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「イマレコ!」『迷宮のしおり』[特集サイト「プレイバックエモーション」]

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『迷宮のしおり』のなかに盛り込まれた作家・河森正治の軌跡

ごく普通の女子高生、前澤栞は、ある日突然スマホのなかに閉じ込められ、もうひとりの自分、SHIORI@REVOLUTIONと入れ替わってしまった。しかもSHIORI@REVOLUTIONがSNSで「1億いいね」を達成すると、栞は現実世界に戻れなくなってしまうという。はたして栞はスマホの中に広がる不思議な世界<ラビリンス>を抜け出し、現実世界に戻ることができるのだろうか……?

『マクロス』シリーズを始めとした数々のヒット作を生み出してきた監督・河森正治の、自身にとって初のオリジナル長編アニメーションが『迷宮のしおり』である。その楽しみ方は、栞のスマホからの脱出劇を描くエンターテインメント作品として見るだけでも十分に面白い作品に仕上がっている。だが、そこから一歩踏み出すと、河森正治が長年エンターテインメント作品を手がけるなかで、一貫して描いてきた「人間はテクノロジーとどう向き合うべきか」というテーマが見えてくる。

河森正治監督といえば、『超時空要塞マクロス』に登場した可変メカ、VF-1 バルキリーに代表されるように、緻密なメカニックやSF描写でファンに強烈なインパクトを与えてきた。自身も若かりし日はテクノロジーに傾倒していたものの、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』以後、世界を巡る旅へ出掛けたことが転機となった。なかでも、現在ほど発展を遂げていなかった当時の中国への旅は、その後の作家性を大きく方向づけるほどの衝撃を与えたという。このエピソードは監督自身がさまざまなイベントやインタビューで語っているので割愛するが、端的にいえば、「人間や自然、そして地球がもつ本来の力への探究」に目覚めた出来事だった。

もっとも、監督作品はテクノロジーそのものを否定してきたわけではない。むしろ一貫して描かれてきたのは、人間はテクノロジーとどう向き合うべきかという問いである。『迷宮のしおり』では、その象徴がスマホとなった。時代を映すガジェットは非常に身近なスマホへと変化したが、むしろ日常に高度なテクノロジーが存在することで、人間とテクノロジーの関係を問い続ける姿勢は先鋭化したといえる。

本作で栞が迷い込むスマホの世界は、単なる異世界ではない。劇中で語られるXGの世界は、SNS、動画配信、AIという過剰な情報にさらされる現代社会そのものだ。便利でありながら、自分の意思より先に情報が流れ込み、人は容易に自分自身を見失ってしまう。しかし本作が描くのは、スマホという世界から逃げ出すことではない。そのなかで自分を見失わず、現実とデジタルの双方を受け入れて生きていく姿勢なのだ。

その象徴が、SHIORI@REVOLUTIONという存在だ。彼女は単なる栞と敵対する存在ではない。引っ込み思案な栞が、スマホのなかに秘めていたもうひとりの自分であり、それは他者から求められる理想として捉えることもできる。
現代では誰もが、現実の自分とネット上の自分を使い分けながら生活している。本作は、そのどちらが本物なのかを問うのではなく、その両方を受け入れることこそが、自己肯定につながると描いているように感じる。だからこそ、SHIORI@REVOLUTIONとて完璧ではなく、栞がもつアンバランスさも持ち得ている。

そして栞が最後に選んだのは、SHIORI@REVOLUTIONを拒絶することではなく、受け入れることだった。そこには、スマホという強力なガジェットを否定するのではなく、どう向き合い、自分らしさを失わずに共存していくかを問いかける、本作のテーマが表れている。

こうしたテーマは、『迷宮のしおり』で突然生まれたものではない。『愛・おぼえていますか』以降、監督復帰後の河森作品には、人間や自然、テクノロジーとの向き合い方というテーマが随所に盛り込まれている。集団催眠の危険性を取り入れた『マクロスプラス』、宮沢賢治が感じた世界をビジュアルとして描き出した『イーハトーブ幻想〜KENjIの春』、作品そのものが人類と自然環境への問いかけとなった『地球少女アルジュナ』、人が持つ原初的な力へのアプローチを特訓として取り入れた『創聖のアクエリオン』、人類と他生物との共存・共生に迫った『マクロスF』……。挙げればきりがないが、代表的なものだけでもこれだけある。

長きにわたるクリエイター人生のなかで、そうした問題意識はより深まり、作品ごとに形を変えながら描かれてきた。これまでの作品のなかにも、『迷宮のしおり』へと続くヒントは随所に散りばめられている。
たとえば、「もうひとりの自分」というテーマでいえば、『創聖のアクエリオン』第18話「魂のコスプレイヤー」が挙げられる。本エピソードでは、身近な人間になりきる=コスプレすることによって、自分は他者をどのように見ているのか、そして自分はどのように見られているのかが描かれる。

最終的に主人公たちのメンターである不動司令が出した答えは、「カエルの子はカエル、鷹の子は鷹、狼の子は狼」であり、つまりは「無理に何者かになろうとせず、己の本質と向き合う」という結論である。『迷宮のしおり』で栞がSHIORI@REVOLUTIONを受け入れたラストシーンもまた、その延長線上にあるものとして見ることができるだろう。
テーマ性の探究に始まり、映像的なテクニックという意味でも、『迷宮のしおり』は河森作品のさまざまな要素が詰め込まれた、一つのマイルストーンといえる。
ここでは絵コンテのいくつかのシーンを題材に、それぞれの場面に込められた意味を読み解いていく。さらに2026年8月26日(水)発売の『迷宮のしおり』Blu-rayには、より深く作品を読み解く解説やインタビューが掲載されているので、本作をさらに楽しめるはずだ。

文:河合宏之

スペシャル記事「監督・河森正治による『迷宮のしおり』絵コンテ徹底解説」公開中!

<発売情報>

Blu-ray(特装限定版)
2026年8月26日発売
税込価格:¥13,200
品番:BCXA-2054

▼『迷宮のしおり』公式サイト
https://www.escaflowne.jp/
▼『迷宮のしおり』公式X
@meikyu_shiori

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