バンダイナムコフィルムワークスによる映像レーベル「EMOTION」が40周年を迎えたことを記念して、「EMOTION 40th Anniversary Program」と題し、レーベルを代表する歴代作品の記念上映や、1話無料配信、特別番組の配信などの企画を実施しております。
このたび、2月9日(木)、新宿ピカデリーにて開催された『ダロス』40周年記念上映&トークショーのイベントレポート&写真が公開となりました。
「EMOTION 40th Anniversary Program『ダロス』40周年記念上映&トークショー オフィシャルレポート
バンダイナムコフィルムワークスの映像レーベル「EMOTION」の40周年記念企画「EMOTION 40th Anniversary Program」の一環として、世界初のOVA『ダロス』の新規HDマスターによる40周年記念上映と豪華ゲストによるトークショーが、2023年2月9日(木)、新宿ピカデリーにて開催された。本編上映後のトークショーには脚本・監督の押井守氏、スペシャルゲストとしてゲームクリエイターの小島秀夫氏が登壇。かねてより親交のある二人が、『ダロス』の制作秘話やOVAメディアなどについて語り合い、終始温かな笑いに包まれたトークショーの模様をお届けする。
トップクリエイターによる夢のトークショー開幕!
本編上映後、押井監督と小島監督が大きな拍手で場内に迎えられ、世界的なクリエイター同士による豪華トークショーがスタート! 小島監督は「レボリューション(革命)ではなくて、サボタージュ(労働争議)を描いていることに意味がある。薬莢が落ちる場面、マグチェンジ、弾丸を綺麗に拭いているところなどに押井監督らしさを感じました」とファンとしての鋭い目線で作品の感想を述べた。押井監督は「昼前にはスタジオに入って『うる星やつら』のTVシリーズ、夕方から夜まで『ダロス』、別のスタジオに行って深夜から朝まで『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(以下『ビューティフル・ドリーマー』)をやっていて」と人生で一番忙しかったという当時を振り返った。
師匠との“共同監督”体制について。そして『ダロス』の参考になった作品とは?
押井監督が師匠と仰ぐ鳥海永行監督との共同監督体制について、押井監督は、「半分ずつ話数を担当することになって、自分の持ち話数に関しては脚本も絵コンテも演出も全部担当した。お互いの担当話数がどうなっているか全く知らずにコンテを切ったから、初めて相手の作品を観た時にそういう話だったのかと驚いた」と語り、本作の特殊な制作体制を明らかにした。さらに、押井監督は参考作として、ジョン・W・キャンベルJr.のSF小説『月は地獄だ!』、ジッロ・ポンテコルヴォ監督の映画『アルジェの戦い』を挙げ、月面の階級闘争のイメージを語った。その話を受けて、小島監督は「ああいう話は反転して、新しい政府を作って終わるんですけど、『ダロス』では第1世代は結局戻って働くじゃないですか。革命が起きないことにビックリしました」と作品の本質に迫る感想を述べた。
謎に包まれていた“ダロス”の設定が遂に語られる!
そして、「(作中に登場する)“ダロス”って何だったんでしょうか?」と劇場のファンも気になっていた質問に突然切り込む小島監督。「それを言われると辛い(笑)」と返しつつ、「当初は(構想されていたシリーズの)真ん中の美味しい4話だけを作って、作品として成功したら、第1世代から続く大河ドラマとして月面を舞台にした独立闘争を描こうと思っていた」と押井監督。また、本作が世界初となったOVAについて「テレビではできないクオリティと尖がった企画をやろうと考えていて。当時こういうものにお金を使うのは若いお兄ちゃんだから、メカと戦闘シーン、格好良いキャラと可愛い女の子を出そうと最初に議論した」と、当時の事情を明かした。さらに押井監督の口から「ダロスは地球からは見えない月の裏側にあって、外宇宙に顔が向いている。オズマ計画のように、ここに人類がいるぞと外宇宙に向けてメッセージを送るために、第1世代の開拓者たちが作った」と語られ、謎に包まれていた設定が明らかになった。そこから世代間のギャップや『機動戦士ガンダム』のニュータイプとの類似性などに話は広がり、「『アルジェの戦い』の話を聞いて納得しましたけど、それを独立戦争ではなく労働争議にするのが凄いですよね」と小島監督が指摘すると、「月面の独立戦争を謳ってはいるんだけど、真っ向から宇宙空間での戦いを描いてしまうとそれこそ『ガンダム』になってしまうので、植民都市の内部で都市ゲリラが暴れる形に捻った」と答える押井監督。その後も、家族というテーマを好む鳥海監督のことや、当時のパッケージの価格など、時折笑いを交えながら、次々と繰り広げられる二人の深いトークに会場のファンも益々魅了されていく!
押井監督とOVAの深い関わりとは!?
話はいつの間にか押井監督作品の『トワイライトQ 迷宮物件 FILE538』(以下『迷宮物件』)について広がり、小島監督は「『迷宮物件』のおかげで押井監督作品を知ることができましたから。こんなアニメがあっていいのかと、レンタルを3回くらい借りました」と作品から受けた衝撃を言葉にした。そして、再び話は『ダロス』に戻り、なかなか理解してもらえない細かな銃器描写へのこだわり、押井監督は特に大量の薬莢が階段を落ちていくシーンについて解説し、執念のカットが生まれた背景が明らかになった。その後もOVAが日本のアニメを海外に広めた1つの要因になったこと、アニメの視聴者層を広げたことなど、二人の多層な視点でその功績を分析しながら、押井監督は「『ビューティフル・ドリーマー』であれだけのことをやってもお客さんが減らなかったから、何をやってもいいんだと思い込んで『天使のたまご』を作ったら全然売れなくて(笑)。3年後にまた懲りずに『迷宮物件』をやって、今度はさすがにもうダメかと思ったけど、監督生命の首を繋げたのはOVAの『機動警察パトレイバー』だった」とキャリアを振り返り、OVAと自身の関係についても語ってくれた。
40年の時を経て、愛され続ける名作『ダロス』!
マニアックかつ貴重な話題が幾つも飛び出したトークショーも終わりが近付き、最後は会場のファンへのメッセージで締める。「押井さんが40年経ってこんなイベントができるのは作り手として幸せなことだと思います。僕も楽しみました」と小島監督。続いて押井監督は「私も若くてイケイケだったので、後先考えずにやりたいことをやって、その良さも悪さも全部形として残っている作品だと思います。本来はここに一緒に立つべき師匠が亡くなってしまっていることが残念ですが、私も師匠が亡くなった歳を越えてしまった。まだ自分より上で頑張っている監督が3人くらいいるので、あと10年は何とか生き延びて頑張ろうかな(笑)」と話した。最後は「今度は『迷宮物件』40周年やりましょう!」と言う小島監督に対して、「(それより)『御先祖様万々歳!』40周年で(笑)」と押井監督が返し、次回のイベントへの期待をのぞかせつつ、『ダロス』40周年イベントは幕を閉じた。
<上映会概要>
EMOTION 40th Anniversary Program『ダロス』40周年記念上映&トークショー
日程:2023年2月9日(木)
会場:新宿ピカデリー(シアター3)
登壇者:押井守(脚本・監督)、小島秀夫(特別ゲスト/ゲームクリエイター)
©1990 バンダイビジュアル
▼YouTube公式チャンネル「EMOTION Label Channel」(エモチャン)
https://www.youtube.com/@EMOTIONLabelChannel/
▼EMOTIONレーベル40周年記念サイト
https://v-storage.jp/sp-site/emotion40th/
▼『V-STORAGE』公式Twitter
@VSTORAGE