インタビュー ココだけ | BURN THE WITCH
2020.12.21 UP
久保帯人最新作『BURN THE WITCH』ニニー・スパンコール役・田野アサミ キャストインタビュー
『BURN THE WITCH』の主人公のひとりで、思ったことをそのまま口にし、能動的に動きまわるニニー・スパンコール。喜怒哀楽のはっきりしたキャラクターの内面に秘めた思い、相棒である新橋のえるとの関係性など、ニニーの魅力や演技についてニニーを演じた田野アサミさんに伺った。
──オーディションでニニー役に決まったそうですが、オーディションはどのような印象でしたか?
田野 私がオーディションの会場に行くと、劇場用の絵コンテがきっちりと並べてあったのが印象的でしたし、オーディションで絵コンテを見せてくれるというのも驚きでした。今まで他のオーディションでは無かったことだし、まだ発表されていないお話が書かれているわけですから。そうした情報をたくさんいただけた中でのオーディションだったので、特に迷いはありませんでした。それこそ、絵コンテにニニーの「やってやるぞ!」という強気の表情や立ち姿が描かれていて。そこから、ちょっと強気な、元気がある子なんだろうなという彼女のイメージがわかるんですよね。オーディションに行ってこんなにも材料があって、情報を教えてくれることがあるんだと思いました。
──オーディションは、アニメ制作の初期段階で行うことも多いので、資料などが少ないことの方が多いと聞きます。
田野 そうなんです。こんなに資料があることが珍しいですね。だから、そうした状況から監督をはじめ、みなさんが長い間作業を進めて、温めてきた作品であるというのがそこに現れているんだなと思いました。そして、オーディションを受ける私たちも信用されているということがすごく嬉しかったです。オーディションのことはよく覚えていますね。現場に着くと、のえる役の山田唯菜ちゃんが私の前にオーディションを受けていて、絵コンテがあることも親切に説明をしてくれて。そこで唯菜ちゃんと話をしたことを覚えていたんです。その後、役が決まって再び会った時に「アサミさん、あの時会いましたよね」って言われて。役が決まる前の段階でそうした交流をした人が相棒になるというのもいいですよね。多分、そこでした会話のやり取りもニニーとのえるっぽい感じがあったのかなって思います。
──ニニー役のオーディションを受けるにあたって、得意、不得意という意味ではどのように感じられましたか?
田野 得意、不得意というのは自分の中でもあまりわかっていないんです。私は、チャンスをいただいたらそれを全うしようと思うので、オーディションの時も「私の思うニニーでやろう」という気持ちだけでした。だから、得手不得手でやるということはなく、ニニーを見た時に「この役は、私が絶対にやりたい!」って100%の気持ちで臨んだだけですね。
──ニニーというキャラクターのイメージは、どのように感じましたか?
田野 ニニーは、久保先生が描く女性キャラクターの魅力がたくさん詰まっているように感じましたね。喜怒哀楽がすごくはっきりしていて、コンテで初めて見た時に「こういう女の子に振り回されたかった」って思ったんですよ(笑)。アメコミ映画で人気のハーレイ・クイン(『バットマン』に登場するヴィラン・ジョーカーのパートナー)というキャラクターがいますが、彼女と似たイメージがあって人を振り回すけど、すごく可愛いところがある。私自身の「こういう女の子に振り回されたい」という願望とキャラの魅力がうまく混ざりあって、演技をしながら化学反応みたいなものが起こったのかなと感じましたね。それから、ニニーはきっとカリスマ性があるんだろうなとも思いました。久保先生が魅力のある女性を描かれるのがお上手というのももちろんのこと、一見すると、ニニーは思ったら突き進むだけのように見えますが、実はすごく頭がいいと感じさせる部分があって。自分の見せ方、どこにいて、どうすればいいかというのをしっかりと理解している。そして、相棒であるのえるのことももの凄く信頼しているので、彼女が言うことにかなりぶっきらぼうに答えることはあっても、必ず「わかった」って返事をしている。表の世界でアイドルをしているという部分も含めて、自分がどのようなことを求められているのか、どうしたらうまく行くのかを瞬時に考える、頭のいい子なんだと思いました。
──ニニーは一見すると自己中心的に見えますが、実はいろいろと考えているという雰囲気は、そうした演技から出ていたんですね。
田野 単なる直感だったんですが、この子はただ主張が強いだけじゃないと思えたので、そう演じさせてもらいました。もし、それが久保先生から見てダメだったら、「違う」と言われるだろうと。ニニーを演じる際も、そうした自分で考えた要素を入れさせてもらったんですが、注意されることも無かったので間違いでは無かったのかなと思っています。実際に、ニュアンス的に違うというところは、「ここはもうちょっとこうしてください」というアドバイスもいただくことができたので、私は迷わずに「自分の思うニニーはこうです!」と怖がらずに提示できたというか、自由にやらせていただけたなと思っています。
──本作は、人間の関係性が重要な作品ですが、相棒であるのえるとのキャラクターの関係性に関しては、どのように考えて演じられましたか?
田野 ニニーはどんな時も「イエス」、「ノー」がハッキリしているなと思います。そこに迷いは無くて。そして、のえるに対しては完全に信頼しているので、作戦を提案されても「こういうのがあるじゃん」と文句を付けるのではなく、「わかった」と理解を示す。もしニニーが間違っていても、のえるが「ニニーちゃん、それは間違ってます」って過去に言ってくれたおかげで、助かったことがきっとたくさんあって、そういうのを踏まえて、ニニーはのえるを信じることで突き進めているのかなと。その信頼関係は、原作の読み切りを読んでいる時から思っていましたね。いろいろ言い合いはするけど、お互い放っておけない。それこそ、敬語の話とかもしているんですが、そんなことをストレートに言えるのも好きだからこそで。どうでも良かったらそんな話はしないだろうし、それをわざわざ言うのが日常で、心を開いている証拠なんだろうなとすごく思います。
──演じながら難しさを感じるニュアンスなどはありましたか?
田野 ニニーとしては、常に「!!!」とお尻に!マークが3つくらい付くテンションが高い子なので、難しいところはなかったです。でも、一緒に収録をしていたのえる役の唯菜ちゃんは、ニニーの「!!!」というテンションにつられてしまいそうで、苦労していそうだなと思いました。やはり、一緒に演じている相手のテンションにつられて、気持ちを合わせて発散するとスッキリするじゃないですか。でも、のえるはそれをするキャラクターではないから、本当はグッと一緒に行きたい時もあるけど、すごく冷静に「私は落ち着かないと」となっているだろうなというのを収録しながら感じましたし、抑えながら演技をしているのが判って、横で「申し訳ないな。もっとテンション上げたいよね」と思っていました。唯菜ちゃんとは一緒に収録できたので、私のセリフの熱量をきちんと彼女が感じ取ってくれていたし、私も唯菜ちゃんの抑えた演技の中の熱い気落ちも感じることができたので。
──コロナ禍という状況の中でしたが、アフレコは一緒に収録することができたんですね。
田野 そうですね。ニニー、のえる、バルゴ役の土屋神葉さんと3人の時や、ブルーノ役の小林親弘さんも、私たちニニーとのえると掛け合う時は3人で収録しています。チーフ役の平田広明さんとのやり取りも、一緒にブースに入って演じることができました。そういうスケジュールで収録させていただけたのは嬉しいですね。特にチーフとのやり取りは、別録りだと雰囲気が変わってしまうに思いますし、いつもゆるめの水掛け論をやって交流しているんだろうなという日常感が大事だと思ったので、私自身も積極的に平田さんに話しかけて「よくしゃべるね(笑)」と言われるような感じで、ある意味平田さんとの距離感が縮められたことが、ニニーとチーフとのやり取りにも活かせたという部分もありますね(笑)。
──そういう下準備をして、その関係性を演技にも反映させたいという気持ちがあったんですね。
田野 そうですね。やっぱり、テレビシリーズのように毎週収録があって、1クール3ヶ月から長いと1年、2年を一緒に演じられるお仕事ばかりじゃないですからね。今回も収録は数日でした。だから、「田野ってこんな人なんだよ」というのを、平田さんにわかってもらえたらいいなって。平田さんはチャーミングで、ニコニコと相手をしてくれたので優しい方だなと思いましたね。
──その他では、ニニーとしてはメイシー役の早見沙織さんとも絡みが多いですよね。
田野 早見ちゃんとは前の作品でもご一緒したことがあって、イヤリングをプレゼントしていただいたりと仲良くしてもらっていたので、また一緒に演じられるのはすごく嬉しかったですね。それも、わりと濃厚な距離感の役どころだったので。アフレコの時も、キャラクターの中で一番喜怒哀楽が激しいのはニニーだったんですが、メイシーが来たらニニーがタジタジになる。ニニーがちょっと引くくらいのキャラクターというのも新鮮でしたし、早見ちゃんと一緒にアフレコをしている時は、みんなと一緒の時とはまた違う風が吹いたような感じもしたので、やり取りのシーンでは私もさらに気合いが入ったという感じでしたね。メイシーは滅茶苦茶激しい子なんですが、早見ちゃんのお芝居が素晴らしくて、メイシーがすごく素敵だなと思ったし、それに負けられないなという気持ちでアフレコに臨めました。
──ニニーを演じるにあたって、久保先生や監督からのオーダーなどはありましたか?
田野 まず、オーディションの時からすごく気を使っていただいて、ひとりに対して時間を使っていろいろとディレクションしてくれましたね。途中で、「これはオーディションじゃなくて収録なんじゃないかな?」と思うくらい「こんな風にやってみましょうか?」とたくさんレクチャーをいただきました。終わった後の自分の手応えとしては、ニニーを演じられるかどうかではなくて、私自身がオーディションを楽しめたという感じがありました。そして、その演技を久保先生に直接見ていただけたことでもう満足でした。アフレコ収録の際も久保先生が現場にいらしていて、あまりオーダーなどは無かったんですが、1箇所だけ久保先生が「もう1回やって欲しい」というところがありましたね。のえると一緒にシンデレラに攻撃をする際に、魔法の呪文を唱えるシーンがあるんですが、そこを「呪文を言うのではなくもっと歌い上げるように、高らかに言って欲しい」と言われたんです。その時に、先生はそうした呪文などを唱えることに熱量があって、こだわっている方なんだと再確認できて、印象に残っていますね。
──世界観も特殊な作品ですが、関わってみてどのような印象を持たれましたか?
田野 まず少年ジャンプの作品で、女性が主人公というのが激アツですし、さらに魔法が使えて空を飛べる。私も思い返せば、魔法使いのように空を飛ぼうとホウキに跨がってジャングルジムから飛び降りたことがある子どもだったので、その夢が叶ったという感じです。この世界で、ニニーとして生きられるという、こんなに幸せなことはないなと思いました。リバース・ロンドンという舞台に関しても、こういう時期だからこそ旅行、特に海外は行きづらいので、行ったような気分になれる映像というのも素晴らしいです。監督がイギリスで取材をしたことが、実際に作品に反映されているということなので、そこが楽しめるのもいいなと思っています。
──演じた上で、印象的なシーンや好きなシーンを教えてください。
田野 好きなシーンは、やっぱりのえるがブルーノに対して「ダセぇメッシュですね」って言うシーン。あそこがめちゃくちゃカッコイイ。その時のえるに対してニニーが怒っているように見えて、「怒られるようなことしていませんけど」「怒ってるんじゃないの、褒めてるの」っていうあのやり取りがいいですよね。ニニーは、のえるの発言に対して「よく言った!」と思っているからこその会話だし、のえるを信頼しているんだなって思えるシーンにもなっているんですよね。のえるが、決める時は決める、ということを分かっているからこそのやり取りなので、アフレコのときも、そうした空気感に乗れた感じがして、すごくスカっとしました。ふたりの信頼感が見えて、心地良かったです。あとはチーフとのやり取りがすごく好きです。日常感がいいですよね。ニニーが言い返せないことをチーフから言われて、「ぐぬぬ」となって、八つ当たりでデスクの上に山積みになっている書類を肘で当てて床に落とす感じなんかも、いつもやっていることなんだろうなというのが垣間見えて、さらにチーフとの距離感も掴めた感じもあるので。
──原作はシーズン2が決まったわけですが、アニメでも続編には期待してしまいますよね? こんなシーンが見たいとか、こんなことが知りたいというような希望はありますか?
田野 続編はもちろん観たいです。でも、内容に関しては私が言えるものじゃないですし、やれるならばぜひやらせてもらいたいというのが正直なところです。私が「こうかな? ああなるかな?」と想像するよりも、先生が頭の中で描いているだろうし、それを先生の頭の中から取りだして映像化できるなら、どんなことがあっても私はやりたい。ニニーとして作品に参加したい。そういう気持ちでいっぱいです。
──『BURN THE WITCH』のBlu-rayが12月24日に発売となります。作品を見直す方も多いと思いますが、田野さんは見直すにあたってはどんなところに注目して欲しいですか?
田野 私はニニー視点、他のキャラクター視点、美術メイン……というように何度か違う視点で見てみて、どのポジション、どの役どころになっても、世界観が面白くて楽しめるということがわかりました。だから、視点を変えて見直すことで、ご自身でオススメを見つけてもらえればと思いますね。私は、『BURN THE WITCH』をプライベートでも劇場に観に行ったんですが、実はその時に、その劇場で先行販売されたBlu-rayのラスト1つを買ってくださる方を見かけたんです。思わず「買えて良かったね!」と声をかけそうになっちゃいました(笑)。でも、そうして買ってくださる方には、絶対に損はさせないくらいの内容になっていますから。初回限定版は絵コンテやサウンドトラックCDも入っていて、深く作品を楽しめるようになっています。Blu-rayを買っていただければ、いつでもこの世界に没頭できるんだよという楽しみが詰まっているので、「なんか疲れたな。『BURN THE WITCH』の世界に行こう!」という感覚で、作品に寄り添ってもらえればと思っています。
──では、最後にファンに向けてメッセージをお願いします。
田野 本当にいろいろと、こんなに使っちゃったら次にやることがなくなるんじゃないかというくらい、Blu-rayには詰め込まれているので、ぜひ手に取ってもらいたいです。私も『BURN THE WITCH』の世界に没頭している、皆さんと同じいちファンなので、これからも一緒に『BURN THE WITCH』を応援していきましょう!
PROFILE
田野アサミ(たの・あさみ)
2月12日生まれ。兵庫県出身。代表作に『スマイルプリキュア!』(日野あかね/キュアサニー役)、フランチェスカ(エクソシスト役)、『ラブライブ! サンシャイン!!』(鹿角聖良役)、『ゾンビランドサガ』(二階堂サキ役)などがある。
【あらすじ】
遥か昔からロンドンに於ける全死因の72%は、人々が見ることのできないドラゴンと呼ばれる“異形の存在”が関わっていた。だが、人知れずそのドラゴンと相対する人々がいた。ドラゴンの存在を見ることができるのは、フロント・ロンドンの“裏側”に拡がるリバース・ロンドンの住人だけ。その中でも、選ばれし人々がウィッチ魔女/ウィザード魔法使いとなり、ドラゴンと直接接触する資格を持つ。主人公は、自然ドラゴン保護管理機関「ウイング・バインド」(通称WB)の保護官である新橋のえるとニニー・スパンコールの魔女コンビ。彼女たちの使命は、ドラゴンに接触できない人々に代わり、ロンドンに生息するドラゴンたちを保護・管理することだった。
【STAFF】
STAFF 原作:久保帯人/監督:川野達朗/副監督:清水勇司/脚本:涼村千夏/キャラクターデザイン:山田奈月/ドラゴンデザイン:大倉啓右/背景美術:スタジオコロリド美術部/美術監督:稲葉邦彦/色彩設計:田中美穂/CGI監督:さいとうつかさ/撮影監督:東郷香澄/音楽:井内啓二/音響監督:三好慶一郎/アニメーション制作:teamヤマヒツヂ/スタジオコロリド
【CAST】
ニニー・スパンコール:田野アサミ/新橋のえる:山田唯菜/バルゴ・パークス:土屋神葉/チーフ:平田広明/オスシちゃん:引坂理絵/ウルフギャング・スラッシュハウト:麦人/ブルーノ・バングナイフ:小林親弘/サリバン・スクワイア:清水はる香/ロイ・B・ディッパー:田中美央/メイシー・バルジャー:早見沙織
©久保帯人/集英社 ・「BURN THE WITCH」製作委員会
BURN THE WITCH 公式サイト
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