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『ゼーガペインSTA』下田正美(監督)×松村圭一(プロデューサー)対談[舞浜サーバー ログファイル]

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2024年8月16日にテレビシリーズ『ゼーガペイン』からおよそ18年ぶりの新作として劇場公開された『ゼーガペインSTA』。本作のBlu-rayが12月25日(水)に発売されることを記念して、下田正美監督と、『ゼーガペインADP』に続き本作の制作を務める松村圭一プロデューサーの対談を企画! 制作秘話やお2人が『ゼーガペイン』にかける想い、そしてこれからの『ゼーガペイン』についてたっぷり語っていただいた。(※インタビュー内容は本編のネタバレに関する内容を含んでおります。)

――2024年8月に劇場公開された『ゼーガペインSTA』(以下『STA』)は、テレビシリーズから約18年、『ゼーガペインADP』(以下『ADP』)からは約8年を経て制作された待望の新作続編となりました。2022年には遊技機『パチスロ ゼーガペイン2』の稼働もありましたが、『STA』の制作が決定したきっかけは何だったのでしょうか?

下田順を追って言いますと、原作者(伊東岳彦氏)も『ゼーガペイン』の世界観を用いた新作のアイデアがいろいろと貯まっていたところに遊技機第2弾の話が持ち上がって。先方が「新しい要素が欲しい」とおっしゃられたので、そこで企画がかみあったわけですね。2013年頃、当時『ADP』を制作している過程で遊技機第2弾も同時並行していたわけですが、本来は『ADP』公開から間を置かず、遊技機に使用した映像をベースに『STA』を発表するというつもりだったんです。ただ、色々諸事情でその流れをうまく実現できなくて……(苦笑)。

松村コロナ禍とか重なってしまいましたのでね。残念ながら……。

下田そう、だから本当はもっと早い段階で作品としてカタチにする予定だったものの、かなり時間が経ってからのお届けとなってしまいました。本当は10周年プロジェクトの『ADP』で興奮冷めやらずの頃に公開できると良かったのですが。

松村結果的に20周年も目前になりましたね(笑)。時間はかかってしまいましたが、こうして形にできたのは良かったと思います。

下田逆にもう1年ぐらい待った方が良かったですかね(笑)。話を戻しますが、通常は遊技機だと本編の内容を変えたり、新しくしたりすることは滅多にないと思います。『パチスロ ゼーガペイン2』はまるっきり新作にするという画期的なものでした。新しい、パワーアップしたものが欲しかった遊技機側と、遊技機を先行して開発していたおかげで『STA』を作れた我々。タッグを組めたことが非常に幸運でした。

――そういった経緯があったのですね……。新しい要素と言えば、『パチスロ ゼーガペイン2』、そして『STA』から登場した「オルタモーダ」という新たな陣営が印象的でした。

下田たぶん造語なのですが、原作者は「多岐軸世界編」という言葉を使っていて。中心となった基軸、要するにゼーガの世界をもっと多方面に広げていきたいと考えているんです。その一篇としてキョウやシズノ、リョーコも出てこない、『ゼーガペイン』の世界観ではあるけれどまったく新しいメンバーでの新しい物語を練っていて。「とある街で暮らす少年少女たちが街を侵食してくる謎の敵に、異能力を持って戦う」テレビ1クール分か、OVA6本ぐらいのボリュームで考えていた作品があり、遊技機の制作にあたってその企画をスライドさせて、初めて「オルタモーダ」という名称が生まれました。ですので、言ってしまえば『ゼーガペイン オルタモーダ』という作品から登場人物たちを借りてくるカタチで、『STA』は過去作の良さも新作の良さも両方を兼ね備えた、お祭り映画にしたい、という目標を持って作っていました。

――オルタモーダ編が最終的に「Ver.1(幻体)のキョウVer.1キョウとシズノのその先の物語」として構成されたのは、やはり『ADP』の制作を経たことが大きかったですか?

下田そうですね。企画の根本から話しますと、元々『ADP』はテレビシリーズの総集編 を作ってくださいというのがオーダーでした。でも、ただの総集編を作るのでは面白くな いので、テレビシリーズの絵とループする世界観を利用して、プリクエル(前日譚)にしてもいいですか?と提案して作らせていただきました。

――総集編だと思っていたら見事に騙されました(笑)。

下田それならば、してやったりです(笑)。『ADP』の制作はテレビシリーズ全カットをバラバラにして、それをどう並べたらキョウVer.1の話になるかというのを考えて作っていきました。それはもう果てしない作業で、松村さんにも大変ご迷惑をお掛けして……総集編にしていればこんな苦労はしなかったのにと(笑)。

松村あんな作業量になるはずじゃなかったんですけどね(笑)。使える絵が優先になるので全絵コンテを並べ直す形で、シナリオは監督の中で考えながら、新たに編集すると同時に再構成していく。上がってくるカット数もとんでもない物量でしたね。でもそのおかげで非常に良い、『ゼーガペイン』にしかできない総集編になったのは間違いないです。

下田そこでいったん燃え尽きるかなと思っていたくらいには奮闘したわけですが、少し広げてしまったキョウVer.1の、その先が観たくなってしまったんですよね。閉じたプリクエルにしたくなかったというか。なので、今回『STA』でキョウVer.1の物語は決着をつけられて満足しています。

――『STA』はシズノにとっての救いを描いた作品になったのかなと感じていました。その点はいかがでしょうか?

下田僕自身もそのつもりでした。けれど先日シズノ役の川澄(綾子)さんとお話した際に、「自分はシズノを演じていて、言われるほど救われてないとは思っていない」と。テレビシリーズの中でキョウ(キョウ Ver.2)が記憶を取り戻してくれたからシズノとしては満足していて、その後は記憶をなくした状態だから報われていないとは感じたことがなかったと仰っていまして。演者さんだからこそ主観で語れるシズノの想いに気づかされましたし、驚嘆しました。勉強不足でした(笑)。

――その発想はありませんでした……シズノ役の川澄さんならではの視点ですね。ちなみに……全セレブラントが気になっている、「ミサキ・シズノ」の名前の由来をお聞きしても良いでしょうか?

下田この質問をされるということはおそらく、「ミサキ」はキョウの妹の名前とされる、十凍未沙季から来ている……と思っていらっしゃいますよね?でも実は当初キョウの妹の名前は、脚本の関島眞頼さんのプロットでは「澪(ミオ)」という名前で登場していたんです。それを基に原作者の方でデザインを起こした際に、「未沙季(ミサキ)」と漢字で書かれていて。あぁ、これは最後まで観てくれたファンの皆さんへ作者からのプレゼントなんだなと思ってエンディングでは漢字でクレジットしました。ですが『ADP』本編でのキョウ(キョウ Ver.1)は実は妹の名前を一切呼びかけていないし、キョウVer.2はそもそも妹の名前すら憶えていないので、僕自身の解釈として、キョウは「もしかしたらその名前だったかも?」という程度の記憶しかないです。脚本会議でも話題にはなりましたが「シズノ」という名前も母親由来かもしれないし、憧れの先輩の名前だったのかもしれないし。結局、決定に至る話は最後まで出ませんでした。ここはファンの皆さんに自由に想像していただいた方が、多岐軸世界に膨らむゼーガペインらしくて良いかなと思っています。

――衝撃的なお話でした……。それにしても改めてお話をお伺いすると、キョウVer.1とシズノの物語を描きながら、主要キャラクターの再登場や再集結、新たな要素にも挑戦しつつ懐古も忘れなかった『STA』は、言われてみればお祭り映画という言葉がぴったりですね。

下田狙いが皆様に届いていたら何よりです(笑)。

松村アニメにはやはりスケジュールや本編の尺、予算の問題がありますが、外せない描写ももちろんあり、できる限りのことをやろうとは話していましたね。

下田過度な情報量の物語を長時間、緊張感を持続させるのはお客さんの負担も大きいと思うので、今回は90分のうち最初の20分ほどを初めて見る方向けのレミニセンス編に、70分近くをオルタモーダ編に分割しました。

――前半のレミニセンス編には「回顧録」という意味がありますが、これには初めて『ゼーガペイン』を観る方だけでなく、既存ファンに向けたおさらいの意味も兼ねているかと思います。

下田そうですね、始めに楽曲と共にゆったりと必要な情報を台詞とテロップでおさらいして頂きながら、本編の息をもつかせない、圧倒的な情報量に疑問を感じさせず自然に物語に入り込めるように試みました。たとえばアビスとシンがオルタモーダ編で突然出てこられても訳が分からないと思います。それをレミニセンス編でこういうことがあったよというのを思い出してもらう方が理解しやすいだろうと。

松村オルタモーダ編が67分くらいで、残りが20分少々になることが分かった時点で、最初は「どうするんだろう」とすごく心配していました(笑)。回想パートに何を入れるかという監督メモもすごく細かく、セリフや用語の量もあったので、これをどうやってまとめるのかなと。そうしたらミュージッククリップ仕立てになっていて、その手があったか!とひっくり返りました。

下田松村さんに頂いた『最終回直前特番』のイメージでというお題のおかげです。思い出って音楽と一緒に覚えていることが多いじゃないですか。曲を聴くと思い出すみたいな。レミニセンス編はその感覚を大事にしています。「考えるな、感じろ」ですね (笑)。素敵な楽曲がそろっていて、方向性も決まっていたので楽しんで作りました。

――レミニセンス編とオルタモーダ編の2部構成にするのは当初から想定されていたのでしょうか?

下田最初はレミニセンス編の要素、そこで描いた情報もオルタモーダ編、つまり本編に入れようと思って考えていたんです。でもライターの高山カツヒコさんに入ってもらった段階で、彼の脚本技術、スタイルがあるので、この情報をここに入れると物語が破綻するという部分を調整してもらいました。結果的に僕たちが想定していたレミニセンス編にあたるところは、ぽーんとオミットされたので、ならそれはそれで1つにまとめた形にしよう、ということになったんです。

松村結果的に『ADP』で下田監督が見せてくれたような、『ゼーガペイン』ならではの編集術を今回も発揮してくださったので、レミニセンス編を作った甲斐はありましたね。自分はテレビドラマなどの最終話直前に入る、ダイジェスト版がけっこう好きで。特に観た事のなかったドラマのダイジェストがおもしろく構成されていると引き込まれますよね。細かいところまでは分からないけれど、見せ場に惹かれる。そんな感じを出せないかな、と下田監督と話していました。想像を大きく超えられましたが(笑)。

――やはり、他にも泣く泣く削った描写はありますか?

下田いくつかありますね。例えばオペレーターのミカサ・タモツ君に関するシーン。ラストシーンでの彼に驚いた人も多いと思いますが、本当は彼が夏の舞浜でツクルナと接触するシーンがありました。でもキョウVer.1の物語に特化して考えると、ノイズにしかならなかった。高山さんも無理して脚本に入れてくれたんですが、この子はこの後にまた描かれることがあるかもなと思うので、結局削ってしまいました。どこかで描けると良いのですが。ツクルナも、本来の企画ではオルタモーダ側の人工幻体なのでシズノと共鳴しあう部分があっての行動ですが、『STA』ではハルから分裂した一つの人格という立場なので今回は少し存在が分かりにくいです。

松村元々遊技機の方で13本のシナリオが出来ていて、それを『STA』として映像化するにあたって普通に繋げればある程度の流れは完成していたんです。だからオミットしたところよりは、明確に足りない部分を補足した部分の方が多いかもしれません。

下田実はそうですね(笑)。

松村最初の方でシズノとキョウが舞浜でバイクに乗るシーンや、オルタモーダが勢ぞろいして戦うシーン、最後のバトルで2人のキョウがそろった時にどうやり取りするのか、あとはラストシーンですね。大きな追加でいうとこのあたりでしょうか。新規作画パートなどは物量に制限もあったので、そこを監督がどのように割り振るのかはかなり苦労されたかと思います。

――オルタモーダ編といえば新要素として「光対装備」を用いた、これまでにない特殊な装備と能力が印象的なバトルも描かれました。

下田これは量子サーバー内での戦闘シーンを作りたいと思ったのがきっかけですね。オルタモーダがサブスタンスシェイドという能力で暴れまわるというイメージが最初にあって、生身……といっても幻体ですが、生身のキョウが戦うには何か武器を持たせないといけないと。キョウ自身がホロニックローダーになるような形で、ミニミニアルティールを呼び出してそれを装甲にして纏うのはどうだろうと、話し合いの中で出てきたものをまとめたものが光対装備ですね。原作者が設定を考えるのが大好きなので、アイデアには全然困りませんでした(笑)。

松村サブスタンスシェイドを出したいというのは遊技機の企画書に最初からありましたね。巨大なモンスターと戦うゲームのような、巨大な武器を持って戦ったり、怪物のようなモンスターが出てきたりするようなイメージのお話をされていて。そんな相手と量子サーバー内で戦うにはどうするのか、と逆算して今の形に落ち着きました。

――キョウというキャラクターには光対装備を用いたバトルが似合っていると感じました。遊技機の演出としても、たしかに効果的な要素かもしれません。

松村でも僕たちも遊技機メーカーさんも途中からストーリー重視になってきて、いつの間にかファンのみなさんが観ても腑に落ちる、満足できるものにしようという方向性に切り替わっていましたね。当たれば当たるほどストーリーが進んでいく、先の世界が観られるという考え方で。

下田メーカーの担当者さんもゼーガという作品を愛してくださって、自然とそうなっていきましたね。作品へのリスペクトを非常に感じられるスタッフさんたちで、とても感謝しています。

――終盤では現実のキョウ(キョウVer.2)がリザレクションシステムを少しずつ完成に向けて作っている様子も描かれており、感動しました。

下田このシーンは入れたいというか、入れないとダメだなという想いを持っていましたね。生身の肉体を持ったキョウが何をしているのかという情報を入れておく必要もありましたし。肉体を持ったからめでたしめでたしでもない世界観ですし、キャラクターの人生はこれからも続いていくので物語を閉じないためにも必要でした。

松村でもある意味で一番触れるのが難しい描写でもありますよね。

下田『ゼーガペイン』の世界が広がり続けているからこそ丁寧に描く必要がありますね。

松村ちなみに。キョウVer.2や舞浜サーバーの人々がどんな生活をしているのか。本編で描かれていない様子を実は設定資料集「REUNION -ZEGAPAIN ARCHIVE PROJECT-」に付属するドラマCDの中で描かれています。脚本は高山カツヒコさんの書き下ろしで、セレブラントの皆様なら必ず楽しめるので、良ければこちらもチェックしてください(笑)。

――『STA』Blu-rayの特装限定版・通常版が12月25日に待望の発売となります。そこで、改めて本作をご覧になられる皆さんに注目してほしい、楽しんでほしい点をぜひ教えてください。

下田特装限定版の特典ディスク1に、『STA』のノンクレジットEDを収録させもらいました。しかも5.1chサウンドで特別収録されており、音が非常に良いです。 映像を楽しむもよし、音楽を楽しむもよし、ぜひ何度も視聴して、もっとゼーガのことを好きになってもらえるといいなと思っています。残念ながら通常版には入っていないので、ぜひぜひ特装限定版でみて頂けると嬉しいです!(笑)

松村エンディングクレジットを見ていただけると分かるのですが、『ゼーガペイン』を支えてくれたスタッフ全員が集合した作り方を実現しています。若いスタッフにもたくさん参加してもらいました。テレビシリーズ当時は小学生だったようなスタッフもいて、時代を感じましたね(笑)。絵にはテレビシリーズの時や『ADP』の時、そして今回と時代があれば描き手の個性もあると思いますが、そこにはこれまで『ゼーガペイン』が築いてきた歴史が表れていることは間違いないです。ぜひ本作の節々から、作品が培ってきたものを味わって、大事にしてもらえると嬉しいです。

下田今回は特にパッケージがカッコよく仕上がっていますよね。

松村このパッケージも若いスタッフに作ってもらっています。仕上がりも今風のモノになっていると思うので、ぜひ手に取って眺めて、大事にしていただけるとありがたいです。一家に一枚(笑)。

――特装限定版には下田監督が参加されたオーディオコメンタリーも特典に入っております。こちらの収録はいかがでしたか?

下田表に出て喋ることに慣れていないので大変ですよ。なぜかNGワードが先に頭に浮かんでしまい脳内で変換するのにいっぱいいっぱい(笑)。でも演じている役者の皆さんたちが、気になったところや謎を拾ってくださって、もちろん聞かれれば答えているので、 視聴者の皆さんが気になっているポイントには意外と触れているのでは……と思います。本編で気になった点があれば、ぜひこちらもチェックしてみてください。

――NEXT ENTANGLEに期待しているファンの皆さんにメッセージをお願いできますでしょうか。

下田現時点では次の展開は何も決まっていませんが、先ほどお話したように多岐軸での 世界観となっているので、いくつもの展開を考えています。僕の中でも3つほど、こういう 可能性がある、こういう作品を作りたい、というものはあります。さらにそれ以外で松村さんから、全く想定していなかったアイデアというかキーワードを提案されて、僕の創作魂にも火がついている状態です。まだ回収していない伏線、今回『STA』で新たに蒔かれた種もあるので、もう少し広げて先に進めていけるといいなと思います。

松村ファンの皆さんの感想や、今後何を期待しているか、そういった点がもっと見えればそれを原動力にしてまた新しい企画に結実できればと考えています。

下田2年後、2026年には20周年も迎えますので、みなさんぜひさまざまな場でお声を聞かせてください。NEXT ENTANGLEの実現に向け、よろしくお願いします!

PROFILE

下田正美(しもだ まさみ)
アニメ監督、演出家、アニメーター。主な監督作にアニメ『藍より青し』や『魔法遣いに大切なこと』などがある。

PROFILE

松村圭一(まつむら けいいち)
アニメプロデューサー。テレビアニメ『Witch Hunter ROBIN』や、『機動戦士Zガンダム』劇場三部作のプロデュースを担当。

 

<発売情報>
ゼーガペインSTA
>2024年12月25日(水)よりBlu-ray(特装限定版)&(通常版)一般発売



Blu-ray(特装限定版)
税込価格:¥16,500
品番:BCXA-1945


Blu-ray(通常版)
税込価格:¥7,700
品番:BCXA-1944

『ゼーガペイン STA』ドラマCD付き設定集
「REUNION -ZEGAPAIN ARCHIVE PROJECT-」情報


2025年1⽉5⽇(日)23時59分まで予約受付中!
お届けは2025年2⽉下旬予定

 

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