突如、目を見開き、過去の惨劇を想い出す。
反統合同盟の兵士に襲われ自分をかばう父の姿…。
そして、目の前で銃撃を受け、倒れる兄の姿…。
突如、爆発の照り返しを受けながら、シンはVF-0のコックピットに飛び乗り、必死でスロットルレバーを押し込み、ガウォーク形態のVF-0を起こそうとする。
刹那、偶然にも、バランスを保とうと撃ったガンポッドの銃弾が、上空を飛行する敵のSV-51に被弾。シン機に襲い掛かってくる。
そのSV-51に搭乗していたのは、反統合同盟のエースパロットであり、シンのF-14を撃墜したノーラ・ポリャンスキーであった。
冷たい微笑をとともに、シンのVF-0に蹴りを食らわせるノーラ。
銃口がシン機を捉えたとき、味方のVF-0の援護を受け、シンは、一命を取り留めた。
助けに来たのは、フォッカーのVF-0Sであった
「機体を見る姿で、だいたいの腕はわかる」
統合軍の空母アスカに戻ったシンが、VF-0の感触を確かめるようにジッと見つめていたとき、フォッカーが語りかける。
「単座はないんですか?誰かを乗せるの…イヤなんです…もう、誰も」
複座のコックピットを見つめ、つぶやくシン。
ついこの前、自分のバディであるエドガーを亡くしたシンは葛藤していた。
…が、その瞬間。
「ようこそ、アスカへ!」
死んだと思っていたはずのエドガーがシンの目の前にいるではないか?
慢心創意のエドガーの首をいきなり絞めるシン。
「そんなんでオレの後ろに座れるのか?」
シンの顔に少しばかりの笑顔が戻っていた。
「よ~し、貴様らはこれより、スカル小隊に配属。直ちにVF-0への機種転換訓練を行う」
格納庫に並んだVF-0を背にし、2人を挑発するフォッカー。
その言葉にニヤリ頷くシンは、ついに新型可変戦闘機VF-0に乗ることに…。
訓練に明け暮れる日々、可変戦闘機の操縦に未だ慣れず落ち込むシンに、フォッカーは特務を与える。
ヘリ部隊を連れ、再びマヤン島へと言うのだ。
「…ったく、何が特務だ…、自分の彼女の護衛じゃねえか」
ヘリにはアリエスが乗っていた。
表向きにはマヤンの安全を守るということだが、実際は遺跡の調査のため島に来たのだ。
そのとき、法具でVF-0を指しながら、アリエスたちを島から追い出そうとする少女がいた。
「鉄のカドゥン、火のカドゥンを村に入れてはいけない」
風のみちびき手、サラである。
駐留を認められた、アリエスは島の住民の健康のために採血をはじめ、そのことで再びサラと口論になる。
しかし、サラに味方するものは誰ひとりとしていなかった。
反発する妹のマオ、島の掟を捨てようとする島の住民たち。
自分はただ、巫女として掟を守ろうとしているだけなのに…分かってもらえないのは何故?
次第に心を揺らし始めるサラは、シンに対しても冷たい口調で言い放つ。
「星を盗むのですか」
シンは島の発電機を修理して電気をつけようとしていた。
「だからって何だよ…電気だって君の妹…マオが欲しがったんだ…、これが地上の星ってヤツさ」
村人や子供たちが歓声を上げる中、寂しくその光景を見つめるサラに、シンはキツイ一言を言い放つ。
「嫌なら目をつむればいい…。好きなだけ暗闇が見えるぜ」
「あなたの心のように?」
サラの問いかけに、シンはハッとなり、キツイ顔で睨みつける。
その光景を、片隅でマオが悲しげに見つめていた。