【映画クレヨンしんちゃんなんでも図鑑】第15回「つばき」[しんちゃん通信]
1993年に上映が始まった『映画クレヨンしんちゃん』は、今年30周年! これまでDVDでのみ発売されてきた旧作映画19作品のブルーレイ化プロジェクトが始動! 2022年12月から約1年間をかけて隔月で全19作を発売予定です。「映画クレヨンしんちゃんなんでも図鑑」第15回は、映画クレヨンしんちゃん 第12作『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』(2023年6月28日発売)のヒロイン「つばき」を紹介!
※紹介文には本編のネタバレを含みます。
【映画クレヨンしんちゃん 第12作】
映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ
つばき
西部劇をモチーフにした本作のヒロイン・つばき。映画の中の世界・ジャスティスシティに住んでいる少女で、年齢は中学生程度。性格は大人しく、清楚な雰囲気をまとっている。知事のジャスティス・ラブに拾われて、彼の屋敷で下働きをしていたところ、野原一家と偶然知り合って彼らをかくまった。
初期の『映画クレヨンしんちゃん』にはゲストヒロインの登場が恒例になっていたが、本作のつばきは『ブリブリ王国の秘宝』のルル・ル・ルル、『電撃!ブタのヒヅメ大作戦』のお色気をはじめとする、“しんのすけを助けて戦うお姉さん”とはタイプが大きく異なっている。
もっとも特筆すべきことは、つばきがしんのすけの真剣な恋愛の対象になったことだ。しんのすけがナンパする相手はいつも年上のお姉さんであり、とりわけ大学生のななこには本気で恋をしている。本作でも自分の性格を「おねいさん好き(女子高生以上)」と繰り返し言っており、小学生や中学生は「そんなにロリコンじゃない」と相手にしていない(5歳児なのに)。実際、しんのすけは好意を寄せてくれる酢乙女(すおとめ)あいや、年が近いスノモノ・レモン(『嵐を呼ぶ 黄金のスパイ大作戦』)、貫庭玉(ぬばたま)サキ(『爆睡!ユメミーワールド大突撃』)にも恋愛感情を抱くことはなかった。
一方、つばきには初対面で「つばきちゃんて、よく見るとけっこーかわいいゾ」と好意を抱いていたようだ。ボーちゃんに「ほれたね」と指摘されると即座に否定していたが、カスカベボーイズに変身して活躍したことを「ものすごーくカッコよかった」と褒められると、身悶えしながら喜んで「春日部に帰ったら結婚を前提にオラと……」と告白。「私なんかでいいの?」と言われると顔を赤らめながら何度も頷いている。しんのすけの恋愛感情は本物だ。
しんのすけはつばきと一緒に春日部に帰ることを夢見ていたが、春日部の映画館・カスカベ座に戻ったとき、そこにつばきの姿はなかった。喜びに沸く一同の中で、必死につばきの姿を探すしんのすけの姿が胸を衝く。しんのすけの恋は悲恋に終わった。
水島努監督は本作が「つばきとしんのすけの話なんですよね」と振り返っている。当初はそれほど存在感のあるヒロインではなかったが、コンテを描いていくうちにどんどんひとり歩きしていって、最終的にはほぼ主役級になったという。ラストシーンは最初から決めていたそうで、「エイドリアンが見つからないロッキーみたいなことをやりたかった」と打ち明けている。
つばきは「映画の中だけの存在」だった。幼い頃、テレビや映画の中の存在が好きになってしまい、やがてそれがかなわぬ思いだと気づいた経験のある人は案外少なくないと思う。しんのすけはせつない思いを経験したが、それも大人になるための通り道なのかもしれない。大きくなってからも、たまにエンドタイトルのような夢を見るんじゃないだろうか。
【設定】つばき<キャラクターデザイン:末吉裕一郎>
出典『クレヨンしんちゃん大全』(双葉社)
<発売情報>
Blu-ray
発売日:2023年6月28日
税込価格:¥5,280
品番:BCXA-1797
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©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2004