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【映画クレヨンしんちゃんなんでも図鑑】第7回「西部劇の世界」[しんちゃん通信]

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1993年に上映が始まった『映画クレヨンしんちゃん』は、今年30周年! これまでDVDでのみ発売されてきた旧作映画19作品のブルーレイ化プロジェクトが始動! 2022年12月から約1年間をかけて隔月で全19作を発売予定です。「映画クレヨンしんちゃんなんでも図鑑」第7回は、映画クレヨンしんちゃん 第12作『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』(ブルーレイ6月28日発売)の世界観やキャラクターのモチーフとなっている「西部劇の世界」を紹介!
※紹介文には本編のネタバレを含みます。

【映画クレヨンしんちゃん 第12作】
映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ

西部劇の世界

本作の大きなモチーフになっているのが「西部劇の世界」。「夕陽の~」というタイトルも『夕陽のガンマン』(65年)、『夕陽の用心棒』(65年)、『続・夕陽のガンマン』(66年)など、西部劇によく使われるフレーズから採られたものだ。
西部劇とは、荒野でカウボーイやガンマンや悪党たちが戦いを繰り広げる映画の一ジャンル。西部開拓時代を舞台にした西部劇がアメリカで盛んに作られた一方、アクションや暴力描写が過激な「マカロニ・ウェスタン」と呼ばれるイタリアの西部劇もあった。ちなみに先に挙げた3作品はいずれもマカロニ・ウェスタンである。

カスカベ防衛隊と野原一家が、廃墟になっていた映画館「カスカベ座」のスクリーンを通して迷い込んだのは、西部劇に出てくるような古びた町・ジャスティスシティ。カウボーイたちが馬で駆け回り、酒場では荒くれ者たちが酒をあおる。ここは西部劇のような映画の世界だった。記憶をなくした風間くんが扮する保安官、ボーちゃんのアメリカ原住民(当時はインディアンと呼ばれていた)、ネネちゃんの勝ち気なお嬢様、マサオくんの農夫は、いずれも西部劇によく登場するキャラクターだ。

町を支配するのは、冷酷無比な知事のジャスティス・ラブ。見た目は、西部劇のスター、ジョン・ウェインそっくり。演じる小林清志は無数の西部劇で吹替を行ってきた。しんのすけに「変な顔」と言われるクラウスの元ネタは、マカロニ・ウェスタンに悪役として出演していたクラウス・キンスキー。
アンチ・ジャスティスとして、しんのすけとともに戦うガンマンのクリス、オライリー、ヴィン、リー、ハリー・ラック、ブリット、チコの7人は、『荒野の七人』(60年)の登場人物そのままの顔と名前が与えられている。クリス役の小林修、オライリー役の大塚周夫、ヴィン役の内海賢二は『荒野の七人』のオリジナル吹替キャストである。冒頭、たかおにで遊んでいる風間くんが「農作物ばかりを狙う泥棒集団め!」と言うのも、村の収穫物を狙う盗賊団と戦う『荒野の七人』を思い起こさせる。

ジャスティス・ラブの配下、ベンとオーツの兄弟は『ワイルドバンチ』(69年)に登場するゴーチ兄弟を演じたウォーレン・オーツとベン・ジョンソンから採られているのだろう。クライマックスで「ファイヤー!」というかけ声を忘れたカスカベ防衛隊が叫んだ「ペキンパー!」は同作の監督サム・ペキンパーのこと。また、ジャスティスシティがずっと真昼なのは『真昼の決闘』(52年)を連想させる。途中、しんのすけが孤立無援になる展開もよく似ている。

ジャスティス・ラブがジョン・ウェインの見た目なのは、彼が「アメリカの正義」と呼ばれていたからだと考えて間違いない。西部劇で彼が演じてきたのは、拳で人を黙らせるようなタフガイだったが、今となっては時代錯誤的だ。ジョン・ウェイン自身も保守思想の持ち主で愛国主義者だった。
西部劇は70年代を境に制作本数が激減する。「白人=正義、インディアン=悪」としてきた西部劇の価値観が古くなったことなどが背景にある。その一方で、娯楽性の高い西部劇はテレビで繰り返し放送された。本作の監督と脚本を務めた、水島努監督も子供の頃、テレビで西部劇に親しんでいたと振り返っている。
ジャスティス・ラブは自分が映画の登場人物だとわかった上で、映画の世界を終わらせないように人々を抑圧し、あがいていた。これは斜陽になった映画(西部劇)への彼なりの歪んだ「愛」の表れと言えるだろう。

 

<発売情報>


Blu-ray
2023年6月28日発売
税込価格:¥5,280
品番:BCXA-1797

関連記事:『しんちゃん通信』 映画作品ちょこっとレビュー第1回 “友情編”

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