インタビュー ココだけ | BURN THE WITCH
2020.12.18 UP
久保帯人最新作『BURN THE WITCH』新橋のえる役・山田唯菜 キャストインタビュー
『BURN THE WITCH』にて、ニニー・スパンコールと共に主人公として活躍するクールな容姿と言動の中に、熱い思いを秘める新橋のえる。のえるというキャラクターをどんな思いで演じたのか? のえるを演じた山田唯菜さんにオーディションやアフレコ現場の思い出、キャラクターへの思いなどを伺った。
──『BURN THE WITCH』はオーディションによって出演が決まったそうですが、当初の印象はいかがでしたか?
山田 オーディションでは、新橋のえる役で受けさせていただきました。音響監督の三好(慶一郎)さんやスタッフさんの方ですでに何人かに絞られていて、その中に残っていたということでスタジオでのオーディションに呼んでいただきました。オーディションに行く前に久保先生が描かれた読み切りはすでに読んでいましたし、会場に行った段階で絵コンテも出来上がっていたので、まずはそれを読ませていただきました。コンテがあったおかげで、作品の内容も理解できて、シーンやキャラクターの関係性を含めてすごく想像しやすかったです。オーディションの際も、実際のセリフを読んでディレクションをひとつひとついただけたということもあって、私が今まで受けたオーディションの中でも珍しい雰囲気でした。普通のオーディションだと、用意されたセリフをその場で読んで、「わかりました。大丈夫です」と終わることが多いですから。それこそ、セリフのひとつひとつを言う際に「ここはもうちょっとこうしましょう」とディレクションをしていただいたので、終わった時にはオーディションを受けたというよりも、アフレコを終えたような印象でした。
──のえるというキャラクターは、イメージは掴みやすかったですか?
山田 そうですね。私自身、クール目なキャラクターや、テンションが低いキャラクターを演じることが多かったので、私の中ではやりやすさはありました。そういう意味では、得意分野で呼んでいただいたのかなという印象です。
──のえるをオーディションで演じるにあたって、「こんな感じで演じて欲しい」というようなオーダーやディレクションはありましたか?
山田 セリフひとつひとつに対する、言い方のディレクションはありましたが、演じている中で「適度な温度感で、芯の強さもあっていいね」と言っていただけたというのもあって、オーディションの時点では、細かいオーダーがあったり、自分で「こう直そう」というような感じは無かったです。原作マンガの読み切り版とコンテを読めていたので、キャラクターの理解がしやすかったのかなと思います。オーディションの結果、のえる役が決定したあとは、久保先生の作品ということで『BLEACH』を読み直してみたりして、手掛かりを探してみようかなと思ったりもしました(笑)。
──本作では、ニニーとのえるのふたりの関係性が重要だと思いますが、距離感などに関してはどのようにイメージしながら演じられましたか?
山田 ふたりは、一見するとチグハグで性格も正反対な雰囲気だけど、信頼関係はすごく強いんだろうなと思っていました。それこそ、ニニーが自分で思っていることをバーっと喋って、それをのえるが「はい、はい」といなす感じがふたりの日常だし、それがお互い心地いい関係なのかなと思ったので、その空気感を出せればと思いました。実際に演じている時は、「のえるにしては、その台詞で感情を出し過ぎです」とディレクションをいただいたりすることが多かったです。そこは、監督からも言われていたので、ニニーとは正反対な感じになるように気を付けて演じました。
──そういう意味では、演じるテンションとしては抑え気味に徹したということですね。
山田 そうですね。でも、のえるも心の中ではちゃんと感情が動いていて、幅もすごくあると思うんです。ただ、それが外に見えてこないだけだろうと。そうした要素に関しては、かなり繊細な印象があります。
──ふたりの関係性がすでにしっかりと出来上がっているという雰囲気が、演技を通じてよりしっかりと伝わってきたように思いますが、そこはやはり強く意識されたところですか?
山田 日常的な会話からそうした関係性が出せればいいなと思っていました。ニニーから「私は昇進したいんだけど」と言われて、「私は別にそういう感じじゃないです」と返すのが、ふたりの日常なので、そういう雰囲気が出せていたなら私は成功だなって思っています。そうした関係性が描かれているからこそ、私もふたりの出会いがすごく気になる部分ではありますね。ニニーとのえるが、どんな経緯で今のバディになったのか、すごく知りたいです。
──いま、バディ=相棒というワードが出ましたが、バディものというジャンルに関してはどのような感想を持たれていますか?
山田 バディものをやらせていただくのは、初めてです。すごくいいですよね。相棒役が田野アサミちゃんだったのもすごく良かった。アサミちゃんとは、普通に喋っていても感覚が合うというか、やりやすい部分があって。言葉では表せないんですが、そういう空気感が最初からあったので、バディ役でありがたかったなという思いがあります。
──スタジオの雰囲気はいかがでしたか?
山田 アサミちゃんが引っ張っていってくれて、スタジオの雰囲気を明るくしてくれました。また、スタッフの皆さんからも、いい作品を作って行こうという感じがヒシヒシと伝わってくる感じで。セリフひとつひとつにも、納得いくまでリテイクしてくださって、監督も「後でこうしておけば良かったと思いたくないから、徹底的にやったんだ」と仰っていました。本当にいい現場でやらせていただけたなという印象が強いです。
──アフレコ現場には、監督と音響監督に加えて、久保先生もいらっしゃったとのことですが、何かお話はされましたか?
山田 アフレコ時には、「のえるにしては、感情を出し過ぎ」というディレクションをいただいた以外に、休憩時にちょっとお話をさせていただきました。「のえるは難しいよね?」と話しかけてくださって、「ちょっと探りながらやっています」という感じで答えたんです。それに対して「のえるは、全てを受け入れているキャラクターだから」と仰ってくださったので。その言葉で、「だからああいう風になるのか」と腑に落ちる感じはありました。一見冷たく見えるけど、包容力があるというか、自分の気持ちを落とし込んだ上で返しているところもあって。ニニーに対しても、ちょっと母親みたいに言う感じもあるので、そうした母性的なところも出ればいいなと思いました。
──現代風ファンタジーということで、リーバス・ロンドンやドラゴンとの共存という世界観設定に関してはどのような感想を持たれましたか?
山田 映像を観て驚いたのはロンドンの街並ですね。私はロンドンに行ったことはないんですが、ロケハンにも行かれてこだわって描かれたということで、「実際に行くとこんな感じなんだろうな」という気分が味わえました。あと、ドラゴンに乗っているときのスピード感や疾走感が凄いなと。風の表現や髪がなびく感じがすごくリアルに描かれていますよね。その映像にプラスして、壮大な音楽が加わることでファンタジー感が増しているなとも感じました。映像が一時停止すると、絵画みたいな感じになるように美術もこだわられていたとのことなので、そこも凄いなと感心しました。
──のえるの相棒と言えば、ニニーの他に行動を一緒にするワーズワースという小型のドラゴンなどがいますが、そうした雰囲気はいかがでしたか?
山田 すごく可愛がっていますよね。アニメでは描かれなかったんですが、原作ではワーズワースが新聞を持ってきてくれる場面があります。「ありがとう」と言っているのえるはすごく笑顔で、「こんな表情を見せるんだ」と思いました。オスシちゃんに喋っている時もそうなんですが、のえるの笑顔を引き出すくらい、ドラゴンだけど仲がいい、信頼関係があるんだろうなと感じましたね。アニメではそうした部分があまり描かれなかったので、そうした部分はもうちょっと観てみたいところではありますね。シリーズが続けば、ドラゴンと交流するシーンも観られるのかなと思っているので、ぜひ続編には期待したいですね。
──登場したキャラクターの中で、気になった人物、やりとりが印象に残っているものはありますか?
山田 早見沙織さんが演じられたメイシーが印象深いです。あのキレキャラが凄かった(笑)。アフレコの時に、後ろで聞いていて圧倒されました。あとは、平田広明さんが演じるチーフは、いろいろと隠された要素があるようで気になります。飄々としているけど、絶対に大物だろうと。
──収録はみなさんで一緒に行われたのでしょうか?
山田 主要キャストのニニーとのえる、バルゴとブルーノ、チーフは比較的一緒にやらせていただけました。こういう時期なので、収録にも人数制限があって。スタジオ内には3人までという感じでしたが、掛け合いのあるキャラクターは一緒に収録できたので良かったです。一緒にやった方が空気感が出るので、配慮していただけたんだと思います。
──完成映像を観て、思わず見入ってしまった、驚いたというようなシーンの感想をお聞かせください。
山田 シンデレラの羽化シーンが本当に綺麗で神秘的だと思ったのと、シンデレラと戦うシーンの疾走感も凄かったです。あとは、のえるがバルゴを助けに行くシーンが好きです。ブルーノと対峙して、周りを囲まれた状態で助けに行く時に、手に持ったウィッチキットをクルクルと回すところが滅茶苦茶カッコイイなと思いました。その後にも、ニニーがブルーノにウイッチキットを突きつけると、ブルーノがそれを蹴り上げて、空中を舞うウイッチキットをのえるがキャッチして再び構える。あの一連のアクションの流れもすごく好きです。映像としての流れがすごく綺麗で。あとは、やっぱり最後のバルゴとのえるのシーンですね。オチというか、タイトルが出るところも感動するものがありました。
──最後のバルゴとのセリフも気を使われた部分ではないですか?
山田 そうですね。最初に収録した時に「ちょっとバルゴに対する愛が出過ぎています」というディレクションがありました。バルゴの役の土屋さんも「もう恋人の空気だよね」って。バルゴものえるも、そうした空気を出し過ぎているので、もうちょっと抑えるようにと言われました。
──やはり、物語的な続きという意識もあると思いますが、もし実現するとするならば、どのような部分に期待しますか?
山田 続編が叶うならば、ぜひ!期待するところと言えば、『BLEACH』との繋がりとか、一瞬しか出て来なかったトップ・オブ・ホーンズのメンバーがどのように描かれるのかとかですね。あとは、各キャラクターの過去、ニニーとのえるがどう出会ったのか、バルゴとのえるの出会い、チーフが何者なのか……と本当にたくさんあります(笑)。
──『BURN THE WITCH』のBlu-rayが12月24日に発売となります。じっくり見直すとするなら、どこに注目して欲しいですか?
山田 全体的な部分で言うと、メインで喋っているキャラクターの周りにいる、他のキャラクターの佇まいや目線に注目して欲しいです。つい、喋っているキャラクターに目が行ってしまいますが、そうではないキャラクターの表情なども細かく描かれているので、そういう部分もチェックしていただきたいですね。それから、ダーク・ドラゴン・アラートが発令されて、ニニーとのえるが建物の上に立っているシーンがあるんですが、その時に背景のステンドグラスに童話をモチーフとした絵が描かれていたり、シンデレラを倒す時のオスシちゃんが微妙に羽根を動かす仕草だったり、気になる動きや絵がたくさんあります。そして、エンディングでは、ニニーとのえるの日常的なシーンやフロントロンドンでの制服姿などもあるので、じっくり観て欲しいです。
──完成後は何度もご覧になられているんですか?
山田 試写会で観た後に、プライベートでも劇場に行きました。来場者特典のSNS風クリアカードが欲しくて(笑)。あと、劇場で観ると音響が違うので迫力があって良かったです。それから、やっぱりお客さんの反応が気になりますよね。上映が終わった後に聞き耳を立ててみたりして。ありがたい感想がたくさん聞こえましたし、私の知り合いで観てくれた人たちも面白いといってくれたので、すごく嬉しかったです。
──それでは、最後に『BURN THE WITCH』を楽しんでいらっしゃるファンにメッセージをお願いいたします。
山田 ここまで観てくださった皆様ありがとうございます。本当にたくさんのこだわりが詰まった作品なので、それを探しながら何度でも観ていただきたいなと思います。原作から映像化されていない部分もあるので、Blu-rayと合わせて原作を読みつつ、想像を膨らませてもらって、「この裏ではこんなことがあったんだろうな」と思いながら観てもらうのも楽しいはずです。そして続編の実現に繋がることを祈りつつ、今後とも一緒に「BURN THE WITCH」を応援してくださると嬉しいです。
PROFILE
山田唯菜(やまだ・ゆいな)
6月21日生まれ。福井県出身。主な出演作に『アイドルタイムプリパラ』(幸多みちる役)、『アニマエール』(有馬ひづめ役)などがあり、海外ドラマや洋画の吹き替えでも活躍中。本作では、新橋のえるの声を担当している。
【あらすじ】
遥か昔からロンドンに於ける全死因の72%は、人々が見ることのできないドラゴンと呼ばれる“異形の存在”が関わっていた。だが、人知れずそのドラゴンと相対する人々がいた。ドラゴンの存在を見ることができるのは、フロント・ロンドンの“裏側”に拡がるリバース・ロンドンの住人だけ。その中でも、選ばれし人々がウィッチ魔女/ウィザード魔法使いとなり、ドラゴンと直接接触する資格を持つ。主人公は、自然ドラゴン保護管理機関「ウイング・バインド」(通称WB)の保護官である新橋のえるとニニー・スパンコールの魔女コンビ。彼女たちの使命は、ドラゴンに接触できない人々に代わり、ロンドンに生息するドラゴンたちを保護・管理することだった。
【STAFF】
STAFF 原作:久保帯人/監督:川野達朗/副監督:清水勇司/脚本:涼村千夏/キャラクターデザイン:山田奈月/ドラゴンデザイン:大倉啓右/背景美術:スタジオコロリド美術部/美術監督:稲葉邦彦/色彩設計:田中美穂/CGI監督:さいとうつかさ/撮影監督:東郷香澄/音楽:井内啓二/音響監督:三好慶一郎/アニメーション制作:teamヤマヒツヂ/スタジオコロリド
【CAST】
ニニー・スパンコール:田野アサミ/新橋のえる:山田唯菜/バルゴ・パークス:土屋神葉/チーフ:平田広明/オスシちゃん:引坂理絵/ウルフギャング・スラッシュハウト:麦人/ブルーノ・バングナイフ:小林親弘/サリバン・スクワイア:清水はる香/ロイ・B・ディッパー:田中美央/メイシー・バルジャー:早見沙織
©久保帯人/集英社 ・「BURN THE WITCH」製作委員会
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