『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』監督 京極尚彦×脚本 高田 亮 スペシャルインタビュー[しんちゃん通信]
『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』Blu-ray&DVD が2月10日についに発売!監督を務めた京極尚彦さんと、監督とともに脚本を作り上げた高田 亮さんにインタビューを敢行。映画「クレヨンしんちゃん」シリーズに初参加となったお二人に、改めて作品着想の経緯や、「クレヨンしんちゃん」の魅力を伺った。(※インタビューは映画本編のネタバレを含みますので、ご注意ください)
──お二人とも映画『クレヨンしんちゃん』には初めての参加となります。オファーがあったときの感想を教えてください。
京極『しんちゃん』はもちろん知っていましたが、自分から遠いものだと思っていたので、海外転勤を命じられたような気分でしたね(笑)。ワクワクしましたし、緊張もしました。
──「ラクガキ」というテーマはどのように発想されたのでしょうか?
京極『クレヨンしんちゃん』というタイトルなのに「クレヨン」があまり出ていないと思っていたので、最初は「クレヨン」をモチーフにしたいと考えていました。クレヨンで描いたものが飛び出したり、逆に平面になったりするお話をやってみたいと思っていたところ、原作にもよく似た「ミラクル・マーカーしんのすけ」という話があると知って驚いたんです。しんのすけがラクガキで描いた変な人たちと「桃太郎」のように旅をしたら面白いだろう、というのが最初の発想ですね。
ブリーフくんは実は◯◯◯だった!
──しんのすけと旅をするメンバーはどのように決めましたか?
京極基本的に原作通りですが、原作ではしんちゃんが初めに描くのはウンチなんですよ(笑)。さすがにそれはいろいろマズいかな〜ということになりまして(笑)。お客さんがそれに目がいきすぎて内容が頭に入ってこないのは問題ですしね。映画にするにあたり、その魂はブリーフくんに受け継いでもらった感じですね。
高田ウンチが真面目なことを言うのもありっちゃありですけどね(笑)。
京極話を進めるためにガミガミ言う存在がほしかったので、ブリーフくんがその役割を担うことになりました。純白の見た目どおり、真っ直ぐな性格になりました。
──ブリーフくん役の冨永みーなさんにはどのようなディレクションをしたのでしょう?
京極「見た目はあんなですが、中身は真面目でまっすぐなんです」とお伝えしましたが、最初は冨永さんも戸惑っていて、いろいろ質問されていましたね。具体的には「男性でもなく、女性でもなく、中性的に」とお願いしました。それを冨永さんなりに咀嚼して演じていただけたと思います。
──ななこお姉さんを演じている伊藤静さんがニセななこも演じていました。
京極やっぱり本人にお願いしたほうがいいな、と思いました。ただ、伊藤さんからも「どんな声を出せばいいのでしょう?」と質問をいただいたので、無茶振りでしたけど「色気のある感じで」とお願いしました。
高田へー!
京極けっこう劇中でも色気のある声を出していただいているんですよ。カーチェイスの場面でも「うふふ」と小さな声で言っていたりするので、ぜひチェックしてください。
ぶりぶりざえもんの「難しさ」
──ぶりぶりざえもんがセリフ付きで劇場版に登場するのが22年ぶりでした。
高田ぶりぶりざえもんを動かすのは難しかったですね! 「これはやっていいのかな?」と迷うこともありました。ミラクルクレヨンを盗むときも、利益目当てではなく、みんなにないがしろにされて寂しさからやるという流れにいないと悪役になりすぎてしまう。逆にユウマくんにクレヨンをあげるシーンは、今度はいい人になりすぎていないか不安で。
京極あれは正義に目覚めたわけではなく、万引きしたものを返してなかったことにしようとする小ずるさなんです(笑)。お客さんに「やっぱりぶりぶりはぶりぶりだった」と言ってもらえるように気をつけました。
──演じられた神谷浩史さんについてはいかがでしたか?
京極特にこちらから注文することもなく、何も心配していませんでした。アフレコではまったく苦労しなかったですね。
──いかにも現代の普通の子であるユウマくんはどのように発想されたのですか?
京極しんのすけが旅をした後、ほかのメンバーは消えてしまいますが、何か証として残る存在にいてもらいたかったんです。旅先で出会う人から影響を受けることもありますよね。ユウマくんにとって、しんのすけは影響を受けた人だし、しんのすけにとってはユウマくんを含めた4人が「ほぼ4人の勇者」なんです。「ユウマ」という名前をつけていただいたのは高田さんなんですよ。
高田あの年代の子どもの名前ベストテンを見たら「ユウマ」が一番多かったんですよ(笑)。それを京極監督にお伝えしたら、「誰でも何かができるということを伝えるには1位の名前をつけるのがいいかも」とおっしゃって。
京極映画館に来る子どもたちの中に「ユウマ」くんがたくさんいたわけですよね。現代の子どもたちとしんのすけの橋渡し役になってくれればいいな、と思っていました。
高田普段は目立たない子でも、何かのきっかけで目立つ子と仲良くなることはありますし、何かができるようになることがあるんですよね。子持ちの親として盛り上がりながら書いていました(笑)。
衝撃! ラクガキングダムのキングの裏設定とは?
──今回はキャラクターデザインを原勝徳さんと末吉裕一郎さんがご担当されていますが、京極監督からはどのようなオーダーをされたのでしょう?
京極原さんと末吉さんはずっと『しんちゃん』を描かれている方たちですので、僕から何かお願いするようなことはありませんでしたね。原さんにはユウマくんや姫のような優しくてほっこりした雰囲気のキャラクターをお願いして、末吉さんには鬼軍曹やリンゴのような奇抜なキャラクターをお願いしました。
──ラクガキングダムのキャラクターデザインとして姫田真武さんとぬQさんが参加されていましたが、これはどのような経緯があったのでしょう?
京極近藤(慶一)プロデューサーに紹介していただいてお願いしました。ラクガキングダムの自由で楽しい雰囲気が出せたと思います。デザインがチョイ役とは思えない感じになりましたが、結局何もしない(笑)。でも、彼らは誰かが描いたラクガキエナジーの集合体なので、描かれた背景がそれぞれあるんですよ。
高田一番地位の高いキングは、ラクガキ度が一番高くなければいけない、という話がありましたよね。ラクガキ度の低い防衛大臣は、地位の低いところから能力でのし上がってきた(笑)。
京極防衛大臣のデザインはのびのびしてなくてシュッとしてますもんね(笑)。彼は努力の人なんです。そりゃ、あんな状況になればイライラしますよね。
──最後に登場するキングの絵はどなたが描かれたのでしょう?
京極僕が描きました。打ち合わせの最中、ホワイトボードの隅っこに描いたのですが、一度消しちゃったんですよ。同じ絵が描けなくて、ホワイトボードを撮った写真を探して見つけたんです。
高田「OLさんが長電話の最中に描いたようなラクガキ」と僕が話したら、それを聞いて京極さんが「こんな感じですか?」と描いてくれたんです(笑)。
──キングはOLの長電話の最中に生まれたんですね! 細かいところで恐縮ですが、高田さんが作詞した「喜びの歌 おぉキング‼︎」の中に「痩せていて メガネが似合う」という歌詞がありました。キングはメガネをかけていないのですが、どういう意味だったのですか?
高田キングを讃える歌なのですが、実は歌詞に続きがあるんですよ。「メガネが似合う。でも、メガネはかけてない。目が悪かったらメガネが似合うのにもったいない。もうメガネの話はやめよう」という(笑)。それぐらい、みんなキングが好きなんです(笑)。
しんのすけには聞き分けのいい子になってほしくない
──エンディングも素敵でした。
京極「ほぼ四人の勇者」というタイトルが決まったとき、四人で旅したことを象徴的に表すようなシーンが欲しいと思って付け加えました。ユウマくんにとってはしんのすけが旅の生き証人ですし、しんのすけにとってはユウマくんがそう。ラクガキは消えちゃったけど、全部消えたわけじゃないよ、と。
エンドクレジットは、みなさんからいただいたラクガキを見せつつ、旅を思い出すような絵を入れて、お客さんもあたかもその場所にいたかのように思っていただければ、豊かなものになるんじゃないかと思いました。
あと、エンドクレジットでは集合写真がやりたかったんです。舞台のカーテンコールのイメージですね。見ていて幸せな気分になるので、カーテンコールが好きなんですよ。末吉さんに描いていただいたのですが、あらためてめちゃくちゃキャラクターが多いな、と思いました(笑)。ななことニセななこが並んでいるところがいいですよね。
──最後に、あらためてしんのすけの魅力を教えてください。
京極自分は子どもの頃、しんのすけがイタズラをするとすごく気持ちが良かったんです。まわりの大人が嫌がっている姿を見ても「いいぞ」と思っていました。ただ、自分が大人になると「なんでそんなことをするの?」と思うようになります。これは普遍的なことなので、変にしんのすけを面白くしようと思わないほうがしんのすけらしくなるんです。やればやるほど、体の力が抜けていく感覚になりました。これが僕の実感ですね。
高田子どもが大きくなる過程で親は世の中のルールを教えていくのですが、すごく面白いことをやっている子どもをつまらない人間にしているとも言えるんですよね。本当はしんのすけみたいにずっとしていてほしいという気持ちが親としてもあるし、子どももふざけた日々を送りたいと思っている。それを実現してくれているのが『しんちゃん』という作品だと思います。
脚本を書いているときは、なかなか話が進まなくて苦労しましたが、同時に聞き分けのいい子どもになってほしくないという気持ちもありました。これがしんのすけの魅力だと思います。
PROFILE
京極尚彦(きょうごく・たかひこ)
1981年生まれ。サンライズD.I.Dに入社後、CGエフェクトを担当。初監督作品『ラブライブ!』では、TVアニメ第1期(13年)・第2期(14年)、劇場版『ラブライブ!The School Idol Movie』(15年)シリーズを通して監督を務める。他に『宝石の国』(17年)など多数の作品を監督。『クレヨンしんちゃん』シリーズはTVアニメの絵コンテ・演出を数本手掛け、劇場作品の参加は今回が初となる。
PROFILE
高田 亮(たかだ・りょう)
1971年生まれ。『婚前特急』(11年)で初めて劇場映画作品の脚本を手掛ける。その後、『そこのみにて光輝く』(14年)では第88回キネマ旬報ベスト・テン脚本賞を受賞。『クレヨンしんちゃん』作品にはTV・映画を通して、今回が初めての作品への参加となる。
<Blu-ray&DVD情報>
『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』Blu-ray&DVD 2月10日発売!
Blu-ray&DVD 2月10日(水)発売
映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者
2021年2月10日発売
Blu-ray:¥5,280(税込)/ DVD:¥4,180(税込)
※レンタル DVD 同時発売
発売元:シンエイ動画 販売元:バンダイナムコアーツ
映画 クレヨンしんちゃん 公式サイト
バンダイナムコアーツ 『クレヨンしんちゃん』Blu-ray&DVDサイト
映画 クレヨンしんちゃんシリーズ 特集サイト 「しんちゃん通信」
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