インタビューココだけ | 月とライカと吸血姫
牧野圭祐原作による、宇宙開発史をもとにした人気ライトノベルをアニメ化した『月とライカと吸血姫』が好評放送中。前半の最大の盛り上がりである、主人公の吸血鬼 イリナ・ルミネスクの乗ったロケットが打ち上げられるエピソードが放送されたばかりだ。今回は、監督を務める横山彰利さんに、徹底考証を行った映像や演出としてのこだわり、そして第7話までのドラマの見どころを語ってもらった。
横山TVシリーズのアニメ化を前提に読んだのですが、読み終わって「映画っぽいな」と感じました。今回は、原作小説の第1巻と第2巻をアニメ化しているんですが、第1巻と第2巻がそれぞれ1本ずつの映画のような構成がされているなと。また、どこまでが史実でどこまでがフィクションなのか分からなかったのですが、当時の宇宙開発史などをすごく調べて書かれているというのも感じましたね。アニメ化が前提だったので、史実の表現をどうするか、映画っぽい構成をどうテレビシリーズに落とし込むかという部分で、すごく考えることになりました。起承転結を考えると、前半はそんなに波が起こらず、後半に山場がくる感じなので、映画として作るなら、静かに始まって最後に盛り上げられるだろうなというのはすごく感じましたね。
横山個人的には、最初はもっと吸血鬼の能力を含めて、いろいろと強調したいという思いがあったんですが、シリーズ構成に原作者の牧野圭祐先生に入っていただいたので、そこはいろいろ話し合いました。お話しした感じだと、やはり吸血鬼には人種のメタファー的な部分が強く、そこは改変せずにいこうということになりました。
横山それで良かったと思います。最初の頃は、お話の山場を作るのにもうちょっと吸血鬼っぽさ、人間じゃないという部分を出せれば映像的な引きになるかなと思っていたんですが、最終的にはそこはやらないで本当に良かったと思います。吸血鬼的な要素は、中盤で1度血を吸う描写がある程度で、むしろ人間より弱い存在になっている。日光や暑さに弱くて、吸血鬼が耐えられる宇宙船の構造なら、人間だったらもっと大丈夫だろうというくらいなので。ただ、企画当初ではアニメーションとしてもっと動的な部分を出したいという思いもあって、吸血鬼の特異性を出したいと希望していたんです。一方で、個人的には原作小説が大好きだったので、そのままやれた方がいいだろうという思いもあって。牧野さんとお話をする中で、吸血鬼の特異性の部分の描写を否定された方が、むしろ自分がやりたい小説のイメージをそのまま映像化できる方向にもなっていったので、結果的にはとてもよかったと思っています。
もうひとつ不安だったのは、画面の暗さですね。小説を読んでいるときには気にならなかったんですが、映像にするとなると、主なシーンのほとんどが夜の時間帯なので画面が暗くなってしまうなと。ただ、ここに関しては、アーニャというキャラクターがいることで、明るい雰囲気になり、結果的には救われたという感じはありますね。
横山牧野先生自身は、もともと脚本家として活動されていた方なので、シリーズ構成や脚本をお願いできないかと依頼しました。作品に関しては、やはり牧野先生が一番良く知っているわけですし、アニメとして変更する部分を決めなくてはならないことが、正しいかどうかをジャッジしてもらうという意味ではどうしても中心に入って関わっていただきたいという思いがありました。
横山そうですね。こちらが提案したことに対して、先生が「それは違う」と判断すれば、それに従う。最初は、アニメ化のためにいろいろとアレンジのアイデアを出して、そこを牧野先生と詰めていった結果が現在の映像になっているという感じです。
横山自分としてはすごく好きな作品を、思い通りに描くことができるわけです。でも、そうした場合、リスクが大きすぎて現状ではクオリティを維持するのが難しい。どうすれば、ベストな形でTVシリーズとして見せていけるかという部分では悩みましたね。やはり、原作の方は宇宙開発ものということで、文字としての説明が多いんです。でも、そこに尺と枚数を使うと、アニメとして間が保たないかなという部分もある。そうした説明の部分にはあまり手をかけ過ぎず、アニメとしてドラマの部分との緩急を付けるための演出プランを決めて、仕込みをし、それに沿ってパーツを配置していくという感じでやっていくことにしました。一方で、イリナとレフの描写に関しては、ちゃんと丁寧に描くことを意識しています。ふたりの心の接近というか、感情の変化を推していくようにした結果、後半は恋愛ものの要素が濃くなったように思います。
横山むしろ、作りながらドラマ重視の内容になっていったという感じですね。自分は宇宙ものの方が好きで、実は今回の作品もそこに惹かれてやりたいと思っていたので。ただ、やっていくうちに、どんどん変わっていきました。宇宙工学分野の専門家である松浦晋也さんに設定考証として監修してもらっているんですが、いろいろ調べるほど、ドラマ重視にならざるを得ない。宇宙開発や訓練の描写をリアルに突っ込んでいくと、どんどん映像としてのドラマ性が無くなっていくんです。例えば、戦闘機に乗った時は、酸素マスクを着けるのですが、着けると表情が見えなくなってしまうし、パラシュート降下にしても最初からパラシュートが開いていたら何も見せられない。そのため、映像として観ていて面白く感じて頂けるように、ドラマを重視して、あえて嘘をついている場面も多いです。
横山そうですね。小説ではレフ目線ですが、アニメでは全話を通してイリナ目線での構成にしていただいたという感じですね。レフの独白でいろいろと語る部分は小説の方がいいと思うので、映像作品ではそういった部分を極力避けて、映像描写でそこを探ってもらえるようにやりたいという思いがあったんです。そうすると、レフよりもイリナを中心にした方がそうした描写に向いているのかなと思いましたし、それが上手くいったかなとも感じています。
横山そこでの構成は牧野先生がやってくださったんですが、自分としては小説の第1巻で描かれる、イリナが最初に宇宙に行くまでをしっかり描きたいという想いがありました。そのポイントになるのはまさに宇宙開発史的なところであり、アニメでは第7話、第1巻のラストがピークになる感じです。一方で、そこがピークになると、その後がオマケっぽく見られてしまうのではないかという不安もありました。やはり、TVシリーズとしては最終回が一番盛り上がるようにしたいので、小説の第2巻で出てくる要素を予め第7話までに組み込んでいただくような、ちょっと無茶な注文を牧野先生にお願いしています。実際に、極秘の「ノスフェラトゥ計画」が終わり、第8話以降ではいよいよ史上初の有人宇宙飛行への挑戦が物語の中心となりますが、それが第7話までのイリナの宇宙飛行の焼き直しになってしまわないようにどう盛り上げていくかには悩みましたね。
横山現実に存在した、炭酸水の自動販売機とか、サモワールという給茶器、日常的に冬にアイスクリームを食べるとか、そういう当時の日常生活描写の部分をしっかりやりたいなというのはありました。
横山話がちょっと戻ってしまうんですが、この作品での吸血鬼の特徴は、暗いところでよく目が見えること、儀式で1回だけ血を吸うこと、そして味覚がないということなんですよね。これから放送される後半部分では、昼間が日光の影響で見えづらいというのは原作よりも強調して描いているんですが、映像としてやはりこだわって描写できる部分は味覚が無いというところなんです。だから、イリナが食事の際に食感を楽しんでいるという部分を出すために、あえていくらの食べ方を強調して描くなど描写にはこだわっています。その部分については、作画陣も非常にこだわったカットで仕上げて頂き、頑張っていただけたのでありがたかったですね。
横山やはり設定考証の松浦さんに入っていただけたのは大きいですね。細かい描写は本当に大変ですから。ロケットに関してもどの段階で一番身体にGがかかるとか、どこの段階まで音がするとか。一方で、宇宙に行って無音になるという部分も、アニメーションで表現するのは難しくて。ロケットの発射シークエンスも、打ち上げた時には、推進剤満載なのでロケットが重く、速度は上がらずGは大したことない。ブースターやロケットを切り離すたびに速度が一気に上がり、Gが強くなる。そして大気圏外にいくとGは当然ない。そういう段階的な描写はもちろん、ロケットを牽引する列車のスピードとか、運搬台やロケットを留めているサポートトラスの動くスピードまで松浦さんには教えていただいていて。本当は全体的にもっとゆっくりなんですが、できる限りリアルに描いています。第7話のクライマックスにイリナが宇宙に上がってオーロラを見るんですが、あのコースだと本当はオーロラを見ることができないんです。それに関しては、松浦さんから「イリナにはオーロラを見せてあげたい」と言ってもらえて、お許しが出たんです。これは本当に嬉しかったですね。ただの監修ではなく、ドラマの演出も理解した上で「見せてあげたい」と言ってもらえたわけですから。本当に松浦さんには感謝しかないです。
横山ちなみに、現実のロケットの発射シーンで、アメリカのアポロだと下に水を張っているので、水蒸気がものすごく上がって、ロケットの表面から氷の破片がバラバラと落ちるんですが、ロシアでは、外気温が低いので氷の破片が落ちたりしないんです。細かく落ちる氷の破片や大量の水蒸気を緻密に描かなくていい。そういう意味では、今回の作品内のロケットは本当に作画に優しいなと思いましたね(笑)。
横山自分がどのようなオーダーを出したのかは収録から大分空いているため、覚えていないんですが、演じることに関しての意識を話したような記憶があります。イリナ、レフ、アーニャの3人は、自分の見たものしか信じない人たちで、最初に植え付けられた先入観やそれまでの体験、間違った情報によって最初は相手に対して偏見があったりするんですが、その後は自分が見た人やもので判断していく。それが3人に共通しているというようなことを伝えたと思います。それから、最初にイリナ役の林原めぐみさんとレフ役の内山昴輝さんには、なるべく明るく演じて欲しいと伝えました。やはり、お話の流れの中で、なんとなく暗くなってしまうような展開ですからね。
横山イリナに関しては、本当に林原めぐみさんじゃなければと思いましたね。イリナは、最初に周りが全部敵である敵地に乗り込むわけですが、そこでレフに不意を突かれたりして素が出てしまうわけです。その微妙な変化に関して、こちらからは指示は出していなくて、「こうなればいいな」という思いを持っていたんですが、それを何の説明もしなくても演じてくださる。そこが本当に凄いなと思いましたね。また、イリナ、レフ、アーニャの3人は、ある意味頑固で、天然なところもある。そこで、ふとした時の笑う声にキャラクターの性格の良さみたいなものが現れるんですよね。その声によって加わる要素は、シナリオやコンテの段階では計算できない、キャラクターの味というのが倍増したように思っていて。今回のキャスティングで本当に良かった部分ですね。アーニャ役に関してはオーディションで決めたんですが、アーニャは普段の明るいところだけじゃなく、後半に重要なリアルな芝居をしなければならない部分があるんです。木野日菜さんは初めて聞いた際にどちらもいけるところが素晴らしくて、全体が暗くなってもアーニャの声があれば緩急が付くと思えたので、物語の救いになるなと思いました。特に、アーニャがイリナとの距離感がブレずに徐々に心が近づいていく感じはすごく表現したい部分であり、こだわったところでもあります。
横山7話に至るまでで、もうひとつこだわった要素というのが、イリナの向いている方向なんです。イリナは基本的に怒っている時以外は相手を見ない。そこで、どうやってレフの方に向かないで喋るかというのをすごくこだわりました。食事シーン以外、基本的に身体がいつも真横か後ろを向いていて、面と向かってなかなか喋らない。それが、7話でロケットに乗り込む際に「行ってきます」と正面を向いて、レフと面と向かわせる。そうした、心と体の向きのシンクロにも注目して欲しいですね。
横山そうですね。そうしていただけると、よりいろいろ見えて来る部分があると思います。
横山7話までのイリナは自分のために動いていたんですが、後半はレフのためにという他人のための行動が出てくるようになります。自分がどうなるかと身を案じながらも、レフを思って嘘をつき、その嘘をレフが知った時に彼がどのような決断を取るかというのが見せ場になってくるかなと。あと、アーニャは怒らせると怖いよってところですかね。彼女にもこれから大きな見せ場があります。
横山この作品の凄いところは、いち個人の能力が爆発的に発動して何か世界を変えるというものではなく、個人の能力はそのままだけど、ふたりだから変えることができるというのを丁寧に見せているところだと思います。ドラマだから強調しているのではなく、そのあたりの流れもリアルな感じでまとめられているので、ぜひラストに向けた盛り上がりを楽しみにしていただけると嬉しいです。
横山彰利
アニメーション監督、演出家。作画監督や原画、絵コンテや演出として数多くの作品携わる。監督作は『フォトカノ』(2013年)、『Cutie Honey Universe』(2018)、『日本アニメ(―ター)見本市 「ザ・ウルトラマン」』(2015)などがある。
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▼月とライカと吸血姫公式サイト
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© 牧野圭祐・小学館/「月とライカと吸血姫」製作委員会
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