インタビューココだけ | 前田建設ファンタジー営業部
9月9日Blu-ray&DVD発売記念『前田建設ファンタジー営業部』佐治幸宏(プロデューサー)インタビュー[前田建設ファンタジー営業部 V-STORAGE広報資料室]
2020年1月31日に公開された映画『前田建設ファンタジー営業部』のBlu-ray&DVDが9月9日に発売! 発売を記念して、本作の企画・プロデュースを務めた佐治幸宏プロデューサーから、キャスティングや撮影現場の様子、こだわりのロケーションなど、作品をさらにより深く楽しめるお話を伺った。
──近年、技術力の高い日本の企業を主役にしたTVドラマが増えていますが、本作の企画はどのような経緯で始まったのでしょうか?
佐治原作の存在は知っていましたが、話の内容までは知らない時に、ヨーロッパ企画(本作の脚本・上田誠が主宰する劇団)が舞台化したものを拝見しました。その舞台を観て、これを映像化できないかなと思ったのがきっかけです。最近の流行りの企業モノを意識していた訳ではなく、単純にこのお話自体が面白かったからですね。
──どのような点で映像化してみたいと思われたのでしょうか?
佐治舞台を観た後に原作を読んで、舞台では原作とは違い、ファンタジー営業部を設立するまでのドタバタな人間ドラマを描いていることが分かりました。企業の中で新しいことを始めようとすると、大抵は賛同してもらえず反対にあうなど、試行錯誤が必要になります。その中で上田さんらしく、時に熱い場面を入れながら人間模様が面白おかしく描かれていました。自分自身も会社に身を置く一人のサラリーマンとして共感できる部分が多々あり、また会話劇としての完成度も非常に高かったので、これを映像化したらどのような風になるのか、できるだろうかという発想に至りました。
──英勉監督が撮られていることもあって、仕事を描きながらも、情熱が伝播していく様がまるで学園ドラマを見ているようでした。
佐治学園ドラマとまではいかないですけど、上田さんがおっしゃっていた「過ぎた大人の青春ファンタジー」、その感じはあると思います。確かに英監督は学園ものを撮られることが多いですが、どちらかと言うと初期の頃の『ハンサム★スーツ』のような大人のコメディをベースにしながら、振り幅が広く色々な要素を出せる方という印象がありました。昨今は若いキャストを起用した作品が多かったので受けてもらえるか心配な部分もありましたが、それ以上に面白がって興味を持って頂けるんじゃないかと期待を込めてオファーしました。監督自身も、こういう話を持って来てくれるとは思われていなかったようで、最初から面白がってくれましたね。ただ、舞台の脚本を読んで、なかなか映像化が難しい作品だと仰っていました(笑)。監督と上田さんはお二人とも京都ご出身、それぞれコメディを作られているので、笑いのツボや感覚も近いところがあるんじゃないかなという狙いもありました。
──キャラクターが濃い営業部の面々のやり取りがとても印象的でした。個性豊かなキャスティングはどこに重点を置いて選ばれたのでしょうか?
佐治ファンタジー営業部を立ち上げるアサガワと原作には登場しない若手社員のドイ。この二者のバランスについては皆で話し合い、どちらを主演にした方が良いのか悩みました。アサガワは脚本上で特殊なキャラクターだったので(その後、小木(博明)さんが演じることで最終的にもっと特殊なキャラクターになりましたが…笑)、観客はいきなりあのテンションのまま作品に入っていけないため、そちら側への感情移入はなかなか難しいかなと思い、新たにドイというキャラクターを設定しました。ドイは一番やる気のないところからスタートして、彼と共に観客は徐々に熱くなっていくことができるかなと。その役の置きどころが難しくて時間がかかったのですが、そのポイントが見えてからは、急速に具体的なキャスティングに動き出せました。
──冒頭のキャスト登場シーンがアニメーションのオープニングを意識しているように感じましたが、どのような狙いで撮影されたのでしょうか?
佐治一人一人向かっていく集合体の感じが、大袈裟に言うとアベンジャーズみたいだよねと監督が仰っていて。脚本の段階では想像できていなかったんですけど、監督がそのアイデアを絵コンテにして描いてきて、火や水などそれぞれモチーフの色が用いられている様がまさにアベンジャーズの面々が集まっているようでした。それに付随して、音楽はどうしても地味になりがちなので、地球を救う気分で仕事をしている彼らに合う音をあてようということで、海外の大作で流れるような熱くスケールの大きなものになっています。
──撮影現場の雰囲気はいかがでしたか? 印象的なエピソードがあれば教えてください。
佐治キャストの控え室に、朝イチで監督がやって来て、その日のイメージを各キャストに必ずお話されていました。現場で撮影に入る前にそのようなアプローチをしてくださるので、後々役者の方々に伺ったら、すごくやりやすかったと仰っていました。なかなかそこまでやる方はいないので、監督の役者に対するケアに驚きました。それと、舞台挨拶の時にキャスト陣の話にも出たのですが、人見知りされるキャストが多い中で、上地(雄輔)さんが媒介役になってくださって、ファンタジー営業部のキャストの結束力がグッと強まった気がします。撮影の合間もワイワイ楽しそうにされていました。あのチームをキャスティングできたことがあの空気感を生み出すことになったので、非常に良かったなと思いました。
──アドリブを採用している場面が多かったように感じましたが、実際はどうだったのでしょうか?
佐治本多(力)さんや岸井(ゆきの)さんは舞台にも出演されることが多いので、脚本上には台詞として書かれていても、それをアドリブのように見せている部分も多いです。ただ、小木さんが本読みの時点で全く想像していないところからアプローチされていましたね(笑)。今回の撮影は、3台のカメラを回して一気に撮るところが多く、何回も同じ芝居をせずに済んだので、鮮度よく撮れていたと思います。ただ、どうしても撮れていないリアクションの場面などで、小木さんが変なことをするんですよ(笑)。オーバーな芝居だったり、顔つきだったり、それで相手の方が堪えられなくなってしまうことが多々ありました。高杉(真宙)さんは舞台挨拶の時に「本気で笑ってしまった現場は初めてでした」と仰っていましたね。その部分も含めてOKテイクに採用されていたので、素のリアクションが反映されています。監督は生のライブ感を大切にしながら撮影されているんだなと感じました。そういう意味での、アドリブなり、素のリアクションが観れて楽しめると思います。
──『マジンガーZ』の原作者、永井豪先生が特別出演されていますが、どのような経緯でご出演されることになったのでしょうか?
佐治撮影で使用する資料の件でダイナミック企画さんと打ち合わせをしていた際に、雑談レベルで永井先生のカメオ出演についてお話をして、意外と先生はそういうことが好きな方とお聞きしまして。それとちょうど同時多発的に、監督からも先生の出演について聞かれたので、それなら遊びとしてどこかでやりたいなという考えはありました。あまりガッツリと出演して頂くのも面白くないですし、芝居をして頂くのも違うので、結果的にはトイレのシーンになりました。実は、居酒屋で話すシーンの後ろや横あたりにいらっしゃる案もありましたが、トイレだと正面から写せるのでその方が面白いということになりました。先生にも喜んで出演して頂けたので良かったです。
──実際に出演された永井先生はどのようなご様子でしたか?
佐治トイレのシーンは正面からの画を撮るので、全てセットなんですが、台本上だとそこまでは説明されていないので、まずそこに驚かれていました。撮影自体は、終始すごく和やかに楽しんで頂けたようでした。
──オフィスや工場など、美術も含め非常にリアルなロケーションで撮られていました。どのような点にこだわって撮影場所を選ばれたのでしょうか?
佐治まず基本的に原作に出ているところ、Hitz 日立造船、前田製作所、栗本鐵工所の3社はそのまま実名で出したいなと。さらに、実名を出す以上はその会社の設備を使用させて欲しいなと思っていました。オープニングに出てくる重機も含めて、前田製作所は長野にある本社まで行って撮影させて頂きました。ただ、Hitz 日立造船と栗本鐵工所は本社が大阪になるので、スケジュールや予算の都合で難しく、関東近郊で撮影できる関連施設がないかご相談させて頂きました。Hitz 日立造船は千葉に工場があったので、そちらで撮影させて頂き、栗本鐵工所は残念ながら関東近郊に工場がなかったので、東京のオフィスの一角をお借りしました。お蔭様で、三社共に盛り上がるシーンを撮影できました。
また、会議室の場面が多いので、そこから外に出た時にスケールの大きい画が欲しいこともあり、トンネルやダムでの撮影も行いました。前田建設にご相談したところ、自社で手掛けた場所を幾つかリストアップして頂けたので、その中から見栄えや撮影のスケジュールを加味して、福島の広瀬トンネルと静岡の長島ダムに決定しました。結果として、この2箇所は、映画ではなかなかお目にかかれない壮大でリアルなシーンが撮影できました。それと、オフィスについては前田建設が以前本社を構えていた光ヶ丘のビルをお借りしました。今は倉庫や研修設備などで使用されていて、使用していないフロアをスタジオ代わりに、全面に美術を入れて使わせて頂きました。特にメインの会議室は壁が全面取り外せられるセットが作れたので、ダムやトンネルと同じくらい、そこをお借りできたのは有り難かったですね。
──弓教授たちが出てくるアニメーションの部分は本作ならではのサプライズでした。
佐治舞台でもTVアニメの映像を観ながらやられていたので、映画でもそこは上手くやりたいなと思っていました。ただ、終盤のあるシーンに関わってくる部分はTVアニメが存在しないので、当然新しく作るしかありませんでした。「家庭教師のトライ」のCMが昔風の画を使って新しいものを作っていたので、それをイメージしながら、どこまで昔のマジンガーZの画のテイストに近付けるかが大きな問題でした。そこは当たって砕けろの精神で大元の東映アニメーションにご相談しました。過去の映像の使用許可に関して、東映アニメーションにお話していたので、その流れで新作アニメパート制作の相談をし、担当部署をご紹介して頂きました。色々と試行錯誤頂き、当時の雰囲気に近付けて頂きました。
──ラストは、次回作を期待させるような終わり方になっていました。
佐治元々はエピローグとしてオマケ的に楽しめるものがあるといいですよねと話していて、その中で上田さんが考えてくださってあの形になりました。続きを匂わせることも含めて、そのように思って頂けたらこちらとしては嬉しいです。
──ファンタジー営業部の方たちが本作を観た感想はいかがでしたか?
佐治アサガワのモデルになった方や今の広報部の方々には確認や質問をしたりすることが多かったので、言ってしまうとほぼ毎日現場に来て頂いていた状況でした(笑)。なので、その方々は撮影から参加しており、スタッフの一員として観るので、出来上がりをご覧になって非常に喜んで頂きました。あとは、関わって頂いたけど撮影状況を全く見ていない方たちは、試写で出来上がった作品としてご覧頂いているので、原作では想像しなかった映像なり内容に、新鮮な驚きを感じて頂けたようでした。いずれにしても、関わった方、そうでない方も含めて皆さんに楽しんで頂けたようだったので、作り手側としては非常に作ったかいがありました。
──Blu-ray特装限定版の特典ディスクに収録されているメイキング「前田建設ファンタジー営業部ができるまで」はどのような内容になっていますか?
佐治映画の撮影自体も大きな熱量に動かされてものを作り上げていくところがあるので、スタッフやキャストの姿が劇中のファンタジー営業部と重なって、少し変わったメイキングとして楽しんで頂けると思います。
──では、最後に9月9日(水)のBlu-ray&DVD発売にあたり、改めて注目して欲しいポイントや見どころを教えてください。
佐治まずは大人たちの熱い熱量を感じて欲しいです。それと、会話劇の部分はアドリブなのかどうなのか、細かく観て頂くと掛け合いがより楽しめると思います。あとは、実際に行ったダムなどは普段入れないところまで入れて頂き撮影をしています。トンネルは、現場監督の方が「あとでスケジュールは取り返せばいいから」と仰って頂き、工事中の作業を止めて撮影にご協力頂いています。自宅では一時停止なり巻き戻しができるので、そういったところも細かく観ると色々な発見があります。ぜひロケーションの面白さも楽しんで頂ければと思います。
PROFILE
佐治幸宏(さじゆきひろ)
映画プロデューサー。本作の企画・プロデュースを務める。近年のプロデュース作品に、『そこのみにて光輝く』、『流れ星が消えないうちに』、『セーラー服と機関銃 -卒業-』、『オーバー・フェンス』などがある。
Blu-ray [特装限定版]
2020年9月9日発売
価格:¥6,800(税抜)
品番:BCXJ-1551
DVD [通常版]
2020年9月9日発売
価格:¥3,800(税抜)
品番:BCBJ-5007
前田建設ファンタジー営業部 公式サイト
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション