第5回「フラタニティ」[トップをねらえ2!大百科]
『トップをねらえ2!』の世界観を解説するコーナー「トップをねらえ2!大百科」がオープン。既にファンの方も初見の方も、これを読めばトップ!シリーズがもっと面白くなる、作中の世界観を深堀りする内容が満載! 第5回は「フラタニティ」です。
※電撃ホビーマガジン2005年3月号から2006年7月号まで掲載された『トップをねらえ2!』の作品紹介「トップをねらえ2!大百科」を再掲したものです。
友愛に満ちた子供たちの組織
太陽系の中で、安寧を貪っていた人類。そんな人類に襲いかかったのは、かつての天敵、進化した宇宙怪獣だった。牙を無くしていた人類の宇宙艦隊は為す術もなく敗れ去っていった。そんな状況を覆したは、人類の守護神・バスターマシン! そしてその動力源兼パイロットとして搭乗するのは、トップレス能力を持つ子供だった!!
トップレスのひとり、チコ。1話2話ではあまり出番がなかったが、第3話で彼女の活躍を見ることができる。
このたった1機で宇宙艦隊とも互角にわたりあえる戦闘能力を持つ超兵器。それを動かせるのはトップレスという超能力を持った子供――「追いつめられた人類がなにをするか見せてやる」という言葉を引くまでもないが、人間という生物は危機に立たされると、敵に対してだけでなく同族に対しても冷酷無情な行動をとる時がある。それは軍隊という、効率を追求し非常時には人命すらも消耗品扱いする組織では特に顕著となる。宇宙怪獣再侵攻当初に、バスターマシンに搭乗することになったトップレス能力者がどんな目にあったのか? それは想像に難くない。
そんな状況に対して「未知の力を持っていてもトップレスは人類だ!未成年であるトップレスたちを守り、かつ十分な人権保護を行うべきである」という思想も生まれる。そのために組織されたのが「フラタニティ」という組織なのだ。これは政府が音頭をとってつくったものではなく、トップレス能力者たちが自発的に組織した、いわば自治互助会である。イメージ的には労働組合、もしくは学生の自治会連合のようなものらしい。トップレスは、彼らの手で彼ら自身を守るために、フラタニティを運営しているのだ、まさしく英語でいうフラタニティ=同好会・交友会だといえるだろう。
ついに登場する新型機。なんとブリスターパック入り! 装甲などのパーツは外された状態で梱包されてます。
木星急行を迎撃するために集まったトップレスたち。彼らがバスターマシンとともに放つ必殺技の閃光が、地球の明日を救う!
太陽系に広がる友情の団体?
子供だけで組織されているということは……大人はいないの?という疑問が出るのは当然。実はこのフラタニティには、大人の構成員は一人もいない。もっとも、フラタニティはトップレス能力者の互助会。大人にはトップレス能力がないのだから、フラタニティには入れないのは当然なのだが。
ともあれ、宇宙軍と互角の戦力を有すると言われ、火星の「メガネビュラ」基地、金星の「ダーリング」基地、アステロイド東方星区「メイミイ」基地、同西方星区「マグノリア」基地、辺境星区「ケンジントン」基地、その他の各駐留基地を保有(軍から借りている)。宇宙怪獣が太陽系に侵入したと判明すれば、すぐさまバスターマシンを派遣しなければならない。そんなフラタニティの構成員がみんな子供、しかもその人数は百人程度しかいないという。あれ?そんな人数で、怪獣退治という組織が成り立つのだろうか、という疑問が沸いて出る。ここで肝心なのは、フラタニティは怪獣退治をするトップレスの集まりだが、会としての機能はトップレスの保護と自治にある。つまりその活動範囲に、周辺雑務は入っていないのだ。それじゃあ、どうやってトップレスが怪獣退治をする環境を整えているのか。ここで登場となるのがフラタニティの周囲でトップレスを支援する大人たちの存在である。
トップレスの良き相談役、コーチのカシオ。
まずはすぐ目につくのは、フラタニティの「準構成員」と呼ばれる大人たち。彼らはフラタニティの施設に立ち入り、子供たちの身の回りや施設の維持、助言を行う立場にある。いままでの登場人物でいうと、コーチと呼ばれ、ニコラと深謀遠慮な会話を繰り広げていたカシオがこの準構成員にあたる。さえない風貌をして、「ロリでメカフェチですか?」などとからかわれている彼だが、何を隠そう!20年前に行われた宇宙怪獣との大会戦で生き残ったという元トップレスなのだ。いまや彼にトップレス能力は無いが、元トップレスとしての経験、そしてかつての自分と同じトップレスの少年・少女たちの心情をくみ取れるフラタニティのOBとして、信頼を集めている(?)人物なのだ。このような準構成員は他にも配置され、トップレスを身近なところからサポートしているのだ。
基地や装備機材の保守点検、雑務雑用などは、フラタニティ外の軍や大学などの研究機関に委託され、特に宇宙軍とは密接な関係にある。2話ではハトリ大佐がトップレスに反感を持っているように描かれているが、それは一部のこと。怪獣退治に関して、宇宙軍とは多くの点で協力し合っている。宇宙怪獣の侵入監視や、バスターマシンの到着が遅れた場合の足止めなど、人数の少ないフラタニティをカバーするために、軍は絶対不可欠なパートナーといえるだろう。そして、フラタニティの剣とも言えるバスターマシンの保守・整備。これは、政府の公的法人「バスターマシン公社」に任せられている。これら大人たちの地道なサポートにより、子供たちは、周辺の難しいことは気にせず、青春を謳歌しつつも宇宙怪獣撃滅に邁進できるのだ。
と、表向きの理由はここまで。フラタニティという組織が子供だけの独立機関となり、外部の大人がオブザーバーとなっているのには、別な理由があるという者がいる。政府=大人は、「同じ人類とはいえ超常能力を持つトップレスを恐れている」という憶測だ。その顕著な例が、フラタニティが「バスターマシン以外の装備を保有できない」という法律にあるという。使用している各基地が軍からの借り物だというだけでなく、フラタニティはバスターマシン以外の戦闘艦、運ぶための輸送船、果ては小型の宇宙艇の保有さえもが禁じられている(2話でラルクが、基地から宇宙服で泳いで査察艦隊のララァシャンに移動したのも、小型艇がないため)。トップレス自身が惑星間を移動するには民間航路を利用することになり、バスターマシンの輸送などもわざわざ軍艦や民間船を(パイロットごと)徴用しなければならない。戦闘中の弾薬補給や食糧物資などの兵站(補給)も、軍の助けを請わなければならないのだ。これらの足枷は、トップレスがバスターマシンで暴走し、政権奪取を目論むのでは?と政府が恐れているからに他ならないという……。
前年・宇宙軍理事総会における、ラルクの勇姿。お偉方の軍人の前で、見事な宣誓! 読む原稿は用意してもらえるそうですが。
宇宙軍と協力しあって、宇宙怪獣の木星急行を止めるためのネットを展開。これにはノノも参加してます。
トップレスに暇は無い?
そんな大人のやっかみや疑惑、一般の子供たちの羨望のまなざしを一身に受けるトップレス。今日もバスターマシンに飛び乗り、宇宙怪獣を相手に星々の間を駆けめぐっている!しかし乗り込むバスターマシンがないフラタニティメンバーは何しているの?という疑問がわいて出る。各施設で延々と待機しているのか、それとも実験動物みたいに……。実はそんなことは一切無く、彼らは一般市民に混ざって、ごく普通に学生生活を送っていたりする。もちろん一般社会では、能力を封印するシールを額につける義務があるため、トップレス能力は使えないのだが(特例を除く)。
火星上空のフラタニティ駐留基地・メガネビュラ。その外見は銀色に輝く8の字という形状。連なっているドームの中に、居住区や格納庫などの施設が入っているのだ。このメガネビュラがとあるお菓子に見えるところから、所属のトップレスは「お菓子系」と呼ばれることも。
バスターマシンの空き待ちをしているような有力なトップレスは、予備役として定期的な講習、訓練が行われ、フラタニティの各施設に赴いたりもする。このフラタニティでの活動は教育の一環と位置づけられており、学校の出席日数などにはカウントされない。逆に言うと、フラタニティ内部に正式な教育機関がなく、侵略してきた怪獣めがけて急降下!とばかりに戦いまくっていると、そのトップレスの一般社会での成績も急降下!!というハメになってしまうのだ。
このあたりの問題は、現代の学生アイドルとほぼ同じ。仕事は大切だけど、学校の成績も大事というところ。かといってアイドルと違い、トップレスの肩に掛かっているのは人類の平和なのだから、成績が下がったからトップレス辞めますとは言い出せない。ラルクやニコラも、日々怪獣退治で疲れた眼を擦りつつ、コンパートメントで数学の公式を覚えたりしているのかもしれない。そんな彼らの悩みを聞いてあげられるように、コーチ・カシオなどの準構成員が配属されているわけだ。怪獣退治の戦法や技術、トップレスの心構えなどだけでなく、人生の先輩として勉学や身体の相談、時にはほのかな恋の相談などにものってあげているのかも。あの顔じゃありえない?いやいや昔は彼も美形だったのかもしれないぞ……。
艱難辛苦を重ね、その合間に学生の本分・勉強をこなしつつがんばるフラタニティのトップレスたち。彼らの目標は?というと、やはり年間撃墜数のトップになること!と答えるだろう。別段彼らに「今月の撃墜数ノルマ」とかが課せられている訳ではない。宇宙怪獣を一体倒す毎にご褒美がもらえるというコトでもない。それなのになぜ彼らが撃墜数トップを目指すのか? その理由は、年に一度、帝都で開かれる「宇宙軍理事総会」にある。宇宙軍全軍の幕僚が一同に会して行われるというこの盛大なセレモニーに、フラタニティから総代としてひとりトップレスが出席することになっている。この総代こそ、前年度の対宇宙怪獣最高スコア記録者が務めることになっているのだ。
栄えある総代に選ばれたトップレスは壇上へと上がり、対宇宙怪獣戦への意気込みを宣言として読み上げる。その模様は、太陽系中に中継放送される。これこそトップレスの晴れ舞台!!ちなみに、前年度の総代を務めたのは我らがメガネビュラのラルク姫。その時の放送を見ていたがために、ララァシャンの乗組員はみんな彼女の顔を知っていたのだ。もっともこの時代、トップレスはアイドルに近い(もしくはそれ以上)の人気がある存在とはいえ、あの騒ぎっぷりと情報の詳しさを見ると、ララァシャンの乗組員はトップレス・オタクなのかもしれないが。
そのラルクは、1話で火星に派遣され、単独で宇宙怪獣撃破というスコアを上げている。来年の総代の座を狙っている、他のトップレスの心中は穏やかざるところだろう。特にラルクと同じメガネビュラ所属で、次期エースと目されるトップレス・チコとしては、ボヤキのひとつもこぼしてしまうところ。ところが彼女は3話の冒頭で乗機・ソワサンシスが撃破・廃棄されてしまうのだ。そこでノノを相手に、新たに配属される新型バスターマシン・キャトフヴァンディスの争奪戦を繰り広げるハメに!なんといってもキャトフヴァンディスは数十年ぶりの新型機。今回を逃したら、バスターマシン公社から新型機がいつ出てくるかわからないのだから。
ラルクを一目でも見ようと押しかけるララァシャンの乗組員たち。トップアイドル以上の人気!?
技術を保有する謎めく組織
そんな期待の新鋭機・キャトフヴァンディスを作っているのが、前項で名前が出た「バスターマシン公社」である。宇宙省所管の公社であり、企画開発を担当する企画設計局と整備公社の2つからなりたつ。莫大な国家予算を湯水のように使って、日々バスターマシンの新型機の開発・製造に邁進している会社なのだ。とはいっても製造の困難さから、次々と新型機をロールアウトさせるなどというコトはできないのが……。「公社」というからには、一応政府が作った公益事業のための法人。ところが、政府から、そしてフラタニティからも独立した運営が行われているのだ。その内部では、どのような活動をしているのか? 日々行われるバスターマシンの整備と、時折ロールアウトしてくるバスターマシンの製造以外は、謎のベールに包まれている。
一般や軍の水準を遙かに超える技術を持ち、トップレスたちの研究も行っていると思われるこの組織、フラタニティ以上に謎を秘めた組織だといえるだろう。その闇を垣間見せるかのように、様々な黒い噂が流れていたりする。その中には秘密結社との関係を噂されるシンクタンク「財団」と関係があるとか、異星人の文明や、いわゆるロストテクノロジーを隠し持っているなどというオカルトめいたものまである。しかしすべては噂に過ぎない……。公社の真の姿は、物語が進むにつれて明らかになるのかもしれない。
個室に共同浴場と、メガネビュラの生活は学生寮の雰囲気そのもの。ラルクが拾ってきたノノを自らの手で洗っているのも、フラタニティが子供の自主&自治に基づいているからだ。
タコ唇に、年下の男の子の揶揄に動揺しちゃう脳天気な会話など、さえないコーチ・カシオ。 しかしそのサングラスに隠した眼光は歴戦の勇士にふさわしく、カミソリのように鋭くきらめく。
Q. 怪獣捜査官とはどんな役職なの?
A. 2話でラルクに向けられた「怪獣捜査官」という名称。これは役職名などではなく、バスターマシンパイロットの俗称なのだ。フラタニティは宇宙怪獣の未確認侵入情報(宇宙軍からの通報から、トップレス能力の予知など)があれば、早急に現地に出動。情報収集をして怪獣を見つけ出し、先制的な迎撃作戦にあたる。その積極的な行動から、捜査官という名称が冠せられているのだ。
Q. フラタニティの指揮系統はどうなっているの?
A. ラルクがハトリ大佐の尋問に答えている通り、フラタニティ内に指揮系統というものは存在していない。コーチのカシオも相談役であって、命令権は持っていないのだ。ただしある種の番長制度みたいなものがあり、能力・実績・人望を兼ね備えた者(例えばニコラなど)がリーダー的な立場に立っている。外部から見れば命令しているように見えるが、指揮権などによる強制はない。あくまで自主的に活動を行っているのだ。
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